「シズル動画」は簡単にいうと、「食欲をそそるような料理動画」です。
料理動画を作成する際には、この言葉を把握しておくと良いかもしれません。
この記事では、シズル動画の特徴や料理動画の制作時に取り入れるメリットなどをご紹介します。また、シズル動画特有の撮影手法や実際に公開されているシズル動画の事例も紹介するので、ぜひ活用してみてください。
目次
飲食業界が大注目の「シズル動画」とは?
シズル動画とは、肉の焼ける音や卵の黄身がトロリと溶けた瞬間、おいしそうな匂いが香ってきそうな湯気などを撮影した動画のことです。
食欲を刺激するような音や映像を収めることで、ユーザーの五感を刺激し購買意欲を高めます。
シズル動画の「シズル」とは、ステーキや揚げ物など、食材がジュージューと音を立てるという意味を持つ「sizzle」という英単語からきています。シズルという言葉がマーケティング用語として定着するきっかけとなったのは「ステーキを売るな、シズルを売れ」(エルマー・ホイラー著)からだといわれています。
この本の刊行は1937年。なぜ再びシズルが注目をされているかというと、YouTubeをはじめとした動画媒体および動画広告によるマーケティングの盛り上がりがあるからです。
現在、飲食業界の動画広告や一般人の料理投稿動画などにおいて、「シズル感」は視聴回数アップ、クリック率アップのための重要な要素になりました。
シズル動画のメリット
企業がシズル動画を取り入れるメリットは、どこにあるのでしょうか。
ダイレクトな訴求力
ステーキの焼ける音やまな板を叩く包丁の心地よいリズム、みずみずしい野菜にドレッシングがかかるシーンなどは、人間の食欲・五感を刺激する要素が満載のため、説明やセールストーク抜きのダイレクトな訴求が可能です。
離脱者の多いといわれている動画の最初の15秒をシズル感のある動画で構成することで、視聴継続数を伸ばしやすくなります。
参照:視聴者維持率を測る – YouTube ヘルプ
参照:クリエイター アカデミー – YouTube
購買メリットを具現化しやすい
シズル動画の特徴の一つとして挙げられるのは、主観目線が多いということです。
料理を食べる人や料理をする人の視線で撮影される傾向があるため、ユーザーは動画に引き込まれやすく、料理のおいしさがイメージしやすい特徴があります。おいしさ(=購買や来店のメリット)をバーチャル体験してもらうことで、次のアクションを起こしてもらいやすくなるのです。
マーケティングにシズル感を取り入れることの重要性を広めたのは、先ほど紹介したエルマー・ホイラーです。
彼は「ホイラーの法則」の第一条で「ステーキを売るな、シズルを売れ」と主張しました。
これは、「商品自体を売ろうとするな、顧客が欲しいと思う理由をアピールしろ」ということです。
自分のなかで生まれる感情は受け入れやすく、また増幅しやすい傾向があります。どのような満足感・期待感を求めているのか顧客目線で考え動画広告を作ることで、集客や売上の向上が見込みやすくなるでしょう。
ホイラーはこれを「You能力」と呼び、重要性をアピールしています。
思わず食べたくなる!シズル動画の事例
ここでは、シズル動画のさまざまな事例を紹介します。
専門業者によって撮影されたものから、個人で撮影されたものまで幅広く取り上げました。
動きのある料理:専門業者が撮影
専門業者によって撮影されたシズル動画です。
照明の当て方やスローモーションにも耐えられる高画質などが特徴です。
現在は、特別な知識がなくても動画編集ができるようになりましたが、料理の撮影のみプロに依頼するのも良いでしょう。専用の撮影スタジオが利用できたり、レタッチャーソフトによって多重合成ができたりするなどのメリットがあります。
どんどん亭:水分がポイント
水分を強調するのがシズル動画を作るコツです。この「どんどん亭」のお好み焼きの紹介動画でも、ソースがしたたる様子や艶っぽさが、これでもかというほど強調されています。
食材や料理によってはむずかしい場合もありますが、ソースや調味料などで工夫すると、シズル動画としての完成度が高まります。実際に、クッキーのようなパサパサした動画より、タレがトロっとしているところを見せる動画のほうが、視聴回数が増える傾向があります。
参照:福岡のお好み焼き屋「どんどん亭」 おいしいメニュー動画
鶏鍋:主観目線がポイント
シズル動画の制作では、おいしさをバーチャル体験できる演出にするのがポイントです。
この動画では、熱々の鶏鍋が映った後に、箸で鶏肉をつかんでいるシーンが挿入されています。
食べる瞬間がイメージしやすくなるため、訴求力アップが期待できます。
温かい料理はグツグツと煮えているところを映すなど、温度が伝わるようにするのもポイントです。
参照:料理動画撮影「鶏鍋」シズル感とライティングでグツグツ!【10秒サンプル】
ハイボール:個人での手軽な撮影も可能
動画制作を外注に任せず、自分のお店・企業のスタッフで手軽に制作したい場合も多いと思います。
この動画はハイボールのシズル動画を撮影する様子と、撮影したシズル動画が紹介されています。この動画を見ると、1人で撮影と動画編集をしても、質の高いクリエイティブが完成させられることが分かるでしょう。
このような小規模なスタイルであれば、例えばアレンジ料理を自宅で撮影するなども比較的簡単にできます。
また、少人数で経営しているお店でも、厨房の様子や、新作メニューや期間限定メニューの紹介などを手軽に配信できるでしょう。SNS広告として使うことで、拡散効果が生まれることも期待できます。
参照:自宅で出来るPV撮影のやり方 – ハイボールをシズル感たっぷりに表現してみた!
M&S Food:アート系シズル動画
カラフルさを前面に打ち出し、アート系のシズル動画に仕上げているのがM&S Foodです。
シズル動画とアートのような動画・静止画との組み合わせ方や、音楽と合わせたテンポのよさなど参考にしてみたい要素が盛りだくさんです。
シズル動画の特徴の一つは、食材の鮮やかさを強調することです。
食材の組み合わせや、動画編集時にコントラストを効かせるなどで、なるべく彩りを出してみましょう。
食材の関係でカラフルな動画にならない場合は、食器や付け合わせの野菜で調整するのも良い方法です。
参照:M&S Food: Adventures in Wonderfood – TV AD 2016
キャンプでステーキ:関連用品への誘導
この動画はソロキャンプでステーキを焼く動画が映されたシズル動画です。動画を見ると、シズル動画の特徴の一つである「料理のプロセスを見せる」というセオリーが使われていることが分かります。
また、この動画を最後まで見るとシズル動画を導入・つかみのように用いて、最終的にはソロキャンプの楽しさを訴求していることがわかります。
実はこれ、視聴した人がキャンプ用品の購入サイトに誘導するための動画なのです。食品や料理の紹介のみが、シズル動画の活用方法ではありません。さまざまな工夫でマーケティングに応用できます。
参照:【ソロキャンプ】夏の渓流野営🥩ひとりキャンプでステーキ食って寝るsolo camping wildlife wagyu steak料理 bushcraft Campfire Cooking
まとめ
シズル動画とは、簡単に言うと食欲をそそらせる動画のことです。
食材の彩やみずみずしさ、食材が焼ける音やグツグツ煮える様子など五感に訴える動画に仕上げましょう。
調理のプロセスを見せることや主観目線のカメラアングルなども、訴求力アップのポイントです。
この記事で紹介したようなシズル動画の事例はYouTubeなどにたくさんあるので、自社の動画制作の参考にしてみてください。アート路線のシズル動画やシズル動画制作を得意とするYouTuberの作品などもあります。
トレンドの演出も取り入れることで、効果的な動画広告が作れるでしょう。
動画制作というと難しく思うかもしれませんが、専門的な知識がなくても直感的な操作で手軽に動画制作できるツールも登場しています。シズル動画を自社のマーケティングに取り入れましょう。
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