採用戦略にフレームワークは必要?効果的な使い方とは


新卒採用市場は「売り手市場」であり、採用活動が厳しいといった企業の声をよく耳にするようになりました。

昨今の採用活動では「採用戦略」が重要なキーワードとなっており、立案するにはマーケティングの考え方も必要とされています。採用戦略をつくるには「フレームワーク」という手法を使えば効率的です。

この記事ではフレームワークを使った採用戦略の立て方について説明しています。フレームワークを使えば論理的かつ効率的に採用戦略が立てられますので、採用担当の方は最後までご一読ください。

採用戦略とは

採用戦略とは、採用活動において自社が求める優秀な人材を確保するために立てる戦略を指します。

株式会社リクルートの調査では、2023年卒の大卒求人倍率は1.58倍と、売り手市場が続いています。少子高齢化によって労働人口が減少し続けることもあり、優秀な人材には企業からのオファーが殺到する状況です。

そのような状況下で場当たり的な採用活動を実施していては、自社にとって欲しい人材を確保できる可能性が下がるのは明白です。企業側で考え方が統一していなければ、採用活動時に担当者の認識のずれにより求職者とのミスマッチが出るため、辞退者が増えることも考えられます。

そこで重要になるのが、採用における戦略の作成です。企業にとって必要な人材を確保するにはどのような施策を取ればよいか、事業計画に沿った中長期での採用の方向性を立てるのが重要となります。

昨今では、マーケティングの視点を取り入れて採用戦略を作成するのが主流です。

採用戦略にフレームワークを導入するメリット

採用戦略を実際に立てる際は、マーケティングでも利用される「フレームワーク」という手法を使うとスムーズに作成できます。フレームワークを導入して採用戦略を立てるメリットとしては、次の通りです。

・採用コストを削減できる
・採用戦略を可視化できる
・思考を効率化できる

採用コストを削減できる

フレームワークを利用して採用戦略をたてると、採用コストの削減につなげられます。

フレームワークを導入すると、採用における問題点の洗い出しができ、無駄な部分を削除した計画の立案が可能です。その採用戦略を実施することで効率的な採用活動ができるため、今までかかっていた無駄なコストを抑えられます。

採用にかかる時間も削減でき、中長期でみれば社員のストレス軽減や職場環境の改善も期待できます。

採用戦略を可視化できる

フレームワークを利用すると、採用戦略を可視化できるのもメリットです。

フレームワークに沿って戦略を立てていくと、現状の問題点が論理的に整理できます。その問題点を可視化することで全体の把握がたやすくなり、採用チームで認識を共有しながら方向性を決められます。

可視化された採用戦略は見れば内容が理解できるため、認識の共有がたやすいのも利点といえるでしょう。

思考を効率化できる

フレームワークでは枠組みがある程度決められているため、思考が散漫にならず効率化できます。

思考の効率化によって要点をしぼった考え方ができるため、採用戦略を立てる際もスピードアップが図れて効率性を高められます。

フレームワークを使った採用戦略の立て方

採用戦略は、具体的な目標を決めてそれに沿って作成するのが重要です。フレームワークを使用してどのように進めるとよいか、順に解説します。

  1. 採用市場の現状分析を行う
  2. 成功要因を明確にする
  3. 具体的なペルソナを設定する

1.採用市場の現状分析を行う

まずは自社の置かれている現状を把握するため、採用市場の分析を進めていきます。合わせて自社の強みや弱みも分析して、採用戦略の方向性を決めていきます。

この現状分析する際に利用するのが、フレームワークです。よく使われている分析方法は「3C分析」「SWOT分析」の2種類となります。

【3C分析】

3Cとは、「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」を指します。3C分析とは、これら3つの視点から自社の置かれている現状を把握する手法です。具体的には次のような内容を検討していきます。

・市場・顧客(採用市場では求職者を指す)

候補者の数・求人倍率・求職者のニーズ・職場に求める条件・価値観 など

・競合

具体的な企業・採用活動の方法・待遇・採用数・採用状況・強みと弱み など

・自社

業界内のポジション・過去の採用実績・採用活動の方法・待遇・採用数・採用状況・強みと弱み など

具体的な内容を客観的な目線で、できるだけ多くあげていくのがポイントです。あげられた項目を分析し、自社の強みとなる部分と求職者の求めているものを明確にしていきます。

【SWOT分析】

SWOT分析とは、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4項目で分析する方法です。SWOT分析では、自社の内面をより深く分析します。例えば架空のメーカーを例にした場合、次のような内容が考えられます。

・強み

黒字経営・独自の開発力を持っている・実力主義・福利厚生が充実している など

・弱み

業界での知名度が低い・技術者が少ない・企画力に不安がある など

・機会

業界に勢いがあり市場拡大が狙える・新規取引先が増えている など

・脅威

競合他社が多い・採用市場が激化している など

さらに書き出した4つの項目の内容を掛け合わせることで、自社の持つ強みと弱みがより具体的に理解でき、効果的な戦略の立て方が明確になります。

強み弱み
機会12
脅威34

1.強み×機会

自社の強みを利用し、機会をどう生かすか考える

2.弱み×機会

自社の弱みを克服して、機会を生かす方法を考える

3.強み×脅威

自社の強みを生かして、脅威による影響を避ける方法を考える

4.弱み×脅威

自社の弱みを理解し、脅威を最小限にする方法を考える

3C分析とSWOT分析を合わせて実施すると効果的で、自社の強みと弱みをより正確に洗い出すことができます。

2.成功要因を明確にする

3C分析やSWOT分析で見えてきた自社の強みの中から、成功要因を明確にしていきます。

「この部分なら転職市場で勝負出来て、採用につなげられる」といった要因を、ここではっきりとさせておくことが重要です。要因を決めれば採用戦略に一貫性が生まれ、無駄な時間や工数をかけることがなくなります。

たとえば「業界の景気がよく独自の開発力を生かして市場拡大が狙える」のが自社の最大の強みだと決定した場合は、そこを前面に押し出す具体的な施策で採用確率をあげられます。

・開発力をアピールできるコンテンツ(担当者へのインタビュー動画など)
・業界の動向が一目で理解できるメディア構築 など

3.具体的なペルソナを設定する

成功要因の条件にそった、採用したい詳細な人物像(ペルソナ)を作成します。具体的なペルソナの設定によって認識が統一でき、ペルソナに対してどのような方法が効果的か明確になります。

ペルソナについては、できるだけ細かい設定まで決めるとよいでしょう。

たとえば技術者を採用したい場合であれば、次のように設定します。

・名前:山田太郎
・年齢:22歳
・学歴:○○大学 工学部 機械工学科 卒業予定
・経歴:△県立△高校を卒業後、現役で○○大学へ進学、現在4年生
・家族:両親と弟、現在は一人暮らし
・仕事に望むこと:現場でエンジニアとしてのスキルをつけたい
・趣味:ゲーム、パソコン

ペルソナ設計で気をつけたいのは、理想を追いすぎて現実離れした人物を作成してしまうことです。当初の条件に沿った人物になっているか、第三者にチェックしてもらうのがおすすめです。

採用活動を成功に導くポイント

ここまで設計してきた採用戦略をもとにして、実際に採用活動を進めていきます。採用活動を進める上で気をつけたいポイントは、次の通りです。

・客観的な視点で自社への理解を深めておく
・面接官の育成を行う
・PDCAを繰り返す
・採用戦略は社内全体で共有する
・人事体制も確認しておく

客観的な視点で自社への理解を深めておく

採用担当者においては、自社への理解をより深めておくことが重要です。

企業に所属していればどうしても企業側からの視点となり、若干のバイアスがかかってしまう可能性があります。採用戦略はマーケティングの視点も重要となるため、求職者側から見た自社の理解が求められます。

3C分析・SWOT分析で導き出された内容は、自社を俯瞰でみるのにも有効です。フレームワークを用いて分析した自社の強み・弱みをあらためて確認し、客観的な視点での自社理解を深めることが重要となります。

面接官の育成を行う

採用活動においては、面接官の育成も大切です。

求職者から見れば、面接官はいわば企業の顔です。面接時の対応によくない印象があれば、企業に対して不信感を抱いてしまうのもうなずけます。求職者は、面接から一歩離れれば自社の顧客になる可能性もあります。最低限度のマナーはもちろん、一貫して真摯な対応を心掛けるようにしましょう。

また面接官への適切な育成によって、各人のビジネススキルの向上が期待できます。自社の求める人材を見極められる面接官のスキルは、マネジメントスキルの向上に役立ちます。面接時の求職者への対応は、そのままビジネスマナーとして生かせるでしょう。

企業の顔となる面接官にふさわしい人材を育てるため、面接官研修などを導入するのもよい方法です。

PDCAを繰り返す

採用戦略は、作成したら終わりではなく、目的を達成するため効果的に機能しているかPDCA(Plan-Do-Check-Action)で確認するのが大切です。わかりやすい具体例をあげると、次のようなサイクルとなります。

【目的:新卒向けの企業説明会でエントリー100名を達成する】

・Plan(計画)

採用で使っているTwitterとInstagramのアカウントで、新卒向けの企業説明会の情報を発信する

・Do(実行)

計画を実行する

・Check(評価)

Twitter経由で50名、Instagram経由で10名の参加があった

・Action(改善)

総数で未達成、Instagramの集客が悪いので再度計画を練る

PDCAは目標の大小にかかわらず使えます。PDCAサイクルを回して、よりよい企業戦略にブラッシュアップしていくようにしましょう。

採用戦略は社内全体で共有する

採用戦略は採用担当だけではなく、社内全体で情報を共有するようにします。

採用戦略を立てても、一部の人間しか内容を知らなければ計画通りに進めるのは難しくなります。例えば採用計画の作成やペルソナを設定する際は、担当部署の協力なしではうまくいきません。採用戦略を効果的に作成するには、部署を越えた協力体制が不可欠です。

採用は全社的な取り組みであると認識し、どのような採用計画となっているのか全社員が認知することは非常に重要となります。

人事体制も確認しておく

採用活動に携わる人員の確保も、採用戦略上とても大切な要因です。

採用活動は企業にとっては人員だけではなく、時間もコストもかかる業務です。採用担当にかかる負担は想像以上に大きく、人員の確保は急務となります。

社内で必要な人員がそろわない場合は、外部委託で対応することも可能です。社員でなければできない業務以外はアウトソーシングするなど、社員の負担とならない対応が企業には求められます。

まとめ

採用活動を効果的に進めるには、採用戦略を作成することが重要です。作成時にフレームワークを利用することで、コストカットや作業の効率化が図れます。

フレームワークで自社と採用市場の分析をきっちりと実施し、長期的な採用戦略を立てて活動していくことで、採用の成功へとつなげられるでしょう。


 

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