営業活動における売上進捗管理とは、設定された目標と現在の状況にどのくらいの差があるのか確認しながら、目標を達成できるよう進捗管理を行うことを指します。進捗管理をすることで、目標に対して現状との大きなギャップがあれば、必要なタイミングで改善策を講じることも可能です。では、具体的にどのようにして売上の進捗管理を行えばいいのでしょうか。
この記事では、売上を向上させるための進捗管理の具体的な方法と、案件管理のコツについて解説します。
目次
営業における売上進捗管理の役割
営業における売上進捗管理とは、経営戦略や売上目標に基づいて営業活動における手順を考案し、プロセスごとの結果を計測・分析しながら管理することです。
成果に直結する売上の管理手法ですので、効果的なやり方を確立できれば大きく売上を向上できる可能性があります。
営業組織においては、かかげた目標と現状との差を明確にし、そのギャップを埋めるような戦略を考えて実践して組織全体の行動を管理することが重要です。
営業における売上進捗管理でできること
- 正確な売上予測から売上アップを図る
- 営業のスケジュール管理
- 業務の効率化
- 人材育成
一方、営業の売上進捗管理を行っていない場合、以下のようなことが起こる可能性があります。
営業管理を行っていない時の課題
1.明確な目標設定ができない
売上という「営業活動に対する数値的な結果」から導き出した目標ではなく、営業担当者が各々思いついたことを目標としていては、組織としての方向性も定まらず明確な目標設定ができません。
2.案件情報が見えないのでミスやトラブル時の対応が遅れる
案件の進捗状況をリアルタイムで確認できていないと、ミスやトラブルを未然に防止できず、発生した時の対応も遅くなってしまいます。顧客からのクレームにもつながる恐れもあり、顧客からの信用を失いかねません。
3.短期的な成果に目を向けてしまう
売上進捗管理を行うことで、設定した最終的な組織目標を目指して営業管理を行います。売上進捗管理を行わない場合、その場しのぎの売上管理となってしまうことから、目先の成果ばかりを追いかけてしまう組織となってしまうため注意が必要です。
4.人材育成がうまくいかない
売上の進捗管理は、主に営業ツールを活用してリアルタイムな案件進捗を管理し、活用した記録はシステムに蓄積されていきます。このような管理を実施しなければ、自社特有の成功法など、営業活動の情報を蓄積することができないため、新人や若手の営業担当者へのトレーニングに活かせません。
5.個人のスキルに依存してしまう
営業組織内で、案件情報の共有を行わなければ、営業担当者個人のスキルや能力に依存してしまう営業スタイルとなり、成績に大きなバラツキが生まれてしまいます。一部の営業担当者へ売上を期待してしまうこととなり、個人のコンディションによって売上が上下してしまうという大きなリスクとなってしまいかねません。
6.同じ顧客に複数の人がアポを取るなど非効率
営業組織内で情報が共有されていないことで、同じ顧客に対してチーム内の複数の営業担当者がアプローチすることもあり、非効率な営業活動となってしまうでしょう。
営業における売上進捗管理に必要な項目
営業における売上進捗管理に必要な項目は、以下の通りです。
営業進捗の管理項目 | 概要 |
目標管理 | 現状と設定した目標とのギャップを明確にし、設定した目標を達成できるよう進捗を管理する |
取引先・顧客管理 | 顧客の会社情報、窓口担当者の情報や連絡先、自社との商談状況や契約内容など顧客ごとの情報管理 |
案件管理 | 営業案件ごとの進捗状況を確認・管理することです。営業担当者への案件の割りふりや、案件発生から商談、提案から成約までの進捗管理 |
行動・スケジュール管理 | 営業担当者の営業活動における行動や、業務プロセスごとにかかった時間を管理 |
モチベーション管理 | 営業担当者のやる気やモチベーションを可視化して管理 |
人材育成管理 | 営業担当者に対して今後の営業としてのスキル育成のためのサポートを行う |
ここでは、それぞれの項目について詳しく解説します。
目標管理
目標管理とは、現状と設定した目標とのギャップを明確にし、設定した目標を達成できるよう進捗を管理することです。営業の売上管理において、明確な目標設定は必須。会社としての大きな目標から、営業組織としての最終目標を設定し、営業担当者個人の目標へ落とし込んでいきます。
目標の設定において注意すべき点は、「とても到達できない非現実的な目標設定」や、「期限ぎりぎりになっても目標達成の目途が全く立たないような目標」を立てないこと。なぜなら人は、到底達成できない目標に対しては「そもそもやる気が低下」してしまい、全く達成できなかった結果からモチベーションを落としてしまう人がほとんどだからです。
ぎりぎり達成できるかどうかの目標を設定するようにし、目標達成を積み重ねることによって営業担当者の自信へつなげるようにします。個人目標を達成できるよう、マネージャーがリアルタイムで進捗を管理し、目標達成のサポートすることが組織目標を達成する重要な施策です。
管理のポイントは、目標を細かく分けて設定することです。例えば、設定した売上の数値に対して、それを達成するための成約件数は何件か設定します。さらに、その成約件数を達成するために商談件数を何件達成するのか、といったようにブレイクダウンし、目標値を設定して管理していくのです。
売上目標を達成するためには、最終の目標値だけでなく短期的な目標値の設定が必要です。
【目標管理の項目】
- 売上目標
- 商談件数
- 受注数
- 受注単価
- 成約率/売上達成率
取引先・顧客管理
取引先・顧客管理とは、顧客の会社情報、窓口担当者の情報や連絡先、自社との商談状況や契約内容など顧客ごとの情報管理のこと。顧客情報をもとにして、顧客の現状にマッチした自社サービスや商品の提案が可能となり、顧客の課題やニーズを的確に把握した商談へと進めやすくなる点がメリットです。
顧客管理においては、以下にあげる項目を管理することで、顧客との関係性を構築していきます。
【取引先・顧客管理の項目】顧客会社概要顧客の担当者や決裁者連絡先現在の契約内容顧客維持率顧客満足度 |
蓄積されていく膨大な顧客情報は、部内で共有・一元管理しやすいよう、後述する営業支援ツールを用いて管理することが望ましいでしょう。
案件管理
案件管理とは、営業案件ごとの進捗状況を確認・管理することです。営業担当者への案件の割りふりや、案件発生から商談、提案から成約までの進捗管理、案件の優先順位の決定から案件ごとのアフターフォローまでを管理します。
これにより、最適なタイミングで顧客へのアプローチができるようになり、タイミングを逃すことなく成約に結び付けられるでしょう。
案件情報は、成約・失注にかかわらず管理されるため膨大になりやすいため、管理する際は一覧表を使うなどしてルールに則ってわかりやすく管理してください。
案件管理では、以下にあげる項目の管理が必要です。
【案件管理の項目】案件名有効商談数担当者のコメント商談の進み具合受注確度受注予定金額 |
行動・スケジュール管理
行動管理とは、営業担当者の営業活動における行動や、業務プロセスごとにかかった時間を管理することです。行動管理によって、1件あたりにかかった成約までの期間や、案件ごとに必要なアプローチ数などを把握することで、営業プロセス毎の課題が特定しやすくなります。
スケジュール管理とは、営業担当者ごとのスケジュールを管理することです。顧客のアポイントを取得した日や、最終提案の日程など営業担当者ごとに管理すること。マネージャーがどの案件に同行するかといったように、優先順位をつけやすくなります。
それぞれの管理に適した以下に挙げるような項目を設定し、営業担当者の行動やスケジュールを管理してください。
【行動・スケジュール管理の項目】アポイント数新規顧客獲得数案件ごとのアプローチ状況平均成約単価成約率顧客との商談時間提案書類作成時間会議・打ち合わせ時間移動時間営業担当者のスケジュール |
モチベーション管理
モチベーション管理とは、営業担当者のやる気やモチベーションを可視化して管理することです。営業
担当者のモチベーションを管理する目的には、以下が挙げられます
「営業活動のパフォーマンスを上げる」
「従業員のエンゲージメントを高める」
「離職を防ぐ」
従業員のモチベーションを可視化し管理することによって、健康状態や精神状態を定期的に把握し、モチベーションの低下が疑われた際は、定期的な1on1ミーティングや異動による人員配置を実施するなどです。
健康状態によって改善が必要であれば、業務量を軽減したり、日々の営業業務のやり方に対してアドバイスしたりすることが重要です。
【モチベーション管理の項目】仕事の評価人間関係の問題仕事の成績仕事に対するやりがい会社へ対する不満部署に対する意見健康状態ストレス度 |
数値化しにくい項目や表面化しにくい項目については、従業員へのアンケートや定期的な面談によって、思っていることや感じていることをヒアリングしてください。
人材育成管理
人材育成管理では、営業担当者に対して今後の営業としてのスキル育成のためのサポートを行います。営業担当者のスキルアップを促すことによって、成約率の向上や売上アップを期待できるため重要な管理項目です。
営業力の習熟度によって、足りないスキルを習得すべき項目として閲覧できるよう可視化することで、営業担当者ごとのスキルレベルを一覧で比較できます。さらに、営業チーム全体のスキルや習得度を可視化できるため、営業力をチーム同士で数値的に比較することが可能です。
こうすることで、弱みを改善するための営業スキルの研修項目を決められます。社内で研修を開催できなければ、アウトソースすることも一つの方法です。プレゼンテーション力や、提案資料作成、商談におけるヒアリング力など、営業担当のスキルアップを促せるような研修を実施してください。
【人材育成管理の項目】顧客との信頼関係構築力ロジカルシンキングスキルデータ収集・分析スキルプレゼンテーション力ヒアリング力ソリューション提案力提案書などの書類作成能力研修受講履歴習熟度 |
営業における売上進捗管理の運用方法
営業における売上進捗管理の運用方法は、以下の3ステップです。
ここでは、上記の運用方法について詳しく解説します。
項目を数値化する
売上進捗状況を管理するためには、数値化して可視化する必要があります。売上金額や成約件数であれば数値化しやすいですが、抽象的で数値化しにくい項目はどのようにすれば良いのでしょうか。
目標は、具体的で明確であることが重要のため、実際の行動を細かなタスクとして細分化することで、目標として設定できます。例えば、以下のように行動が「具体的でない目標」と、「良い目標」の立て方を比較してみましょう。
具体的でない目標の立て方
「顧客の課題を特定して良い提案をする」
「商談の成約率を高める」
良い目標の立て方
「ヒアリングシートを使用し、顧客の課題を特定する」
「テストクロージングを活用して、成功率を高める」
大切なのは、具体的にどんな行動をするのかまで考えることですので、実際にはさらに細分化してタスク化する必要があります。ヒアリングシートの活用であれば、「どんな項目をシートに記入するかを決める」とすることで、タスクを細分化することが可能です。
目標と現在の進捗の差を算出する
適切に運用されているか進捗を確認するためには、設定された目標と現在の進捗の差を算出する必要があります。目標の設定値と現状にあまりにも乖離がある場合、そのポイントに対して何かしらの是正対策を実施しなければならないからです。
【進捗の算出方法例】
営業活動を以下のようにステップごとに細分化します。
- アポイント取得
- サービスの説明、提案
- 顧客検討
- 契約条件交渉
- 契約成立
契約成立を100%として、それまでの各ステップに進捗度を設定します。
- アポイント取得(20%)
- サービスの説明、提案(40%)
- 顧客検討(60%)
- 契約条件交渉(80%)
- 契約成立(100%)
これにより、この案件の売上見込額は契約条件の交渉まで行けば、80%の確度で受注するであろうということが分かります。組織全体の案件についてこの計算方法を用い、進捗率○○%以上の案件の売上見込額を合計することで、現在の全体の売上見込額を算出することが可能です。それにより現在、目標達成が可能な状況であるかを、数値から客観的に判断できます。
目標額と現状の売上見込額が、あまりにも乖離があるようであれば、新規顧客開拓数の目標設定値を上げるなどの対策が必要です。
定期的に目標値と現状のギャップを確認することで、早期なる改善策を打てるようになります。
適切なフィードバックを行う
売上進捗管理においては、上司から部下に対して適切なフィードバックを行うことが大切です。実績をしっかり上司に見てもらっていると感じられれば、部下のモチベーションアップにつながります。
否定的な意見を伝えることであり、営業担当者のハングリー精神を引き出す目的があります。ただし、ネガティブな要素は相手によっては、「否定された」と受け取られる可能性もありますので、相手を傷つけないような言い方をするよう注意が必要です。
ネガティブな面だけでなく、しっかりと努力をしている点や良い点を肯定的な言葉で伝えることで、部下の承認欲求を満たし、意欲を向上させる効果が期待できます。ただし、改善して欲しいネガティブな要素も伝えない場合、振り返りをせずに満足してしまい成長しなくなってしまう可能性もあるので注意するようにしましょう。
実際に、上司から部下へ伝えるフィードバックの内容の例として、以下のような発言が挙げられます。
「先日の顧客対応は、顧客によりそいながらも自社が担うべき業務の境界線をしっかり引いてくれて、非常に良かったです」(ポジティブ)
「しかし、チームの他のメンバーが引き継ぎをしやすいよう、議事録や引き継ぎ書を用意しておいてくれると良い思います」(ネガティブ)
ネガティブな内容を伝えつつも、ポジティブな内容もしっかりと伝えることで、部下は指摘された点も素直に受け入れやすくなります。それにより、上司と部下の間で信頼関係が構築され、強い営業チームづくりへとつながるでしょう。
一方、やってはいけないフィードバックの例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 担当者を追い詰める
- 主観的すぎる
- 大勢の前でフィードバックする
- タイミングが遅い
- 抽象的なアドバイスをする
担当者を感情的に追い詰めたり、上司が「個人的にはこう思う」など主観的なアドバイスをしたりすると、部下はパワハラと受け止めたり、どう理解してよいか混乱してしまいかねません。また、大勢の前でネガティブ・フィードバックをしてしまうと、本人は必要以上に落ち込んでしまう可能性もあります。
これらの例はほんの一部ですが、常に相手の立場に立って、感情的にならずに本人がどう感じるかを考えた上で最適なフィードバックを行うことが肝心です。
営業活動における売上進捗管理のポイント
営業における売上進捗管理を成功させるポイントは、以下の通りです。
- 情報共有を徹底する
- 進捗管理はツール導入などで管理しやすくする
- 管理のルールを統一する
- 管理項目に応じて報告・調査頻度を考える
チーム内で情報共有をしっかり行うことで、チーム間での案件の引き継ぎがスムーズになります。進捗管理は、紙ベースやエクセルでも管理できますが、進捗管理システム(SFAやCRMなどの営業ツール)を利用するとより便利に管理できるでしょう。
項目や人によって運用ルールが違うと不公平が生じるため、管理にあたってはルールの統一が必要です。運用ルールを統一しないことで、「なぜうちのチームは他と比べて運用ルールが厳しいのか」「あちらのチームではこんな画期的な運用をしている」など、チーム毎に運用ルールや方法に違いがあると、不満を感じるメンバーがでてしまいます。そのため、運用ルールは組織で統一することが成功するポイントです。
まとめ
売上進捗管理をしっかり行うことで、設定された目標に対して計画的に目標達成を図ることが可能です。営業活動を数値化することにより、目標と現状との乖離を確認することで、ギャップを埋めるための改善策を講じやすくなります。
今回ご紹介した内容を参考にしていただき、組織の目標達成のために有効な売上進捗管理を導入してみてはいかがでしょうか。
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