営業活動において、顧客情報を得るためにヒアリングする作業は重要なプロセスです。ヒアリングの際には、ヒアリングシートを活用することで、営業活動において必要な顧客情報をもれなくヒアリングできるようになります。では、効果的なヒアリングを行うためのヒアリングシートには、どのような項目を記載するべきなのでしょうか。
今回は、営業活動において必要なヒアリングの項目や、効果的なヒアリングシートの活用方法について詳しく解説します。
目次
営業活動におけるヒアリングシートの必要性
顧客の置かれている状況、抱えている不安や課題などを効率よく聞き出すためには、ヒアリングシートをうまく活用することをおすすめします。なぜなら、営業活動を進めていくうえで、顧客の状況をうまく引き出すことで成約率を上げられるために、ヒアリングは非常に重要なステップだからです。
では、商談の際にヒアリングシートを活用すると、具体的にどのような効果があるのでしょうか。ヒアリングシートを活用することで、以下4つのメリットが得られます。
【ヒアリングシートを活用するメリット】
- 聞き忘れを防止できる
- 質問しながら情報を整理しやすい
- より踏み込んだ質問ができるようになるため顧客理解が深まる
- テンプレート化できれば他の商談にも応用できる
ヒアリングシートの作り方に決まったルールはないため、エクセルなどを活用して自社で使いやすいシートを作成しておきましょう。顧客との会話の中で、部分的にボリュームの多い項目があった際に、他の重要な項目を聞き忘れることもあるためです。
項目の一覧に沿ってヒアリングをすることで、こちら側が情報を整理しやすいというメリットが得られます。特に何も準備せずに商談へ入ってしまうと、会話があちこちに飛んでしまった際、会話を筋へ戻すことは大変な作業です。そうならないためにも、項目ごとに順を追って商談を進められるよう、ヒアリングシートを活用してください。
より踏み込んだ質問ができるようになることも、ヒアリングシートを用意するメリットです。BtoBの場面では、そもそもヒアリングできる機会自体が限られているため、一度のヒアリングで聞きたい情報を網羅し、鋭い質問を投げかけながら顧客のニーズを引き出差なければなりません。
そのためには、一度サンプルのヒアリングシートを作成し、社内でロールプレイングをすると良いでしょう。例文を用いて実際に練習することで、抜けや改善点に気づくことがあるからです。練習をしてから商談に臨むのと練習をしない場合では、ヒアリングで得た情報の質の違いは明白にわかりますす。
また、成功したヒアリングのパターンをテンプレート化することで、その他の商談や他の営業メンバーにも共有できるため、結果的に組織全体の成約率の向上につながります。
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ヒアリングシートに記載すべき項目
ここでは、ヒアリングシートに記載すべき項目のリストをご紹介します。
【ヒアリングシートに記載すべき項目】 顧客の事業について顧客の顕在的な課題 よく利用されるサービス 予算決裁権限者顧客の悩みニーズ スケジュール選定の基準 検討中の競合他社情報 |
それぞれの項目について、具体的に見ていきましょう。
顧客の事業について
顧客がどんな事業を展開しているかの詳細について、確認する項目です。あらかじめ、顧客のホームページで確認しますが公開されていない事項も多いため、ホームページだけでは読み取れないケースも少なくありません。「具体的にどのような事業か」「顧客サービスのターゲットは誰か」「顧客にとっての競合は誰か」などの詳細をヒアリングします。
ヒアリングした内容から3C分析を行い、顧客の弱みを理解します。
3C分析とは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つのCから成り立つフレームワークです。顧客の状況をこのフレームワークに当てはめて分析することで、顧客の強みと弱みが明確になります。
特定された弱みに対して、自社でサポートできることはないか分析するのです。
顧客の顕在的な課題やよく利用されるサービス
顧客が、現在利用中のサービスに関する感想をヒアリングすることにより、顧客が不満に思っていることが明確になります。顧客が自社へ問い合わせをしてくるということは、導入時の理想と現状にギャップ(=不満)があるからです。自社商材と類似しているサービスを顧客が活用していれば、その不満に対して改善できる提案のポイントを考えるための良いヒントになるでしょう。
その際、決して他社サービスを否定してはいけません。自社のイメージを損なう恐れがあるからです。あくまで、そのサービスのウィークポイントについて改善できる提案をするというスタイルで説明をする意識が大切です。
予算
ヒアリングの中で最も重要と言ってよいほど必須な項目が、「予算」です。顧客の予算によって、提案できる商材のグレードやボリュームに影響が出てきます。また、顧客が社内でいつの予算を取得しているかどうかでもスケジュールが大きく変わってくるでしょう。例えば、本年度の予算を取得しているのか、来年度の予算取得を目指しているのかでは大きく状況が異なってきます。
また、予算をヒアリングする際、ストレートに「今回のご予算はおいくらですか?」と聞くのは避けた方が賢明。顧客の担当者へあまり良い印象を与えません。今回の予算は取れているのか、また現在利用中のサービスはどれくらいの予算をかけたものなのかという質問から、徐々に今回の予算を把握することが大切です。
決裁権限者
今回提案しているサービスの価格が、どの決裁権限者によって決裁できる額なのかが、企業の規模や社内規則によって変わってきます。
例えば、大手企業の場合100万円までは部長決裁、1,000万円までは取締役決裁、それ以上の金額は社内稟議で決裁するというケースが少なくありません。
中小企業であれば、20万円を超える場合に社長決裁が必要な企業もあります。今回の提案がどの決裁者の権限によって決裁されるのかヒアリングすることで、最終提案の商談にはその決裁者に同席してもらえば成約率が上がります。
どの案件も、「決裁権限者は誰なのか」を念頭に置き、その人へ向けた提案内容・戦略を考えることが大切です。
顧客の悩みやニーズ
顧客の悩みやニーズについてのヒアリングでは、顧客が把握している顕在化された課題の他、潜在的なニーズや課題をヒアリングすることが重要です。
現在の顧客の状況を確認したうえで、不安に思っていること、問題として感じていることをヒアリングします。その不安や問題が続いた場合、その後どんなリスクが生じるかを質問することで、潜在的な課題を顧客自身が考えて言語化してもらうことが重要です。
ここでのヒアリングポイントは、顧客自身でさえ気づけなかった課題を理解してもらうことであり、これはヒアリングの項目の中でも優先度の高い部分。顧客は、自分でも気づいていなかった課題を抽出してくれた営業担当者に対して信頼感を抱き、「この営業であれば課題を改善してくれるだろう」と期待を持つからです。
顧客が潜在的なニーズを理解しないままそのニーズに訴求する提案をしても、顧客は必要性を感じづらいため成約には結びつきにくいでしょう。
スケジュール
今回の案件はいつまでに導入する予定なのかといったスケジュールを聞き出すことは、顧客の優先順位をつけるうえで重要な点。導入希望時期が1年以上先であれば、もっと納期の短い見込み顧客の優先度を上げて対応するべきです。
自社がインサイドセールスを採用していれば、顧客情報をインサイドセールス部門へパスして中長期的なアプローチをする対応とすることが望ましいでしょう。
インサイドセールスとは、発掘された見込み顧客に対して電話やメールなどのツールを使ってアプローチし、見込み顧客の購買意欲があがるまでリードナーチャリング(見込み顧客の育成)をする内勤営業の専門部隊のことです。リードナーチャリングによって購買意欲が高まった見込み顧客(ホットリード)の情報を、外勤営業(フィールドセールス)へパスするまでがインサイドセールスの役割になります。
営業活動におけるヒアリングでは、「いつ導入をする予定なのか」「導入後、いつまでに成果を出したいのか」について聞くようにしましょう。
選定の基準
案件に関して、顧客が選定する基準をヒアリングすることにより、自社が何を重要視した提案にすべきかが決まります。
例えば、「機能や性能を重視するのか」「費用対効果を重要視しているのか」「最も早い納期を求めているのか」など、顧客や導入する顧客の部門によって選定基準は異なります。
選定基準によって、提案内容は大きく変わるため、要望に応えられるような営業活動・提案内容であることが必要です。
検討中の競合他社情報
競合の情報をヒアリングすることも、成約に一歩近づくために必要なポイントです。顧客が検討している競合他社の提案内容についての感想を聞くようにししましょう。
例えば、「A社の提案を受けたが、機能がイマイチだった」「B社の提案は、予算を大きくオーバーしていた」など、他社の良かった点、そうでない点までを聞き出せれば、自社の提案内容を他社と差別化できる良い材料になります。
これから複数社の提案を聞くという段階であれば、全社の提案を聞いた感想を後に聞かせてもらうようお願いしましょう。しかしそのためには、それまでに顧客担当者との信頼関係をうまく築く必要があります。
営業活動においてヒアリングシートを有効活用するポイント
必要なヒアリングポイントを含めたヒアリングシートをただ用意しただけで商談に望んでも、効果的な営業活動とは言えません。
ヒアリングシートを効果的に活用するポイントは、以下の通りです。
【ヒアリングシートを有効活用するポイント】
- 5W2Hを意識した情報収集を行う
- 顧客側の時系列を把握する
- 事前に顧客ニーズの仮説を立てておく
- 定期的なブラッシュアップを行う
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
5W2Hを意識した情報収集を行う
営業活動のヒアリングにおいては、5W2Hを意識することで商談をスムーズに進められます。
- Why(なぜ今回のサービスを導入orリプレイスしようと思ったのか)
- What(どんなサービスの導入を想定しているのか)
- Who(誰が使うサービスなのか、誰が決裁者なのか)
- When(いつ導入したいのか、いつごろまでに成果を感じたいor社内に浸透させたいのか)
- Where(どこの部署が使うのか)
- How(導入後、どのような効果を得られたいのか)
- How much(どれくらいの価格を想定しているのか)
これらの項目は、ある程度最初の段階でヒアリングできるのが望ましいです。顧客ニーズの全容が明らかになることで商談がスムーズに進められるようになります。顧客担当者のビジネス経験が浅いなどを理由に、5W2Hについて明確となっていない場合は、もし助けが必要であればサポートもできると提案してもよいでしょう。それによって、競合他社よりも一歩リードできる要素が増えるからです。
事前に顧客ニーズの仮説を立てておく
商談において、ヒアリングを始める前にあらかじめ顧客ニーズの仮説を立てておきましょう。顧客のホームページや運営しているWebメディアなどで取り上げられている情報を材料として、顧客が抱えていると思われる課題やニーズの仮説を立てていきます。
例えば、「新サービスや新規事業を立ち上げ、契約数が急激に上昇しているケースでは、人的リソースにかけていて顧客の問い合わせ対応が追いついていない」という仮説を立て、商談の際にヒアリングしてみるといった具合です。
仮説が正しければ、顧客に刺さるような提案ができます。一方で、もし仮説が外れたとしても肩を落とす必要はありません。なぜなら、仮説を立ててこちらからアプローチするのは、あくまで情報を得るための話題づくりとして活用するためだからです。
顧客が興味のありそうな切り口で話題を提供することで、顧客担当者も業界に関連した話題であれば、自ら貴重な情報を話してくれるでしょう。
商談状況によってヒアリングする内容を整理する
例えば、初期の商談のように顧客が抱えている課題、潜在的なニーズなどのヒアリングを行う場合、いきなり「予算をどのくらいお持ちですか」「いつまでに導入を検討されてますか」といった顧客検討がなされてない段階でのヒアリングは有効的ではありません。
初期の商談時は顧客課題や潜在的なニーズに限定し、それに対して自社サービス及び営業担当者がサポートできる点に触れて、次回の商談に繋がりそうであれば次の有効なヒアリングシートを参考に商談を進めると良いでしょう。
顧客側の時系列を把握する
ヒアリングにおいては、現在、過去、未来の順序で聞くようにしましょう。現在の状況については、顧客が最も説明しやすいため、現在の状況からヒアリングするのがポイントです。最初から、自社サービスを導入後、将来どのようになりたいかと未来のことを聞いてしまうと、顧客にとってはイメージが沸きにくいため、うまく答えられないケースが少なくありません。
現在から遠ざかるほど説明することが難しくなるため、現在の状況、過去のできごと、そして未来の展望の順でヒアリングすると、顧客もスムーズに説明できるでしょう。
ヒアリングした項目を定量的に管理・運用据する
ヒアリングした内容は、なるべく必要な項目やヒアリング内容の自由入力でも必要なものだけに整理をした上で、現在利用している営業管理や顧客管理ツールに履歴を残すことや、なければ顧客毎の共通の項目のヒアリング内容を残しておくことで、ヒアリング項目の中での商談に有効な内容が定量的に把握しやすくなります。また営業ツールなどでレポート化しやすくしておけば、各営業担当や管理項目が多くてもすぐに把握しやすくなり、次の打ち手へのアクションが取りやすくなります。
定期的にブラッシュアップを行う
上記のようにヒアリングシートは、1度作成して終わりではなく、定期的にヒアリング項目や順序などを見直すことが大切です。
例えば、営業会議においてヒアリングシートを見直す機会を月に1度設けて、普段使用している際に使いづらかった点や追加したい点など、営業メンバーで意見を出し合うのも良いでしょう。ヒアリングシートを定期的にブラッシュアップしていくことで、自社にとって最適な成約率の上がるヒアリングシートができあがっていきます。
注意すべきなのは、チーム内でヒアリングシートのフォーマットを揃えること。各自がバラバラのヒアリングシートで運用していては、その後のチームでの分析がしにくくなってしまいかねません。また、顧客の業界ごとのヒアリングシートを数種類用意しておくのも、効果的なヒアリングをするための良い手法です。
ヒアリングシートは、自社の営業ノウハウの固まりのようなものです。新人や若手営業担当者の研修材料としても貴重な財産ですので、定期的にブラッシュアップをしてノウハウを蓄積していくことをおすすめします。
まとめ
営業活動における自社の製品やサービスの紹介は、ヒアリングをしっかり行うことでより魅力が増します。そのためにも、顧客にあったヒアリングシートを有効活用することが重要です。顧客のニーズや課題、予算やスケジュール感をしっかりヒアリングできれば、商談もスムーズに進められるでしょう。
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