営業活動の効率化や生産性を上げる業務改善のポイントを紹介

「社内MTGや報告作成など、本来の営業活動に集中できない」
「売上につながる営業活動以外の間接的な業務が多い」

このような悩みを抱えている人も、多いのではないでしょうか。

従来の営業活動はタスクが多すぎることで本来の営業活動の時間を確保できないケースが少なくないためです。営業活動の効率化は、「やるべきこと」「やらなくてもいいこと」を明確に分け、優先順位や業務を軽減するなどの適切な業務改善を行うことで可能になります。

この記事では、営業活動を効率化や生産性を上げるための業務改善の方法や流れ、具体的な改善の取り組み例について解説します。

営業活動の効率化とは

「営業活動の効率化」とは、営業組織の全体や各営業担当者の業務効率を上げることです。直接的に売上に直結しない間接的な業務を省いたりコストを下げたりすることが一般的でしょう。

営業担当者の業務例)
・本来の営業活動:お客様との商談、コミュニケーション、クロージング
・付随する業務:提案書・見積書作成、契約締結・資料作成、請求・検収資料作成
・社内の業務:営業内・関連部門とのミーティング、
・事務的な業務:移動・交通費精算、接待などの交際費精算、日報作成、勤怠報告

上記のように本来の営業活動にかける時間が少ないほど、売上に直結する活動時間が少ないと言えます。

また営業活動の効率化は、時間的また費用的なコストを下げ、リソースを投入する量を下げることを指しますが、生産性とは、営業活動に対してどれだけ成果が出せたのかを表す指標です。

営業活動の効率化が求められる背景

現代の日本企業が、営業活動の効率化を求められ積極的な業務改善やDXなどのデジタル活用に取り組むようになった背景には、以下のデータを参考にできます。

世界屈指のコンサルタント会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーが、2021年に発表した「営業員の時間の使い方」を分析した調査のデータを見てみましょう。

 

最善の方法と比較すると、日本のBtoB企業は「顧客への営業活動」の割合が低く、「提案準備等」「社内業務」の割合が高くなっています。つまり、生産性(アウトプットの算出量を増やす)が高まらず、かつ効率化(インプットの量を軽減する)が進んでいない状況が浮き彫りになっているのです。

こうした背景からも、営業活動の効率化は日本企業にとって重要課題の一つだといえるでしょう。

【引用】日本の生産性はなぜ低いのか|Mckinsey&Company

営業活動の効率化の重要性

営業業務の効率化には、手間やコストだけでなく中長期的な業務改善の取り組みが必要になります。自社の課題を把握してない場合、各関係者へのヒアリングや課題の洗い出しから、業務効率化や生産性を上げる可能性がある取り組みから行う必要があります。

効率化の重要性について、大きくは3つの理由があります。

売上に直結する

営業活動の効率化の一つとして、より多くの顧客との商談やコミュニケーションを取る時間を確保することで本来の売上に直結する活動に集中できます。

例えば、売上につながらない間接的な業務や事務処理などの時間を1日2時間かけている場合、換算すれば以下の時間となります。

営業活動以外の間接時間の計算例)
・月の活動コスト  : 2時間/日   × 稼動20日/月 = 40時間
・年間の活動コスト : 40時間/月 × 12ヵ月/年間 = 480時間/年間

上記のように、例えば毎日3時間程度でも間接業務があるだけで、月間だけでなく年間にすると相当な営業活動の非効率なことがわかります。

これまでの営業活動の取り組みに囚われずに売上に直結する営業活動がどのくらい取れているか、どのくらい間接的な業務の中で無駄なコストが使われているかを正確に把握すると良いでしょう。

働き方の多様化や営担当者の負担を軽減する

2019年度に施行された「働き方改革」に対する早急な対応が、多くの企業に求められています。さらにコロナの影響を受け働き方の多様化が加速した結果、営業活動においても外回りなどの訪問数や商談にかかる時間、残業は減りテレワークが広く普及するようになりました。

コロナで対面営業が難しくなったことでオンライン商談が広まり、顧客へ訪問する必要がなく、遠隔でも複数の商談ができる環境になったことをきっかけに、各営業担当者の外回りや間接業務の負担軽減が効率化の重要性について多くの企業が認識し始めたと言えます。

営業活動の効率化のポイント

営業活動を効率化するためには、現状の営業組織や営業活動における課題の洗い出しが重要になります。より正確に把握できるほど、どの改善から取り組むべきか優先順位も付けやすくなるでしょう。一般的には以下の手順で効率化を図っていきます。

現状の課題の洗い出す

まず現状の営業組織全体や各営業拠点、各営業担当者毎への業務ヒアリングから課題の洗い出しが必要になるなど、営業組織の規模が大きく統一化されてないほど中長期的な取り組みになります。

営業組織の課題例)
・各営業拠点や特定の営業担当者のスキルや成果に依存している
・営業マネージャーによって部下の教育が大きく異なる
・各営業担当者同士で顧客リストを取り合っている
・エリアが広く、訪問や商談数が少ない
・提案内容が古く、現在の顧客課題・ニーズにあっていない。
など

各担当者の課題例)
・アポイントが思うように取れない
・訪問準備(提案資料作成)に時間を費やしている
・1日に何度もメール受信のチェックや対応をしている
・見積書や契約書の作成などの間接業務に時間を取られている
・契約後の顧客からの対応に時間をとられている

上記はよくある一例ですが、各企業内の営業組織の課題を洗い出し、効率化に繋がる改善ポイントを見極めると良いでしょう。

課題に合わせて優先順位をつける

課題の洗い出しが終わったら、すぐに大きな改善に取り組むのは難しいケースが多いため、以下のような優先順位にするかも含めて検討してみましょう。

効率化の優先順位例)
・すぐに対応できそうな範囲か
・計画的に中長期的な取り組みが必要か
・専門性や客観性の観点で外部の組織改善のコンサルに依頼する必要があるか

改善方法を議論・検討する

取り組むべき課題やある程度の優先順位が決まったら、実際の改善方法を検討するために営業組織を管轄している責任者、営業マネージャー、主要な営業担当者などと、具体的な改善のための取り組みの議論や方法の検討すると良いでしょう。

しっかりと営業組織内や関連する部門とも課題の認識を合わせた上で取り組むことによって、効率化の改善に取り組む共通意識や協力が得やすくなります。

営業活動における業務を効率化するポイント

各営業担当者が抱える営業業務を効率化する方法は、課題によって様々な手段があります。

効率化のポイントとして以下のような取り組み例があります。

リードや商談獲得を効率化する

非対面での営業活動が一般的になってきた影響で、顧客オフィスにコールして電話も繋がりづらくなり、リードの獲得や直接訪問をして商談もしづらくなっています。こうした背景から自社の製品・サービスサイトにコンテンツを配置をして、顧客リストや商談獲得を効率化する取り組みが増えています。

取り組み例)
・自社製品・サービスサイト上に競合との比較や商談時に強みが明確に分かる提案コンテンツを掲載する
・上記の詳細がわかるホワイトペーパーをダウンロードできるフォームを設置し、入力フォームからリスト獲得や商談獲得のアプローチを行う。
・獲得したリストに対してメールやコールする専門部隊を設置し、商談前の温度感の共有も含めて有効な商談以外の営業担当者の負担を軽減する
・顧客情報を整理し、同じ顧客へアプローチしないように共有する

顧客情報の共有・確認できる仕組みを作る

営業組織で見られがちなよくある課題として、各営業担当者毎に顧客情報リサーチやアプローチによる同じ顧客への情報管理の重複による活動ロスがあります。

営業ツールを導入することで詳細な顧客情報を管理し、スマホやPCがあれば外出先でいつでも営業組織内で共有・閲覧できるようにすることで、重複した顧客へのアプローチの防止や商談前に顧客情報を把握することができ、顧客への提案に集中する時間が確保できます。商談までにおおまかなニーズや課題をヒヤリング内容が分かる情報がすぐに確認できる状況ができていれば、理想の状態だといえるでしょう。

営業ツールやSFAツールでの共有例)
・顧客が抱える課題・想定ニーズ
・決裁者及びキーマンに関する情報
・顧客との会話履歴及び過去の商談履歴
・自社製品とのコスト感のギャップがないか
・競合社情報
・失注理由

不要な社内MTGや書類作成の間接業務を減らす

社内でのMTG数や時間がない場合や、見積書・契約書作成などの間接的な業務が多い場合、適切な業務分担や負担を減らすだけでも本来かけるべき営業活動にリソースを集中させられます。

間接業務の効率化例)
・見積書や契約書、契約締結などに関わる書類作成業務を営業事務や関節部門に業務分担する
・売上に直結しない社内MTGの数や時間を減らす
・日報や週次などの営業報告の資料作成の負担を減らす
・提案前の資料準備や印刷などにかかる業務を減らす

営業活動の効率化に成功した事例

営業活動の効率化は、営業組織の課題だけでなく、実際の顧客課題・ニーズの変化にも合わせて効率化や業務改善に取り組む必要があります。

営業組織全体だけでなく、顧客課題の解決に取り組んだ改善事例を紹介します。

株式会社資生堂(製造・メーカー)

株式会社資生堂は、多くの有名ブランドを展開し、店舗からECまでの流通幅の広いメーカーです。変化する顧客ニーズに応えるべく、デジタルを通じた顧客体験の向上とECサイト「ワタシプラス」を改善することによりEC化の売上比率を35%の達成を掲げています。

2020年に4つの部署で構成するデジタルオフィスを新設し、各部署で協力・連携して顧客体験のさらなる向上に取り組んでいます。

取り組み例1)

肌の状態の測定や美肌作りのサポートやオンラインカウンセリングなどのデジタル接客の活用

ARを活用したバーチャルメイクアプリ「肌パシャ」を通じて肌の状態の測定や美肌作りのサポートをしたり、オンラインカウンセリンなどの店頭で体験できるサービスをデジタル化することで顧客の利便性を高める活動を行っています。

取り組み例2)

自社ECサイトでの通販以外のオフライン店舗情報や美容情報の発信

サイト内で欲しいブランドの探しやすさや商品詳細に辿り着きやすくしたり、ECサイトの検索だけでなく「購入できる店舗情報」「美容の情報」も強化している。

取り組み例3)

YouTubeなどのSNSチャンネルを活用した情報配信

Youtubeで資生堂の公式チャンネルを運営しており、チャンネル登録数は7.97万人(2022年7月現在)、ブランドイメージ動画だけでなく幅広い幅や美容の悩みやコスモの利用マニュアルなどのコンテンツを充実させており、顧客の悩みや美しくなるための情報を発信している。

引用1: https://netshop.impress.co.jp/node/9063(impress ネット担当者フォーラム)
引用2: https://www.youtube.com/user/SHISEIDOofficial/videos?app=desktop (Yotube 資生堂公式チャンネル)

江崎グリコ株式会社(製造・メーカー)

「ポッキー」「グリコ」などの有名ブランドを提供しているメーカーの江崎グリコ株式会社は、企業や組織を対象にしたB2Bビジネスも積極的に手がけており、グリコ製品を企業キャンペーンなどに活用してもらう「法人ノベルティ」事業がその一つです。オリジナル名入れノベルティは、プリッツやポッキー、カレー職人のノベルティがトップ3となっており、年間100万個を超える出荷実績があるという。用途としては、イベントの景品、PR向け粗品、ご挨拶用の景品といった使われ方をしています。

取り組み例1)

商談率を高めるためにMAツールを導入し営業活動を効率化

3~4ヵ月かけて顧客ターゲット像を明確にし「地域毎のエリアNo1広告代理店」「中規模IT/ソフトウェア企業」を主要なターゲットに決定し、同ターゲット向けの「販売促進ノベルティに関するアンケート調査」などのダウンロードできる資料や顧客事例のコンテンツを制作し、Webサイトに掲載。

取り組み例2)

Webサイトからの顧客獲得と営業担当への引き渡しの仕組みを構築

Webサイトのコンテンツをダウンロードするのに「会社名」「氏名」「メールアドレス」などの顧客情報の入力が必要なため、一元化された顧客情報へ商品カタログへ誘導するメールの送信などを実施し、営業に引き渡す仕組みを構築したことで、Webサイトからのリードの流入量が全体の1/4になり、成約金額も増大しています。

取り組み例3)

QRコードを利用した動画活用やSNSキャンペーンを実施

紙面の商品情報にQRコードを掲載し、商品動画を視聴できるようにしたり、ビスコの小箱の中のQRコードから専用サイトにアクセスするとビスコレター動画が作れるキャンペーンを実施するなど様々な取り組みをしています。その中でもTiktok広告で「ポッキー&プリッツの日」と定めた11月11日にユーザーエンゲージメント向上を狙って、11月6日〜11月10日の期間で「#ポッキー何本分体操」をつけた画像の投稿を促すハッシュタグチャレンジを実施した結果、わずか5日間で2万3600本の動画が投稿され総再生回数は2730万回を記録し高いエンゲージメント率を獲得しています。

引用: https://www.salesforce.com/jp/customer-success-stories/glico/ (Sales force導入事例)
引用: https://tiktok-for-business.co.jp/archives/113/(TikTok for Business)

株式会社アイジーコンサルティング(不動産・施工管理)

新築設計・施工、不動産仲介及び売買、総合リフォーム事業、耐震補強事業、住宅メンテナンス事業など、総合的な住環境づくりを行う株式会社アイジーコンサルティング 。 1899年創業の老舗企業として当初の精神を継承しつつも、全社的にペーパーレス化や営業社員の教育や営業活動を効率化するために全社員iPad導入するなどの新しい取り組み積極的に取り入れたことで、営業社員の知識の向上と新卒の契約数が4倍になるなど、営業の成果アップにつながっています。

取り組み例1)

各エリアの事業部毎の部下への属人的な教育体制を平準化

顧客にアナウンスすべき内容に各事業部毎にアレンジがあったため、「この内容を案内しなければ受注に繋がらない」といったポイントを各主要なメンバーにヒアリングし、徹底的に議論と業務の棚卸しを行いました。全員が一定のクオリティで案内ができるようになるためのプロセスと要点をまとめたマニュアル動画を制作したところ、新卒の契約数が従来の4倍になるなどの営業活動の効率化につながっています。

取り組み例2)

営業資料を動画化し、お客様に見せながらわかりやすく説明

取引先との電子契約に切り替える案内など、全社的にDX化を積極的に進めており、営業メンバーも現場でiPadを使っているため、お客様に動画をお見せしながらわかりやすく伝わるように説明するためのペーパーレス化に取り組んでいます。

取り組み例3)

主要な営業社員のインタビュー動画を配信して採用活動の求人応募を強化

実際に働いている営業メンバーや同じチームメンバーの雰囲気が分かるように工夫しており、チャレンジをしやすく個性を活かしやすい会社のカルチャーが伝わりやすいような内容の動画を制作して活用しています。

引用: https://video-b.com/case/ig-consulting/(Video BRAIN 導入事例インタビュー)

まとめ

営業活動の効率化は、まずは正確に現状の営業組織の課題を把握し、「やるべきこと」と「やらなくていいこと」の優先順位を明確に分類し、具体的な業務改善に取り組むことで実現します。各営業組織の課題によって正解があるわけではないため、現状の課題や改善が必要な点をしっかりと見極めた上で、効率化に向けて正しい手順で進めていくといいでしょう。


 

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