企業が売上を改善するためには、さまざまな手法があります。顧客一人当たりの単価を上げたり、商品自体の価格をあげたり、売上に直接係わる施策を打つことで売上の改善につなげることが可能です。しかし、新規顧客の開拓や既存顧客との関係を継続するためには、ただ価格を上げるだけでは売上改善は実現できません。価格を値上げするためには、納得させるだけのベネフィットがなければ、ユーザーは離れてしまうからです。
この記事では、売上を向上させるための改善策や具体的なアイデアについて詳しく解説します。
目次
売上改善のために知っておきたいこと
売上をアップさせる対策を立てる前に、売上の本質を理解しておく必要があります。売上改善のためには、以下の点を意識することが重要です。
売上を構成する要素を把握する
一般的な売上は以下の計算式で求められますが、売上を向上するために構成される要素を理解した上での計算式を組み立てる必要があります。
売上 = 顧客数 × 購入頻度 × 顧客単価 |
売上は多くの顧客を集めるだけではなく、商品の購入やサービスの成約率を向上させることも重要。顧客1人あたりの顧客単価も、売上に直結する大切な要素です。
それぞれの要素を高めて自社にあった計算式の構成から結果的に全体の売上アップにつながります。
コアな顧客が売上の大部分を占める
パレートの法則を売上に当てはめると、売上の80%は20%のコアな(優良な)顧客が構成しています。このことより、2割の優良顧客を差別化することで、売上を維持・向上できるようになるというわけです。
例えば、優良顧客に対しては、ベテランの経験豊富な担当者をアサインすることで手厚いサービスを行うといった具合です。ロイヤリティプログラムを用意し、優良顧客専用の特典を用意することで継続した関係構築と、さらなる売上げアップを図ります。
また、優良顧客の共通点を分析し、年齢や性別、職業や年収などの属性による共通点を洗い出すことで、ターゲットを絞った新規顧客開拓のアプローチが可能となります。
潜在的な顧客の売上を改善する
大部分の売上を占めている顧客以外で、例えば定期的な売上周期がある顧客や適切なタイミングでアプローチができておらず売上につながっていないケースも多くあります。対策や優先順位を決める前に売上改善に注力すべき顧客の整理も行っておくと良いでしょう。
季節やイベント要因による売上アップ
特に一般向けは顕著に外的な季節やイベント要因による売上の変動が多い傾向にありますが、ビジネス取引においても「決算時期」「年間営業日」「イベント・展示会の実施数」などによっても大きな売上の変化があります。売上全体の比率も含めて考慮すると良いでしょう。
売上を向上させるための改善策
売上を向上させるためには、以下にあげるような改善策を実施する必要があります。
【売上を向上するための改善策】
- 優良顧客のリピーターを増やす
- 客単価をアップさせる
- 新規顧客・見込み客を獲得する
- 商品価格の見直し
- 適度な目標を設定する
- 無駄なコストをなくす
ここでは、上記にあげるそれぞれの改善策について詳しく解説します。
優良顧客のリピーターを増やす
新規顧客を増やすことも重要ですが、一度購買履歴のあるリピーターを増やすことも、継続した売上を得るために非常に重要です。リピーターを増やすための具体的な施策としては、以下のようなことが挙げられます。
【リピーターを増やすための施策】
- ファンの育成
- ファンからのフィードバック
- コミュニティマーケティング
- DMなどによる継続的なコミュニケーション
- ポイントカードの導入
- 定期購入・サブスクの導入
- 顧客ニーズの見直し
自社商品やサービスのファンを増やすため、さまざまなマーケティングによってファンを中長期的に育成していくことが大切。頻繁に商品を利用してくれているファンは、自社も気づいていない改善点を感じている可能性が高い傾向です。アンケートを活用してファンからのリアルなフィードバックを取り入れ、商品やサービスの改善をしていくことでリピーターを増やすことにつなげていきます。
また、企業とユーザー、ユーザー同士が交流できるコミュニティを作ることで、そこで得た情報を活かすことでリピーター増加へつなげるのも一つの方法です。専用のコミュニティサイトの立ち上げや、SNSや動画配信を活用してユーザー同士の交流を促します。また、イベントを開催してオフラインでのコニュニティでユーザーとのコミュニケーションを図る手法もあります。
時代の流れと共に既存の顧客のニーズも変化していくため、ニーズの変化をキャッチして対応していくことにより顧客離れを防ぎ、リピーターを増やすことが大切です。
客単価をアップさせる
もし、集客数や成約率が下がってしまったとしても、客単価をアップさせることで売上を維持しやすくなります。客単価をあげるためのアイデアの例は、以下の通りです。
【客単価をアップさせるためのアイデア】
- 季節ごとのキャンペーンを行う
- 次回利用時に使用できる割引クーポンを配布
- セールの案内をメルマガで配信する
- 他の商品を紹介する
- 購買履歴から同じ商品でもグレードの高い商品を提案する
客単価を上げるための具体的な方法としては、顧客が購入した商品と関係した他の商品を提案する「クロスセル」や、既に購入して現在使用しているものと同じ商品で、もっとグレードの高い商品やサービスを提案する「アップセル」という手法があります。
クロスセルについては、ハンバーガーショップで顧客がハンバーガーとドリンクを注文した際、店員が一緒にポテトを進めるという例がわかりやすいかもしれません。
アップセルは、例えばオンラインショップで3,000円の化粧品を閲覧している際に、「他のユーザーがよく購入されている商品」として5,000円の化粧品を表示させ、上位商品の購買を促すような施策です。
これらの手法をうまく活用し、少しずつ客単価を上げることで組織全体の売上向上につながりやすくなります。
新規顧客・見込み客を獲得する
新規事業や、開業間もないオンラインストアなどは、特に新規顧客や見込み客を早期に獲得する必要があります。以下にあげるような広告などの施策によって、自社サービスや商品の認知度を向上しなければなりません。
【新規顧客・見込み客を獲得するための施策】
- チラシ・広告
- 動画広告
- Web広告
- イベント開催
- Webサイトの構築
- オウンドメディアの導入
- SNSの公式アカウントの活用
- 紹介制の導入
- 新規向けの特典
現代における広告費は、テレビや新聞などの4大マス広告をインターネット広告が上回っています。企業は、Web広告やSNSマーケティングを活用したインターネットを中心とした広告を活用する時代となりました。
自社のWebサイトを構築し、オウンドメディアにて同業界の知識やノウハウを解説した記事を定期的にアップすることでサイトへの流入を促し、資料請求や問い合わせにつなげる企業が増えています。
また、企業がSNSの公式アカウントを作成し、ユーザーと「いいね」などのコミュニケーションをとることでファンを増やすケースも少なくありません。ユーザーがお気に入りの商品やサービスを拡散してくれることも期待できるため、コストのかからないマーケティング手法として注目されています。
SNS広告では、公式アカウントと関連のある商品やサービスの動画広告を違和感なく自然に配信することもメリットの一つです。
価格の見直し
リピーター獲得につなげる手法として、商品やサービスの価格の見直すという手法もあります。ただし、ただ価格を安くすれば全体の売上が向上するとは限らないため、競合他社との兼ね合いを考慮しながら、適切なタイミングで価格の見直しを行いましょう。
また、値下げしたままでは、収益性を圧迫してしまいかねません。将来的には価格を元に戻すことも必要なため、他社の状況を鑑みて値上げが可能なタイミングを見計らって価格を戻すことも採るべき施策の一つです。
無駄なコストを減らす
組織全体の収益性を上げるためには、無駄なコストとなり得るものを削減する施策が必要です。無駄なコストの具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
【無駄なコストの例】
- 過剰在庫
- 不良品
- 接待交際費
- 旅費・交通費
- 電気・通信費
- 事務所・倉庫の家賃
- 業務プロセスのボトルネック
- 費用対効果を期待できない広告費
蓄積された数値を分析することで、接待交際費や旅費交通費などのコストは、ある程度すぐにでも改善策を打てるでしょう。他に、削減できるコストとして、業務プロセスのボトルネックという考え方があります。
業務プロセスのボトルネックとは、組織全体の活動において業務プロセスの一部分が遅延することにより、業務全体をスピ-ド低下へと影響させているポイントを指します。ボトルネックがあることによって、生産性が落ちることで収益性を低下させていることに繋がるため、無駄なコストの部分として考えます。
ボトルネックを発見する手段としては、「属人化している業務がないか」「特定の部署に業務が集中していないか」「離職率が高い部署はないか」などを調査し、当てはまる業務はボトルネックを疑います。
また、費用対効果を計算することで無駄なコストを特定することが可能です。ROI(Return On Investment:投資利益率)は、以下の計算式で求めます。
ROI(%)=(売上-費用)÷費用x100
例1) 100万円のコストをかけて行ったイベントが250万円の売上だった場合、ROIは下記の通りです
(250万円-100万円)÷100万円×100=150%
ROIが150%のため、今回は50%の費用対効果があったという結果になります。ROIが100%を超えている場合は利益を確保したことになり、ROIの値が大きいほど、費用対効果が大きかったことになるわけです。
例2) 430万円の費用をかけて行ったイベントが950万円の売上だった際のROIは以下の式で求められます。
(950万円-430万円)÷430万円×100=120%
ROIが120%のため、①のイベントの方が費用対効果の高かいことがわかります。
売上アップの取り組みに成功した事例
コロナ禍により、飲食業界の厳しい状況の中、マクドナルドは顧客のニーズを分析することで、デリバリーやドライブスルーサービスの強化を行うことで、8月の既存店売上が12.4%増を成功させました。
1回目の緊急事態宣言が発令された際、自社で独自に行う「マックデリバリー」の需要も高く、2020年4月の前には「非接触デリバリーサービス」を実施。いち早く非接触の提供スタイルを取り入れたことで、来客数が減る以上にデリバリーでの売上が増加し、結果として全体の売上がアップしたという成功事例です。
新型コロナウイルスの影響で、顧客ニーズや行動の変化を捉え、新しい提供スタイルを戦略的に取り入れたことが、マクドナルドが成功したポイントです。
まとめ
売上を改善させるためには、さまざまな方法があります。新規顧客を獲得することはもちろん、リピーターを増やしたり、客単価や商品の単価を上げたりすることも必要です。時には、競合他社の状況に合わせて商品価格を下げる手法も検討する必要があるかもしれません。直接売上に関連することだけでなく、無駄なコストを削減して妥当な目標設定をすることも重要です。今回ご紹介した内容を参考にしていただき、売上改善のヒントとしてお役立てください。
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