2026/10/08

ジヤトコ株式会社

伝わらないから始まった。ジヤトコの「伝える力」とコミュニケーション改革

― 動画を入り口に、「伝える力」を組織へ広げる ―

ジヤトコ株式会社 イノベーション技術開発部
佐伯 様
ジヤトコ株式会社 モノづくり改革推進部 兼 人事総務部
主担 八木 様

世界的な自動車部品メーカーであるジヤトコ株式会社。CVT(無段変速機)で世界トップシェアを持つ同社は、電動化という自動車業界の大きな転換点のなかで、開発現場に蓄積されてきた高度な技術やノウハウを、どう社内外に伝え、次の世代へ継承していくかという課題に向き合ってきました。

製造業では、熟練人財が持つ知識やノウハウをどのように共有・継承するかが重要なテーマの一つです。業務や技術開発が高度化する一方で、現場には「言葉だけでは伝えきれない知識」が存在します。開発・生産・人事など部門をまたぐ連携が増える中で、情報共有の質を高めることの重要性も増し、競争力に直結する時代になりました。

こうした環境変化に対し、ジヤトコ株式会社イノベーション技術開発部では、動画を活用したコミュニケーション改革を進めてきました。特徴的なのは、「動画を作ること」自体を目的にしていない点です。目指しているのは、技術やノウハウ、人の熱量を時間や場所を超えて共有できる環境と仕組みをつくること。活用領域は、技術訴求から採用、教育、そして社内コミュニケーションDXへと広がりつつあります。取り組みを推進してきた佐伯さん、八木さんに、その背景と現在地、今後の展望を伺いました。

「伝わらない」が出発点だった

── 動画活用を始めた背景を教えてください。

佐伯さん

私たちイノベーション技術開発部には、「ベンチマーク・リサーチ」「戦略」「先行開発」「訴求」という4つの役割があります。重要なのは、優れた技術を開発しても、その価値が相手に伝わらなければ、活用や次の展開にはつながらないということです。そこで、技術の価値をより分かりやすく届ける手段の一つとして、動画に着目しました。

それまではPowerPointやパネル、イラスト、実物など、さまざまな手段を用いて説明していました。社内外で技術を訴求する中で、動画には、技術の動きや背景を分かりやすく示せることに加え、説明内容のばらつきを抑え、繰り返し活用できる利点があると分かりました。短時間で理解を促し、関心を持ってもらう認知獲得や、理解の深掘りの手段として非常に有効だと感じています。技術の価値を適切に伝えることで、その先の活用のイメージや対話につなげるうえでも重要です。

ジヤトコ株式会社 イノベーション技術開発部 佐伯さん

3年間で磨かれていった、伝える力

── 活用を始めて、どんな変化がありましたか。また、その変化はどのように育っていったのでしょうか。

佐伯さん

始めた当初は、動画制作に対する心理的なハードルが高く、「自分には難しい」と感じるメンバーも少なくありませんでした。社内の技術展示会でも、最初に動画を活用したのは2、3件ほどです。そこから、実際の制作に伴走しながら、一つずつ成功体験を積み重ねていきました。その際にVideo BRAINが提供してくれている“お役立ち資料”を参考に、少しずつ動画の構成作りやマーケティングについて学び、動画作りで不安な部分に自信を持てたことで訴求に向き合えました。

すると、2年目には「もっと短くした方が伝わる」「説明の前にこの動画を見てもらった方が理解しやすい」といった声が自然と出るようになりました。動画を作ること自体ではなく、「何を、どの順番で、どう見せれば相手に伝わるか」を自ら考えるようになったのです。その積み重ねによって、3年間で社内の技術展示会では、すべての展示アイテムで動画を活用するまでになりました。

ただ、私が最も大きな変化だと感じているのは、動画の利用率が上がったことだけではありません。動画を制作する過程で、エンジニア自身に「伝え方を設計する」というマインドセットが育ったことです。何を伝えるのか、どこを削るのか、どの順番なら理解しやすいのかを考える経験が、実際の説明やプレゼンテーションにも表れるようになりました。

動画を作ることで、結果として人の話し方や伝える力まで変わっていった。ツールの活用が、人そのものの成長につながったことに、最も大きな手応えを感じています。

展示会から採用・教育へ ―― 広がりを後押しした「自分でも作れた」という実感

── 採用活動や社外展示などに広がった経緯、社内で評価されたポイントについて教えてください。

佐伯さん

まずは社内の技術展示会で動画を使い始めました。そこで動画を見た他部署から「自分たちの業務でも使えないか」という相談やトライアルの申し込みが生まれ、採用や研修にも活用が広がりました。たとえば、内定者を含む学生へ仕事や職場の雰囲気を伝える場面や、新入社員研修の自己紹介動画などです。Video BRAINは、操作が比較的分かりやすく、テンプレートが豊富なため、初めて使う人でも一定品質の動画を短時間で作り始めやすい点が評価されました。実際に使う中で、それぞれが自分の業務における価値やメリットを見つけたことが、活用の広がりにつながったと考えています。

八木さん

特別な動画編集スキルがなくても、Video BRAINを使えば動画を作れることが、活用の広がりを後押ししたと感じています。私自身も専門的な編集経験はありませんでしたが、実際に作ることができたので、「自分でも使える」という実感を周囲のメンバーに伝えると、「自分たちも試してみよう!」という動きが生まれ、利用者が徐々に増えていきました。

広がったからこそ見えた壁

── 活用の中で見えてきた課題について教えてください。

佐伯さん

動画活用そのものの認知は広がりましたが、「自分でも使えそうだ」と感じてもらうまでには、依然として心理的なハードルがあります。興味を持っていても、実際の利用には至らないケースも少なくありません。

八木さん

最初に実際の操作へ踏み出せるかどうかが、一つの分岐点だと感じています。「作りたい」「活用したい」という意欲があっても、手を動かすまでには壁があります。一度試してみれば作成できる人も多いため、その最初の一歩をどう支援し、進んでもらうかが課題です。

佐伯さん

もう一つは、動画で伝えるためのリテラシーです。初めて作る場合、伝えたい情報を詰め込みすぎて長尺になりやすく、結果として要点が伝わりにくくなることがあります。動画制作の操作だけでなく、「何を、どの順番で、どの長さで伝えるか」を考える力も必要だと感じています。

社内の動画活用を広げる契機となったイベント

── その課題を踏まえ、オープンイノベーションオフィスF-Lab.(未来技術センター)では部門横断の動画コミュニケーションイベントを開催しました。どのような狙いがありましたか。

佐伯さん

F-Lab.は、イノベーションを加速する場として活動しています。その活動を社内の皆さんに知ってもらい、実際の業務に生かしてもらうため、「説明コスト激減!動画コミュニケーションをはじめるべき3つの決定的理由」という部門横断イベントを企画しました。「伝わりにくい」「同じ説明を繰り返す」といった課題は、私たち以外の部署にも共通していると考え、動画活用の最初の一歩を踏み出せる場にしたいと考えました。

狙いは、動画活用のメリットを理解してもらうだけでなく、心理的なハードルを下げ、コミュニケーションDXの最初の一歩を体験してもらうことでした。2日間で約30部署から参加者が集まり、アンケート回答ではポジティブ評価が100%、開催後には多数の参加者がトライアルを希望、申請しました。開催後には、各部署の具体的な業務課題を整理し、動画活用の試行や相談へ進んだ事例も生まれました。

── イベントでは、オープンエイトの長谷部が講師として登壇し、動画によるコミュニケーションDXの考え方や活用事例を紹介しました。

── オープンエイトとはどのように連携されたのでしょうか。

佐伯さん

私たちは、動画制作に関する専門的な知見をすべて社内で持っているわけではありません。そこでオープンエイトには、動画コミュニケーションの考え方や他社事例、専門的な編集知識がなくても実践できる方法を共有いただきました。参加者が自分の業務に置き換えて「こういう使い方もできそうだ」と考えられたこと自体が、共創の成果の一つだと感じています。F-Lab.は場と仕組みを設計し、オープンエイトには動画コミュニケーションの専門性を提供いただき連携して進めました。

次に挑むのは、熟練技術者の知識・技術の継承

── 今後広げたい活用領域について教えてください。

佐伯さん

まずは開発業務の中で、動画を活用して伝えるコミュニケーションDXをさらに進めたいと考えています。同時に、「どうすれば相手に伝わるか」を考える姿勢やスキルが広がることで、次の変革につながると考えています。将来的には、報告内容の一部を動画で表現したり、日々の出来事を短い動画として蓄積し、社内の情報共有や振り返りに活用することにも挑戦したいです。海外とのコミュニケーションについても、動画は言語の壁を越えるための有効な手段の一つになり得ると考えています。

八木さん

社内のマニュアルには、現在もPowerPointで作られているものが多くあります。動作や手順を動画で補完できれば、より理解しやすい情報提供につながると考えています。

佐伯さん

今後の活用領域の一つとして、社内の匠や熟練技術者が持つ技術やノウハウを残すことも考えています。言葉だけでは表現しにくい作業の勘所や、コミュニケーション上の工夫まで含めて動画で記録し、会社の知識・技術資産として継承していきたいと考えています。

ジヤトコ株式会社 モノづくり改革推進部 兼 人事総務部 主担 八木さん

目指すのは「知識を会社の財産に変える」こと

── 今後、動画活用によってどのような組織を目指していきたいですか。

佐伯さん

私たちが目指しているのは、動画の本数や制作者の数を増やすこと自体ではありません。社内の技術やノウハウ、背景にある思いを、必要な人へ届けられる環境と仕組みをつくり、コミュニケーションそのものに価値を残していくことです。PowerPointだけでは伝わりにくい行間や感情、熱量まで共有できれば、理解や対話が深まり、その熱量で次の仕事が動き出します。動画を、そうしたコミュニケーションを支える手段として根付かせたいと考えています。

八木さん

コミュニケーション手段の一つとして動画が自然に選択肢に入る状態が、ありたい姿だと考えています。まだPowerPointで作られているマニュアルも多いため、内容に応じて動画を組み合わせることで、より伝わりやすい情報共有を増やしていきたいです。

── 動画活用の可能性は、技術や業務ノウハウの共有だけにとどまりません。同社では、ボランティアなど、開発や生産以外の社会貢献活動も行っています。

佐伯さん

そうした活動についても、動画を通じて相互理解を深め、活動の背景や成果を共有できればと考えています。参加者の表情やその場の空気、言葉だけでは表現しにくい感動まで伝えることで、活動への共感を広げ、社会とのつながりを深められると考えています。すでに一部で取り組んでいますが、今後さらに動画活用を広げていきたいです。


技術訴求から始まった取り組みは、採用、教育、社内コミュニケーションDXへと活用領域を広げています。次のテーマとして見据えるのは、個人に蓄積された知識やノウハウを組織で共有し、次世代へつなぐことです。オープンエイトとの共創を通じて、ジヤトコは「誰かの知識」を「組織の財産」に変えるコミュニケーション基盤づくりを目指しています。

ジヤトコ株式会社

代表者 代表取締役社長 佐藤朋由
本社 静岡県富士市今泉700番地の1
設立 1999年
事業内容 自動車用変速機、電動パワートレインおよび部品の開発・製造・販売、実験受託・エンジニア派遣 https://www.jatco.co.jp/

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