新卒採用の有効な施策は?選考プロセスごとの具体例も解説

新卒採用は決して簡単なことではありません。なぜなら、採用活動が上手くいかなくなるような多くの課題が、採用活動の各プロセスに潜んでいるためです。新卒採用を成功させるためには、適切な施策によって課題を解決する必要があります。

この記事では、新卒採用で悩んでいる採用担当者の方向けに、新卒採用の課題解決の方法について解説します。最後までご覧いただくことで、現代の学生の就活事情に合った施策を講じられるようになるでしょう。

新卒採用の動向

2023年3月卒業予定の大学生・大学生の求人倍率は1.58倍です。2022年卒の求人倍率1.50倍から0.08ポイント上昇しました。2021年卒の求人倍率は新型コロナウイルス感染症の影響により大幅に下落しましたが、その後の求人倍率は回復傾向にあります。

2022年7月1日時点での大学生の就職内定率は83.3%ですが、その一方で28.8%の学生が就職活動を続けるとしています。その理由には、まだ内定が決まっていないことや、より自分に合った企業を探したいことなどが挙げられます。現時点で採用予定人数が充足していない企業にとってはまだチャンスがあると考えられる一方で、既に学生を確保した企業は内定辞退防止に努める必要があるでしょう。

新卒採用で企業が抱えやすい課題

新卒採用で企業が抱えやすい課題には、以下が挙げられます。

・応募者が集まらない
・自社が求める人材が見つからない
・選考中に辞退される
・内定辞退される
・早期離職が起こる

また、新卒採用において企業規模ごとに抱えがちな課題もあります。例えば大企業では応募自体は多く集まるものの、ただ大手だから応募したという例も少なくはなく、自社について興味を持ってよく調べている学生の割合が少ないという問題が起こりがちです。

一方で中小企業には、知名度が低くかつ求人広告にかけられる予算が少ないため、そもそも応募者が集まらないという課題があります。

こうした課題を解消するためには、企業規模ごとに適切な対策を講じることが重要です。例えば大手企業の場合は、採用基準の明確化による足切りで選考に進める学生の数を絞る、一方で中小企業の場合はSNSやYouTubeを使ってコストを抑えつつ知名度を上げることが有効です。

選考プロセス別の施策例|選考前

新卒採用を成功させるための施策は、選考プロセスごとに講じる必要があります。なぜなら、選考プロセスごとに異なる課題が存在するためです。では、選考前の具体的な施策について解説します。

自社が求める人材を定義する

企業理念や事業内容だけでなく、採用担当チーム内で「これから一緒に働きたい人はどのような人材か」の認識を、共有することが大切です。自社にとって必要な人材を明確に定義しないと、採用の軸がブレてしまったり、採用に至ったとしても自社とマッチしなかったりといったデメリットが生じやすくなります。

学生に求めるスキルや経験は、Must(必要事項)とWant(歓迎事項)に分けることで、自社が求める人材の解像度がより高まります。選考プロセスにおいても、Mustは書類選考段階での足切り基準にできますし、Wantは面接での確認事項として役立つでしょう。

採用手法を検討する

自社が求める人材の定義ができたら、次に採用手法を検討しましょう。適切な採用手法を活用することで、学生に対して効果的に自社の認知を広げられますし、自社が求める人材とマッチした学生にアプローチしやすくなります。逆にターゲットが定まっていたとしても、採用手法の誤りによって自社の存在を学生に認知させられなければ意味がありません。

適切な採用方法は、さまざまなケースが考えられます。例えば、特定の技術や資格を保有している学生が欲しい場合は、専門就活サイトへの求人広告掲載が有効です。また、成果報酬型の広告を利用したい場合は、ミスマッチの少ない採用を期待できる新卒紹介サービスを利用するのがよいでしょう。

選考フローを最適化する

選考フローとして、エントリーシートから最終面接までどのようなプロセスを設けるかが重要です。例えば企業によっては、筆記試験は必要ないと判断して実施しなかったり、選考段階でのインターンシップ参加を必須としたりなどさまざまです。自社に適した選考フローを設けるには、先述のとおり自社が求める人材を明確に定義する必要があります。

また選考フローは、長すぎても短すぎてもいけません。長すぎると選考途中で他社に学生を取られてしまいますし、短すぎると学生の人格や能力の見極めが難しくなってしまいます。そのため、選考フローの長さも最適化しましょう。

選考プロセス別の施策例|選考〜内定

続いて、選考から内定までのプロセス別の施策例を紹介します。

自社の懸念点も伝える

学生に対して自社の紹介をする際、良い部分だけではなく弱みについても正直に伝えないと、入社後のミスマッチによる離職率が高まってしまいます。

例えば人手不足による残業が常態化している場合、そのことを入社前に学生に伝えておかないと、ワークライフバランスを重視する方はすぐに離職してしまうでしょう。自社の弱みについて正直に説明しておくことで、その弱みを許容できる学生のみが残ってくれます。

ただし、学生にとって何が自社の弱みであるのかという点は、よく考える必要があります。なぜなら、企業視点での弱みと学生にとっての企業の弱みは、必ずしも一致するとは限らないためです。そのため、自社が属する業界や募集職種の客観的なイメージについて調査したり、SNSや口コミサイトなどで学生の生の声を参考にしたりしましょう。

内定者へのフォローをこまめに行う

せっかく内定に至っても、その後辞退されてしまうことは珍しくありません。内定後の辞退を減らすためには、内定者へのこまめなフォローを実施しましょう。

内定者へのフォローの例として、社内の雰囲気に馴染んだり先輩社員との親交を深めたりするための懇親会の開催や、学生がよく使うSNSやコミュニケーションツールで接触頻度を上げることが挙げられます。

このように内定者へのフォローをすることで、入社後への不安をやわらげたり、早く入社したという気持ちを持たせたりすることが可能です。ただし内定者へのフォローの際に、会社の嫌な雰囲気や先輩社員の横柄な態度が伝わってしまうと、かえって逆効果であるため注意しましょう。

新卒採用を成功させるための施策

ここまでは、採用プロセスの中での課題解決方法について解説しました。ここからは、採用活動を成功させるための具体的な方法について解説します。

リクルーター制度

現在の新卒採用では、インターネットやメディアなどで企業や業界に興味を持った学生が応募する「自由応募」が一般的です。しかし自由応募は、入社意欲の高い人材が集まりやすい一方で、興味や志向がある程度似たような学生が集まりやすい傾向があることも指摘されています。もし多様な人材を集めたい場合は、「リクルーター制」を活用してみましょう。

リクルーター制とは、会社説明会の前や面接の合間に、「リクルーター」と呼ばれる社員が個別に面接やフォローをおこなう制度です。リクルーターは自由に動けるため、多様な人材に接触する機会が多いです。リクルーター制は、かつて大企業を中心におこなわれていましたが、現在ではメーカーや通信キャリア業界などの企業で再び採用されることが増えています。

大学からの紹介や人材サービスの活用

大学の学内セミナーとは、大学に訪問して自社説明会をおこなう採用手法です。学内セミナーには、コストを抑えて学生と接触できたり、もともと自社に興味のなかった学生にアピールできたりといったメリットがあります。ただし学内セミナーは、人気大学であるほど企業からの開催依頼が多いため、優先して実施させてもらうためには大学との良好な関係を築く必要があります。

また、新卒紹介サービスの活用もおすすめです。新卒紹介サービスでは、学生対応や面接日程調整などの採用業務の代行も担当しています。そのため、採用担当者の負担を抑えることが可能です。

SNSの活用

現在では、SNSの活用も新卒採用活動において有効です。なぜなら、学生はSNSの利用していることが多く、慣れ親しんでいるからです。

実際に、採用活動や採用広報でSNSや動画を活用する企業が増えています。そのため、他社に遅れを取らないようSNSや動画の導入を検討してみましょう。SNSは拡散力が高く、ユーザー間で情報共有がされやすいことが魅力です。これらにより、多くの学生に自社のことを認知してもらいやすくなります。

採用時期の見直し

優秀な学生を確保するための採用活動早期化が続いていましたが、あえて採用募集開始時期を遅らせることで成果が出ることもあります。実際にキャノンマーケティングでは、偶然募集開始時期が遅くなった結果、例年以上に良い人材が集まりました。

このような結果につながった要因には、学生が春の就職活動で壁にぶつかり、その後成長してからキャノンマーケティングに応募してきたということが挙げられます。キャノンマーケティングの事例により、夏以降の募集開始を検討している企業が出てきています。

また、企業説明会や採用面接の解禁日などを定めていた「就活ルール」が廃止されました。そのことにより、今後はより採用時期を見直しやすくなります。

インターンシップの利用

インターンシップを利用することで、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。なぜならインターンシップに参加してもらうことで、実際の業務のイメージや企業の雰囲気、社員の人柄などが伝わりやすくなるためです。中にはワークスアプリケーションズのように、選考時にインターンシップを実施している企業もあります。

インターンシップには、1日のものと長期のものがありますが、より自社と学生のマッチングを正確におこないたい場合は長期インターンシップの方が好ましいでしょう。長期インターンシップは確かに企業にとっての負担は小さくありませんが、それでも双方の本質が見えやすくなるという大きなメリットがあるため、検討する価値は十分にあります。

面接担当者の研修を実施

面接担当者の研修によって面接の質を上げることも、良い人材の確保にとって有効な手段の一つです。「面接の質を上げる」ということの具体例には、明確な評価基準によって学生の能力を適切に見極められるようにしたり、学生の本音を引き出すためのコミュニケーションスキルを身につけたりすることが挙げられます。これらのようなスキルを面接官につけさせるためには、入念かつ継続的な研修が必須です。

面接官の研修は一人ひとりではなく、全員をまとめて実施するのが好ましいでしょう。なぜならそうすることで、自社にふさわしい学生の基準の認識を共有したり、面接官同士で面接に関する議論を交わしたりできるためです。研修の実施は、リアルの場でもオンラインでも構いません。

まとめ

新卒採用は、各課題に応じた適切な施策を実施することで成功へ近づけられます。自社の新卒採用活動に改善の余地があるかどうか、今一度確認してみましょう。


 

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