企業の業績を上げるために、自社の商品やサービスを売り込む営業活動は欠かせません。しかし、毎日営業活動を行っていても、業績が上がらないと悩んでいる企業はあります。かといって原因や改善点が分からないまま、闇雲に営業活動をしても良い結果は生まれません。
営業成績を効率的に上げるには、営業活動の内容や顧客動向などを分析し、結果を反映した営業を行う必要があります。本記事では、効果的な営業分析を行うための分析手法や、便利ツールを紹介。自社の営業活動に関して、改善したい点がある方はチェックしてみましょう。
目次
営業分析とは?
営業分析とは、社内の顧客・案件データ、営業活動、営業成績、日報などの営業に関わるデータを集め、統合して分析することです。この営業分析は、働き方改革が進む現代日本に必要不可欠と言われています。激しい企業生存競争で生き残るためにも、営業分析の必要性を理解しておきましょう。
営業分析はなぜ必要か?
営業分析が必要な理由は、効率的な営業活動に欠かせないものだからです。通常、営業分析を行わず売上や受注数の結果だけで営業員担当を競わせると、各営業員のスキルや成果へのコミットメントの意識の違いなどから、全体の成績(売上)に再現性がなく安定的には向上しません。
しかし安定した成績を残している営業員担当が、どのようにして買い手のニーズを把握し、売上を伸ばしているのかを分析した後、そのノウハウを共有すれば、営業組織全体のスキルアップが図れます。
また、継続的に営業分析を行っていれば、過去のデータや各営業員の商談状況のデータから将来の販売予測が可能です。販売予測ができれば、企業の成長計画を立てられ、適切な営業活動が行えるでしょう。
営業分析を行うメリット
継続的な営業分析には、下記のようなメリットがあります。
- 担当者の経験や勘に頼らず、営業活動が行える
これまでの営業活動は、営業員担当の経験や勘に頼るケースが多くありました。しかしこのスタイルは、個人に依拠しており、失敗のリスクが高くなります。営業分析は、この経験や勘といった不明瞭なものをデータ化し、効率的で無駄のない売り上げが上がる再現性のある営業活動を可能にしてくれるのです。
- 買い手のニーズに素早く対応できる
ある特定の業種や用途のお客様はこのようなニーズを求めているなどの顧客情報をツールやシステムで一元管理や共有ができていれば、多様化する顧客ニーズに素早く対応することができます。
- 洗練された営業スキル・ノウハウを共有できる
売上の高い営業員には、売上が少ない営業員にないスキルやノウハウがあります。営業分析で双方の営業プロセスを分析すれば、効率的な営業活動を実現するための良い点・悪い点が分かるでしょう。これをすることで、売上が少ない営業員担当に適切なアドバイスができます。
このようなメリットからも、営業分析は企業に欠かせないものと言えるのです。
営業分析を行うための4つの方法
営業分析には、様々な手法があります。中でも代表的なのが、動向分析、要因分析、検証分析、顧客分析です。それぞれの手法の特徴と例を参考にして、自社の営業分析を円滑に進めましょう。
動向分析
営業分析を行う際には定量的なデータに基づいた情報をどれくらい保有しているかによって対策が異なります。各営業員ないし、SFAやCRMなどで保持している顧客データの中から
「顧客から要望の多いニーズが何か」
「競合他社と比較した時にサービスや対応に不足はないか」
「業界内で注目されているトレンドに変化はないか」
「お客様からのポジティブ、ネガティブな声」
といった様々な情報を統計的にレポートする必要があります。
これらの情報を保持することによって、要因を分析するときに営業戦略としてどの領域や顧客に注力すれば良いかを把握しやすくなります。
要因分析
要因分析は、動向分析で把握した全体の大きな動きを確認し、その要因が何なのかを捉える分析方法です。要因分析は動向分析で問題点を明確にした後、その理由を特定するために活用されます。
例えば動向分析で、
「競合他社の商品で売上が急増した商品がある」と判明したとしましょう。これが自社が行っていないような
「Web広告のプロモーション」
「Webサイトに掲載するコンテンツの拡充」
「動画を使ったプロモーション」
「展示会・イベントへの出店」
など様々なケースが考えられます。自社も同じような販売戦略を取れば売上が増加するかもしれませんが、事業規模によって対策するコストに限りがあるケースがほとんどですので、自社にとっての顧客にあった施策やコストで有効な手法を選択するのが良いでしょう。
しかし要因分析はあくまでも仮説になるケースが多いため、限られたリソースやコストの中で実施した施策の結果をしっかり振り返り、成功するケースを見極めるのが大事です。
検証分析
検証分析は、これまでの情報を元にした営業分析とその定量データからの想定できる課題・ニーズを把握や仮説を立てる要因分析を行い、その中で自社にとって最も有効だと思われる施策を実施した後、予め調査した仮説と設定した内容を振り返って検証することです。顧客ニーズだけでなく、
「各施策へのアプローチ数に対しての成約件数」
「売上につながった平均購入額」
といった売上数値をしっかりと把握しておくことが大事です。
必ずしもこれまでの分析が正しいわけではないため、しっかりと振り返りをして分析をすると良いでしょう。実施した施策が上手く行ってれば、さらに営業分析を実施してより成果を出せるような施策を実施すれば良いですが、上手くいってない場合、よりさらに顧客課題・ニーズを分析して改善することで良い結果になる可能性があります。
顧客分析
顧客分析は、主に購買・契約につながった顧客の理解を深めるために行います。
例として、
「購入・決め手となった点は何か」
「決済者の役職や行動の特徴」
「購入・契約までにかかる平均的な期間」
「1社、1顧客リストを獲得するためにかかるコスト」
といった、営業の生産性を上げるために必要な情報を分析すると良いでしょう。
どれだけ各営業員が努力をしても実際に取引・契約ができなければ、これまで活動したコストが全て無駄になるケースが多々あります。
より購買・契約に繋がりやすい顧客の行動を分析し、各営業員の活動に依存しない再現性を高めるための分析をすると良いでしょう。
具体的な分析手法とは
先程紹介した基本的な営業データの分析方法だけでは、自社の営業成績が向上するとは言い切れません。より営業分析の精度を高めるためにも、具体的・実践的な手法も試しましょう。
KPI分析
KPI分析(重要業績評価指標)とは、企業の目標達成に向けた活動やプロセスを評価・計測するために置く指標です。目標への達成度を示すものです。営業活動では、顧客獲得数や売上高など営業活動全体のプロセスの中で、成約に繋がる重要なポイントをなどにKPIを決めることとし、分析・レポートをして評価を作ります。
営業活動では、売上高や契約数にKPI数値を設定することが多いようです。
例を挙げると
・ひと月で新規契約を5つ獲得する→飛び込み営業を100社する
・来月の営業売上を100万アップさせる→月前半までに5社以上へ製品の売り込みをする
といった具合です。
で、
KPIは目標達成するプロセスの中間にある指標であり、最終目標の達成のために、いつまでにどんな行動を、どれだけ取れば良いのかを明確にしてくれます。KPIを設定して分析すれば、営業活動の進捗状況を把握しやすくなったり、未来予測が立てやすくなったりするでしょう。
目標達成の過程における達成度の評価・計測の指標にします。KPI分析を行うメリットは、企業イメージの強化や顧客満足度の向上といった、抽象的な目標を見える化できる点です。
ある企業が工場の効率化を目標に設定したとします。この時KPI分析を使い、効率化するための様々なデータを数値化すれば、目標達成のために一人ひとりがすべきことが何かを把握できるでしょう。
またKPI分析のメリットである目標達成の過程の見える化は、社員のモチベーションの向上にも繋がります。これは「自分が行った業務が、どの程度会社に貢献できているか」を明確な指標で確認できるからです。このようなメリットからも、KPI分析の活用は目標達成のために欠かせないものと言えます。
営業拠点の地域分析
各営業拠点がある場合、各地域の特性に合わせた戦略を行う主要な売上となっている営業拠点や全国一律の戦略は行わず、各地域の生活様式、交通インフラ、産業などの独自の特性がないかの分析を行います。
実際に地域分析を行う際の流れは、下記の通りです。
- 商圏分析の実施
- 統計データをもとに、市場や地域の特性を把握する
- 商圏分析の結果をもとに、施策エリアを決定する
- 自社の商品の需要が高い地域であるか、競合他社がどの程度いるかなどを踏まえ、施策効果が高い地域を見付け出す
- 施策効果を測定、見直す
- 施策を行った後の購買行動の変化を確認し、問題があれば見直して実行する
エリアマーケティングを行うと、特に地方など各地域における商習慣や購買行動などの課題やニーズの把握や対策をすることができます。特に各事業部のエリアが分かれて営業活動をしている場合、各拠点の需要を把握することで、利益を伸ばすための売上予測ができ、さらに自社の商品を売るためのアプローチ方法を見出すことが可能です。
行動分析
行動分析は、自社の営業員の行動を洗い出し、成績の良い営業員のノウハウや成功例を細かく分析する方法です。行動分析は、営業行動の詳細を把握し、一人ひとりの営業活動における課題や提案内容に偏りがないかなどの傾向を掴むことで、営業全体の成績を上げることを目的としています。
より売上に繋がりやすい営業員のノウハウを社内全体で共有できることや、各営業員の習熟度に合わせた適切な配置を行えることができます。
たとえば担当している顧客数は多いのに売上が上がっていない、といった傾向がある場合、各顧客と対応している営業員との相性や商談時の課題が把握できれば、提案内容に対してのフィードバックや改善活動ができ、顧客との相性が悪い場合は対応する営業員を変えるなど適材適所の人員配置も検討することもできます。
パイプライン分析
パイプライン分析は、初回リード獲得から商談化した案件の受注までの顧客の購買行動の一連の流れを可視化して分析し、営業の課題や弱点を見付け出すことによって売上や事業拡大を行う手法です。
パイプライン分析の流れには、
・問い合わせ (各種Webなどのプロモーション施策、展示会、イベントなど)
・初回ヒアリング (新規問い合わせに対する初回のヒアリング内容)
・商品デモ、トライアル (サービスの契約確度の見極め)
・見積もり、クロージング (契約有無に近い状態での提案と契約交渉)
・成約 (契約上の懸念点や契約書等の取り交わしも問題ない状態)
といったステップがあります。これはあくまでも一例で、業界や商品によってもパイプラインのステップは変わってくるでしょう。しかしパイプライン分析で重要なのは、流れではなく成約までに至るステップを全て細分化できているかです。
問い合わせから成約・リピートまでの流れが不明瞭だと、どのステップに問題があるか明確にできず、対処法を検討できません。これではパイプライン分析の精度が落ち、実施する意味がなくなってしまいます。
パイプライン分析が正しく実施できれば、営業の数字が悪い、成績を上げなければいけない。といったざっくりとした目標ではなく、どこが問題で何を改善すべきか営業員担当ごとの課題が見付けられるでしょう。
営業分析で使いたいツールを紹介
これまで紹介してきた分析を、営業員担当者の頭の中で行うのには限界があります。そのため営業分析には、分析作業を効率化できるツールを活用すると良いでしょう。
BIツールエクセル
BIツールは、大量のデータや形式の異なるデータを組み合わせて分析でき、さらにリアルタイムで情報の更新・共有も行えるというメリットを持つツールです。
BIツールには、
・データを可視化できるダッシュボード機能
・複数のデータを多角的に分析できる機能
・分析結果を自動で出力するレポーティング機能
・様々なデータから、問題解決するための対処方法を発見できる機能
が備わっています。このような機能を営業分析に活用すれば、
「売上データを集めるのに大幅な時間と手間がかかる」
「様々な形式のデータを統合するのが難しく、精度の高い売上・顧客分析が行えない」
といった営業活動の悩みの改善が期待できるでしょう。
多くの企業で使われているエクセル(Excel)は、データの蓄積、集計、分析が得意です。営業活動を行う度に活動記録を記入しておけば、営業活動の過程を可視化できます。営業活動の過程を時系列で記録したり、顧客ごとの売上を管理したりする程度の営業分析をしたいのであれば、エクセルの機能で十分対応可能です。
大量のデータを扱いたい場合や、エクセルでのデータ管理に限界を感じている場合は、他のツールの導入を検討しましょう。
営業支援ツールSFA
営業員の営業活動の分析を行う上で、SFA(営業支援ツールまたは営業支援システム)の営業活動のプロセスを可視化し、データ化できる点は役立ちます。営業活動に関わる情報の管理に特化したSFAは、営業活動の強化を目的としたツールです。
そのためSFAには、顧客情報や営業員の行動、案件やタスクなど営業活動に関わる情報を管理できる機能が備わっています。またSFAは、これらの情報を蓄積・共有することも可能です。蓄積された情報をもとに営業分析を行い、そのデータを共有すれば、営業員の課題を発見できたり、異なる部門との連携が取りやすくなるでったりするでしょう。
SFA(セールス フォース オートメーション)は、日本語に訳すと「営業支援システム」と呼ぶ、営業支援を目的としたツールです。SFAには、営業部門や営業担当をサポートする機能が多数備わっているため、導入することで営業成果の向上が期待できます。
具体的な例でSFA導入のメリットを確認してみましょう。
A社では、営業日報の提出を紙媒体で行っています。しかし思うように売上が伸びず悩んでいました。そこでA社はSFAを使い、データにもとづく売上分析を行うことにしたのです。これにより、これまでの営業分析では分からなかった問題点や改善点を発見。このデータを反映した営業活動を行うことで、結果的に会社の業績を上げることができました。
このようにSFAは、営業効率や売上、成約率の向上を最小限の労力で達成するためのアシストをしてくれるツールなのです。
顧客管理ツール CRM
営業員のサポートに重きを置くSFAに対し、CRM(顧客管理システム)は、顧客との関係性の強化を目的としたツールです。CRMは、顧客の年齢や性別、購入品、問い合わせ記録など、ありとあらゆる顧客の情報を蓄積・管理できます。
この特徴は、顧客が何を求めているのか、どんなアプローチが良いのか、といった顧客ごとの営業活動方法の分析の手助けになるでしょう。CRMを導入すれば、営業員の誰もが最新の顧客情報を確認でき、顧客に合った営業活動を行えます。顧客管理を徹底したい場合は、CRMのを導入がおすすめです。
まとめ
営業の良し悪しは、企業の業績に大きな影響を与えます。そのため営業活動を行う度に、営業分析を行い、問題点や改善点がないか、成功に必要なノウハウが共有されているか確認する必要があります。現時点で自社の営業分析が不十分と感じていたり、業績が上がらないと悩んでいたりするならば、今回紹介した営業分析手法や便利なツールを活用して、効果的な営業分析を行いましょう。
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