セールス・イネーブルメントを活用し営業力と組織力を強化!

イネーブルメントとは、アメリカから発祥した営業組織の強化・改善に用いられる概念です。営業部門にととまらず、人事部門やシステム開発部門などとの連携により、相乗効果を発揮できます。

本記事ではイネーブルメントを中心に、人材育成の考え方やケーススタディについて解説します。

イネーブルメントが注目されている理由

イネーブルメントとは、セールス・イネーブルメントと呼ばれることが多く、営業組織の売上・利益を最大化することを目的に、営業担当者を育成や、その仕組みづくりのプロセスを指す活動です。

セールス・イネーブルメントとは

セールス・イネーブルメント(Sales Enablement)とは、2000年代にアメリカで発祥した概念です。拡大の背景にはスマートフォンなどのモバイル端末が普及したことと、インターネット通信回線の整備があげられます。2019年までにはアメリカの大手企業でもセールス・イネーブルメントに取り組んでいます。

日本国内で注目を集めたきっかけは、新型コロナウイルス感染拡大により広まった「テレワーク」「リモートワーク」への移行です。対面からオンラインでの営業にシフトしたことから、ITツールが積極的に導入されたほか、セールス・イネーブルメントによる営業組織の改革が進められました。

従来の研修とイネーブルメントの違い

営業組織の強化を図る方法として、一般的な方法は研修です。従来の研修では、新人・中途採用者に対して基本的な営業フロー(テレアポや訪問の流れ)を教えていました。また研修の一環として、上司・先輩が部下のアポイントに同行し、内容を指導することもありました。

一方のセールス・イネーブルメントでは研修の実施自体ではなく、育成の仕組みづくりを目的とします。研修の実施がどのような成果をもたらすかをデータ化・可視化し、検証を繰り返しながら、売上・利益の最大化を目指します。また、研修の対象者は、新人・中途採用者に限らず組織全員におよぶことが特徴です。

海外ではイネーブルメントの育成対象が拡大中

セールス・イネーブルメントでは営業組織の強化・改善を狙いとしますが、他の部門にもイネーブルメントの対象は広がっています。

例えば、マーケティング部門を対象にした「マーケティング・イネーブルメント」では優秀なマーケターの育成に取り組みます。

「ピープル・イネーブルメント」では、部門で人材を区切らず、社内全体の人材育成に特化した取り組みです。

イネーブルメントは営業部門を中心にはじまりましたが、現在ではその枠を越えてマーケティング部門や人事部門といった組織全体を底上げする取り組みへと進化しています。

人事部門とイネーブルメント部門の人材育成

両部門では人材育成の範囲や目的が異なります。

イネーブルメントは専門部署を設けるのがベスト

イネーブルメントの取り組みは、営業ノウハウのマニュアル化や、ITツール導入による営業情報の管理、優秀な人材の採用強化など多岐にわたります。ITツール導入時にはシステム開発部門と、採用強化のためには人事部門と連携しながら進めることになるでしょう。

そのため営業部門内でイネーブルメントの役割を兼任するのではなく、専門部署と責任者を設置することが効果的です。専門部署のメンバー構成は、営業・人事・システム開発などの各部門から精鋭を集めるといいでしょう。どのように進めていくかを部門間で即座に話し合える体制を構築することがベストです。

各部門の精鋭を集める理由としては、イネーブルメントの取り組みにより現場の反発を受けることがあった際に、各部門のキーパーソンをそろえておくことで「あの人が言うなら」と協力を得やすくなるためです。

人事部門とイネーブルメント部門の人材育成の違い

人事部門とイネーブルメント部門では、どちらも人材育成を担うこととなります。しかし、両者の取り組みは似て非なるものです。

人事部門が受けもつ領域は、会社全体を支援するものでコンプライアンスや新人研修、新人マネージャー研修などを扱います。人事部門は、特定の部門に所属する人材育成に特化するわけではなく、全社で共通している人材面の課題に対して取り組むことが特徴です。

一方のセールス・イネーブルメント部門は営業部門固有の育成をテーマとします。あくまで、セールス・イネーブルメントの目的は営業組織での売上・利益の最大化にあるためです。

取り組む部門の業務に合わせたイネーブルメントのテーマや課題に合わせた違いを把握した上で取り組むと良いでしょう。

部門間の連携が強い組織作りにつながる

両部門を効率良く部門間の連携を行うさせることで、育成面で相乗効果を期待することができます。各部門の接点となるのが、「マネージャーの育成」です。

営業組織では部下に成果を出させるために、実務を理解しており指導力もあるマネージャーを求められるでしょう。具体的には部下へのコーチングや、目標達成のプランニングなどができるマネージャーです。人事部門では全社で部下を率い、組織を運営できるマネージャーを育成するため、リーダーシップを発揮する経験やリーダーコンピテンシー(優れた業績や働きぶりのこと)の習得などに取り組むと良いでしょう。

マネージャーの育成において各部門がうまく連動できれば、人材の層は厚くなり、強い組織を構築できます。

セールス・イネーブルメントの活用|3つのケーススタディ

Case study heading – background template for business presentation.

ケーススタディを知ることでセールス・イネーブルメントを具体的に活用するイメージをもつことができます。

営業人員の育成

効果的な育成を行っていくためには、まず営業活動に関するデータを集めることからはじまります。リード(見込み顧客)数や受注率、顧客単価といった情報に加え、営業担当者への研修内容や評価などのデータを集めることが大切です。

データの分析に基づいて、KGI(組織の最終目標)やKPI(行動目標)を設定しましょう。データを分析することで、アポイント数のKPIを達成するためには、新たなリード獲得の必要があると、課題を発見することもできます。

課題をクリアするために、トップセールスのノウハウ・スキルを情報として洗い出します。この情報をもとに新たな営業マニュアルを作れば、「トップセールスの営業トークを新人でも真似できる」ようになり、売上・利益の底上げへつなげることが可能です。

営業組織の強化

セールス・イネーブルメントで継続的に営業組織を強化するためには、取り組みを効果検証することも重要です。KPIの達成度をもとに営業活動の全体や各営業担当者毎に「人材育成の成果がどれくらい出ているか」を把握するといいでしょう。

検証で明らかになった課題に対して、成果が上がっている施策や営業ノウハウの共有や新たに営業マニュアルを改良するほか、必要に応じて営業マネージャーによるコーチングや実技指導、効率的な営業活動を行うためのITツールの導入といった対策を実施することも大切です。

属人化させない基準

営業組織における属人化とは、「本人にしか対応できない業務」や「ある個人に売上が依存した組織」などを指します。例えば、「得意先からの問い合わせには担当者しか回答できない」、「優秀な営業担当者に売上の3割が集中している」といった状態です。本人がいなくなれば、業務・業績に支障をきたすリスクを抱えてしまいます。

営業活動は担当者のみで顧客とのやり取りが完了するなど、属人化しやすいです。個人に依拠するのは、「顧客にどう対応するか」や「どう営業プロセスを進めるか」といった判断の部分でしょう。この判断を属人化させず、体系化することが鍵となります。

CRM(顧客情報管理ツール)で名刺などの顧客の情報を誰でも確認できる状態にしたり、顧客の見込みの状態管理、顧客単位の営業活動の進捗管理などツールによって様々な機能を利用できるため、各営業担当に依存しない顧客管理やコミュニケーションに利用するケースが殆どです。

またSFA(営業支援ツール)は、主に営業活動や売上見込みや実績の可視化することができるため、営業プロセスの可視化や活動状況などの日報も把握することで属人化しない対策を行うきっかけになります。

セールス・イネーブルメントによる副次的効果は

セールス・イネーブルメントを実現していくと、次のような副次的なメリットが企業にもたらされます。

  • 営業活動の効率化(活動時間を増やせる、有効な顧客リストが獲得しやすくなる、など)
  • ITツールの活用でデジタル活用と促進につながる(俗人化の防止、顧客データの分析、など)
  • 他部署との連携で組織が強固になる(再現性のあるセールス事例の共有や研修、など)

営業活動にかける時間を増やせる

セールス・イネーブルメントでは、営業マニュアルやITツールの導入で効率的な人材育成が可能となります。営業教育の体系化・仕組み化自動化させることで、育成に注いでいた時間を営業に回すことができるでしょう。

また人材育成に限らず、営業プロセスに関しても効率化することができ、営業活動の時間自体を短縮できます。これまでより多数の見込み顧客に営業活動の時間をかけられれば、売上・利益アップを実現可能です。

ITツールの採用でデジタル活用の理解と促進につながる

セールス・イネーブルメントではITツールを活用する場合もありますが、新たなITツールの採用により、デジタルトランスフォーメーションの推進やデジタル活用の社内メンバーの理解を得やすくなったり様々なITツールの導入の促進につながります。つまり、普段の業務を通じて利用することで、「どのような効果があるか」や「どう使えばより便利になるか」を必然的に考えるため、ITツールの操作や効果について理解を深められるでしょう。

他部署との連携で組織が強固になる

主には営業部門とマーケティング部門の顧客情報の連携や営業教育や優秀な人材を採用するための人事部門との連携、営業活動や顧客情報を管理するための仕組みを作るためにシステム開発部門との連携がセールス・イネーブルメントには欠かせません。事業を拡大する、という共通の目的のなかで各部門で掲げた課題をクリアするために部署部門の垣根を越えた協力体制を敷くことによってより強固な結びつきとなります。

部門間で連携する文化が社内に浸透すれば、セールス・イネーブルメントの取り組みを終えた後も、組織全体の事業成長に貢献できるでしょう。

営業活動を効率化するITツール4選

イネーブルメントに活用できる代表的なITツールとして、代表的なものを5つ紹介します。

自社の課題や実現したい内容に合わせて、様々なツールや低コストで必要な機能が揃っているものも数多くありますので、自社にあったツールを検討すると良いでしょう。

1.SENSES(営業支援ツール)

Sensesは低コストで営業活動の管理や可視化できる機能が揃ったSFAツールです。他のツールだと1アカウントあたり月額2万円程度かかるような機能が月5千円~1万円程度ですぐに導入できます。

機能としては、カンバン形式のダッシュボードと各営業単位のネクストアクションや売上見込み、顧客案件別の活動状況の管理が分かりやすい表示で利用することができます。

ネクストアクション管理は、商談のログを登録すると「ネクストアクションを登録してください」というポップアップが自動で出るため、一定の活動期間が経過してアクションがない営業担当者へのリマインド機能も備わっており、活動状況や受注に繋がる管理をすることができます。

他にも見込み客とのメールのやり取りのログも自動でSenses内に入るため、入力の手間が省け流などのメリットがあります。

特徴
・商談や案件毎の管理に特化した営業支援ツール
・商談毎の情報から売上見込みをグラフなどビジュアル化が簡単にできる
・活動状況に更新がない案件の担当者に自動でリマインドできる

参考:SENSE(マツリカ)

2.Bigtincan Hub(商談支援ツール)

Bigtincan Hub(ビッグティンカン ハブ)は、グローバルに世界中で利用されている営業支援ツールです。

ドキュメント作成、編集、共有、Windowsアプリなどの他クラウドサービスとの連携もタブレットやスマートフォンを利用して、商談先や商談相手がどの箇所をよく見ていたか、を簡単に把握することができます。

アプリでのオフラインでも利用可能ですので、万が一スマホやタブレットの端末を紛失しても管理者がワンクリックでデバイス内の情報削除ができるなどセキュリティ面でも優れています。

【ツールの特徴】
・オンライン・オフラインアクセスが可能で、スマホやタブレットアプリで商談先で利用できる
・プレゼンテーション、検索、情報共有など充実の機能
・チャット機能
・端末などの紛失時のデータ削除などセキュリティ対策

参考:Bitncan(販売代理店 株式会社テラ)

3.Handbook(商談支援アプリ)

Handbookは、スマホなどのモバイル機器からアクセスでき、シンプル操作と分かりやすい表示で営業担当者の商談の状況に合わせてオフラインの環境でも商談相手に情報共有などを行うことができます。

また大企業から中小企業と幅広く、1,500件以上の導入実績があり、30日間の無料トライアルと導入時の専門サポート窓口を備えているため、自社の運用にあっているかを検討しやすいでしょう。

機能
・iOS,Android,Windows、タブレットなどあらゆるデバイスに対応
・シンプルにサービス・商品情報を商談相手に提示できる
・導入前に無料トライアルが利用でき、サポートも充実している

参考:Handbook(アステリア)

4.SPOKES(商談資料の動画化ツール)

「SPOKES」は、サービス・商品説明資料や業務マニュアルなどのパワーポイント資料を簡単に動画化でき、営業間の情報共有の業務効率化や商談時の提案資料の動画を活用した営業効率化に大きく貢献します。

パワーポイントなど紙の資料をど動画化したり、文字の音声変換やナレーション機能、言語翻訳機能などが備わっています。

特徴
・紙やパワーポイントなどの資料をそのまま動画化やナレーションなど音声が付けられる。
・30地域の言語変換が可能
・初期費用は10万円一律ですが、有料プランは6種類あり月額費用は動画保持枠の数で変わる。

参考:SPOKES(Bloom Act)

5.Video BRAIN(サービス・商品・商談資料の動画化の総合ツール)

VIDEO BRAINは、インターネット上で顧客への提案資料や各種コンテンツ動画制作から配信、オフラインの端末で商談に利用する動画制作を営業提案の利用シーンに合わせたテンプレートや自動ナレーション生成やシーンの切り替えなどをパワポ感覚で誰でも簡単に訴求力のある動画を制作することができます。

既存の紙やパワポの変換もできますが、商談相手に合わせてよりリッチで表現力のある伝わりやすい動画を初心者でもすぐに作れます。

特徴
・保有している紙やパワーポイントの商談資料をよりリッチな動画にできる
・営業活動や商談に合わせた動画テンプレートの活用で誰でも簡単に動画制作ができる
・オンライン、オフライン問わず用途によって動画データの利用ができる

参考:Video BRAIN(オープンエイト)

まとめ

イネーブルメントは、「セールス・イネーブルメント」をはじめ「マーケティング・イネーブルメント」や「ピープル・イネーブルメント」といった多部門での人材育成に関係した取り組みです。実施する際には、専門部署を設置し、部門の垣根を越えて連携することが大切です。イネーブルメントを通じて、営業にかける時間の効率化や、ITツールの理解促進、他部門との連携強化を目指すことでセールスなどの該当部門だけでなく、事業全体の業務効率化や事業拡大に貢献することができます。

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