業績や企業の発展など、課題があると感じている場合は営業部門の改革を行う必要があります。多くの企業で営業部門は、新規顧客の獲得や売り上げなど、企業の業績に直結する業務を担っています。従来は「足で稼ぐ」のが営業の本筋とされていましたが、昨今、さまざまなITツールの普及とともに、営業の方法も大きく変わってきました。
この記事では、営業改革への取り組み方やITツールの活用方法について解説します。
目次
営業改革とは
営業改革とは営業組織の中で何らかの変化をさせて、業務体制を改善していくことです。具体的には営業組織のメンバーの変革や、営業の業務体制の改革などを行います。営業の手法を見直し、業務効率化と業績アップを図るための改革です。
各営業員が保有する顧客情報やスキルのデータをデジタル技術を活用した管理や業務効率を上げるための営業改革として「営業DX」の推進や、営業DXの一つの取り組みとしてデータ化した営業員や顧客情報からセールスプロセスを定義し、各営業の属人化を減らし販売力のある営業員をモデルケースとする営業活動の改善や営業員の研修やコーチングに実施や検証と改善を行う「セールスイネーブルメント」を行う取り組みも増えています。
<営業改革の取り組み例>
・紙媒体で作成や印刷をして提案を行っていた資料をデータ化し、PCやタブレット、メールで送るようになった。
・これまで直接顧客に送っていた資料をWebサイトの製品ページでダウンロードできる資料を作成して配置した。
・各営業員の属人的な活動や顧客情報の現状把握とSFA/CRMなどのデジタルツールを活用して一元管理し、活動状況の見える化や売上に繋がる営業プロセスを明確化した
・商談高い販売チャネルを分析し、より売上が上がっている活動に各営業員のリソースを集中させた。
営業改革はなぜ必要?
営業改革が必要な理由はさまざまですが、「企業・事業の成長」や「業績アップ」が最終的な着地点であることがほとんどです。まずはなぜ営業改革が必要なのかを、企業の業績や営業体制をもとに考えてみましょう。
企業の安定的な成長のため
企業を成長させるために営業部門の改革は必要不可欠です。営業担当者の役割は商品やサービスなどをアピールして顧客の購買意欲をかき立てて、実際に購入に繋げることです。直接的に売り上げに繋がる業務なので、営業担当の力が向上すれば利益も拡大し、企業の成長に繋がります。
売り上げ達成はもちろんですが、新規顧客の獲得も営業技術やマーケティング活動の強化に大きく関わってきます。長期的に安定した成長のためには既存客の定着とともに新規顧客の流入も必要です。昨今、必要とされる営業手法や、顧客の心に響くアピール方法のトレンドは移り変わりが激しいです。そのため時代のニーズに合わせた新しい営業手法を身につけて、企業の安定的な成長に繋げる必要があります。
変化する市場に対応するため
トレンドや環境、法律などの変化によって市場は日々変わります。市場の変化は、商品やサービスの売れ行きに直接関わります。そのため営業担当者は、この市場変動に対応しながら営業手法を見直す必要があるのです。
営業手法にはさまざまな種類があります。
- お客様との対話を通して自社の商品やサービスによる解決策をお客様の課題・ニーズに合わせて提案する、従来の手法である「ソリューションセールス」
- マーケティング活動や各営業員の新規開拓で獲得したリードの商談確度を見極めるための「インサイドセールス」
- インサイドセールスから引き渡されたより契約見込みの高いお客様の提案対応とクロージングに集中するための「フィールドセールス」
これらは一部の取り組み例になりますが、各営業員の活動をより売上や成果につながるための業務や提案に集中させるための取り組みが営業改革に繋がるケースがよく見受けられます。
営業改革は、デジタル活用に限らず、あらゆる活動シーンでの課題や改善を行うことができますので、まずはできることから始めるのが良いでしょう。
組織内の意識を統一するため
組織内のメンバーを育成することは、企業の成長にも繋がります。企業内のどの部門にも言えることですが、組織のリーダーだけが高い目標を持って仕事に邁進していても、営業全体や拠点での組織としての業績や目標達成率などの結果には結びつきません。組織内の意識を統一させて、目標達成のための動きに温度差がないことが、強い組織を作る上で必要です。
各営業員毎の成績を全体や事業部内で共有するときは注意が必要です。成績が上がっていない営業員の個別の問題ではなく、これまでの営業活動の課題の可能性があるため、まずは現状把握や改善に取り組むメンバーだけに共有し、各営業員のモチベーションを下げないことが重要です。
営業改革に欠かせない取り組み
営業改革で必要な取り組みは、現状把握・目標設定・戦略やプロセスのデータ化などがあります。現状を把握するときに見えてきた課題をもとに、改革案を練りましょう。
現状分析をして課題を見つける
営業方法や組織全体の問題点を見つけるためには、まずは現状を把握することが大切です。
既に各営業活動のプロセスが定義されており、活動の効率化ができていない場合、まずは各営業員や事業部などの拠点での活動方法や営業プロセスを把握することから始めましょう。各事業所の拠点の地域が異なる場合、その地域の風習などの社会事業が異なるケースがあるため、営業プロセスを一つに平準化するのではなく、地域(エリア)毎に課題やプロセスを細分化するのも営業改革と方向性を決めために重要です。
目標の設定
浮き彫りになった課題を解決するために具体的な目標を設定します。
具体的には、
- 新規顧客獲得数の増加
- 各セールス方法からの獲得数
- 売り上げアップ
- 予算の達成
- 顧客のリピート率アップ
- 顧客満足度アップ
などを目標として、設定します。
目標は「部門全体」「チームごと」「個人」のそれぞれに設定される場合が多いです。しかし、組織の目指す姿を共通認識として全体に浸透させることも忘れずに行いましょう。必ず全体に目標を共有し、温度差がないようにしましょう。受注・契約以降のリピート率や顧客満足度アップは、営業改革後のカスタマサポートやサクセス部門の役割になるケースも多いため、自社の組織体制に合わせてまずは契約前までの目標設定を明確にすると良いでしょう。
営業戦略を「見える化」して共有する
予算や顧客獲得数など、設定した目標を単純に示すのではなく、「各施策の予算に対してどのくらいの活動を行ったか」「その結果どうだったか」を「データ化して共有する」のが有効的な手段です。例えばテレアポの発信やDMを送った回数と獲得数や、訪問営業での活動時間や成果などのデータ。これらを数値化して「見える化」することで、営業戦略を客観的に見直しやすくなります。
データ化したあとは、「現時点での数値」と「目指すべき数値」を「明確化」し、目標達成までの細かい数値を試算して共有しましょう。数値化しておけば、改革前と改善後を比べやすくなるのでさらなる分析・改革がしやすくなります。
人材育成と意識改革
営業改革には営業担当者の個々のスキルアップも重要です。
人材育成や意識の改革にもデータを示した可視化が有効です。この場合は、営業プロセスをデータ化します。
まずは、
「殆ど話を聞いてもらえなかった」
「予算が合わない」
「商品のプレゼンを最後まで聞いてもらえた」
「見積もりの依頼があった」
など、営業プロセスの細分化をします。それをもとに、プレゼンから見積もりまでの獲得数や、見積もりから契約までの獲得数をデータ化。
そうすることで「プレゼンを聞いてもらえたからと言って、契約に繋がるわけではない」というような、共通認識を示しやすくなります。このようにデータを通して可視化することで、営業手法や間違えた認識の見直しも可能です。社員それぞれの営業手法の統一や意識の一本化、育成マニュアルや教育の管理もしやすくなります。
営業部門以外との連携
市場環境の変化や見込み客の獲得のためには、他の部門との連携も必要です。他部門との連携を強化すれば、新たな視点での営業活動が可能になるケースが多くあります。
また、自社の商品やサービスを全く知らない、興味がないような層を対象に闇雲に営業をするよりも、マーケティング部門や見込み客の見極めをするインサイドセールスチームがあれば、ユーザーを引き継ぐ仕組み作りをする方が効率的です。マーケティング部門が打ち出した広告に対して興味を示したユーザーの共有を行ってもらえば、営業部門がもう一押しすることで成果が得られるかもしれません。
また既存顧客との継続的な取引を担っているカスタマー部門との連携も行うことにより、契約後の顧客の理解も深まります。
営業改革の成功のカギ
営業改革を成功させるカギは、「各営業員の課題の把握」「デジタルの活用」と「継続的な改善」です。
さまざまなツールを活用して効率化を図る
営業改革に必要な課題に対してデジタル技術の活用は営業における多くの業務の円滑化を図ることができます。
- 商品やサービスの紹介
- 業務報告
- 見積もり書作成
- 契約書作成
- 顧客情報の集約
- 自動データ集約
- 育成マニュアルの作成
上記以外にもデジタル技術の活用によって効率化できることはたくさんあります。さまざまなITツールを活用して業務を効率化させることが、営業改革の一つの成功のカギとなるでしょう。
営業支援のツールとして主に使用されているのが、SFA(営業支援システム)です。営業プロセスや進捗状況や報告などの効率化を図るために多くの企業の営業部門で導入されています。
SFAの導入を検討する場合、まずはその導入を検討しているシステムの理解が重要です。
導入時のポイントとしては以下が考えられます。
・SFAを導入したことによる最終の営業目標を設定しておく
・上記の導入コストに対するリターンがどのくらい見込めそうか
・各営業員の活動プロセスを分解できるかどうか
・顧客情報など一元管理できるか
・各営業員の活動状況をリアルタイムで入力してもらえるか。
・見える化することによって各営業員のモチベーションに影響しないか
必ずしもSFAを導入することが営業改革のゴールではありません。
自社の課題に合わせて適切なデジタル技術を活用することによって、営業改革やより効率的な活動のきっかけになる一つの手段として考えると良いでしょう。
定期的な評価と継続
営業改革は一度で達成することは難しく、本当の改革実現には時間を要するものです。市場や人員に合わせて何度も改善すべき点を「明確化」し、評価と解決策を練って成果に繋げる必要があります。
いきなり大きな改革を遂行するよりも、急な改革は各営業員のモチベーションにも影響するため、少しずつ改善していくのがベターです。スモールスタートでも改革を実行していくうちに新たな課題も見えてくるかもしれません。継続的に改革を行えるように、定期的に営業部門の評価を行う場を設け、その都度新たな策を打ち出していくことが大切です。
まとめ
営業の改革は企業全体の業績に直接繋がります。一口に営業改革と言っても営業プロセスや営業フロー体制、人材育成方法など、見直すべき点はさまざまです。「各営業員のせいで成果が出ないから改革を」ということではなく、市場環境に対応するため、さらなる企業の成長を図るために行うのが営業改革の本筋です。改革を継続しやすいように、デジタル技術を上手に活用しながら、改革を進めましょう。
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