営業組織の成績アップを図る上で欠かせないことの一つが、「営業プロセスを可視化し、問題点を発見して改善につなげること」です。営業職は、会社の売上を作る重要なポジションです。会社が儲かるかどうかを左右する役割を果たすため、多くの企業で花形ポジションにあるといっても過言ではありません。それだけに、営業成績を向上させることは企業にとって最重要課題です。
本記事では、営業プロセスを可視化して見直すためのポイントについて詳しく解説します。
目次
営業プロセスとは?一般的な進め方
営業プロセスとは、「アポ取り」「訪問」「情報提供」「ヒアリング」「提案」「クロージング」など、営業活動の各ステップのことを指します。売上目標を達成するためには、営業プロセスを適切に管理し、どこに問題点があるか突き止めることが重要です。
プロセスを細分化し、どの部分がボトルネックになっているのか明らかにすることで、具体策を協議するステップに進めます。例えば「アポ取りの段階で、十分なアポイント数を獲得できていない」などです。
顧客のリストアップと精査
提案活動を始める前に、「どの顧客にアプローチするか」をリストアップし、精査する必要があります。
まず、見込み顧客や既存顧客のリストを作成します。この時点で、リストアップした顧客が営業相手として適切かどうかをできれば一つ一つ全て確認してください。なぜかと言うと、営業対象は多ければ良いわけではなく、売上見込みの薄い相手にアプローチするのは、結果的に見込みが薄く制約につながらないなどのリソースの無駄となりかねないためです。
リストを整理したら、電話やメールなどで営業活動を行い、アポイントの獲得を狙います。
アポイントの獲得
特定の見込み顧客に絞ったリストへの電話やメールなどでアポイントを獲得できてはじめて、実際の訪問やオンラインでの商談につながります。アポイントを獲得できていない相手に対して突然訪問するのは失礼であり、クレームに発展しかねないため、まずは事前のヒアリングやアポイント獲得をした上で営業担当者へ引き継ぐなどの対応が好ましいでしょう。
アポイントを獲得できるかどうかは、営業プロセスにおける最初の関門です。アポイントの獲得は以降の訪問や提案につなげられないため、「アポイントの獲得率」を高めるために様々な工夫する必要があるでしょう。
アポイント獲得率が低い場合は、電話営業のトークスクリプトを見直したり、メールの反応率を高めるために内容のブラッシュアップを行ったり、そもそものアプローチしている顧客リストを精査、することが必要になります。
顧客のニーズを把握
アポイントを獲得できた顧客に対して、実際に訪問します。1回目の訪問時にすぐに売り込みをかけるよりも、予めアポイントを獲得した時の情報を元にまずは相手のニーズをヒアリングすることに努め、次回以降の訪問で相手が求める商品・サービスの提案につなげることが大切です。顧客からすれば、最初に接触した方が電話やメールであれ、認識しているケースが多いので、同じことをヒアリングしないように注意しましょう。
相手がどのようなことに困っているのか、何を必要としているのかなど、必要な情報をしっかりと収集し、相手のニーズに適合した有意義な商談ができるよう準備しなければなりません。
商談・契約
相手のニーズに合った商品・サービスを提供できると判断した場合は、次回のアポイントを提案します。相手の承諾を得られたら、提案書・見積書を作成した上で商談に臨みましょう。
商談に持ち込もうとすると、相手によっては「社内で検討します」といって、はっきりとした返事を渋られ、失注するケースが多く見受けられます。
そこで、相手に対してアポイント獲得時にヒアリングした情報などを元に事前にヒアリング内容を準備することで「このような課題はありませんか」「懸念されている点はどのような部分でしょうか?」などと相手が話しやすいように尋ねて、相手が不安に感じているポイントをフォローするなど、マイナスとなる要素は徹底的に払拭しておく必要があるでしょう。
アフターフォロー
無事に商談がうまくいき、契約が取れてもそこで終わりではありません。その後も丁寧なアフターフォローを行い、顧客の満足度を高めることが大切です。
一般的な営業担当者であれば、リードの獲得時点から受注するまでの売上に責任を持ち、契約後はカスタマー部門に任せる流れになりますが、継続的な取引や収益を生み出すための協力も必要です。
顧客満足度を高めることは、クレームの発生を防ぐ効果や自社の評判を高める効果、さらには新たな商品・サービス契約、見込み顧客の紹介などにもつながるため非常に重要です。
アフターフォローには、ネガティブな結果を防ぐ施策としてだけではなく、「再契約や見込み顧客の獲得(アップセル)」など「顧客満足度アップや売上を生み出す施策」としての効果も期待できるのです。
営業プロセスを管理して得られるメリット
営業プロセスを管理することによって、各営業担当者毎に進めている案件進捗状況や受注見込みを可視化することができ、「営業活動のどの部分に課題があるのか」を把握し、適切な対策で売上アップにつなげることが可能です。
重要なのは「目標を達成するためにどこを改善し、どのような施策を立てて数字を上げていくのか」です。単に営業担当者の手間や時間などといったリソースをさらに投入して解決する物理的な対応に終始することは避けなければなりません。
営業プロセスを分解して分析し、具体的にどの部分に問題があるかを明らかにした上で、「このプロセスに課題があるから、具体的にこのような点を改善してほしい」と具体的に指示されるほうが、部下の立場からも納得して改善していくことが可能です。
営業プロセスの見直しで忘れてはいけないポイント
営業プロセスを見直す際の注意点は以下の3点です。
営業パターンを「平準化」する
標準化とは、営業の営業プロセスを可視化し、より成約率の高い再現性のある営業活動のプロセスを仕組み化することで、これまでは成果を上げている営業担当者に依存していた営業ノウハウを組織全体に広め、組織全体の営業力の底上げすることによって、営業活動の生産性のある業務効率化だけでなく属人化の防止やボトルネックの課題が把握しやすくなり、結果として組織全体の売上アップにつながります。
営業プロセスの可視化と成果を上げやすいケースを基準に平準化することによって、限られた時間や営業リソースの中で成約率を上げるためにも、このような営業活動を効率化させることが重要とされています。
細分化しすぎない
営業プロセスは、顧客と初回接触してから受注するまでの流れを誰でもわかりやすく切り分けて整理することが大事です。細分化しすぎると、プロセスが複雑になりすぎて、そのプロセス毎の対応や管理の工数も増えるため自社の営業活動に合わせて必要最低限にすると良いでしょう。
営業プロセスの可視化例
1)一般的なプロセス
「初回訪問」(見積提出)→「クロージング」(受注)
2)訪問をせずにクロージングから受注までのプロセス
「初回電話」(資料送付)→「二次電話によるフォロー」→「クロージング」(受注)
3)ロープレなど提案準備も含めた受注までのプロセス
「初回訪問」(ニーズ把握)→「プレ提案」→「本提案」(見積提出)→「クロージング」(受注)
上記のプロセス例のように自社の営業活動を可視化することによって、どこにボトルネックがあるか把握しやすくなるなどのメリットもあります。
具体的な行動指針を明示する
営業プロセスの細分化を行った後は、各プロセス毎に具体的なアクションをわかりやすく明示すると良いでしょう。例えば、初回訪問時点で顧客への本提案や見積もりの内容にズレがあるなどが無いように予め必ず「ヒアリングすべき項目を決めておく」といった改善がしやすくなります。
また、仕組みかするだけでなく営業プロセスの中で重要な顧客とのやりとりの前後に各営業担当者へのサポートやロープレなどの成約率を上げるための取り組みも重要となります。
営業プロセスや各営業活動におけるアクションを明確にすることによって、課題のボトルネックが把握しやすくなり、改善や成約率を上げるための具体的なアクションを明示しやすくなります。
営業プロセスを見える化するためのポイント
営業プロセスを見える化するには、会社は組織、場合によっては業界特有のプロセスも考慮する必要があるケースもあるため、一般的なプロセスや他社の改善事例を参考にしづらいこともありますが、基本的な営業活動におけるプロセスは殆ど同じケースが多いため、参考にしながら自社にあったプロセスを考えると良いでしょう。
現状の課題を把握する
営業プロセス見える化するためには、もっともボトルネックとなっている課題はどこかを把握することが大事です。また、営業活動の体制が事業部や地方などのエリアによって異なる場合、各事業部毎の課題やそのエリアの商習慣や営業担当者の個性も考慮する必要があると考えられます。
各主要な成果を上げている営業担当者や役職者に課題のヒアリングを行う場合、予め想定している課題のリストアップなどもしておくと良いでしょう。企業規模や事業部間の連携が難しく、ヒアリングがしづらい場合、組織全体の営業改革の取り組みとして専門部署を立ち上げた上で協力してもらうなど取り組みも有効です。
課題が把握できていない場合、まずできる範囲で組織内の課題のリストアップやプロセスを整理して検証してみるなどの実績を作ることに着手してみるのも良いでしょう。
目標や目的を明確にする
営業活動のプロセス毎の課題が把握できたら、組織全体で目指すべき定量的な目標と各個人別の目標(行動のKPI)を決めることによって、各営業担当者が何を目指して取り組めば良いかが明確になります。また定性的な観点でも自社の顧客課題でどのような課題・ニーズを解決するための活動の目標を定めることもモチベーションアップのきっかけにもなります。
営業プロセス毎に各営業担当者の役割や範囲に合わせて適切な行動目標を設定することで、組織としてはボトルネックが見つけやすい、各営業担当者としてもどの営業活動のプロセスを改善したら売上アップや評価につながるかがわかりやすくなります。
はじめから上手くいくケースは稀でも、営業プロセス毎の課題を把握し、繰り返しどう改善されたかを振り返ることによって、組織全体の効率アップのきっかけになります。
現状の工程を見直し不要なものを減らす削除
自社にとって最適だと思われる営業プロセスが決まったら、さらに実際に各営業担当者が行っている業務の洗い出しも行います。本来行うべき業務にどのくらいの時間を当てられているかの現状把握と合わせて、直接的な売上につながらない間接的な業務がどれくらいあり、不要な業務プロセスの改善をしましょう。
また、間接な業務でも全体に共有した方が良いような取り組みもある可能性があるので、一律に不要にするよりは良い取り組みは残し、本来の業務ではないプロセスのものはなるべく減らすようにすることが大切です。
営業プロセスの再構築と人材の配置
これまで取り組んだ営業プロセスに合わせて、基本的には顧客からのお問い合わせから受注までは各営業担当者が責任を持って行いますが、例えば案件の難易度や顧客によっても相性などの様々な適材適所の営業担当者へ案件を担当してもらうなどの対応が必要になる場合もあります。必要に応じて上司に同席してもらい、受注率のアップにつなげるなどの営業体制の仕組み化するなど、組織として取り組むことが重要だと考えられます。
繰り返し振り返りや改善を行う
一度営業プロセスを見直しても必ずしも成果が出るとは限りません。課題に対して改善を行った結果、「どう変わったか」など一定の期間で振り返り、もし課題があれば「改善してまた一定期間は再度実施してみる」といった取り組みを繰り返して、自社にとって一番最適だと思われる営業プロセスになるようにすること重要です。
理想的な営業プロセスを作ったつもりでも、実際に運用してみると思わぬ結果が生じてしまい、改善が必要となるポイントが出てくることは少なくありません。修正・改善を積み重ねていくことで、理想的なプロセスに近づけることができると考えられます。
完成させた営業プロセスを定着させる方法
完成させた営業プロセスの効果を発揮するためには、現場で定着させる取り組みが必要です。定着させる方法について具体的に見ていきましょう。
短期的視点ではなく中長期的なマネジメントを心がける
目先の目標だけを優先するよりも、中長期的な目線で営業活動を推進していくことが大切です。短期的視点に基づいた営業活動ばかりしていると、将来の収益が先細りになりかねません。
例えば、「アポイント数を最大化する」ことにこだわるあまり、強引にでもアポイントを獲得するような施策を行ってしまうと、クレームが発生して自社の評判が悪化してしまい、以降アポイントが取れなくなるといった事態も考えられるでしょう。
営業プロセスの可視化や改善は、中長期的な視点を持ちつつも目先の目標と両立することが欠かせません。また、「中長期的な目標を重視する」といった姿勢を部下たちに求めるためには、まずは管理者・営業マネージャーが明確な行動指針を示す必要があります。また数値を重視する営業担当者には過去の営業力や実績なども踏まえて説明しながら、双方に納得感のある行動指針を示す必要があるでしょう。
スキルや知識を平準化する
完成させた営業プロセスに対して各営業担当者が上手く順応できるよう、平準化された研修やトレーニングを定期的に行い、営業スキルアップや情報共有のムラをなくしていくことも大切です。情報共有も各営業担当が保有する営業ノウハウや顧客情報など共有することによって、「一人の優秀な営業担当者」だけに頼る営業組織よりも、「複数の優秀な営業担当者」に支えられた組織のほうが組織力が強く、より効率的に生産性のある売上を生み出せます。
営業組織を強くし、売上を生み出すためにも、営業プロセスの中で必ず押さえておくべき営業スキルや顧客へのヒアリング事項、商談時のノウハウなど、実際の商談で経験を積む前に研修やロールプレインなど予め予備知識や経験として身につけておくことで、スキルや知識の平準化が図れます。
まとめ
営業プロセスとは、営業活動のフローを複数のプロセスに分割した上で、各プロセスのどこの部分に課題があるのか、何を改善するのかといった点を明らかにし、営業活動でボトルネックとなっている課題の早期発見や各営業員の活動の効率化や組織力の強化をするために取り組むのが一般的な考え方です。
営業プロセスを適切に管理できれば、「どこの部分を改善すれば営業目標を達成できるのか」といった具体的な議論や改善に向けた取り組みと振り返りをすることによって組織力の強化がが可能です。
営業プロセスを適切に管理するためには、自社のビジネスにおける課題を正確に把握し、「営業フローのどこのプロセスが重要な役割を果たしているのか」を明確にしなければなりません。そして、一度完成させた営業プロセスについても定期的に改善を加え、より効果的な営業プロセスを作り上げていくことで営業力の強化につながるでしょう。
営業企画 関連記事
関連記事
この記事をシェアする