営業マニュアルは、個人の裁量に任されている営業活動を事業部全体で体系化統一することで、業務効率や売上のアップにつなげるための方法です。言語化・体系化されていないノウハウを見える化できます。
本記事では、営業マニュアルの概要やメリット、作り方を中心に解説します。
目次
営業マニュアルとは
営業マニュアルとは、営業プロセスやノウハウをまとめたもので、成果を出すことを目的とします。
例として、
「見込み顧客からアポイントを獲得する」
「ヒアリングを経て具体的な提案書を提示する」
「商談を得て契約を獲得する」
といった具体的な営業の進め方に加え、トップセールスのスキル・知識や成功事例・失敗事例など、自社内で言語化・体系化されていない要素も入れ込みます。
自社内にあるノウハウをマニュアル化すれば、営業活動の生産性といった個人の能力に成果が左右されない組織全体で成果を出すための仕組みづくりを実現できます。
組織としての営業活動の質が高まる
営業マニュアルを導入すれば、営業の経験年数や自社での勤務年数に関係なく、一定の質以上の営業活動が行えるようになります。例えば、トップセールスの営業トークや価格交渉などの成約につながりやすい商談方法の共有やマニュアル化して、実際に現場に導入した結果、営業活動の改善だけでなく大きな事業成果を生み出せる可能性があります。
たとえ新人や中途採用者であっても、営業マニュアルに書いてあることを実践すれば、成果につなげることが可能です。誰もが成果を出せる営業組織を構築できるでしょう。
業務の属人化を避けられる
営業における業務の属人化とは、特定の担当者に情報や進め方が偏ってしまうことです。例えば「見込み顧客にいくらで見積書を出しているかわからず、顧客からの問い合わせに担当者しか回答できない」といったケースがあげられます。業務の進め方や進捗がブラックボックス化してしまい、業務の非効率やトラブルを招いてしまうでしょう。
営業マニュアルで「見積書はエクセルファイルに記入して、社内の共有フォルダに格納する」と運用ルールを統一しておけば、業務が滞るリスクを防げます。
業務効率や生産性をアップできる
営業マニュアルは、自社における「営業活動のお手本」として位置づけられます。新人社員の研修や売上に伸び悩んでいる営業担当者が営業活動で壁にぶつかれば、教科書のように体系化することで、自力で解決することも可能です。実際に直面する「受注率を高めるためにはどうしたらいいいか」、「顧客からのクレームにどのように対処するか」といった問題に対処できるでしょう。
また、特に新卒や新人は成果を出せるまで時間がかかるためりやすく、体系化したマニュアルがあることによって各営業担当者で学習や上長のアドバイスやコーチングにも活用ができ、営業活動における業務効率化や売上達成の業務効率化につながります。
営業マニュアルの作り方
営業マニュアルを構成する基本的な項目は、業界に関係なく共通しています。
<例>
・ビジネスマナー
・営業全体の流れ
・商品・サービスの情報
・業界の情報
・競合他社の情報
・顧客の課題
・ヒアリング内容
・商談時のトーク
・クレーム防止・対応事例
・受注時の契約までの流れ
ビジネスマナーでは身だしなみや挨拶の仕方といった基本から解説します。
営業活動前の理解として、顧客が抱えている主な課題に加え、業界や競合他社の情報もまとめておきましょう。新人が読んでも理解できる内容にすることが大切です。
ただし、実際に作成する際は、業界ごとの商習慣や自社の状況に応じて、項目を精査することが重要です。例えば建築業界では見積書が複雑で「積算ソフト」などを利用するため、見積もり作成の手順を営業マニュアルでまとめる必要があるでしょう。
1.目的や利用者を明確にする
営業マニュアルの作成にあたって、優秀な成果を上げている営業担当者の実績を元に体系化できそうな内容をを明確にします。目的や利用者、範囲をあらかじめ決めておけば、作成時のブレがなくマニュアル化しやすくなります。また営業活動のマニュアル化の導入を実施した時の目標を決めておくことによって作成したことによる成果の振り返りもしやすくなります。
目的だけ設定して「営業活動で成果を出せる」といった抽象的な内容にすると、どこまでを範囲とするか曖昧になるため、
<例>
目的:一人で営業活動を進められ、まず成約率20%を達成できるようにする
利用者:入社3年目までの新人、業界未経験の中途採用者、売上に伸び悩んでいるベテラン
範囲:アポイント獲得、訪問から契約までの流れ
といった実際にマニュアルを活用する営業担当者をベースにするとより明確になります。マニュアルを作成する範囲も目的と利用者に必要な項目を洗い出し、その項目毎に必要な情報を各関係者へのヒアリングや社内の情報を集めて作成するとマニュアル化がしやすくなります。
2.フォーマットと内容を決定する
営業マニュアルのフォーマットは、文章やパワーポイントに限りません。スライドの資料や文章を読んでもわかりづらかったりする場合、動画をフォーマットで作成ことによって細かい内容を読まなくても短時間でどの営業担当者でも理解しやすくするといった工夫をするのも有効な方法です。
またiPadなどのタブレットを利用することによって、顧客への提案時に紙を使わずに提案書や動画など見せるなども有効な手段です。
マニュアルに記載する項目を具体的に洗い出します。
例1) 電話でアポイントの獲得する
・電話する時のポイント
・用件の伝え方やヒアリングの方法
・商談時の進め方やアポイントの取り方
・電話後に御礼メールを送る
・商談する担当者への引継ぎ方法
例2) 商談から成約までの流れ
・商談までに準備すること
・商談時のヒアリングや提案のポイント
・見積書の作り方や上長への承認の流れ
・成約時の流れ
・取引時の契約書や請求書の作り方
といった自社の営業活動の流れに合わせて一つずつ項目を洗い出すといいでしょう。
3.営業マニュアルを作成する
目的や作成するフォーマットが決まったら、具体的な内容を正確に把握することが大切です。
営業マニュアル化は、取り扱う商品・サービスの内容だけでなくや、営業活動の流れや各営業担当者の役割の範囲によっても大きく異なります。
トップセールスマンや事業所によって営業活動の仕組みが違う場合、各営業所の主要な営業担当者や上長にヒアリングするなど、項目や内容の洗い出しだけでも多くの労力をかけることになりますが、営業活動の業務効率を上げるために専門部署の立ち上げや担当者を専任で任せるなどの営業活動の推進をしやすい仕組みを作ることによって、直接訪問してヒアリングするなどの課題となっている項目を洗い出しやすくなります。
4.設定した営業活動の目標効果測定と改善を繰り返す
営業マニュアルが完成したら、現場に導入し、想定していた利用者に使ってもらいます。その後は効果測定として、各利用している営業担当者毎に設定している目標や営業マニュアルを実践できたかどうかをした成果を振り返ると良いでしょう。「アポイントの獲得件数はいくつ増えたか」、「成約率受注率はどれだけ変化したか」「目標に対してどうだったか」といった数値を見るといいでしょう。
現場に導入した後に営業マニュアルの課題が少なくとも見つかるはずなので、改善を繰り返します。「アポイントの獲得件数は増えたが、受注率が低い」場合は、「対応している顧客リストの精査」や「リストの受け渡しや商談時の提案内容や資料」を改良します。営業マニュアルを作成して終わりではなく、営業活動の効率化や生産性(目的を達成できる)まで繰り返し改善を続けることが大切です。自社のこれまでの取り組みによっては長期的な取り組みなケースもありますが、ある程度の期間までと決めるなど、実際の事業目標に合わせて決めるケースが多いでしょう。
営業マニュアル作成の4つのポイント
営業マニュアルの目的を達成するためには、ポイントを踏まえて作成することが重要です。
どの社員が読んでも分かりやすい表現にする
営業マニュアルでは、可能な限り、新人に足並みをそろえて分かりやすい表現で作成します。自社の商品・サービスや業界などの知識をもたない新人でも理解できる内容であれば、社歴・経験に関係なく全社員が利用できる営業マニュアルとなります。当初予定していた外部の提携パートナーなど利用者以外が読む場合にも、そのまま活用可能です。
分かりやすい表現にするためには、専門用語を使わないことです。営業未経験者や新卒などに自社独自の情報や業界特有の専門用語で伝えても、最初は意味を理解することは難しいため、業界特有の用語がある場合、「○○とは」「自社商品・サービスの○○とは」「よく社内や顧客の会話で出る○○という用語について」といった自社や各業界における独自の専門的な内容を説明しなくても短い期間で学習できる内容にすると良いでしょう。
新人や利用者に作成の協力をしてもらう
営業マニュアルを現場に導入する前に作成途中の過程で実際に利用してもらう営業担当者にわかる内容かを見てもらうことも大事です。
例えば、主要な成績を上げている営業担当者からヒアリングした内容を反映した時に新人他など実際にマニュアルを利用する営業担当者が理解が追いつかないか、場合によっては分かりやすい言語化できてない可能性があります。基本的にはどのような人が見ても分かりやすいようにするのが好ましいですが、実際の利用者に聞く方が正確な情報が得られやすいでしょう。
必要なときにすぐに営業活動の参考にできる場所で管理する
営業マニュアルは、パソコンでのインターネットを経由した閲覧だけではなく、スマホやタブレットで閲覧ができるなどのマニュアルを「データ化してクラウド上で閲覧・保存する」といった対応で、必要なタイミングですぐに利用できるように管理するのも検討すると良いでしょう。営業マニュアルがオフィスでしか見られない状況では、現場で活用されにくくなってしまいます。インターネット上で閲覧できるようにすれば、昨今のリモートワークの対応や営業活動時に困ったときにすぐに見ることができます。
また、インターネット環境が用意できない場合、各営業担当者のパソコン、タブレット、スマホなどの端末にダウンロードして閲覧する方がより業務効率化につながる可能性もあります。その場合、機密ファイルになるため、情報流出や自社のセキュリティ体制に合わせて管理することが大切です。
マニュアル化の優先順位を決める
営業課題によっては中長期的な取り組みになるため、実際に各主要な営業部門の関係者にヒアリングや課題となっている現状把握した上で、もし事業成績や売上の課題となっているところを優先して対応する必要がある場合、該当する担当者や部門の現状課題のヒアリングからマニュアルに着手すると良いでしょう。
あとは、実際にマニュアルを作成するためのヒアリングをした結果、想定以上の課題や作成するための期間、マニュアル以外の対応が必要な場合、部分的な取り組みも重要ですが、自社の状況によってマニュアル化を推進するかも検討しても良いでしょう。
ただし、多くの営業活動を行っている会社は、コロナやデジタル化の促進による昨今の市況感から取り組んでいる企業も多くなっているため、自社の課題の状況に限らず、まずは部分的にでもマニュアル化を進めてみて、きちんと結果を振り返ってみて有効な対策だったかを見極めるのも良いでしょう。
まとめ
営業マニュアルは、これまでの俗人的な営業活動の体制や新しく入社した新人や中途社員の業界特有の情報や用語、営業活動における成約しやすいポイントなどをマニュアル化することによって、継続的な営業活動の改善の事業効率化や各営業担当者が成果を上げられるような仕組みを作ることができます。
作成する上での手段として、紙で提案していた資料やパワーポイントの資料をPDFや動画のフォーマットにするなど、共通のインターネット環境上のセキュリティ対策やインターネットに接続できない環境だったとしても、PCやタブレット、場合によってはスマホ端末があれば閲覧できるなど、自社の営業活動の課題に合わせて対応の検討をすると良いでしょう。
特に紙の資料をPDFなどの資料で利用者が理解しづらい場合、各改善したい営業活動の項目に合わせて動画で短時間で内容と実際の活動の参考となるマニュアルにするのも有効な手段になるので、自社の営業担当者の課題に合わせてマニュアル化の検討をしてみるのはどうでしょうか
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