営業活動を改善するためのデータ分析が重要な理由とは?

営業活動におけるデータ分析は、営業部門の課題を分析し、解決策を検討するために有効な手法です。ただし、具体的にどのような手法で営業データ分析を行えばよいのかご存じでない方も多いのではないでしょうか。効果的な営業データ分析を行うためには、これまでにどのような分析が行われていたか、正確な分析するためのデータや資料が揃っているか、などを明確にした上で取り組むことが大切です。

この記事では、基本的な営業データ分析の手法や具体的な進め方について解説します。営業活動の効率化や事業拡大するための実効的な分析を行っていくためにぜひお役立てください。

営業活動におけるデータ分析が重要な理由とは

営業組織における課題を洗い出し、有効な改善策を実施するためには、営業データ分析が欠かせません。

また営業組織の各部門や全体だけでなく、関連する部門への情報の可視化や連携した取り組みもしやすくなります。ここでは、営業データ分析が必要な理由を詳しくご紹介します。

各営業担当に依存した営業活動の限界

営業活動の本来の目的は、安定的に売上目標を達成していくことです。しかし、営業担当者ごとの勘や経験に頼った属人的な営業活動では、営業組織としての各営業担当者の保有案件の状況や顧客のニーズを的確に測ることには限界があるでしょう。また、営業戦略についても営業担当者の裁量が大きすぎ、担当者によって営業活動の進め方及び売上にばらつきが出てしまいます。

俗人的な営業スキル・ノウハウの課題

営業活動においては、スキルやノウハウの属人化が大きな課題になることが多く見受けられます。いくら優秀な営業担当者が複数人いて結果を残しても、なぜ受注に成功したのかなどの理由を分析し組織内で共有しなければ、強い営業組織を作ることが難しく、より属人性を加速してしてしまいます。また優秀な人材の流出により、安定的な売上目標達成は難しくなります。

そこで、営業担当者の勘や経験といった目に見えない物差しだけを頼りに営業活動を行うのではなく、データ分析に基づいた組織として営業戦略を立て、実行していくことが非常に重要です。

マネジメントの課題

営業担当者が個々に自分本位な営業活動を行っていては目標が達成できないだけでなく、誰がいつ、どこで、どのような営業活動を行ったのか、それがどのような結果に結びついたのか、を把握できません。また同様に各担当案件や顧客への提案状況も把握しづらく、どこに課題があるのかが判断しづらく、営業組織をマネジメントすること自体困難になってしまいます。

営業活動のデータ化によるメリット

上記を例にして、営業活動の効率化や売上見込みの達成にはデータ化が不可欠です。

営業活動のデータ化することで各営業担当が保有している案件や見込み顧客の洗い出し、顧客情報の共有といった様々なメリットがあります。

営業課題を明確化

例えば、ある営業担当者が担当している製品や担当エリアでの売上の進捗が目標より進捗がよくない場合、他製品やエリアを担当している営業担当者の活動状況や顧客(又は案件)別の営業データを分析することで、営業担当者の提案内容の問題なのか、エリア毎の案件数の違いなのか、施策や時期的な影響なのか、などの営業課題を明確にすることが可能です。

また、時系列で販売データを分析することによって、契約がしづらい時期による傾向なのかも明らかにしやすくなります。

各営業担当の営業状況や見込み案件を分析する

各月だけでなく、3ヶ月後、半年後、1年間といった見込み顧客の営業案件も含めたデータを可視化することで、以下のような点を明確にする必要があります。

データ分析する項目例)
・現在進行中の顧客や担当者別の案件数
・各案件の提案や活動の進捗状況
・売上が見込める案件の案件数(または受注確度の高い案件数など)
・目標に対して不足している案件数
・売上見込み金額(又は利益見込み金額)

データ分析を行い、どの程度追加案件を獲得する必要があるのか、売上目標と現状とを比較してあといくら積み上げる必要があるのかが客観的にわかれば、各営業担当者への周知と具体的な施策を実行することが可能です。四半期、半期、年度それぞれの締めに向けてどのような営業活動を行うべきか明確になれば、営業戦略も立てやすくなり、行うべき営業活動も明確化できるでしょう。

スキル・ノウハウの共有

安定的に成績を残している担当者の営業活動が成功している理由を正確に多くの情報を洗い出し、そのノウハウを組織全体の課題やスキルに合わせて共有することが非常に大切です。このことにより、営業ノウハウの属人化を防ぎ、営業活動の効率化や統一化が可能になります。結果として営業組織全体の効率化や各営業担当者のスキルアップ(営業力の強化)にもつながります。

マネジメントの効率化

日々の各担当別に保有している案件の営業活動の商談履歴をデータ化・分析し、営業マネージャーが確認して的確な指示が出せるようになれば、効率的な管理とともに売り上げ達成のための施策を周知し、実行に移すことが可能です。例えば以下のような営業データを分析するといいでしょう。

営業活動の項目例)
・商談フェーズ(訪問前、提案前、提案済み、見積もり提示済み、内示、など)
・データが更新されていない案件の進捗状況
・売上見込みの受注確度(25%、50%、75%、など)
・売上予定日(○○月に売上計上予定、など)
・失注後に再提案中の案件状況(再案件化前など)

こうした営業データを分析し商談の進捗状況を把握することにより、進捗が停滞している案件をフォローしたり営業予算管理の精度を向上させたりできるため、営業組織全体の状況を把握し、効率的なマネジメントを行うために有効です。

部門を超えたコミュニケーション

例えば、マーケティング部門へ正確な営業データを共有することができれば、正確な顧客ニーズを伝えやすくなり、業務の連携だけでなくコミュニケーションを円滑にしやすくなります。

明らかにすることで、部門間のコミュニケーションを活性化し、より強い組織を作ることが可能です。

これまでの活動において、見込み顧客の獲得、案件化、受注に至るまでのプロセスに課題がないか、十分な結果が出ていない場合、マーケティング部門から出された見込み顧客の対象が正しいのか、獲得数が不十分なのか、受注率に問題があるのか、など、各営業プロセスにおける課題を抽出することで、それぞれの部門が何をすべきか明確になり、部門間のコミュニケーションがスムーズになりやすくなります。

また、新たな製品・プロダクト開発をするときに顧客データは重要になります。営業データからより顧客課題やニーズの母数が多い顧客情報や正確なデータが把握できれば、製品企画にも役立つため、様々な部門の取り組みにも役立ちます。

営業データ分析の具体的な進め方

基本の営業データ分析手法をご紹介しましたが、実際には市場変化を発見する、あるいは営業プロセスにおける課題の可視化を行っていくためには分析の精度を高めていかなければなりません。ここでは、営業データ分析の精度を高める具体的な進め方について解説します。

KPIを用いて分析する

「KPI」とは、「Key Performance Indicator」の略であり、「重要業績評価指標」を意味します。営業活動においては、売上や営業利益といった最終的な業績目標達成のための営業活動における中間目標の達成度を評価し、契約数や売上見込みといった数値を指標にするためにKPIを用いるのが一般的です。

例えば、「Aという製品を年間〇数販売する」という売上目標を達成するために、問い合わせ獲得件数、営業アポ件数、商談数、クロージング件数など受注までの各プロセスをKPIとして設定し、最終的な目標の達成までに獲得すべき契約数や売上の指標にします。

KPI分析を行うことにより、最終目標達成のために取るべき営業組織全体や各営業担当者が優先すべき行動が明確になり、営業計画が立てやすくなります。結果として業務の効率化や生産性の向上にも繋がります。

各営業担当者毎の活動状況を日ごと、週ごと、月ごと、のように定期的に進捗を確認し、担当者間での差が出る場合はどの活動に課題があるのかを分析し、改善を繰り返す必要があります。

販売施策やキャンペーン別に分析

各時期に実施した販売施策やキャンペーンの動向を分析することにより「ある月にある製品の売上が急増した」ことが明らかになる場合があります。

販売施策・キャンペーン例)
・特定のエリア又は大きなキャンペーンを実施
・SNSで広告キャンペーンやPRを実施
・期間限定の製品を販売した
・競合他社の値上げに追従せず駆け込み需要があった
・CM放映時間を増やした

このように、各営業担当者の活動だけが課題ではなく、様々な施策の要因からも営業課題を把握し、対策する必要があります。より多くの正確なデータが取れるほど、営業組織全体の戦略の優先度が明確になるため、まずはどのくらいの正確な営業データがあるかを把握すると良いでしょう。また、営業課題の解決に必要なデータが不足している場合でも、将来的に蓄積していける仕組みを作ることが重要です。

地域別で分析する

営業データ分析を行う際は、地域特性や実施している販売施策やキャンペーンなどの結果も調査することが大切です。

以下は各エリア毎の一定期間の「売上目標」「売上金額」「売上達成率」「粗利」「粗利率」といった項目をサンプルでまとめたものです。

上記のように各エリア別の売上実績だけでなく、「エリアB」「エリアD」の利益率が高いことがわかります。各販売施策やキャンペーンコストも含めてどのくらい粗利が出ているか、また売上は少ないが粗利率が高いエリアはより収益が期待できる、などの分析にもつながります。

<h3>営業活動のプロセスごとに分析する</h3>

営業データ分析を行う際には、問い合わせからの初回接触、商談、クロージング、受注までの営業活動の中でどこに課題があるのかを数値として出しましょう。

上記のように各営業活動のプロセス別では未達でも、粗利が取れている場合があります。また目標に対しての受注率が低い傾向になるため、商談中の提案内容などに課題がある可能性があるなどの傾向がわかりやすくなります。

また、上記のように製品別や顧客属性別のセグメント分けてみると、問い合わせや商談率に対して受注した時の平均の売上に大きな差があることがわかります。活動数だけではなく、営業活動にかけたコストに対する費用対効果もしっかりと見ておくと良いでしょう。

顧客の購買行動について分析する

また一般消費者向けの営業データの購買行動を分析するときは、「RFM分析」という「Recently(最近の購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(累積購入金額)」の分析手法を活用した顧客をランク分けして対策を検討することも大切です。

例えば、上記のように最近の商品の購買や同様の商品のリピート購入頻度が多く、累計購入金額も多い「Aランクのユーザーに対して特別な特典を用意する」、また「Cランクのユーザーには定期的に購買を促すクーポンやお買い得な商品を案内する」といった施策も考えられます。このように、顧客の購入実績に基づいて施策を実施する方が、後からの振り返りや改善もしやすいため、短期でも実績を出しやすく、費用対効果につながりやすいのがRFM分析のメリットです。

ただし、購入頻度が低くても自社に好意的なイメージを持つ顧客の場合、RFM分析でのランクが低くても、長きにわたって自社商品・サービスを愛用してくれるだけでなく、一定期間毎の定期的な購入が見込まれることに注意しなければなりません。購買行動予測の精度をより高めるためにも、長期的な観点を取り入れながら分析をし、施策を検討するようにすると良いでしょう。

まとめ

今回は、営業活動におけるデータ分析がいかに重要かの解説とともに、基本的な営業データ分析の手法や具体例をご紹介しました。

営業組織全体や各営業担当の課題を分析し有効な施策を打つためには、営業データ分析は欠かせません。ご紹介した具体的な分析手法を参考にしていただき、今後の売上向上のための営業データ分析や継続的な売上を維持するための営業体制の構築に取り組んでみてはいかがでしょうか。


 

関連記事

営業研修に動画を用いるメリットや制作時のポイントを解説

営業担当者が身につけておくべき知識やスキルには、ビジネスマナー、ヒアリング、プレゼンテーション、交渉などさまざまな内容があります。従来の研修では、担当する講師の営業経験などによって研修の内容や質にば ...

法人取引(BtoB)における動画でリードを獲得するには?商談前後の活用事例も紹介

ビジネス取引におけるマーケティング施策でのリード獲得は、動画が幅広く使われています。 動画の活用は、一般的に普及しているYouTubeのように視覚や聴覚だけで内容がわかりやすく、商談前後の顧客 ...

商談・営業活動における動画活用の種類や事例を詳しく解説

従来のビジネスにおける営業活動は、直接対面による商談やプレゼンでの紙やPowerPointでのテキストや画像を使った提案により、顧客への提案時間も長く伝わりづらいなどの課題があります。また、提案する ...

プレゼン動画の作り方とは?初心者でも簡単にできるポイントやツールも紹介

営業活動において商談中やプレゼンテーションに動画を活用することで、短い時間でも内容を理解してもらいやすく、より印象に残るプレゼンができるというメリットがあります。ただし、効果的なプレゼン動画の制作方 ...

クロージングの効果とは?顧客満足度やリピート率を高めるポイントも解説

クロージングは、営業活動の終結を意味し、営業プロセスの中での「成約にいたる商談」「契約の成立」を表現します。営業活動には様々なプロセスがありますが、適切な提案を行った後に成約の意思が高いタイミングで ...

この記事をシェアする