営業職において、気づかぬうちに各営業員が独自で営業活動や顧客情報を保持している状態などの属人化しているケースもあり、ふとした瞬間に問題が発生することもよくあります。今回は、属人化とはどのようなものかを解説し、そのうえで「属人化」を解消し、チームで成果があげられる仕組み作りについて説明します。
目次
営業の属人化による問題点
営業の属人化は、人材育成においてさまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。より良い組織作りを行うためにも、属人化についてしっかり知識を深めておきましょう。
営業の属人化とは
営業活動を行ううでで、業務の手順やその進行状況、ノウハウなどを、担当している社員しか把握していないことを属人化と呼びます。
チームや同僚など他の社員が、何をどうやって、どういうスケジュールで進めているのか、といった営業活動における重要な事項が誰にも伝わっていないことから「ブラックボックス化」といわれることもあります。
また、担当者しか詳細が分からないため、売り上げや営業成績がある特定の営業担当者に依存しやすいのも特徴のひとつです。
営業が属人化するとどのような問題がある?
営業活動の内容を担当者がしっかり把握していれば一見問題はないようにみえますが、営業が属人化すると発生しがちな問題は複数あります。
・引継ぎに困る
他の社員と情報共有できていないため、引継ぎの際に困ることがあります。急な病気やケガで営業担当者が休むことになれば、当然業務は滞ってしまうでしょう。また、万が一クライアントからクレームが入った場合も、他の社員では詳細が把握しきれないためうまく対応できなくなります。
・ノウハウの蓄積ができない
営業のノウハウが蓄積できないこともデメリットです。営業が属人化すると、情報が閉鎖的になるため、営業活動の失敗例や成功例などの今後に活かせる情報も共有しにくくなります。すると、個人として成長できないことはもちろん、組織全体としても成長できず、足踏み状態となるでしょう。
・自己流の営業法になる
営業の属人化は、スポーツでいう個人プレーのようなもの。チームで協力すればうまくいったはずの試合でも、一人で行動したことで負けることもあります。個人プレーでは有益な情報も入りづらく、他のやり方に気づくことができないため、自己流の営業法や対応になってしまいがちです。すると、組織として一貫性に欠け、会社の看板を背負った営業活動ができなくなる可能性もあるのです。
また、自己流の営業法が間違っていた場合、その営業担当者はいつまでも成長できない状況をも生み出すため、人材教育の観点から見ても好ましくありません。
営業の属人化が起こる原因は
ご紹介する項目に当てはまるがないかどうかチェックして、今後の人材育成に活かしてみてください。
個人の成果が重視されやすい
営業が属人化する原因のひとつに、個人の成果が重視されやすいことが挙げられます。チームで情報共有して組織力をアップさせるより、個人でノウハウを蓄積して業務を進めるほうが成績をアップさせやすく、個人の立場を守ることができます。
また、営業は業務を複数人で行わなくとも、個人で完結しやすい仕事のひとつ。すると、おのずと情報共有しなくなり、属人化が進んでしまうのです。個人の成果が重視されて属人化が進んだのち、もしも何らかの理由で成績上位の社員がいなくなった場合、会社全体として業績の悪化は避けられません。
営業活動が忙しく余裕がない
今自分が行っている業務の詳細や、営業の結果、ノウハウなどをまとめた資料を作る時間がないなど、忙しくて余裕がなくなると情報共有する機会を作ることができず、結果的に属人化してしまうケースもあります。
営業は、日々クライアントを獲得するための商談やアプローチなどに勤しむ、忙しい仕事です。「足で稼ぐ」といわれることもあるほど、外出して仕事を行うことも多くあります。商談やアプローチに追われるなど、営業活動が忙しければ忙しいほど、情報をまとめて社員同士で共有する時間が無くなります。こういった少しずつの積み重ねが、属人化を招き、深刻化させやすいのかもしれません。
自分のやりやすい方法で営業を行ってしまう
営業の属人化は、自分がやりやすい方法で営業を行うことでも発生しがちです。例えば、難しい方法と自分がやりやすい方法のどちらを選択するか問われれば、もちろん多くの方がやりやすい方法を選択するでしょう。やりやすい方法を選択し、それで営業成績が良いのなら問題視されないこともあります。
しかし、自分のやりやすい方法で営業を行うことで、会社のマニュアルやチームの方針などにマッチしにくくなります。その結果、孤立して属人化することが考えられるのです。また、情報共有ができない、新しいノウハウやナレッジが身につかないといった属人化を促進する事態も発生しかねないため、注意が必要です。
組織的な情報管理ができていない
誰が何をどのようにして営業を行ったかなど、組織としてきちんと情報管理方法が確立されていないと、属人化しやすくなります。営業活動の詳細をどこにどのようにまとめるのか、管理場所がはっきりしていなかった結果、個人での情報管理になりがちです。個人で情報管理をするようになると、当然社内やチームでの情報共有ができなくなり、属人化が進んでしまいます。
営業活動はクライアント獲得のための商談やアプローチだけが仕事ではなく、こういった情報管理も業務に含まれていることを覚えておきましょう。
オンライン営業も属人化の一因に
コロナ禍をきっかけに増えたオンライン営業ですが、上手に活用しなければ、属人化の一因になりかねません。
オンライン営業は、場所や時間に問われにくい便利な営業手段のひとつです。その便利さから以前は足で稼いでいた営業活動をオンラインに切り替えたという方も多いでしょう。しかし、オンライン営業は便利な面があると同時に、他の社員やチーム内でのコミュニケーションが少なくなるデメリットがあります。その結果、営業活動に関する情報共有が不十分になりがちに。すると、おのずと属人化を招いてしまうでしょう。
営業が属人化することの問題点
属人化の問題点をしっかり把握しておくことで、自社にとって重要な対処法が見えてくるはずです。
営業活動の管理がしにくい
営業の手順や進行状況などの情報が、ある特定の社員でしか把握できていない状態に陥ると、組織として営業活動の管理がしにくく、より良い人材育成ができなくなります。
特に、部長やマネージャーなど営業事業部をまとめる管理者からすると、組織をまとめづらくなる、的確なマネジメントができないなどの問題も発生しがちです。ミスなどが発生した際に的確なアドバイスが出せないと、次回以降、また同じ失敗を繰り返す危険性もあります。
営業に統一性がなくなる
営業が属人化することにより、営業に統一性がなくなるのも問題点のひとつです。
営業の属人化は情報が閉鎖的になった状態のため、営業担当者一人ひとりがそれぞれのやり方で営業を行う個人プレー状態。それぞれのやりやすい方法や独自に考えた営業法を実践するようになり、組織全体の統一性がなくなります。すると、営業担当者によって対応が違う、会社の狙いが見えにくくなるなど、クライアントに悪い印象を植えつけてしまう可能性があるのです。
統一性がなくなった営業では、組織としての営業を行うことが難しくなり、放置することでますます属人化が進む危険性もあります。
組織全体の営業力があらない
営業が属人化した結果、組織全体の営業力があがりにくくなります。なぜなら、管理者が個々の営業担当者に的確なアドバイスがしにくくなるから。また、どういった営業を行ってどのような結果になったのか、成功事例や失敗談などが共有されにくく、次回に活かすノウハウが身につきにくくなるのもその理由のひとつです。
つまり、他の社員から学べることが学べず、自分が知っている知識ややり方にとらわれた結果、個人としても組織としても成長ができないのです。
担当変更やクレーム対応が難しい
営業が属人化すると、営業担当者の変更やクレーム対応も困難です。
どういった内容で営業を進めているかは当人にしか分からないため、急な引継ぎや担当者変更は至難の業。もし担当を変えても、クライアントに伝えなくてはならない重要事項を伝えなかった、何度も同じ説明をする、クライアントの条件に沿っていない提案をするなど、さまざまな問題が発生するでしょう。すると、クライアントとの信頼関係が崩れ、その仕事自体が失敗に終わる可能性もあります。
また、万が一クレームになった場合、今までのやり取りの詳細が分からなければ、対応は困難です。そのクレームがなぜ発生したのか、何に対して怒られているのかが担当者以外では分からず、的確な対応ができないことも多くあります。すると、契約解除や契約更新しないなど、会社にとってマイナスな結果に終わることもあり危険です。
営業の属人化を防ぐ対策
ご紹介する対策を参考に、営業の属人化の予防や消を目指し、より良い仕組み作りと人材育成の方法を見つけてください。
営業活動のルール策定と共有
営業の属人化を防ぐ対策としてまず重要なのが、営業活動のルールを策定することと、そのルールをチーム全員で共有すること。明確なルールを策定することで、営業のやり方の違いを予防し、統一感のある活動を行うことができます。また、ルール策定だけでなく、どんな営業をしてどんな成果が得られたかが分かる資料をどうやってまとめるのか、その方法を決めておくことも必要です。
そして、策定したルールはチーム全員に必ず共有します。せっかくルールを策定したのにもかかわらず情報共有ができていなければ、そのルールは無意味です。営業活動のルールをしっかりと策定して共有することで、マネジメントしやすくなり、属人化対策に繋がります。
ルールの実践と改善
策定したルールにのっとって営業を行ったとしても、問題点が発生する場合もあるでしょう。そこで起きた問題が次の営業で発生しないよう、改善を行います。実践と改善を少しずつ繰り返していくことで、より良いルールが完成するはずです。
策定したルールはマニュアル化してまとめておくのが良いでしょう。パソコンにデータとしてまとめる、動画を作成してまとめるなど、さまざまな方法があります。社員にとって分かりやすく、情報共有しやすいツールを使って、策定したルールをまとめ、ルールの実践と改善に役立てましょう。
顧客情報の管理
顧客情報の管理をしっかりと行うことも、営業の属人化を防ぐ対策法のひとつです。営業が属人化している場合、情報が閉鎖的になり、ある特定の社員以外そのクライアントとのやり取りや顧客情報を知らないケースが発生します。すると、営業担当者が急病やケガなどで休まざる負えなくなった際、担当者の変更が難しく、営業活動が滞ってしまうことも。その代償として、クレーム発生や契約解除といった事例が発生する可能性もゼロではありません。
そのようなトラブルを回避するためにも、顧客情報はしっかりチームで共有しておくことが大切です。顧客情報の管理をきちんと行うことで、急な対応が必要になった場合でもスムーズに対応でき、クライアントに不快な思いをさせずに済むでしょう。
営業ノウハウやナレッジの共有
営業活動でどのようなことを実践し、どういう結果が出たのかといった、実際に営業活動で起こった出来事をまとめて共有しましょう。これはチーム全体を成長させるノウハウやナレッジとなります。蓄積されたノウハウやナレッジは人材育成や新人の教育にも役立ち、今後の個々の営業活動に大いに活かせるはずです。
また、月に1度ミーティングや勉強会の場を設けるなどして、定期的に情報共有の場を設けるのも大切です。そうすれば自然と社員間でのコミュニケーションも深まり、属人化予防、そして解消にも役立つでしょう。
まとめ
営業が属人化すると、組織として人材育成しにくい、個人プレーになり引継ぎや急なトラブルに対応しづらいなど、さまざまなトラブルの発生が予想できます。すると、せっかく頑張っていても成果が出ず、ときには会社の業績に響くこともあるでしょう。こういったトラブルを起こさせないためにも、まずは自社に属人化に陥る原因がないかどうかチェックしてみてください。そして、ご紹介した対策を自社で実践し、属人化を予防、解消を目指しましょう。
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