クロージングは、営業活動の終結を意味し、営業プロセスの中での「成約にいたる商談」「契約の成立」を表現します。営業活動には様々なプロセスがありますが、適切な提案を行った後に成約の意思が高いタイミングで最後にクロージングが行えるかが重要になります。
この記事では、クロージングがもたらす効果や必要性、クロージングで使える心理的テクニックについて解説します。
目次
営業活動におけるクロージングの効果とは
営業活動におけるクロージングとは、事前準備やヒアリング、オファーなど一連の商談の中での営業プロセスの中での契約成立や商品の販売がクロージングに該当します。
クロージングのベストなタイミングは、お客様や取り扱っている商品・サービスによって様々です。
各営業担当者の営業スキルも重要な一つの要素ですが、それだけではなく自社の営業プロセスの中で適切な顧客とのコミュニケーションや提案を行うことで成約に繋がりやすいパターンをしっかりと見極めることが大切です。断られる可能性が低い段階で最後に顧客の背中を後押しするクロージングをすることで、売上アップにつながる効果があります。
クロージングの必要性
営業活動の目的は、顧客満足の実現と売上アップです。そのためには、自社の商品やサービスを実際に使ってもらったり、しっかりと納得した上で「購入して良かった」と思ってもらわなければいけません。なぜなら商品・サービスの購入だけでなく、顧客満足度が低ければ契約後の継続的な取引やアフターがしづらくなるため、クロージングは営業活動の中でもっとも大切だといえます。
しかし、クロージングが苦手な人は意外に多く「断られたくない」という心理からタイミングが分からない方も多く見受けられます。強引なセールストークをしたり、タイミングを間違えたりしない限りは、クロージング自体に不快感を抱かれることはありません。
顧客が本当に必要としているものであることや、顧客が抱えている課題の解決につながることであれば、顧客のメリットにもなり成約する理由になります。
適切にクロージングに必要なポイントは以下です。
・顧客が要望や課題に対して、しっかりと利益になるメリットを提示する
・競合他社と比較される前に優位性を確立する
・納得できるコスト感や契約のタイミングを提示する
・社内の決済が取りやすいようにサポートする
クロージング力が高ければ、顧客の利益につながる商材の提供機会を逃しません。クロージングは営業活動の中で「契約をする必要性」を後押しして最終的な決断してもらうための大切なステップだと言えるでしょう。
有効なクロージングの効果を出すためのポイント
クロージングで成功するためには、顧客が契約をする意思のある状態でなければいけません。顧客は商品・サービスに興味を示し、欲しいと感じた時点で初めてクロージングは効果を発揮します。
顧客の心理を変化させるためには、以下のいくつかの有効な手法の例を紹介します。
1)相手の話をしっかりと聞く、ヒアリングする
数字を作るのが必死な場合、商品・サービスの魅力を伝えようと一方的な会話になり、顧客担当者が不快に思うことも多いでしょう。話を聞いてくれない営業担当者に対して、顧客が好意を抱くことはほとんどありません。
まずは相手の話を熱心に聞くことから顧客を安心させましょう。
顧客担当者からの会話が弾まないときは、こちらから世間話や共通する回答しやすい話題を繰り返し質問して話しやすいようにすると良いでしょう。
また以下のように相手の行動に合わせるのも良いでしょう。
・相手が話したいタイミングに合わせて行動する
・声のトーンを相手に合わせる(相手がハイトーンなら、自分が低めならいつもよりトーンを高くして話す)
・相手が考えている時の沈黙を制限しない
・商談中、顧客がコーヒーを飲むタイミングで自分も飲むなど
2)自分のことを相手に知ってもらう
営業担当者が自分のプライベートなことや考え方などを「自己開示」し、相手に人となりを知ってもらうことで顧客に安心感を与えます。
例えば、家庭持ちで年齢が近ければ「〇〇部長のお子様は小学生ですか?最近は平日もリモートワークの日があり、子供が午後に帰宅するので相手にしていると仕事が捗らなくて、、、」など、相手の共感を得る会話から「こんなことまで話してくれるのか」と相手は人柄に対して親近感を抱き、やがて信頼へと変わります。
このように相手との共通点に触れながらも自分のことは控えめに話すことで、相手に親近感を抱いてもらうように工夫すると良いでしょう。
3)メリットだけでなく、デメリットも提示する
予めヒアリングした課題・ニーズに合わせて、自社の商品・サービスの良い点だけ伝えていると、「売りつけようとされているのではないか」と勘違いされる要因になるため、デメリットも伝えることで相手も検討しやすくなり信憑性が生まれます。
またデメリットを払拭するだけの解決策の準備やしっかりと優位性を伝えられるようにすると良いでしょう。
4)商品・サービスに興味を持ってもらってからプランを提示する</h3>
商品・サービスのプランや料金について興味を示してから、具体的な提案内容を提示するようにしましょう。自社の商品・サービスへの理解が少なく興味のない段階、高い料金プランを先に提示してしまうと、購入を検討する意欲がなくなる可能性があります。
予め興味を持ってもらった後に購入の意思がありそうなのが分かってから、提示すると良いでしょう。
5)複数のプランの選択肢を提示する
商品・サービスのプラン内容や料金が決済するコストと合わない場合、可能な範囲で2-3プランを提示して相手が選択しやすいようにするのも一つの手段です。
気を付ける必要があるのは、決して安売りしないようにしっかりとプランの違いやそれぞれのメリットやデメリットを理解してもらった上で、顧客が抱えている課題解決に一番合うものを提示するようにしましょう。
6)「期間限定」のような希少性を提示する
希少性をアピールするのは購買意欲の向上に繋がります。
例えば、以下のように購買の意思がある段階で今契約すると「期間限定」で以下のプランでご契約いただます、など利益は確保しつつお得感を出すのも良いでしょう。
期間限定のプラン提示例)
・今月契約してもらえたら「初期費用は無料」になります。
・初回契約月は「トライアル期間として、無償でご利用」頂けます。
・初回契約の半年間は、特別に「○○%下げた金額」でご契約頂けます。
・通常のプランとは別に「オプションで○○サービスが利用」頂けます。
など
クロージングの決め手にかけるときには、社内や上長と売上・利益率の相談しながら、お客様に納得してもらえるプランを考えてみるのも良いでしょう。
7)相手の課題感や競合他社の成功実績を提示する
顧客の課題・ニーズに対して既に同じような業界や類似サービスの競合他社が契約をして実績を上げている場合、契約している社名や成功事例を提示することによって、「会社の取り組みとして乗り遅れてはいけない」という心理や契約時の社内決済の説得材料の一つになります。
クロージングにつなげるためには、契約すべき理由をしっかりと提示して購買に対してのモチベーションを促すのも良いでしょう。
クロージング時に気をつけたいポイント
クロージングをする際は、営業テクニックに偏らないように顧客のためにクロージングをかけることが大切です。
営業活動の目的は「顧客の課題解決」であり、クロージングは自分本位で進めるものではありません。あくまで、「相手のため」という意識を持つといいでしょう。
顧客の観点を意識する
自社の商品・サービスの優れている点ばかりを羅列しても、顧客の心は動かないでしょう。「なぜ必要なのか」「購入した場合どのようなメリットが得られるのか」をしっかりと理解してもらう必要があります。
相手の視点に立つには、以下を意識してみるといいでしょう。
・相手をよく観察する
・想像力を働かせる
・相手の話を注意深く聞く
固定観念を捨て、「顧客のことは聞かないとわからない」前提に立つことが大切です。
顧客満足度やリピート率を高める
相手の視点に立ってクロージングすることで、顧客満足度やリピート率は高まります。購入後も真摯な対応を続けることで、商品・サービスの信頼性も高まり継続的な取引につながる可能性が高くなります。
消費者庁が実施した、「商品やサービスを選ぶときに意識すること」のデータを見てみましょう。
【引用】図表Ⅰ-1-6-25商品やサービスを選ぶときに意識すること|消費者庁
「購入(利用)時の説明や応対等の接客態度」「苦情や要望に対する対応」と回答した人の割合が半数近くを占めています。
このことからも、人の購買心理は価格や機能、安全性だけでなく、取引相手の担当者の信頼面や購入後の対応なども大きく影響していることがわかります。自分本位のクロージングではなく、相手の利益を第一に考えることが顧客満足につながり、結果リピート率も高まりやすくなるでしょう。
クロージングの成功例を共有する
クロージングは、営業活動のプロセスの一つですが、「このパターンは顧客に満足してもらい契約してもらった」「興味を持ってもらえず購買する意欲がなかった」「他社に契約を取られてしまった」といった成功と失敗の要因が必ずあります。
クロージングの成功事例は、各営業担当者の個人として知見ではなく、成功例を営業組織で共有することが大切です。優秀な営業担当者のノウハウやテクニックを共有することで、組織全体の営業スキルの向上だけでなく、再現性のある売上アップや生産性の向上も期待できます。
まとめ
営業活動のプロセスの一つであるクロージングは、企業の業績を向上させるうえで、重要な取り組みです。適切なクロージングで自社の商品・サービスで顧客の課題を解決し、納得して契約してもらい、リピートにつなげることも意識すると良いでしょう。
そして精度の高いクロージングの成功事例を組織で共有することで、営業組織全体の営業力アップとビジネスでの成果を上げられるように工夫や改善を繰り返すようにしましょう。
関連記事
この記事をシェアする