営業担当者の人材育成を強化!改革が必要な理由と手段

営業担当者の能力を最大限に引き出すためには、自発的な成長に期待するだけではなく、組織自体が計画性を持って積極的に育成する必要があります。

ただし、「人材を育てることの大切さ」は意識していても、実際に的確な人材育成を行うことは簡単ではなく、「どうしたら良い人材に育つのか」と頭を悩ませている企業の方も少なくありません。

本記事では、人材育成の強化が叫ばれている背景や人材育成における課題、優秀な人材を育てるための具体的なポイントなどについて解説します。

営業の人材育成強化が必要な背景とは?

営業人材の育成強化の必要性は、企業における重要な課題として以前から認識されてきましたが、近年、以前にも増して強い関心を集めるようになりつつあります。その背景について詳しく見ていきましょう。

営業形式の変化

近年、新型コロナウイルス感染症の影響などもあり急速に普及してきたのが、営業の「非対面化」です。従来の対面での商談から、Zoomなどの会議用ツールを使って営業活動を行う、新たな営業手法が定着してきています。

情報共有方法の変化

従来、営業組織内における情報共有は、紙の営業日誌などに手書きで書くというアナログな手法が多く用いられてきました。しかし、近年、情報共有の方法がPCやタブレットなどの電子媒体を用いたデジタルな手法へと変化しています。

これからの時代、営業として活動する人材にとっても、このような新しい情報共有方法への変化に対応していくことが必須です。

量よりも質を重視した営業に変化

従来より、訪問数や活動量を根拠とする「やる気」を評価する体育会系のような企業は少なくありませんでした。しかし、量だけをベースに人材を評価する考え方は見直されてきており、どれだけ「質」の良い営業活動を行うかという点を重視する傾向が高まっています。

こうした量から質への変化という動きもあり、営業現場では「高い水準のアウトプットを出せる人材を育てなければならない」という意識が強くなりつつあります。そこで、「どうすれば人材一人ひとりの営業力を高められるか」模索するよう変化が見られるようになってきているのです。

営業の人材育成強化を図る際の課題

具体的に営業の人材育成を図る際に、以下のような壁にぶつかる企業は少なくありません。

  • 指導者の実力不足
  • 育成方法の属人化
  • 成長欲求の低下

それぞれの壁について具体的に見ていきましょう。

指導者の実力不足

営業組織で起こりがちな課題として、プレイヤーとしては優秀だが、リーダーや上長としては十分に能力を発揮できないことが挙げられます。

自身の営業力が高くても、マネジメント能力が足りない人材が指導者となっているために適切な指導が行えず、優秀な若手が育ちにくい状況があるのです。

育成方法の属人化

組織によっては、若手社員を育成するためのマニュアルが整備されていないこともあります。それにより、営業人材を教育・育成する現場でにおいて、リーダーや上長によって異なる「育成方法の属人化」が常態化しかねません。例えば、指導担当者自身の主観で「正しい」と考えられる手段によって部下を指導している事態が起こることが挙げられます。これでは、人材の育成方法が偏り、平準化することは難しいでしょう。

指導力は個人の能力に左右されるため、育成方法の属人化によって部下が育つスピードや、育成したい人材の質も影響を受けてしまいかねません。ある上司のもとでは優秀な営業担当者が多いが、別の上司のもとでは育っていないといった現象が起こり得るため、強い営業組織を作ることが困難になるのです。

成長欲求の低下

営業人材が高いモチベーションを維持することは容易なことではなく、特に営業未経験者の場合、その傾向は顕著です。実務に取り組む中で思うように成果を出せない、うまく商品・サービスの魅力を伝えられないといった壁にぶつかった際に、「自分は営業職に向いていない」と思い悩むことも少なくありません。

また、もともと営業に興味があった、あるいは営業経験のある人材であっても、上司から与えられた営業目標を達成できず、プレッシャーやストレスを感じてモチベーションが下がってしまうケースもあります。

こうした営業人材のモチベーションの低下は、成長欲求の低下に直結します。意欲を感じられない分野において「成長したい」という前向きな気持ちを維持することは難しいからです。営業現場における人材育成の難しさは、こうした営業という職種そのものの厳しさにも起因すると言えるでしょう。

営業活動で優秀な人材を育成する基本的な方法

営業組織において優秀な人材を育成するためには、個人に育成を任せるのではなく、組織全体で体系的なノウハウを確立することが大切です。ここでは、営業人材のモチベーションや成長意欲を高く維持し、迅速に育成していくために大切なポイントを解説します。

指導者のマネジメントスキルを高める

部下を育てるためには、指導者自身のマネジメントスキルを高めることが不可欠です。「マネジメントの父」と呼ばれた故ピーター・F・ドラッカー氏は、著書「マネジメント」の中で、以下のように述べています。

「・・・われわれは、マネジメントというものが、所有権、階級、権力から独立した存在でなければならないことを知っている。マネジメントとは、成果に対する責任に由来する客観的な機能である。」

(出典『マネジメント』 序・・・新たな挑戦)

部下が指導者から「職権」を根拠に命令を受けると、表面上は従うそぶりを見せても実行するモチベーションに限界が生まれてしまいかねません。部下に「自分の意志で動く」意識を持たせるためには、指導者が「任せる仕事が組織にとって必要であること(=成果)」を部下に理解させることが大切です。そのためには、指導力・マネジメントスキルが不可欠です。

指導力の向上とは、指導者自身が部下に任せる仕事の意義・やり方について、組織にとっての意義も踏まえて適切に説明できる能力を鍛えること。指導者のマネジメントスキルを高めるためには、「説明能力の向上」「仕事の意義を理解すること」が非常に重要なのです。

マネジメントスキルの中でも業務外で部下と適切なコミュニケーションを取って、モチベーションをあげることも重要な取り組みの一つだと考えられます。

自社への理解を深める

営業人材に不可欠な素質として、コミュニケーション能力や会話スキルと並び、「自社商品・自社サービスに対する理解」が挙げられます。自社の商品やサービスを十分に理解していない状態では、見込み顧客に自社の商品・サービスをアピールする際、説得力を欠いてしまうでしょう。

商品やサービスだけでなく、自社の歴史や競合他社との相違点などについても深く理解し、顧客に説明できるようになれば、説得力が増します。若手の営業人材にこうした知識を身につけさせるためにも、まずは指導者自身がこうした点に対して深く理解することが大切です。

ロールプレイングや研修などの事前準備

経験値を積むことによって成長が期待できることはもちろんですが、それだけを重視して新人を現場に放り込んでも成果を挙げることは難しいでしょう。基本的な営業プロセスや商談時のトークを理解していない状態では、成果が出ないだけでなく成長に個人差が生じてしまいかねません。

そのため、優秀な営業人材を育成するためには、ロールプレイング(模擬練習)や研修などを活用して、営業の事前準備を行わせることが欠かせないのです。

ロールプレイングや研修を行う場合、まずは商品・サービスの「資料準備」から始めるのが賢明です。必要な資料をそろえたら次に「商品・サービスを説明する練習」に取り組みましょう。実際に説明させてみれば、理解度を確かめることが可能です。ロールプレイングでは他の社員を相手に実際に説明させ、理解が浅い部分があれば指摘し、復習・レクチャーを行い、再度ロールプレイングを行わせるなどして段階を踏んでいきます。

資料説明がうまくできるようになったら、次は「顧客からの想定問答」を準備しましょう。予想される質問をリストアップし、「商品・サービスの成果が出た事例はあるか」「リスクにどう対処しているか」など、返答内容を準備することが大切です。

トラブルの対処法の把握

営業活動においてはさまざまなトラブル発生が想定されますが、イレギュラー性の高いトラブルを除けばある程度パターン化し、対処法を用意できます。

例えば、顧客から「強引な売り込みをかけられた」というクレームを受けることは珍しくありません。クレームを受けた場合、まず「謝罪」をしますが、その際なぜ相手が怒っているのか、その原因をしっかりと理解しなければなりません。「申し訳ございませんでした」という言葉だけでは相手に気持ちが伝わらないだけでなく、かえって怒りを増幅させてしまいかねません。

謝罪する場合は、「相手を怒らせてしまった原因となった事実」に触れた上で、「そのようなことをしてしまった配慮のなさについて後悔する姿勢を見せる」ことが基本です。そのうえで、今後の防止策を考える必要があります。こうした謝罪の方法は、社会人経験の少ない若手営業人材にとっては難しい場合もあるでしょう。そのため、クレームを受けた時の謝罪方法について、事前にシミュレーションしておくことが有効です。

また、謝罪は逆に顧客との信頼を生み出すきっかけにもなるため、信頼を得た上で適切な提案をすることで購入の検討や成約につながることもあります。

個人的な試行錯誤を組織で共有

営業人材が悩むポイントには、ある程度共通性があるケースが少なくありません。複数人に共通する悩みを解決するためには、営業人材一人ひとりが過去の営業活動から感じた反省点や改善すべきポイントについて、組織全体で情報共有できる仕組みを作ることが大切です。

ただし、一営業担当者の課題だけに偏らないようによく自社の営業活動における課題を把握しているリーダー的な担当者からの情報をベースとして、各ヒアリングなどを行うと良いでしょう。

注意すべきなのは、担当者が失敗を共有することを恐れたり、恥ずかしいと感じてしまうな雰囲気を作らないことです。失敗体験を共有することに対し、周りが否定的な態度を取らないような雰囲気を作ること、普段の行動を褒めたり否定的な態度を示さずに共有しやすい雰囲気を作るのが重要だと考えられます。

このように個人的に試行錯誤した経験を共有する体制を作り上げられれば、同じパターンの問題に悩む営業人材は減りますし、組織としても有意義なノウハウを蓄積し、営業活動の質や営業活動の効率化、営業個人のモチベーションのアップすることが可能です。

関連記事:営業活動をマニュアル化して、事業成果を高める方法はとは?

 まとめ

営業人材の育成は組織にとって不可欠ですが、近年は営業活動を取り巻く急激な環境変化への適応を迫られることも少なくありません。

営業人材育成において重要なのは、部下に対して自発的な成長だけを期待するのではなく、指導者が主体的に、体系立った指導を実践することです。指導者となる人材には、営業成績のみならず指導者としての適性が備わっていなければなりません。指導者のマネジメントスキルを高め、人材育成に活かしていくことが非常に重要です。

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