営業活動をする組織において、「営業プロセスの見える化」は大きな成果につながります。営業プロセスを見える化することにより目標達成に向けた課題が明確になり、具体的な行動をとることができるからです。また、成果を出している営業担当者のノウハウを営業プロセスの見える化で標準化することで、全体的なスキルの底上げにもつながります。この記事では、成果につながる営業プロセスの見える化について、具体的な手法や注意点について解説しています。
目次
「見える化」のカギは課題の特定
営業プロセスとは、営業活動全体の流れのこと。「営業プロセスの見える化」は、ターゲットの選定やアプローチから成約・アフターフォローまでの各過程を明確にして、誰でも分かるようにフローを情報共有することです。
営業プロセスの見える化のカギは、課題の特定にあります。営業プロセスの各過程を分解して課題がある箇所を特定することで、具体的な改善策を導き出せるでしょう。
やみくもに「とにかく営業成績を上げよう!」と指示をするよりも、「〇〇の段階に課題があるから、△△してみよう」と具体的な方策を支持する方が、実際の行動につながるのではないでしょうか。課題を正確に特定するには、営業プロセスを見える化しておく必要があるのです。
営業プロセスを見える化させるメリット
営業プロセスを見える化しておく最大のメリットは、成果につながることです。その成果を出すために必要ないくつかの要素にも、営業プロセスの見える化は効果的に働きます。
営業プロセスのブラッシュアップに役立つ
営業プロセスを見える化すると、全体の進捗状況や営業担当者の行動を把握できます。「営業活動が成果につながらない」と感じていても、どこに課題があるのか分からず対処できないこともあるのではないでしょうか。そのような場合にも、営業プロセスの見える化は効果的です。
営業プロセスを見える化する際は、プロセスごとに「商談中の提案内容によって各営業員のスキルに課題がある」「提案内容がパターン化しており顧客課題にあってない」といった明確な課題と行動を示す必要があります。その結果、各営業担当者の課題や全体のボトルネックが明確になり、必要な改善策を早期に構築できるでしょう。
また、営業プロセスの見える化により優秀な営業担当者のノウハウが共有され、組織全体の底上げにつながります。さらに、営業担当者同士のフィードバックやアドバイスにより、営業プロセス自体のブラッシュアップも期待できるのではないでしょうか。
営業部内の意識統一や人材育成にも活用ができる
営業プロセスを見える化することにより、業務に関する解釈や理解の食い違いの減少が期待できます。営業プロセスに関する解釈が誤っていて成果が出ていなかった場合は、見える化することにより改善され、成果につながる可能性もあるのです。
また、各営業担当者が同じ営業プロセスに沿って営業活動することで、問題が発生した場合の対処法をアドバイスしたり、悩みを共有して解決することもできるでしょう。
人材育成の面でも大きな効果を発揮します。営業担当者の変更や新規採用などの人材育成の際、営業プロセスが明確になっていないと、その担当した上司や指導担当者の力量や評価に頼らざるを得ません。その場合、指導内容にバラつきが起こり、思ったようなスピードで教育や育成が進まないことも考えられます。
営業プロセスの見える化により、担当者変更の引継ぎもスムーズに進み、誰が指導をしても同じレベルでの人材育成や評価しやすくなるが可能になるでしょう。
営業プロセスの見える化の手法
営業プロセスの見える化は、ある程度決まった手法に沿って行います。具体的な手法を確認して、成果につながる営業プロセスの見える化を実行しましょう。
現状の営業方法と目標を明確にする
・KGIを設定する
営業プロセスの見える化を行う際は、まず「KGI(Key Goal Indicator)」を明確にすることが大切です。KGIとは「重要目標達成指標」とも呼ばれ、最終的な目標の達成度を見る指標として使われます。目標が達成しているかどうかの判断基準となるため、具体的な数値を設定します。売上高や成約件数、利益率などがKGIとして設定されることが多いでしょう。
・SMARTを意識してKPIを設定する
KGIを明確にしたら、次に「KPI(Key Performance Indicator)」を設定します。KPIとは「重要業績評価指針」とも呼ばれ、KGI達成のために設定する中間指標のことです。目標を達成するためには、まずKGIを設定して、達成するための過程を見るための指標としてKPIを設定します。
KGIとKPIは、目標達成のためにはどちらも重要な指標です。まず、最終的なゴールとしてKGIを設定し、次にゴールにたどり着くまでの細かい指標としてKPIを設定します。それにより、目標達成までの過程が明確になります。
KPIの設定に欠かせないのが、「SMART」というフレームワーク。以下の5項目から成りたち、それぞれの頭文字をとってSMARTと呼ばれています。
- Specific(具体的である) 「売上目標○○万円達成」
- Measurable(測定可能である
な) 「失注件数を○○件(○○%)以下にする」 - Achievable(達成可能である
な) 「事業部目標○○件」→「個人目標○○件」 - Time-bound(目標達成までの期限がある) 「毎月○○件」「〜○○月○○日までに○○件」
SMARTの内容に沿ってKPIを設定し、目標とそれを達成するための具体的行動を結びつけることが重要です。
受注までのプロセスを分解する
受注に至るまでの営業プロセスを、細かく分解してみましょう。例えば、ターゲットの設定や見込み客リストの選定、アプローチといった初期段階のプロセスから、商談以降の提案活動から契約又は失注するまでの営業活動を分解します。
各プロセスを明確にすることで、どの部分に課題があるのかが具体的になり、ピンポイントで改善策を打つことができるでしょう。
目標の売上高から逆算して、それぞれのプロセスで具体的な数値目標を設定します。その上で、目標達成に向けてプロセスごとに必要な行動を具体化することが大切です。
分解した営業プロセスからフロー図の作成や標準化を行う
分解した受注までのプロセスを組み立てながらフロー図を作成して、営業プロセスの手順を明確にします。フロー図の作成では、最初に大まかなプロセスをフロー図に落とし込み、次にプロセスごとに細かい要素を入れていくと良いでしょう。
具体的な営業活動がフロー図として明確にされていることで、入社したばかりの営業担当者も早期にスキルを身に付けることが可能ではないでしょうか。
フロー図を元にして、営業プロセスを組織全体で標準化することが大切です。営業プロセスの標準化は、営業担当者全体のスキルの底上げにつながるだけでなく、人材育成においても効果的な活用が見込めます。そのため、営業プロセスはシンプルかつ具体的である必要があります。
営業プロセスでの行動は、誰が見ても同じ理解をする必要があります。しかし、文書で簡単に作られたフロー図では、理解の内容に相違が出る懸念も。そのようなことを避けるためには、具体的な表現をするとともに、標準化の過程で動画を活用することも効果的です。
営業プロセス「見える化」の注意点
営業プロセスの見える化は、多くのメリットがある一方でいくつかの注意点もあります。組織や営業担当者側に偏ったプロセスではなく、客観的な視点を持って営業プロセスの見える化をする必要があるでしょう。
顧客の購買プロセスも考慮する
営業プロセスの具体的な行動を落とし込むとき、営業担当者側の視点のみにならないよう注意が必要です。営業担当者側だけの視点で作成してしまうと、顧客には一方的な印象を与えかねません。営業担当者側だけでなく、顧客側の購買プロセスと照らし合わせて作成することが大切でしょう。
営業プロセスを見える化することで、誰もが効率的に成約に結びつく業務ができるようになります。一方で、顧客対応にはイレギュラーな対応はつきものです。営業プロセスには、ある程度柔軟性を持たせておく必要があるでしょう。
フロー図は微調整が必要
営業プロセスのフロー図に沿って営業活動をし、その結果を振り返ると良いでしょう。振り返りのときにおすすめのフレームワークが「KPT」。KEEP(よかったこと)・PROBLEM(問題点)・TRY(次に試すこと)という3つの言葉の頭文字を取ったものです。営業プロセスについて3つの要素を精査することで、問題点があれば浮き彫りになります。
問題点を明確にし、次に打つべき方策を決めたら、次回の営業活動時に実行してみます。その結果をまたKPTに沿って精査して、問題点がなければ新たなフロー図に加えるという流れです。フロー図を変更する際は、変更となった経緯や背景とともに、具体的な行動に関して組織内で周知徹底することが大切です。
習熟度によって適したマネジメントを
営業プロセスの見える化は、誰もが分かりやすいものにしてあることが前提ですが、各営業担当者の習熟度に適したマネジメントが必要です。営業担当者のスキルに応じて、フロー図のみでの対応が困難である場合は細かい指示を出し、反対に高い能力のある営業担当者には営業プロセスの構築や振り返りなどの仕組み作りやプロセスを管理するツールを導入するといった取り組みをするのも良いでしょう。
まとめ
営業プロセスの見える化が成功すれば組織全体の営業力の底上げになり、結果として営業成績のアップや売上達成につながります。営業プロセスを、各個人の手腕や力量に任せたままにするのではなく、標準化をすることによりそれぞれの良い面が反映されたレベルの高い営業プロセスの構築が可能となるでしょう。また、営業プロセスを組織全体で共有することで、急な配置転換や新人教育の場でも効果的に利用できます。成果につながる営業プロセスの見える化に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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