売上分析は、自社の現状を知ることで、課題を特定して改善策を導き出すための分析手法です。売上の伸び悩みや、売上は向上しているにもかかわらず収益が落ち込んでいる場合、正しい手法による売上分析を行うことで、改善策へとたどり着くことが可能となります。
しかし、具体的にどのようにして自社の売上分析をすれば良いのかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、売上分析の必要性と具体的な手順や、効率的に分析を行うポイントについて詳しく解説します。
目次
売上分析の必要性
売上分析とは、販売実績や収益などの実績を分析することで、自社や営業組織、営業担当者の課題を特定するためのデータ分析のことを指します。
売上分析には、多くの手法が存在します。自社にとって、売上分析をする目的はどんなところにあるのかを明確にすることで、自社にマッチした分析手法を選択することが重要です。
売上分析の目的
売上分析の目的は、主に以下の3つです。
- 現状の把握
- 課題の把握
- 具体的な目標設定
売上分析の大きな目的は、数値的な根拠を割り出して達成可能で妥当な目標設定をすることと、目標達成のためにすべき行動を理解することです。
数値化することで、売上のデータが見える化・明確化されます。商品・サービスの単価、売上、利益率、部署別、個人別、顧客層別など売上の構成を細分化することで、さまざまな課題点が浮き彫りになるため有効です。
売上分析でできること
売上分析でさまざまな角度からデータを集めることにより、以下のようなことがわかります。
- 販促活動の効果測定
- 優先顧客の選定や顧客単価のアップ
- 売れ行きの変化から勝ち筋がわかる
- 迅速な意思決と施策の実行
販促活動の効果測定ができることも重要。分析の結果、Web広告の相性が悪く、イベント・展示会の方が効果が高い場合、予算の配分や他の施策を検討するなどの集客方法へ切り替えるといった判断もできます。
売上分析によって、情報が細分化されることで、どのサービスや顧客の売上が高いのか、自社の強みとなっている領域は何か、市場のニーズを特定できます。判明したニーズにより、根拠のある戦略として収益性の高い商品や顧客をターゲットへ集中して営業を行う施策を立てることが可能です。
このように、売上データ分析により、数値から読み取れる根拠のある戦略へ迅速な意思決定ができるようになるのです。
営業活動のアクションを明確にする
例えば、各営業担当が実際にかけている案件毎の工数に対して、売上や失注しやすい顧客を担当していては、売上見込みも立てづらく各営業員のモチベーションも上がりづらくなります。
収益性の高い売上が立てやすい顧客への提案難易度によって、各営業担当者のスキルを考慮した案件対応をしてもらう対応をしてもらうことで効率的な営業活動にも繋がます。
売上分析の手順
売上分析を行ううえでの具体的な手順は、以下の5ステップです。
【売上分析の手順】 明確な分析の目的を設定する仮説を立てる分析方法を決めるデータを集める分析して具体的な施策を決める |
1:明確な目的を設定する
売上分析を行うのは、「改善策を編み出すことが目的」というのではあまりにも曖昧であるため、具体的かつ明確な目的を設定する必要があります。
例えば、以下のように具体的な目的を設定します。
- 営業担当者ごとの得意、不得意な商材を把握し、来期の売上目標を設定すること
- 効率の低い販売方法を特定し、新たなマーケティング戦略を立てる
- 売上の減少を食い止める方法を見出す
- 売上拡大のボトルネックなっている課題を突き止める
- 営業担当の一人当たりの成約率を高める
- 案件毎の優先順位を明確にする
目的が明確かつ具体的でないと、売上分析の方向性がずれてしまったり、分析担当者と現場の営業担当者の間で認識の齟齬が生じてしまったりする可能性があるため、注意が必要です。
2:仮説を立てる
なぜ現状の問題や課題が発生しているのか、原因と考えられる仮説を立てると良いでしょう。仮説を立てるにはまず、問題解決のプロセスでよく活用されるロジックツリーという手法を使って現状の分析を行います。
「収益が落ちている」という問題を分析する際、「売上が伸び悩んでいる」「コストが増加している」「市場が変化しているかもしれない」という3つの理由が想定されます。さらに「売上が伸び悩んでいる」のは、「顧客の数が減少している」「客単価が減少している」というように原因を分解していくのです。
仮説を立てていく際、最初から完璧を求めずに現時点での仮の結論として課題を設定し、それが間違っているのか正しいのか検証していきます。
仮説例1)収益が落ちている原因を考察する
各営業担当者の売上が伸び悩んでいる → 特定の担当者が担当している顧客に変化がないか
→ 対応案件数に変化はないか、競合の動きはないか
→ 提案の品質が落ちていないか
→ モチベーションに変化はないか
仮説例2)販促費やコストが増加
コストが増加している → どの施策のコストが増加しているのか
→ コスト増加の要因は何か
→ 売上に対して営業活動費が増加していないか
→ 配送料が増加していないか
3:売上分析の方向性を決める
続いて分析の方向性を決定します。完成した仮説が正しいのかを検証するため、どんな分析項目が必要なのか割り出す必要があります。
分析の方向性を決めずに広い範囲について分析を始めてしまうと、効率的な分析ができません。より効果的な分析を行うためには、例えば以下のような分析の方向性を決め、改善策を練ることが大切です。
分析方法の検討例1)
コストを効率化する方法を模索する → 広告宣伝費に対する費用対効果を明確にする
顧客の属性別の購入状況を見極める → 顧客の行動別(購入頻度・購入累積額・最終購入日)に分類して傾向を把握する
4:データを集める
分析の方向性を以下のように決定します。
「コストを効率化する方法を模索する」
「顧客の属性別の購入状況を見極める」
その後、分析に必要な以下の情報を集めます。
「広告宣伝費別の売上の状況」
「顧客ごとの購買状況」
データを収集したら、エクセルやスプレッドシート などのツールを用いて一元的に管理します。
その際、年度別の売上を表にしたり、棒グラフや円グラフなどグラフ化したりして可視化すると、それぞれを比較しやすいでしょう。
5:分析して具体的な施策を決める
分析方法には、以下のようにさまざまなものがあります。
- ABC分析
- 因数分解
- アソシエーション分析
- RMF分析
以下の表にて、それぞれの手法の概要をご紹介します。
【分析方法】
分析方法 | 概要 | この分析が向いている例 |
ABC分析 | 数字の大きい順に並べて、偏りを調べる分析方法 | 重点的に取り組むべき課題を抽出したい・在庫が多い商品はどれか・利益率が低いのはどのカテゴリーか |
因数分解 | 売上の構成要素を細分化し、深掘りすることで売上減少、増加の原因を分析する方法 | 売上の減少、増加している商品はどれか知りたい・特定の分野での販売数が落ち込んでいるものはどれか・人気のある商品はどれか特定したい |
アソシエーション分析 | 「もしもこうだったら、こうなるだろう」という関連性を見出す分析方法 | 売上アップを狙いたい、顧客単価のアップを狙いたい・一緒に買われやすい商品はどれか |
RMF分析 | 直近の購入日・来店頻度・購入金額から顧客を分類する分析方法 | 顧客に合わせて販促方法を変えたい、売上アップを狙いたい、顧客単価を上げたい・どんな顧客が特定の商品をたくさん買っているか・他社へ流れてしまった顧客を特定したい・購入単価をあげられそうな顧客を特定したい |
さまざまな分析方法の中から、「ABC分析」と「RMF分析」を選択し、自社の収益が低迷しているA社の例を見てみましょう。
【ABC分析例】
目的:コストが多くかかっている要因を特定したい
分析の結果前前年度、前年度の広告費では、前年度が倍の数値
→ それにより得た収益は広告費の10%しか回収できていなかった
なぜ1年後に倍の広告費がかかっているのか?
→ 顧客全員へ同じキャンペーンのお知らせDMを発送していた
【RMF分析方法】
目的:顧客の属性ごとに販売方法を変え、売上UPを図りたい
・Recency:一番最近購入したのはどの顧客か
・Frequency:頻繁に購入しているのはどの顧客か
・Monetary:一番お金を使用しているのはどの顧客か
前提
→ データベースに顧客の購買履歴が全て記録されていること
→ 顧客を会員登録させていること
分析の結果
→ 購入頻度の高い顧客5,000人、年に1度購入の顧客10,000人
→ 買い方の異なる2種類の顧客に対して、同じ内容のDMを発送していた
→ 1年間に1回以上購入のある顧客にのみDMを発送する
→ DMの頻度を月に1回から、2ヶ月に1回へと削減
このように、自社の状況に合わせた分析方法を用いて分析を行うことで、自社の現状を把握することが可能です。現状を把握したのち、なぜこのような問題を抱えているのかという疑問に対して数値を分析することで原因を特定できます。
特定した原因から、改善するためのやるべき施策が具体化されていくという手順です。
売上分析を行う時のポイント
売上分析を行う際は、以下のポイントを意識して行ってください。
【売上分析を行うときのポイント】
- データ分析者と現場スタッフの相互理解が不可欠
- ツールを用いて複数データを組み合わせる
データ分析者と現場スタッフの相互理解が不可欠
蓄積されたデータから現状を把握しているにもかかわらず、具体的な改善施策に落とし込めないのは、データ分析者と現場のスタッフの認識に乖離があることが原因であるケースが少なくありません。
営業活動の現場では、データ上の数字だけでは判断できない状況があります。それにもかかわらず、分析担当者がデータ上の数字だけで判断して具体的な施策を提案することには無理があるため、根本的な原因や具体的な改善策まで落とし込めないケースが多く見受けられます。
そこで、データ分析者が、実際に営業活動の現場を知ることは非常に大切です。また、現場の営業担当者も、データを活用することでどのようなことが可能なのか把握することで、相互に適切な提案や意見を交わせるようになり、有意義な売上分析が可能になります。
ツールを用いて複数データを組み合わせる
売上分析はもちろんのこと、顧客データ、マーケティングデータなどの複数の定量データを組み合わせてツールを用いて分析することでより精度が上がり、多角的な視点から物事を捉えることが可能です。
データを元にした分析結果から顧客を属性ごとにセグメント分けすることで、それぞれに最適なアプローチができるようになるため、効率のよい営業活動が実現できます。営業担当者それぞれがムダのない動きができるようになり、営業組織全体の成約率の向上につながるでしょう。
また、煩雑なデータもツールを活用すれば自在にデータを操れるため、データを一元的に管理できるなどのメリットを享受できます。
まとめ
売上分析を行うことで、現在の自社の課題を特定できます。現状を分析した結果を受けて仮説を立てることで、より効果的な改善策を導き出すことが可能です。
売上が伸び悩んでいる場合は、複数ある分析方法から自社にマッチした手法によって分析を行いましょう。分析により見てて来た課題を改善し、収益の最大化を目指すことをおすすめします。
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