現在、さまざまな自治体がPR動画を作成しています。YouTubeなどの動画サイトを活用すれば、多くの人々に観てもらうことが可能で、その制作方法も自作・外注・コンテストによる募集など多岐に渡ります。ユニークなアイデアでヒットした動画10作品を例に挙げ、その内容を紹介するとともに、ヒット作品の傾向を分析していきます。
目次
自治体のPR動画とは
自治体のPR動画とは、市町村・都道府県などの自治体が、その魅力を広報するために作った動画のことを指します。数十秒から数分程度のものが多く、2018年には年間700本あまりが制作される、という戦国時代の様相を呈しています。
近年の爆発的なPR動画の増加の背景には、2つの理由があります。第一に、現代人は日常的にスマートフォンで動画を視聴するため、動画による宣伝効果が従来より高まっていること、第二に、2015年以降は総務省によって助成金が交付されるようになり、制作費用を抑えられるようになったことが挙げられます。
今や自治体は、動画によって効率的に広報を行える時代、つまりYouTube活用が自治体PRの鍵を握る時代となりました。
しかし、株式会社テムズが2018年6月に実施した調査によれば、自治体PR動画のおよそ半数の再生数が1,000回未満でした。1万回以上視聴された動画は全体の15%程度しかなく、必ずしも成功しているとはいえません。そんな中で、数万回あるいは100万回以上の再生数を誇る動画も登場しており、一体何が明暗を分けたのか、その成功例を一つずつ見ていきましょう。
参照元:NHK政治マガジン「思わず二度見 自治体PR動画の世界」
コミカルで前向きになれる「波佐見町は永遠の輝き」
陽気な若者が歌い踊りながら町を駆け巡り、その魅力を紹介する内容です。
タイトルは、デビアス社のキャッチコピー「ダイヤモンドは永遠の輝き」をもじり、街の魅力を宝石に例えた万人受けを狙ったものです。想い人に婚約指輪を届けるストーリーが基軸となっており、コミカルなオチもついて、さわやかな余韻を与えてくれます。「犬神家の一族」風に田んぼに突き刺さる青年など、所々にクスッとするパロディが印象的です。
劇中歌は、名所を簡潔に解説しながら、リズムよく地元の方言が混ぜ込まれており、自然に波佐見町への親しみを持てる内容となっています。
長崎県波佐見町「波佐見町は永遠の輝き」(2016年1月発表)
名曲の替え歌「呉IN-呉IN」
呉市のマスコットキャラクター「呉氏」が、THE BLUE HEARTSの名曲「TRAIN-RAIN」の替え歌を熱唱しながら、呉の魅力を語る内容です。
数多くのCMやPVを手掛けた、実力派映像ディレクターの池田一真氏による演出のもと、ハイクオリティの映像で、呉の美しい大自然とおすすめスポットが紹介されています。海上自衛隊の協力を得た壮大なロケ、子どもたちの扮装するミニ呉氏など、見どころが盛りだくさんです。
呉氏が若き日の思い出を振り返るストーリーで全体をまとめつつ、曲に合わせて何度も「呉」という言葉が繰り返され、自然に呉市に対する親近感が湧くようになっている点もポイントです。
広島県呉市「呉IN-呉IN」(2018年2月発表)
最初から見返したくなる「ンダモシタン小林」
旅行者風のフランス人男性が、小林市の不思議な個性とその魅力を語る内容です。
小林市の抱える一風変わった個性の数々に笑いを誘われますが、最後まで観ると、実はこの男性がフランス語でなく、宮崎西部の方言「西諸弁」を喋っていることが明らかになります。わざわざ日本語字幕がついていること、独特の抑揚であることなどから、最初はフランス語にしか聞こえず、種明かしをされた後は思わず最初から見返したくなります。
このアイデアによって、自然に何回も繰り返して再生されることに成功しています。
宮崎県小林市「ンダモシタン小林」(2015年8月発表)
本格映画のクオリティ「COME ON!関門!」
関門海峡に巨大怪獣「カイセンドン」が現れ、町がパニックになる内容です。
フグ、カニ、タコをモチーフとした怪獣のデザインで、地元の海産物をPRしつつ、潮の流れが非常に激しい環境の特色を、怪獣も溺れてしまうというオチで表現しています。
「シン・ゴジラ」のスタッフが手掛けることによって、本格的な怪獣映画に劣らないクオリティで、大きな話題を呼びました。登場人物が英語を喋ることで、海外観光客への訴求も狙っており、2021年現在で再生数がおよそ1億8,000万回にも達する人気作品となりました。
福岡県北九州市・山口県下関市「COME ON!関門!」(2017年3月発表)
市民3,058人と一緒に踊りたくなる「1000人クッキーダンス」
市歌である「笑顔のまち永遠なれ」に合わせて、総勢3,058人の久喜市民が踊る内容です。
思わず真似したくなるポップかつキュートなダンスで、視聴者を惹きつけて話題を呼び、市内でもさまざまなイベントに取り入れられるなど、市を代表するPR映像となりました。その後も音源を一般配信して、「クッキーダンス踊ってみた」動画コンテストを開催するなど、継続した試みが行われています。
ゴダイゴのタケカワユキヒデ氏によって作られた、曲の本格的なクオリティもさることながら、その歌詞は市民アンケートをもとに作られており、地元の意見と願いが強く反映された内容となっています。
埼玉県久喜市「1000人クッキーダンス」(2016年12月発表)
低予算なのにふるさと納税が7倍に「小諸がアツ・イー!本篇」
小諸市のマスコットキャラ「こもろん」が、市を襲う悪の組織に立ち向かい、名産品で和解する内容です。
戦闘員の奇声「イー」と「いい」をかけて県の魅力をPRし、その素朴な演出に、思わず頬が緩んでしまいます。宣伝の基本である、名産品をおいしそうに食べることがしっかり押さえられており、「こもろん」の中には予想外な人が入っていたというオチから、意外性もしっかり確保しています。
再生回数が5万回を超え、ふるさと納税額が7倍に激増するなど、成功を収めた本作ですが、すべての工程を市役所員が自ら手作りすることによって、予算をわずか9,500円に抑えています。
長野県小諸市「小諸がアツ・イー!本篇」(2016年12月発表)
見事な逆転の発想「最高の“ない”がここにある」
「ない」を連呼しながら逆に魅力を語る、一風変わった内容です。
「ファミレスがない」「ゲームセンターがない」といった否定的な導入で目を引きながら、しかしもっと素晴らしい施設があることを主張するフォローによって、町の良さを強調しています。途中から「遮るものはない」など、「ない」という言葉自体もポジティブな用法に変わっていき、最後は「独りぼっちじゃない」と温かい言葉で締めくくられます。
全体を通して、町の環境が快適であることを自然に説明し、移住を検討する視聴者に、希望と安心を導く作りとなっています。
和歌山県紀美野町「最高の“ない”がここにある」(2016年1月発表)
35億円の経済効果に「シンフロ」
バスタオルを巻いたシンクロチームが、大分県の名湯を訪れて、見事な演技を披露する内容です。
機敏なシンクロと音楽に合わせて、景色はどんどん移動していき、「おんせん県」を自認する大分の多種多様な浴場が紹介されます。雄大な露天風呂だけではなく、庶民的な銭湯やプールなども網羅しており、メリハリがあって視聴者を飽きさせません。
元日本代表選手の率いるシンクロチームと、500人の県民エキストラを投入した大作です。その優れた演技力と、利用者の横で突如シンクロを始めるシュールさにより、高い娯楽性を生み出し、数多くのテレビや新聞に取り上げられました。県によれば、35億5,000万円の経済効果があったとされています。
大分県「シンフロ」(2015年10月公開)
動画の反響でゲームまで生まれた「宇治市~宇治茶と源氏物語のまち~」
ゲーム仕立ての宇治PR動画を、実況者たちがプレイする内容です。
往年の2Dアクションゲーム風の画面になっており、公家のキャラクターが混沌とした架空の宇治市を突き進む、非常にシュールな内容で、有名実況者による軽妙なツッコミがさらに笑いを増幅します。要所で挿入される、まじめな観光案内もかえって引き立ち、宇治の魅力を楽しく学習できます。
公開後、視聴者から「やってみたい」という声が殺到し、実際にプレイできるゲームアプリも作られました。コントローラーまで宇治茶や団子になっているなど、一層シュールですが、しっかりと市の魅力をPRする内容は変わっていません。
京都府宇治市「宇治市~宇治茶と源氏物語のまち~」(2017年3月発表)
隠された仕掛けも楽しめる「四国ネオ遍路」
四国88カ所のお遍路巡りと見せかけて、近未来人風の男女が、四国内のおすすめ観光スポット88カ所をスマホで撮影していく内容です。
少しデザイニングされたお遍路装束を着た二人を中心に、クールかつおしゃれな演出で行われるスポット紹介は、テンポがあり、短い時間の中で四国全域の魅力を伝えています。一度に88カ所も紹介するだけあって、1カ所ごとの映像は選び抜かれており、モデルも相まって絵になる風景のオンパレードです。これらの映像がスマホを意識した縦長の画面で流れていき、メインターゲットであるスマホで観ると、より没入感が増す作りとなっています。
ちなみに、逆再生バージョンを観ると、謎の言語と思われた部分も意味がわかるなど、小粋な仕掛けが隠されています。
香川県高松空港「四国ネオ遍路」(2018年3月公開)
【お役立ち資料】集客力をUPするための
魅力的な店舗・施設紹介をするための動画活用のポイント
このeBookでわかること
・施設紹介動画を活用した集客が増えている理由
・動画活用のメリット
・利用シーンや活用事例
自治体PR動画の成功事例から学べるポイント
以上、10件の成功したPR動画を紹介しました。いずれも魅力あふれる内容で大きな話題を呼びましたが、これら10作品には一体何が共通しているのでしょうか。
拡散したくなる話題性がある
第一に重要なのが、動画のクオリティやアイデアの楽しさなど、特別な話題性を持っていることが挙げられます。
PRである以上、大勢の人に観てもらう必要がありますが、印象に残らない映像では、一度観たきりで終わってしまい、人に紹介してもらえません。
逆に、視聴者がその動画を一つの作品としておもしろいと感じ、人に紹介したくなるような魅力があれば、動画は視聴者を通じて、その友人・知人へと拡散していき、大きな宣伝効果を生み出せるでしょう。
地域の魅力や個性を表現している
第二に重要なのが、その地域が持つ唯一無二の魅力を、明確にアピールできているかどうかが挙げられます。
ただ動画としておもしろいだけでは、その場では楽しめるものの、地域へ訪れたい気持ちを呼び起こす訴求力にはつながりません。動画再生数は伸びたが観光客と移住者は増えなかった、などという状況になっては本末転倒です。
目を引くおもしろさを確保しながら、思わず訪れたくなるような地域の良さを、過不足なく訴えていくことが重要といえます。
自治体PR動画の制作費
制作費は長さにもよりますが、外注すると1本でおおむね数百万円かかり、芸能人を起用すると2,000万円近くかかるケースがあります。また、大予算を投入して税金による補助を受けながら、再生数が伸びず失敗してしまうケースも少なくありません。
主な原因として、制作会社に資料だけ渡して、制作を丸投げしてしまうことが挙げられます。自治体に特別な思い入れを持っていない外部の制作会社は、受け取った資料を音楽に合わせて流すだけの動画を作らざるを得ず、無難で目を引かない仕上がりになってしまうのです。
その一方で、自治体が極力自前で動画を制作することで、制作費はぐっと抑えられます。内容においても、内部をよく知る関係者ゆえの愛にあふれたアイデアを盛り込めるでしょう。
動画を自前で作るなら「Video BRAIN」
そういったアイデアを実際の作品で表現するにあたって、動画の制作経験がないと技術的な不安が残ってしまいます。「Video BRAIN」なら、初心者でも直感的な操作でわかりやすく、簡単に動画を制作できます。
専門的な技術や煩雑な操作は必要なく、使いたい素材をアップロードするだけの簡単な操作で行えます。また、アイコンやBGMなどの無料素材も豊富に収録しており、多様な作品の制作が可能です。
さらに、テンプレートを使えば、ワンタッチで整った構成が実現されるため、クオリティの高いPR動画の制作を期待できるのです。
詳しい導入事例はこちら
https://video-b.com/case/case_category/videos/?scene=pr
まとめ
自治体の広報において、PR動画は最も有効な手段の一つです。多くの人に観てもらえる可能性があり、成功すれば大きな経済効果を生むことも実証されています。
効果的なPR動画を制作するためには、まず動画作品としておもしろい仕上がりであること、そして自治体の特色がきちんと説明されていることが必要です。もちろん、費用もできるだけ安く抑えることが望ましいといえます。
そのためには、なるべく自治体が自主制作するのがベストで、選択肢の一つとして、Video BRAINの活用がおすすめです。簡単な操作で高い品質の動画を制作できるので、自治体の魅力を動画に表現するにあたって、大きな助けとなるでしょう。
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