強い営業組織の作り方とは?特徴や改革のポイント

営業部門は、企業の存続にとって最も重要な「売上を立てる」「利益を出す」部分を担う最重要な部署です。そのため、強い営業組織を作り、個々の営業担当者の能力だけに依存せずチームで力を発揮できる体制を構築することは非常に重要だと言えるでしょう。

この記事では、営業組織の中で生じやすい課題を挙げながら、どうすれば強い営業組織を作れるのか詳しく解説します。

強い営業組織を立ち上げる必要性とは?

営業担当者は、例えば見込み顧客から契約をとってくる、あるいは売上を獲得してくるなど、企業の根幹的役割を担います。売上を立てなければ企業経営を継続することはできません。そのため、企業にとって「強い営業組織」を立ち上げることは必要不可欠だと言えるでしょう。

では、強い営業組織とは一体どのようなものなのでしょうか。ここでは、強い営業組織の特徴と必要性について解説します。

強い営業組織とはどのような組織なのか

強い営業組織とは、高い営業利益を継続して出せる組織であると言っても過言ではありません。

具体的には、以下の特徴が挙げられます。

  • 効率的な営業ができる:最小限の経費で最大限の営業利益を獲得できる
  • チームワークが良い:情報共有が速く、お互いに助け合いながら利益を生み出せる
  • 能力が偏っていない・営業力が一人の営業担当者に偏っておらず、全員のスキルが高い

取り組みとして、営業プロセスの可視化、明確な目標、コミュニケーションの円滑化、リーダーの存在などが重要になります。

なぜ強い営業組織が必要なのか

「株式会社UKABU」が全国の経営者・営業職300名を対象に実施した「営業育成に関する実態調査2022」によると、「現在の営業組織で課題だと感じるものはどれですか?」という問いに対し、「営業の育成(33.0%)」が最も高い結果でした。次いで「営業組織の売り方開発」「モチーベションマネジメント」、「営業準備の効率化」が上位にランクインしています。

グラフ

中程度の精度で自動的に生成された説明

【引用】33.0%の営業組織で営業育成が課題と認識。「営業育成に関する実態調査 2022」を公開。|PRTIMES

これらはすべて売上につながる課題であり、「高い営業利益を継続して出せる」強い営業組織を作ることが、企業にとっての喫緊の課題だと言えるでしょう。

どんなに良い商品があっても、市場で勝ち続けられるとは限りません。強い営業組織があるからこそ、さまざまなアプローチによって商品を販売し、安定的に売上を出し続けられるのです。

営業組織内で発生しやすい課題

では、どのようにして営業組織を強くすれば良いのでしょうか。ここで重要な視点は「営業組織の中で発生しやすい課題」を具体的に認識することです。その上で弱点を克服することは、営業組織を強化するために不可欠となります。

先述した「営業育成に関する実態調査2022」の集計結果にもつながる、営業組織内で発生しやすい課題の代表例は以下の通りです。

仕事ができる人とできない人で分裂する

少数のエース社員に成果が偏っている状況は、あまり好ましくありません。営業部門を組織的に運営するのであれば、一部個人の能力だけに頼るのではなく、営業担当者が皆ある程度以上の成果を挙げられるように「仕組み化」することが大切です。

組織の成果がこうした「仕組み」でなく「個人の能力」に依存してしまう状況を、「属人化」と呼びます。属人化が進んでしまうと、以下のような問題が発生してしまいかねません。

  • 一部の優秀なエース社員が不在の際、誰もトラブルに対処できない
  • 優秀な社員の退職をきっかけに、組織全体の業績が悪化する
  • 営業組織全体での業績の見込みを立てづらい。
  • エース社員が上長の場合、部下も同じように属人的なスキルになりやすい。

こうした問題を防ぐためにも、属人化から脱し、仕事ができる人・できない人で分裂する事態を避けなければなりません。

営業以外の仕事で時間がかかる

営業部門に一番期待されることは「売上を立てる」ことであるにもかかわらず、売上に直結する業務以外の補助的な「売上に直結しない業務」に時間がかかってしまうのは、非効率的です。例えば、書類の作成やチェック、提案資料の作成・準備、交通費・経費など社内の書類提出、契約書・請求書の作成などが挙げられます。

補助的な作業で時間を取られてしまい、肝心の「売上を立てる」という営業のコア業務に支障が生じてしまう状況は解消しなければなりません。

営業担当者が今何をしているのか把握しづらい

営業担当者は他の部署の社員に比べて外出が多く、「各営業担当者がどのように動いているのか」「どのくらいの案件や業務を抱えているのか」といった点を管理職が把握しづらいのが現状です。

組織全体としての効率を考える上では、各営業担当者の一日の仕事内容や、抱えている案件の進捗状況をブラックボックス化せず、本人に都度確認しなくても管理職、あるいは営業組織全体で即座に把握できる体制を作っておきたいところです。

人材育成が難しい

新人の営業担当者を成長させるために、営業成績の優秀な営業担当者を指導者としてつけることは効率的な方法です。ところが、このような優秀な営業担当者は自身の見込み顧客を追うことで忙しいため、新人育成の時間を確保することが困難なことが少なくありません。また各優秀な社員をリーダーとして部下の指導に当たると、「各指導者毎のスキルやノウハウに依存しやすい」ため、属人化しやすい傾向があります。

目の前の業務を確実に進めることと、将来を担う人材の育成をバランス良く進めることは意外と難しく、多くの営業組織にとっての課題なのです。

どうすれば強い営業組織を作れる?

強い営業組織を作るためには、優れた組織が共通して採用している「仕組み」を導入することが一番の近道です。具体的な方法について見ていきましょう。

今起きている課題を洗い出し分析する

まずは、営業組織の課題を洗い出し、どのようにして克服するかを考えることが先決です。ポイントは、管理される側だけを対象とするのではなく、管理する側の上司・マネージャーや組織全体の課題も対象とし、改善すべき点を考えることです。必ずしも営業担当者のみに課題の原因があるとは限りません。

まずは管理する側や主要な売上の成果を上げている営業担当者に課題のヒアリングをするなど、根幹的な課題を洗い出すと良いでしょう。また営業拠点や事業所毎に営業手法が異なる場合、そのエリア毎の特性も加味しながら課題のヒアリングや分析をするようにしましょう。

課題をヒアリングする内容の例として、

・営業活動全体の流れや取り組んでいる内容(活動状況の把握)
・担当している範囲(非効率な業務や営業活動に関わっている工数の把握)
・商談などの提案時の課題や成約率に関わる課題(提案力や成約率の課題の把握)
・営業担当者間や部下にノウハウや顧客情報の共有を行っているか。(協調や属人化の把握)
・モチベーションの状態(評価制度や組織上の課題がないか)
・若手や部下への指導やコミュニケーションが行われているか。(精神論やおざなりになっていないか)

などが考えられます。

組織的な改善となると、課題の洗い出しだけでも中長期的な取り組みになるため、営業DXなどにも見られる営業推進の専門組織を立ち上げるなどして、各課題のヒアリングや分析に取り組むのも良いでしょう。

目標と進捗管理を徹底する

抽象的な目標ではなく、誰から見ても客観的でわかりやすい数値目標があってこそ、営業担当者は「自分が・組織が何をすべきか」を意識して活動できます。また、営業活動の進捗管理においても売上という最終結果だけでなく、「訪問数」など、売上に至るまでの行動目標を数値化することで、行動の最適化につなげることが可能です。

最終目標を達成するための行動目標を数値化するのに使えるのが、「KGI」(重要目標達成指標)と「KPI」(重要業績評価指標)という考え方です。KGIは最終目標であり、KPIは行動目標に該当します。最終目標だけでなく、行動目標を数値化することにより進捗管理が容易になるのです。

全体の目標だけでなく、「各営業担当者毎のKPI(行動目標)を定めて進捗管理を行う」ことにって営業活動の効率化や組織の強化につながります。また必要に応じてSFAなどの営業活動支援や業務効率化するITツールの導入を自社の営業活動のプロセスに合わせて検討するのも良いでしょう。

営業担当者が納得する評価を行う

営業担当者がモチベーションを高く維持し、日々の業務へ取り組めるためには、納得できるような公平な評価が不可欠です。抽象的な評価項目だけでは、営業担当者に納得してもらうことは難しいかもしれません。

基準がわかりやすい例として、

・短期的、中長期的な目標や営業活動の成果
・顧客ニーズに応えるための幅広い職務上の知識、経験
・部下への指導できる力やチームが円滑に業務を進めるための協調力
・結果を出すために取り組んでいる姿勢

といったことなどが考えられます。

評価基準となる営業実績の項目としての例としては、以下が考えられます。

・商談金額の大きさ、大口顧客かどうか
・リードや商談の獲得件数、またそれに伴った活動数
・ルートセールスや既存顧客向け営業活動の場合、リピート率
・営業活動の効率化や仕組み化への取り組み
・コストダウンや利益率の改善

自社の営業活動にあった各営業担当者が納得する項目にすると良いでしょう。

社内の連携強化のために情報共有を徹底する

社内の誰かが業務上の問題を抱えている際に、他のメンバーの助言によって解決できるケースも少なくありません。社内の連携を強化し、情報共有を促す仕組みを作ることによって業務効率アップが期待できるでしょう。

情報共有の取り組みの例として、

・営業数値の定期報告のMTGだけでなく、成約事例のノウハウや顧客情報のシェアなどを行う。
・提案資料や商談メモ、ヒアリング内容の共有をする。
・クレームなどの問題発生したケースの対応方法を共有する。
・業界内での市場変化や競合情報を共有する。
・共有する社内情報を社内Wikiや社内SNSといった簡単にどこからでも情報が見れるようにする。

などが挙げられます。

最近では、営業ノウハウや情報を共有するためのITツールも多くあるため、必要に応じて利用の検討をし、どこからでも簡単に情報を見ることがありいつでも見れる状態にすると良いでしょう。

人材育成に力を入れる 

強い営業組織を作るためには「一部のエース社員」を育成するのではなく、「全員が強い組織」を作る必要があります。

人材育成にあたっては、他のメンバーからもたらされる成功事例の共有なども重要です。営業のノウハウを共有したり、勉強会を開いたりするなどの仕組みを構築し、特に組織に入ったばかりの新人営業担当者に対して手厚く行うことが大切だと言えるでしょう。

人材育成の取り組みの例として、

・若手や部下向けに業界知識や顧客特性などの営業活動のスキルアップの勉強会を行う。
・営業活動でのロールプレイングや事前準備など、提案力のスキルアップを行う。
・営業活動の振り返りやフィードバックを定期的に実施する
・Q&Aを充実させる

などが考えられます。

定期的に人材育成を実施し、スキルアップや成果にどのくらい繋がったかも繰り返し振り返ることで、教育における課題の改善や営業組織の強化につながるでしょう。

ITツールの導入も効果的な手段

社会全体でDX推進がテーマとなる中、営業組織の強化においてもITツールの導入は効果的な手段です。ここでは、営業組織の強化につながる代表的なITツールの種類について解説します。

営業活動の管理ができるSFA

SFAは「Sales Force Automation」の略であり、「営業支援ツール」と呼ばれます。営業活動全体のプロセスを見える化し、営業活動の効率化や標準化を行うことができます。

例えば、営業担当者の案件毎の見込み顧客の提案状況の管理、提案にかかっている期間や成約や失注したときの提案内容や活動メモを入れておくことによって課題や改善がしやすくなります。

また、担当者が不在や異動・退職に伴う顧客情報や提案状態の引継ぎ営業担当者別、商材別、案件別などカスタマイズして様々なレポートを作成することができるため、営業活動の進捗状況の把握や売上予測を確認できるため、案件毎の優先度を変更したり、戦略的な営業活動の取り組みがしやすくなります。

導入するには、自社の営業活動にあった業務プロセス設計に多大なITコストがかかりますが、最近では現在進行中の営業案件の活動の効率化に特化したツールや様々な顧客管理システムと連携できる低コストで利用できるツールもありますので、自社の課題を解決するのに適したITツールを検討すると良いでしょう。

顧客管理にはCRM

CRMは「Customer Relationship Management」の略であり、「顧客管理ツール」と呼ばれます。顧客に関する連絡先(電話番号や連絡先)、所属部門や役職、業種や従業員数、購買履歴などの情報をデータを一元管理することができます。また、一般ユーザーが顧客の場合、性別、年齢、職業、リピートなどの購買履歴にも利用されるケースが一般的です。

顧客毎の問い合わせやクレームの履歴、メール配信なども行うことができるものも多く、顧客数が多いほど膨大なデータの管理がしやすくなり顧客との良好な関係性保つためのコミュニケーションもしやすくなります。

SFAとの大きな違いは、SFAは営業活動における見込み顧客の案件管理や効率化が目的に対して、CRMは主に顧客データの管理がメインになります。最近ではSFAとCRMが合わさった機能もありますが、自社に必要などちらかの機能だけ備わっているITツールもありますが、自社の営業活動や課題にあったものを検討すると良いでしょう。

効率的な営業活動ができるMA

MAは「Marketing Automation」の略であり、効率的な顧客管理と営業リスト毎に適切な顧客アプローチをITツールを利用して行い、見込み顧客を作る営業活動の仕組み化をつくること。日本では営業組織というよりもマーケティング組織で使われることが多く、顧客開拓のや商談創出をするために見込み顧客のセグメントや検討状態に合わせて配信するリストを作成し、リスト毎の顧客に最適な様々なコンテンツをメールで配信することで、商談や契約を創出するために活用します。これをリードナーチャリングと言います。

MAツールは、例えばあるコンテンツを読んで顧客の課題・ニーズを解決できるようなホワイトペーパーやサービス資料をダウンロードした検討の温度感が上がった段階で営業担当者へリストや顧客情報を引き継ぐという運用方法が一般的な使われ方になります。

仕組みを構築するまでにSFAやCRMツールとの顧客リストの連携やメール配信するコンテンツの用意、リードを獲得した段階で営業担当者に自動でリスト連携するなど、仕組みの構築にかけるITコストはかかりますが、マーケティングから営業活動を効率化し、営業生産性の最大化が可能です。

まとめ

営業組織は、会社にとって最も大切な活動である「売上を立てる」「利益を出す」という役割を担っている組織です。営業組織を強化することは、会社の売上自体を左右すると言っても過言ではなく、重点的に取り組む必要があります。少数の優秀な営業担当者に依存するのではなく、チームで結果を出せる仕組みを作らなくてはなりません。

また、DXによる業務効率化が叫ばれる昨今営業活動の改善や生産性をアップするための様々な推進や改善の取り組みが行われており、ITツールも進化してきています。これらの強い営業組織を作るためのITツールの活用も選択肢の一つとして考慮に入れると良いでしょう。

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