目次
この記事の結論
- 社内動画を「内製するか外注するか」は、動画の出来栄えではなく更新頻度と本数で決まります。年に数本で作り直さないものは外注、毎月増えて改訂が入るものは内製が合います。
- 判断を分けるのは機能の多さではなく、誰が作り続けるのかという運用体制です。ツールを入れても担当者が一人だけの体制は、その人の異動で止まります。
- 研修・マニュアルは内製、会社紹介やブランド映像は外注、既存の研修資料やウェビナー録画がある場合はそれを動画化するのが最短です。
判断の順序は次のとおりです。
- その動画は年に何本作るか(3本以下なら外注を軸に検討する)
- 内容は改訂されるか(半年以内に改訂が入るなら内製を軸に検討する)
- 作る人を社内に置けるか(置けないなら本数が多くても外注か、既存資料の動画化に絞る)

社内動画とは何を指すか

社内動画とは、社外向けの広報・販促動画に対して、従業員に向けて社内で配信する動画の総称です。目的によって次の4つに分けられます。
- 研修動画 … 新人研修、コンプライアンス研修、階層別研修など。受講管理と結びつくことが多い
- オンボーディング動画 … 入社時の会社説明、制度説明、ツールの使い方。入社のたびに繰り返し再生される
- 業務マニュアル動画 … 作業手順、システム操作、店舗オペレーション。現場の手順変更に追随して改訂が入る
- 社内広報動画 … 経営メッセージ、部署紹介、社内報の動画版。鮮度が価値で、作り直しは前提にならない
この4つは「社内動画」とひとくくりにされやすいのですが、作る本数と改訂の入り方がまったく違います。研修とマニュアルは本数が増えて改訂もかかります。オンボーディングは本数が少なく、改訂は制度変更のときだけです。社内広報は毎回別のものを作ります。選び方が変わるのはこのためで、1本あたりの制作費だけを比べても判断できません。
内製・外注・既存資料の動画化:3つの選択肢

社内動画の作り方は、大きく3つに分かれます。
| 内製(動画編集ツールを導入) | 外注(制作会社に依頼) | 既存資料の動画化 | |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | ツールの利用料(法人向けは非公開・問い合わせが大半) | なし | ほぼなし |
| 1本あたりの費用 | 実質は人件費のみ | 15万〜300万円(10分程度の研修動画で30万〜80万が中央値) | 実質は人件費のみ |
| 公開までの期間 | 数日〜2週間 | 1〜3か月 | 数時間〜数日 |
| 改訂のしやすさ | 該当箇所だけ差し替えられる | 再依頼が必要で費用が再発生 | 元資料を直して出し直せる |
| 必要な社内体制 | 作る担当者が要る | 依頼と確認の担当者で足りる | 元資料の持ち主が動けばよい |
| 品質の上限 | 撮影を伴う演出は苦手 | 高い | 元資料の質に依存する |
| 視聴データ | ツール次第で取得できる | 配信先の機能に依存する | 配信先の機能に依存する |
| 向く用途 | 研修・マニュアル | 会社紹介・ブランド映像・採用 | 研修・オンボーディング |
外注費用の幅が大きいのは、工程ごとに費用が積み上がるためです。内訳の目安はディレクションが5万〜20万円、台本・絵コンテが5万〜30万円、撮影が10万〜100万円、編集が10万〜50万円です。このうち撮影が最も重く、かつ社内動画では省ける場合が多くあります。画面録画やスライドで構成できる内容なら、撮影を外すだけで費用は大きく下がります。マニュアル動画では15分程度で25万円前後という相場も示されています。
内製ツールの費用は比較が難しいのが実情です。法人向けの動画制作ツールは料金を公開せず問い合わせとしているものが多く、公開されている例でも年間18万円前後から、制作代行を含むサービスでは月額30万円以上まで幅があります。価格帯だけで比べられないため、後述の5基準で必要な機能を絞り込んでから見積もりを取るほうが早く進みます。
「既存資料の動画化」は見落とされやすいのですが、社内動画では最も費用対効果が高いことが多い方法です。研修用のPowerPoint、ウェビナーの録画、手順書のスクリーンショットはすでに社内にあります。これらに音声やテロップを付けて動画にするだけで、新規に企画から起こすより短期間で公開できます。まず在庫を確認してから、内製か外注かを考えるほうが早いでしょう。
外注と内製の判断をもう少し詳しく整理したい場合は、「外注」と「内製化」どっちが自社に向いている? で、それぞれのメリット・デメリットと選ぶ基準をまとめています。
社内動画の作り方を選ぶ5つの基準

1. 機能:作れる動画の型が用途に合っているか
機能一覧の項目数を比べても意味がありません。見るべきは、自分たちが作りたい型が標準で作れるかどうかです。社内動画で必要になる型は限られていて、画面録画にテロップと音声を重ねる形(マニュアル)、スライドに音声を重ねる形(研修)、人物の話をテロップで補う形(社内広報)のいずれかに収まることが多くあります。この3つが標準機能で完結するなら、それ以上の機能は当面使いません。
確認すべき点は次の3つです。
- 画面録画をそのまま素材として取り込めるか(1回あたりの収録時間に上限があるツールもある。10分前後で区切られることが多く、長い手順は分割前提になる)
- 原稿から音声を生成できるか(ナレーション収録の手間を省けるか)
- 字幕・テロップを自動で付けられるか(アクセシビリティ対応と、音を出せない環境での視聴に効く)
2. 運用体制:誰が作り続けるのか
社内動画で最も多い失敗は、担当者が一人しかいない状態で始めることです。この体制はツールを入れても解消しません。むしろツールを入れたことで「作れる人」が1人に固定され、その人に依頼が集中して滞留します。
選定時には、次を確認しておきます。
- 部署をまたいで複数人が編集できるか(アカウント数と権限設定)
- 作った人以外がテンプレートを再利用して作れるか
- 現場の担当者が自分で改訂できる形になっているか
研修やマニュアルのように改訂が入り続けるものは、元の作り手がいなくなっても直せるかが実質的な選定基準になります。制作会社に外注した動画は、この点で改訂のたびに費用と期間がかかります。
3. 分析性:視聴されたかを測れるか
社内動画は、公開したことが目的になりやすいものです。実際に視聴されているかを確認できないと、内容の良し悪しも判断できないまま本数だけが増えていきます。
最低限、次の3つが取得できる配信環境を選びます。
- 誰が視聴したか(受講管理が必要な研修では必須)
- どこまで視聴されたか(離脱の位置がわかると尺と構成を直せる)
- 何回視聴されたか(マニュアルは繰り返し視聴されるほど機能している)
社内ポータルやイントラネットに動画を置く場合、視聴ログが取れないことがあります。配信先の仕様を先に確認しておきましょう。
4. 承認フロー:公開前のチェックが回るか
社内動画は、内容によって法務・人事・広報の確認が必要になります。コンプライアンス研修は法務、制度説明は人事、経営メッセージは広報という具合に、承認先が動画ごとに変わります。
この確認をメールとファイル送付で回すと、動画は容量が大きいぶん破綻しやすくなります。URLで共有して、その画面上でコメントを受けられる形になっているかを確認してください。修正指示は「3分20秒あたりのテロップ」といった形で戻ってくるため、時間軸に紐づいたコメントができると往復が減ります。
5. サポート:立ち上げ期に伴走があるか
導入して最初の3本を作れるかどうかで、その後が決まります。1本目でつまずくと、ツールは契約したまま使われなくなります。
- 初期設定とテンプレート作成を支援してもらえるか
- 用途別のテンプレートが最初から用意されているか
- 社内への展開(説明会や手引きの作成)を手伝ってもらえるか
ツールの比較検討まで進んでいる場合は、動画編集ツール・サービスを導入する前に必ず押さえておきたい6つのポイント も参考になります。
用途別に見た推奨パターン
| 用途 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 研修動画 | 内製、または既存の研修資料の動画化 | 本数が増え、制度改定のたびに改訂が入る |
| オンボーディング動画 | 既存資料の動画化から始める | 本数が少なく、まず作って回してみたほうが早い |
| 業務マニュアル動画 | 内製 | 現場の手順変更に追随できないと使われなくなる |
| 社内広報動画 | 内製(定例)+外注(周年・大型企画) | 鮮度が価値で本数も多いが、節目のものは質を優先する |
| 会社紹介・ブランド映像 | 外注 | 作り直しの前提がなく、演出と撮影の質が成果に直結する |
用途ごとの進め方は、それぞれ次のページで詳しく扱っています。
- 研修・オンボーディング → セールスイネーブルメント/全社教育研修の強化
- 業務マニュアル → 動画マニュアルによる効率化/技術・暗黙知の伝承
- 社内広報 → 社内情報流通の円滑化/インナーブランディング向上
マニュアルの動画化にしぼって検討する場合は、マニュアルの動画化による業務効率化やコスト削減 にメリットと着手前の確認点をまとめています。
よくある失敗と、避け方

1本作って終わりになる
最も多い失敗です。企画に時間をかけて1本目を丁寧に作り、そこで力尽きてしまいます。避けるには、1本目を作る前に「3か月で何本作るか」を先に決めてしまうのが有効です。本数が先に決まると、1本にかけられる工数が自動的に決まり、過剰に作り込まなくなります。
更新されず、内容が古くなる
手順が変わったのに動画が古いままだと、現場は動画を見なくなり紙の手順書に戻ります。改訂できない状態で作った動画は、資産ではなく負債になります。制作方法を決める段階で、改訂の担当と手順を決めておいてください。
公開したのに視聴されない
社内ポータルに置いただけでは視聴されません。視聴のきっかけを業務の流れに埋め込む必要があります。研修なら受講案内、マニュアルなら手順書からのリンク、社内広報ならチャットでの配信といった形で、既存の導線に載せます。
よくある質問
社内動画の外注費用はどのくらいかかりますか。 制作会社に依頼する場合で15万〜300万円が目安で、10分程度の研修動画なら30万〜80万円が中央値とされています。マニュアル動画は15分程度で25万円前後という相場もあります。フリーランスに依頼する場合は3万〜20万円と幅が下がります。工程別の内訳はディレクション5万〜20万円、台本・絵コンテ5万〜30万円、撮影10万〜100万円、編集10万〜50万円です。見積もりを比較する際は、尺・撮影の有無・修正回数・納品形式の4点を先に揃えておいてください。
内製に切り替えると品質は落ちますか。 研修とマニュアルでは落ちにくいといえます。この2つは演出の質より、内容の正確さと更新の速さが視聴者にとっての価値になるためです。一方で会社紹介やブランド映像は、撮影と演出の質が成果に直結するため外注が向いています。
既存のPowerPoint資料を動画にできますか。 できます。PowerPointファイルを取り込んで動画素材として再編集できるツールがあり、スライドに音声とテロップを重ねる形が一般的です。研修資料がすでにスライドで揃っている場合、社内動画では最も着手しやすい方法になります。
動画制作を外注する場合、著作権はどう扱われますか。 BGM・写真素材・フォントの利用範囲は契約で決まります。社内利用に限定されているのか、後からYouTubeなど社外にも出せるのかで条件が変わるため、見積もりの段階で「納品物の利用範囲」「二次利用の可否」「素材の権利処理をどちらが行うか」を明記してもらってください。
社内動画の効果はどう測ればよいですか。 用途で指標が変わります。研修は受講率と受講完了率、マニュアルは繰り返し視聴数と問い合わせ件数の減少、社内広報は視聴率とアンケートの反応が対応します。共通して見るのは、どこで離脱しているかです。
動画の長さはどのくらいが適切ですか。 マニュアルは1手順1本で短く分けます。手順を1本にまとめると、見たい箇所を探せず結局使われません。研修は章ごとに分割して1本を数分に収めるのが一般的で、画面録画ツールの収録上限(10分前後)もこの分割と相性がよいはずです。
社内ポータル(イントラネット)に置くのと、専用の配信環境を使うのはどちらがよいですか。 視聴ログが必要かどうかで分かれます。受講管理が必要な研修は専用の配信環境、閲覧だけで足りる社内広報はポータルで十分なことが多いでしょう。
外注する場合、公開までどのくらいかかりますか。 企画から納品まで1〜3か月が一般的です。工程の目安は打ち合わせ1〜3日、企画提案7〜15日、台本・ディレクション7〜15日、撮影1〜3日、編集12〜15日です。アニメーションを使う場合は2〜4か月と長くなります。制度改定や入社日に合わせて公開日が決まっているものは、この期間を逆算して発注する必要があります。
社内動画を作る担当者は何人必要ですか。 最低2人です。1人だと異動と繁忙で止まります。作る人と、内容を確認する人を分けておくと運用が続きやすくなります。
まとめ
社内動画の作り方は、動画の出来栄えではなく更新頻度と本数で決まります。研修とマニュアルのように改訂が入り続けるものは内製、会社紹介のように作り直さないものは外注が合います。そして着手前に、社内にある研修資料やウェビナー録画を確認しておくと、最短で1本目を公開できます。
判断に迷う場合は
外注と内製のどちらが自社に向いているかを、メリット・デメリットと選定の観点から整理した資料をご用意しています。
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