採用ブランディングにより、自社が抱える採用活動の課題を解決できる可能性があります。
ミスマッチを防止したり、自社が求める人材確保など採用ブランディングから得られるメリットはとても多いです。しかし採用ブランディングはマーケティングの視点を取り入れ、長期的に取り組む必要があるため、成功事例を参考にしながら、しっかりと手順を踏む必要があります。
この記事では採用ブランディングの成功事例や成功のポイント、メリットや実践の手順を紹介します。
目次
採用ブランディングに注力すべき理由
採用ブランディングとは、採用活動において自社の強みや魅力を発信することで、自社をブランド化する戦略の一つです。「この会社で働きたい!」と思ってもらえるように、ファンを増やすようなイメージでターゲット(新卒生)にアプローチをかけます。採用ブランディングを行うことで認知度を高め、自社が採用したい人材を獲得することが最終的な目的です。
採用ブランディングには以下のようなメリットがあります。企業成長にもつながるため、ぜひとも取り入れたい手法であるといえるでしょう。
適任の人材を獲得できる
採用現場では、適任の人材を獲得することはもちろんですが、ミスマッチによる離職のリスクを低減することも求められる課題の一つです。採用ブランディングがうまくいけば、新卒の学生はしっかりと企業について理解したうえで、求人に応募することになるため、ミスマッチの防止も期待できます。
長期的に見て採用コストを削減できる
自社をブランディングするためには、採用コンセプトを考案したり、採用サイトのリニューアルや新しいチャネルの活用など、時間や労力・お金のコストがかかります。ブランディングを築くことができれば、長期的にメリットを得ることができるでしょう。
例えば、社員の定着率も良くなり、求人広告や転職サイトなどを頼らなくても自社のサイトやSNSなどから応募数を十分に募ることも可能です。長い目で見ると採用コストを削減することにもつながるのです。
採用競争に巻き込まれにくい
採用現場では優秀な人材の獲得競争が日々行われています。しかし採用ブランディングを行うことで、他社との差別化ができるため、採用競争に巻き込まれにくくなります。仮に同じ業種で同じような待遇・給与の競合企業があった場合、自社の魅力がしっかり表現できている企業の方に入社したいと考えるものでしょう。
採用競争で勝ち抜くことができれば、自社が求める優秀な人材を獲得することもできるため、ビジネスにおいても有利に進める可能性が高いといえます。
自社の認知度がアップする
採用ブランディングは自社の魅力や強みなどの情報を新卒生に向けて発信する採用活動ですが、新卒採用を希望する学生以外に対しても認知度が上がる可能性があります。より多くの新卒生の目に触れることになり、応募者数が増えるだけでなく、自社サービスの見込み顧客などにも興味を持ってもらえることもあります。
採用面だけでなく売上の拡大という点でも、採用ブランディングの企業への貢献度は大きいものなのです。
社内が活性化する
採用ブランディングによって魅力的な企業であると認識されることは、すでに働いている社員にとってもモチベーションが上がるきっかけになるでしょう。優良企業で働いているという事実は、社員の自己肯定感の向上にもつながります。
採用ブランディングを進めるうえで、社員の意見を聞くなど、社員全体が一丸となってブランディングに加担することになります。同じ目標を社内全体で共有することで、帰属意識が芽生えたり、愛着が湧く例は多いのも事実です。
採用ブランディングの成功事例
採用ブランディングのメリットを最大限に活かした採用ブランディングの成功事例をいくつか紹介しましょう。どのような戦略に取り組んだのか、なぜ成功できたのかについて解説していますので、ぜひ参考にしてください。
三幸製菓のブランディング事例
採用ブランディング前の課題 | 認知度が低い 採用予算が少ない エントリー数が少ない ミスマッチが多い |
ブランティング戦略 | 一人一人と向き合うことを重視し、大手求人サイトへの掲載を廃止 SNSの活用 オフラインのイベント実施 共感できる人の採用が目的 |
ブランディングの成果 | 300人だったエントリー数を13,000人まで増加 |
成功に導いたポイント | エントリー数ではなく、人材の確保まで目的を明確に持っていた 「おせんべいなら三幸製菓」というキャッチコピーと共にブランドを構築した 採用担当者が人事の重要性を理解し、経営陣に訴えかけた |
三幸製菓はエントリー数が多くないうえにミスマッチな人材が多いことが大きな課題でした。ミスマッチの理由を追求し、選考フローに「おせんべいが好き?」、「新潟で働ける?」という2つの質問を取り入れました。このたった2つの質問によってターゲットを絞り込むことができ、ミスマッチな人材のエントリーを減らし、結果的に新卒入社した社員の定着率も大幅に向上したのです。
このように人材に向き合い対策を立てたことで、三幸製菓といえば「おせんべい好きが集まる新潟の会社」というブランドイメージが築かれました。
参照:https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20181030/resume/05-jirei4-shibata.pdf
パナソニックのブランディング事例
採用ブランディング前の課題 | マーケティングの視点ではなく感覚で採用活動をしている 毎年変わるメッセージでブランド意識の欠如している 採用コンテンツが読まれていない |
ブランティング戦略 | 採用ブランディング課を設立 1年かけて学生の就活に関する悩みを調査 SNSで情報発信 |
ブランディングの成果 | SNS投稿へのシェアや「いいね」が16倍 |
成功に導いたポイント | 専門部署を立ち上げて積極的に活動した 1年かけてターゲットへの理解を深めた 一貫性を持たせた採用活動を行なった |
大企業パナソニックの事例は、採用ブランディングの成功例として代表的なものです。なかでも「採用ブランディング課」を設立した点で、パナソニックの本気度合いを知ることができます。
パナソニックの取り組みは、SNSの運用により、学生の悩みに合わせた情報発信を行うことでした。学生のリアルな声を知るために1年かけて学生の悩みや不安について調査しました。
リアルな声に対する情報発信を行なったことで、ターゲットであった学生の共感を得ることができ、学生からの信頼度やパナソニックで働くことへの興味や関心を上げることができた例です。
参照:https://www.dodadsj.com/content/200122_panasonic/
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00562/00002/
タニタのブランディング事例
採用ブランディング前の課題 | 特徴的なイメージが薄い |
ブランティング戦略 | 健康を気遣った社員食堂を再現したタニタ食堂の開設 「健康をはかる」から「健康をつくる」へ方向転換 |
ブランディングの成果 | 健康意識や、健康づくりをサポートしたい求職者が集まった |
成功に導いたポイント | いち早く自社の魅力に気づき方向転換ができた |
タニタといえば体重計というイメージが強いですが、採用ブランディングに成功するまでは、特徴的なイメージの薄い企業っでした。そこでタニタは「人々の健康福利に貢献する会社」という社会的意義をコンセプトとして、押し出しました。
栄養やカロリーにこだわった社員食堂がたちまち話題になり、レシピ本なども出版するまでに注目されました。その後レストラン事業の一環でもありますが、タニタ社員食堂を再現したタニタ食堂も全国に拡大しています。
このように採用ブランディングと事業の拡大をうまく組み合わせて、タニタ=健康のイメージが定着しました。
タニタの採用ブランディングは図らずも成功した事例ともいえますが、採用ブランディングはいろいろな角度から成功することがあることがわかる事例でしょう。
参照:https://www.value-press.com/pr_interview/tanita
http://www.shigaplaza.or.jp/cms/wp-content/uploads/2016/03/2016kickoff_tanbashi.pdf
採用ブランディングの実施手順
では採用ブランディングに積極的に取り組みたい場合、どのような手順でブランドを確立していけば良いのでしょうか。採用ブランディングの手順を紹介します。
【採用ブランディングの実践手順】
自社が必要としている人材を明確にする
ターゲットにとってのメリットを考える
どのように情報を発信するか決める
定期的に改善を重ねる
1.自社が必要としている人材を明確にする
採用ブランディングの目的は、自社にマッチした求職者を募ることにあるため、まずは自社が求めている人物像を明確にすることが大切です。採用ブランディングにおいては、誰にどのようなメッセージを伝えるかということは、大きな軸になります。ここがブレてしまうと、情報発信の内容も定まらず、誰の心にも響かないものになります。
ターゲットとなる人材についてはスキルだけではなく、年齢、家族構成、趣味や興味、生活パターンなど細かくペルソナ設定をすることで、より鋭い情報発信ができるようになるでしょう。
2.ターゲットにとってのメリットを考える
ターゲットの人物像がかたまれば、どのような情報を発信すべきかを考える必要があります。ターゲットの心に刺さるような自社のメリットは何か、抱える大きな悩みはないかなど、さまざまな切り口から考案しましょう。
採用コンセプトが決まるとても重要なステップなので、ターゲットについてしっかり分析し、検討することが大切です。
3.どのように情報を発信するか決める
次に重要なのが、どのように情報を発信するのかという点です。ターゲットの属性に合わせて最も効率的な方法を検討しましょう。例えば、動画配信を行うのか、テキストベースで発信するのかという点も一つです。
さらにブログ発信、SNS運用、会社説明会、イベントなど情報を発信できる場は非常に多いため、どのような戦略をとるのか吟味しましょう。
現在はSNSがかなり浸透しているため、SNSを活用したブランディング活動も注目されている手法です。文字や文章だけでなく、パッと目をひく画像や動画を活用しながら、情報は新することも有効でしょう。
4.定期的に改善を重ねる
採用ブランディングもマーケッティングと同じ視点で、効果を測定し改善を重ねる作業が必要です。初めての取り組みが一回で大成功を収めるとは限りません。
定期的に以下のような視点から、自社の取り組みに改善の余地はないか確認するようにしましょう。
ターゲット設定に問題はないか
伝えるメッセージに問題はないか
情報発信している媒体にターゲットがいるか
情報発信する手段は適切か
現場と人事でズレが生じていないか
正しくブランディングができていなければ、せっかくの活動も無駄になってしまします。採用ブランディングは長期戦であることを念頭に置いて、定期的に改善を重ねるようにしましょう。
まとめ
採用活動にもマーケティングの視点を取り入れることで、自社が求める人材と出会いやすくなります。優秀な人材を獲得することは企業の成長にも大きく影響するため、非常に重要なプロセスといえます。採用ブランディングによって、「企業イメージや認知度の向上」、「応募数の増加」、「採用コストの削減」など多くのメリットを得ることができます。
近年ではSNSによる動画配信などもトレンドになっていますが、まずはターゲットを明確にし、伝えるべきメッセージに一貫性を持たせることが重要です。学生に寄り添った情報発信を行うことで、より多くの共感を得ることができるでしょう。
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