2026/08/19
シーピー化成株式会社
製品が横並びになる時代に、「伝える力」で選ばれる ― コモディティ化が進む食品容器市場で、シーピー化成が挑むマーケティング変革 ―
スーパーマーケットの惣菜コーナーや弁当売場を彩るプラスチック食品容器。消費者の目には留まりにくいその存在が、今、静かな構造変化の中に置かれています。原材料価格の高騰、環境規制の強化、業界内の企業再編。さらに各社の製品機能が出揃い、競合間の差別化が難しくなる「コモディティ化」が進行し、大手スーパーなど買い手側の交渉力は増す一方です。
そうした環境下にあるシーピー化成株式会社は、製品の品質や機能だけでは勝ち抜けない時代を見据え、マーケティングの力で競争の軸そのものを変えようとしています。目指すのは、お客様に製品の価値を届ける再現性の高い「仕組み」を構築すること。そのために選ばれた実行手段のひとつが、動画コンテンツの内製化と継続発信です。
今回は、その戦略設計と実行をリードするマーケティング部 プロモーション課 兼 プロダクツ課 課長の栁瀬知希さんと、コンテンツの企画・制作を担うプロモーション課 WEB・イベント係 マネージャーの國安ちひろさんと齋須汐莉さんの3名に話を聞きました。戦略と実務、それぞれの視点から語っていただいています。
目次
業界地図の書き換え――「逆風」を「好機」と読む
── シーピー化成のマーケティング部門が動画活用プロジェクトを立ち上げた2020年以降、御社を取り巻く市場環境はどのように変化してきましたか。
栁瀬さん
かなり変わってきています。環境問題への対応、原材料の高騰、人手不足を背景にした機能性向上の要求、様々な外圧が重なっています。そして今、決定的に変わったのは製品のコモディティ化です。各社の製品が出揃って横並びになり、差別化できる余地が少なくなってきている。
さらに業界再編も進んでいますから、買い手側のパワーがどんどん大きくなっている。メーカーにとっては正直、難しい状況です。ただ私たちは、これをチャンスと捉えています。業界が大きく変わる局面というのは、リプレイスの好機でもある。現状維持ではなく、そこで攻めに出られるかどうかだと思っています。

「業界が変わっていく時代というのは、リプレイスの好機。業界地図を書き換えられるかどうかだと思っています」
プラスチック製簡易食品容器は、食品スーパーが扱う惣菜・弁当・生鮮のパッケージとして日常の食卓に欠かせない存在です。国内市場では原料コストを製品価格に転嫁する動きが続く一方、お客様(流通小売・包材卸・食品メーカー・外食など)からの値下げ圧力との綱引きが常態化しています。そこに人手不足と環境規制等が加わり、品質・機能の面で各社製品が均質化しつつあるのが現状です。
「仕組み」で勝つ――マーケティング変革の設計思想
── 逆境を好機と捉える中で、マーケティング部門として具体的にどういう方向で攻めていくのでしょうか。
栁瀬さん
格好いいことを言えるわけではないので申し訳ないのですが、愚直にお客様に価値を届けることに尽きると思っています。そのために私たちが追っているのが、「情報の鮮度」と「情報の質」という2軸です。
鮮度という点でいうと、例えばスーパーマーケットのバイヤーさんが関心を寄せるのは市場の最新動向なんですね。現在の市場ではどのような商品が売れ筋か、売場でどんな提案をしているか、その結果どうなったのか、といった最新の情報を、できる限り早くお届けするための仕組みを整えています。
質という面では、営業が日々お客様と折衝する中で「なぜこれが決まったのか」という本質的な情報を丁寧にヒアリングして、コンテンツに転換していく。これの繰り返しです。地味ですが、これを愚直にやり続けることが差別化になると考えています。
これまでプラスチック製簡易食品容器の営業は、担当者個人の説明力と製品知識が勝敗を分ける部分もありました。しかし製品のコモディティ化が進んだ今、個人の力量だけに頼るモデルは構造的な限界を迎えつつあります。栁瀬さんが描くのは、その構造自体を変えるマーケティング戦略です。お客様のニーズを的確に捉え、製品の価値が自然に、均一に、スピーディーに伝わり続ける「仕組み」を持つこと——それ自体を競争力の源泉にしようとしています。
そのマーケティング戦略を実行するうえで中心的な役割を担っているのが、動画コンテンツの継続的な発信です。文字や静止画では伝えきれない製品の質感・使い方・差別化ポイントを、短時間で直感的に届けられる動画は、「鮮度の高い情報を量産し続ける」という要件に最も応えやすいメディアです。
── 鮮度の高い情報を継続的に届けるために、どのような体制や仕組みを構築されているのでしょうか。
栁瀬さん
仕組みで解決しています。社内向けのコンテンツチャンネルを立ち上げて、「毎週配信しなければならない状態」を意図的に作っています。締め切り駆動ですね。メンバーはそこに向けて動きますから、自然と発信サイクルが生まれる。仕組みがなければ、忙しさの中で後回しになってしまう。
クオリティの部分は、営業との日常的な連携が欠かせません。現場で何が起きているか、どんな情報が刺さっているかを継続的に吸い上げて、コンテンツに転換する。これは一朝一夕にはできないので、少しずつ積み上げていくしかないですね。
年間50シリーズを「ひとりで」――内製化という選択
── 動画活用を進める中で、どのような壁があり、それをどのように乗り越えてこられたのでしょうか。
栁瀬さん
動画活用における課題は、大きく3つあると整理しています。ひとつが制作のハードルを下げること、ふたつ目が営業現場での活用を促進すること、3つ目が組織全体への定着です。
最初の「制作ハードル」については、Video BRAINを導入することでクリアできました。私たちは毎年、製品を50シリーズ前後発売します。これをすべて動画化したかったのですが、外部制作だとコストもスピードも折り合いがつかない。内製化に踏み切ったことで、今はほぼひとりで無理なく対応できる体制が整っています。
マーケティング部の目標は新製品の出荷数を上げていくことです。そこを強力に支える基盤ができたという手応えはあります。残る2つ──営業現場への浸透と組織全体への定着強化は、今まさに取り組んでいる最中です。
── 現場で制作を担っているお二人から見て、内製化はどのような経験でしたか。
國安さん
正直に言うと、最初に自分たちで作った動画を見返したとき、「ダサいな」と思ったんです(笑)。動画制作の経験がゼロからのスタートでしたから。ただ、ツールを使いながらフィードバックをもらい、テンプレートを整えていく中で、クオリティは着実に上がってきています。
齋須さん
セミナーなどのラーニングコンテンツが残っているので、つまずいたときに自分で学びながら進められたのが良かったです。外部委託していた頃は前任者が対応していたので正確な比較はできませんが、今は自分で手を動かしながら少しずつレベルを上げられている感覚があります。

「外部制作だとコストも時間も折り合いがつかなかった。年間50シリーズをひとりで対応できる体制が、ようやく整った」
マーケティング戦略を「仕組み」として機能させるには、動画を継続的に量産できる体制が不可欠です。外部制作に頼っていた時代は、コスト・スピード・修正の制約から全製品シリーズを網羅することが難しかった。内製化によってその制約を取り除いたことが、戦略を実行できる状態への転換点となっています。
「動画が組織の土台を強くする」──波及する内製化の効果
── 取り組み開始から数年。動画コンテンツが組織にどのような変化をもたらしていますか。
國安さん
新製品ごとに動画コンテンツを用意して配信できる体制が整ってきたこと、展示会での製品のブランド動画を自社制作できるようになったことが、まずわかりやすい変化です。
齋須さん
もうひとつ、社内への波及が起きているのが嬉しいことです。当初は社外向けの製品説明動画からスタートしたのですが、そこに社内向けの営業マニュアル動画も加わっていった。それを見た別部署から、「機械操作のマニュアルを動画にしたい」という声が出てきて。紙面マニュアルよりも動作が伴う映像の方が確実にわかりやすいですから、動画という選択肢がじわじわと社内に広がってきた感覚があります。
栁瀬さん
まだ道半ばです。営業現場での活用定着、組織全体へのさらなる浸透という課題は続いています。ただ、「動画が組織の土台を強くする」という手応えは確実にある。重要なのは、動画を特別なものとして扱わないことだと思っています。まず「当たり前に動画がある環境」を作ることが、組織を強くする第一歩。特別な取り組みではなく、日常の仕組みとして溶け込んでいくことが目標です。
動画の内製化がもたらしたのは、制作コストの削減にとどまりません。「発信できる情報の量と速度」が上がることで、お客様との接点が増え、社内でも動画を活用しようとする動きが生まれる。その連鎖が、マーケティング戦略全体の実行力を底上げしています。
今後の展望――製品の価値が自然に伝わり続ける世界へ
── 今後はどのような方向で、マーケティングの取り組みを発展させていこうとお考えですか。
國安さん
社内には紙の提案書をたくさん発信している部署があります。そのうち動画化した方が伝わるものを、順次、動画コンテンツに転換していきたいと考えています。情報の受け手にとって理解しやすい形に変えていく、という発想ですね。
齋須さん
少し先の話ですが、コミュニケーションを生む動画、というものにも興味があります。見るだけで終わるのではなく、社内で会話のきっかけになるようなコンテンツ。動画がより日常的なコミュニケーションツールになれば、情報系のコンテンツも自然ともっと活用されていくと思うんです。実現にはハードルがありますが、目指したい方向のひとつです。
栁瀬さん
究極的には、私たちが発信するコンテンツを見ていただくだけで、製品の良さや価値がきちんと伝わり、自然に選んでいただける状態をつくりたいと思っています。2年後か3年後かはわかりません。ただ、そこに向けて愚直に積み上げていくことが、今の私たちの仕事だと思っています。
「私たちのコンテンツを見ていただくだけで、製品の良さが伝わり、自然に選んでいただける状態をつくりたい」
シーピー化成株式会社
本社 岡山県井原市東江原町1516番地
設立 1971年9月
売上高 663億円(2026年2月期)
従業員数 1,169名(2026年2月末時点)
事業内容 プラスチック製簡易食品容器の製造、販売並びに食品包装資材の販売