新卒採用の市場は近年、大きく変化しています。「採用活動が長引いてしまう」「なかなか求める人材と出会えない」といった悩みを持つ採用担当者も多いのではないでしょうか。このような採用現場の課題を解決するために、各社がさまざまな施策を行なっています。
ここでは2024年卒の採用活動の動向や、注目されている媒体や手法、企業が取り組むべき施策について紹介します。
目次
【2024年卒】新卒採用の市場動向
2023年卒採用の市場の変化や、実際に企業に行ったアンケート調査などを参考にしながら、2024年卒向けの採用活動の市場動向を紹介します。
【2024年卒の新卒採用の動向】
・採用のオンライン化はコロナ収束後の加速傾向
・採用活動の早期開始
・母集団形成の手法が変化
採用のオンライン化はコロナ収束後も加速傾向
ここ数年の採用活動は、新型コロナウィルスの流行の影響を受け、採用活動のオンライン化が一気に加速しました。これまでオフラインで行っていた就活セミナーや説明会、インターンシップなどが中止になり、web面接やwebセミナー、オンラインインターシップへ切り替えた企業が多かったでしょう。
Offerboxを運営するi-plug株式会社のアンケートによると、4割以上の企業が「コロナ収束後もオンライン対応を続ける」と回答しています。また、採用活動の工程でオンラインを一切取り入れていない企業は全体の1割程度。残り9割の企業は、会社説明会から最終面接まで、いずれかの工程をオンラインで実施しているという結果も出ています。
また、2024年卒の学生はコロナ禍で大学生活をスタートした学年でもあります。入学式や授業など、オンラインに馴染んでいることも、採用のオンライン化が進む理由の一つでしょう。特に近年の学生はwebサイトでの検索よりもSNSを活用して情報収集を行っている傾向があります。
HR総研の調査によれば、2023年卒の就活生が最も利用したSNSは「Instagram」や「Twitter」が主流でした。
学生にとってもオンライン採用のニーズが高く、企業側も呼応するかたちでオンラインの採用活動は継続していくでしょう。
参考:https://offerbox.jp/company/jinji-zine/market-trend-next/
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=334
採用活動の早期開始
採用活動のスケジュールは、年々早期化する傾向があります。
22年卒の新卒採用以降、政府が主導する就活スケジュールを策定していますが、あくまで目安なので実際はこの就活スケジュールに沿った新卒採用活動を行う企業ばかりではありません。2022卒の就職活動では、選考解禁が6月からであるにもかかわらず、5月末までに63.3%の就活生が内定しているのが実態でした。(理系ナビ調べ)
また2023年卒就活生が就職活動を開始する時期は3年生の6月がピークですが、HR総研が行った調査によれば、学生の4割以上が6月以前に就職活動を開始しています。これは前年と比較して1割程度多くなっています。
2024年卒の採用活動においても、広報活動を2023年3月以降、採用選考活動を6月以降、内定を10月以降とする現行日程を維持する方針を政府が発表しています。にもかかわらず、2021年11月に行ったウォンテッドリーの調査によれば、2024年卒の長期インターンシップ経験率は68%であり大学2年生の秋冬からすでに就職活動を始めている学生も非常に多いことがわかります。
i-plug株式会社の調査によると、2024年卒の学生への接触開始時期を「23年卒より早くする」と答えた企業が36%でした。近年の採用活動の流れをふまえると、24年卒・採用活動の開始時期はさらに早まる可能性があるでしょう。
母集団形成の手法が変化
新卒採用における「母集団形成」とは、自社に対して興味や関心を持っている学生を集めることです。
2019年に採用活動の課題を調査した結果、母集団形成の実施や再訪法・戦略についてと回答した企業が約半数でした。採用活動では単にたくさんの学生を集めれば良いというわけではなく、自社の求める人物像と採用ターゲットがマッチしているかどうかが重要ポイントです。
これまでは就活サイトや自社のホームページなどが主流でしたが、近年ではSNSを活用したり、従来の採用方法とは違った手法が注目されるなど変化が起きていることも事実です。採用活動のオンライン化に伴ってSNSで動画を配信したり、自社をブランディングするなど様々な戦略が実施されています。
採用手法や媒体の変化に対する企業の取り組み
採用手法や媒体が変化しているのはオンライン化が進んでおり、ターゲットのオンライン化への需要が高いことも一つですが、企業が求めるターゲット層が変わってきていることも理由として挙げられます。
このターゲット層の変化は、事業変革や産業全体のDX化、人材確保の難化などが影響しているでしょう。これまでと違った人材を確保するためには、採用方法や媒体など手法を変えて採用活動に取り組む必要があるのです。
ここでは採用手法や媒体がどのように変化しているのか、企業としてどのようなことに取り組むべきなのかを紹介します。
依然として就職ナビサイトが主流
採用手法や媒体に変化は見え始めているが、2023年卒採用で重視した施策を調べたアンケートの結果によると、現在ではまだ主流は就職ナビであることがわかります。企業規模別に見ても就職ナビが自社採用ホームページと並んで上位を占めています。
就職ナビサイトは、学生登録者数が圧倒的に多く、サイト上で学生とやりとりができるため管理がしやすいこともメリットの一つでしょう。とはいえ、利用している企業数も多いため、うまく差別化を図らなければ埋もれてしまう可能性が高いでしょう。
利用されている就職ナビの上位は以下の通りです。
就職ナビの種類 | 掲載社数 | 登録学生数 | 基本プランの掲載料金 |
マイナビ | 約23,000社 | 約830,000名 | 160万円 |
リクナビ | 約16,000社 | 約700,000名 | 170万円 |
キャリタス就活 | 約20,000社 | 約400,000名 | 110万円 |
・マイナビ
マイナビは2大就職ナビサイトの1つで、掲載者数や学生登録者数ともに業界トップです。大手企業はもちろん、中小企業や地方企業も多く取り扱っています。
幅広い業界の企業が扱っていますが、サイト内に特集ページが用意されているため業種や分野ごとに検索されやすいです。また就職に関するイベントが全国でおこなわれ、インターンシップの時期から実施しているため、母集団形成にも役立てやすいでしょう。
・リクナビ
リクナビはマイナビと並んで2大就職ナビサイトの1つです。膨大な数の企業から細かくフィルターをかけて探すことができるので、利用者にとっても使いやすいです。リクナビはビッグデータ解析によって、自社に興味を持つやすい学生や、求める人材にマッチした学生をレコメンド表示する機能を搭載しているため、ミスマッチを防ぎながら採用活動を進めることができるでしょう。
・キャリタス就活
キャリタス就活は、就活生目線で考えた独自のコンテンツがあり、近年注目されている就職ナビサイトです。
例えば「気になる」機能では、企業側は自社求人の認知度の確認・拡大や学生との接点を作ることができます。
「キャリタスContact」では、学生とのコミュニケーションがすべてLINEで完結できるため、学生にとって使い勝手のいいサービスといえるでしょう。
大企業においては逆求人サイトの需要が増加
逆求人サイトとは、ダイレクト・リクルーティングの1つです。学生側が逆求人サイト上でPRを行い、企業から自社にあう人材に対してアプローチをおこないます。通常の就職活動とは逆の流れで行われるため、逆求人サイトと言われますが、「オファー型」や「スカウト型」とも呼ばれます。
企業側から自社に合いそうな人材をピックアップすることができるため、自社が求めるマッチした学生を見つけることができます。様々な学生と直接コンタクトを取れるため、より密に相手のことを知ることができます。情報感度の高い学生も多く、優秀な学生をもつけやすいなどのメリットがあります。
ただし声をかけたからと言って入社に至るとは限らないので、自社に魅力を感じてもらえるようなブランディングや働くメリットなど、狙った学生に響くような自社の強みをアピールする必要があるでしょう。
よく利用されている逆求人サイトは以下の通りです。
逆求人サイト (ダイレクトリクルーティングサイト) | 費用 |
OfferBox | 初期費用:75万円 |
wantedly | 1ヶ月トライアル:0円 ライトプラン:3.5万円(1ヶ月) ベーシックプラン:11万円(1ヶ月) |
iroots | 非公開 |
・OfferBox
OfferBoxは、逆求人型の就職サイトの中で認知度の高いサービスです。企業から学生へのオファーは1通ずつしか送れない点がこだわりのポイントで、学生が大量のDMを受け取るあまりメッセージの開封すらしないという状態を回避しています。そのため学生の開封率は高く、企業側も学生をしっかり吟味したうえでオファーをかけることになります。
自社の認知度が低く、掲載型の就職ナビでは応募が集まらない場合や、ターゲット層となる学生となかなかマッチングできない場合におすすめです。
・wantedly
Wantedly(ウォンテッドリー)は、SNSを運用しているような感覚で利用できるサービスです。採用のマッチングや学生とのやり取りだけではなく、情報発信ができるという点が特徴でしょう。学生に対してオファーが送れるだけでなく、ブログによって企業の魅力を発信できるため、採用ブランディングにもつながります。
逆求人に多い成果報酬が不要であるため、他の媒体や手法よりも採用単価を抑えることができるでしょう。
・iroots
irootsでは優秀な学生が多く登録していることと、独自の審査を通過した優良企業しか登録できないシステムになっているため、学生からの信頼が厚い点が特徴的です。
最大6,000字の詳細な学生プロフィールが表示されるため、オファーを送る前にしっかりと人材を把握することができ、マッチングしやすいでしょう。理系学生や大学院生も多く登録しており、研究職やエンジニア職向けの学生を採用したい企業にも向いています。
今後企業が力を入れたい施策
【今後企業が力を入れたい施策】
・逆求人などの新たな媒体の検討
・インターンシップの実施・刷新
・オンライン化の対応
・オンラインでも社内の雰囲気がわかる工夫
i-plug株式会社のアンケートによると、自社が求めるターゲット層の獲得に効果的であると感じた施策は、逆求人サイトなどのダイレクトソージングやインターンシップであるという結果が出ています。
自社が求める人材となかなかマッチしないという場合は、媒体を変えてみることも検討するといいでしょう。またインターンシップを行うことで、学生のスキルや適性がよくわかるため実施・もしくは内容を刷新すべき工程でしょう。
同じくi-plug株式会社が2023年卒の学生に対し、オンラインの就職活動に対してどう思うかという調査を行った結果、「全工程(会社説明会~最終面接まで)オンライン化しても良いと思う」という回答が43%と、最も多い結果になっています。インターンシップを含む採用活動のオンライン化も学生のニーズとして大きいことがわかります。
一方、オンラインの就職活動に対して不安に感じていることは、「企業や社員の雰囲気が分かりにくい」という回答が約50%という結果に。オンラインでも自社の雰囲気が伝わるような工夫をが必要です。採用ブランディングを行ったり、SNSなどを利用して動画配信を行ったりするなどの取り組みも有効でしょう。
まとめ
近年の採用活動では、少子高齢化による労働力確保の難化や、新型コロナ感染症の流行、産業のDX化によるターゲットニーズの変化など様々な要因から、大きな変化が起きています。2024年卒新卒採用はこれまで以上に早期傾向、媒体の変化、オンライン化の拡大が進むため、市場のニーズに合わせながら採用活動を実施しなければなりません。変化に対応しながらも、求める人材を確保するための工夫をこらすなど、人材の獲得競争はどんどん厳しくなっているでしょう。動画配信や採用ブランディングなど、しっかりと採用戦略を立てながら進めていくことが大切です。
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