「採用広報」という言葉を聞いたことがある採用担当者は、多いのではないでしょうか。
採用広報は、近年さまざまな企業に取り入れられています。しかし採用活動において本当に有効なのか、疑問に思っている方もいらっしゃるでしょう。
結論をいえば、採用広報の必要性は高く、積極的に取り組むことで採用活動を成功へ近づけられます。
この記事では採用広報のメリットや有効な手法について説明します。それぞれの手法における成功事例もあげていますので、どのような手法が自社に有効なのか知りたい採用担当者の方は、ぜひご一読ください。
目次
採用広報とは
採用広報とは、採用活動の成功を目的として、企業が情報発信することを指します。「基本的な募集要項や求人情報」「業務内容や社内の雰囲気」「企業のビジョンやミッション」などを、さまざまなメディアを通じて発信し、選考開始から入社後の定着まで見据える広報活動です。
自社へ就職してもらいたい求職者をターゲットとして広報活動することで、企業の認知度を高めて求職者へアピールする役割を持っています。合わせて採用市場へのマーケティング活動という一面も持っており、企業それぞれが自社に合わせた戦略を構築して活動しています。
採用広報が注目されている背景
採用広報が注目されるようになった背景は、就職に対する環境の変化が関係しています。具体的には次にあげる通りです。
・売り手市場で、応募が集まりにくい状況である
・学生が質の高い情報を求めている
・情報収集しやすくなった
売り手市場で、応募が集まりにくい状況である
ここ数年、大学卒の求人は売り手市場が続いています。
売り手市場とは、求人者より求人募集している企業のほうが多い状況です。リクルート株式会社が実施した調査によると、2023年卒の大卒求人倍率は1.58倍であり、コロナ禍で減少した2020年より徐々に回復傾向となっています。
今後は若年層の減少で労働人口が減ることから、求職者に企業からのオファーが集まり、人材獲得の競争がますます激化するのは避けられません。このような状況下で求職者を集める情報発信の手段として、採用広報が注目を集めています。
参照:https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20220426hr01.pdf
学生が質の高い情報を求めている
売り手市場で求職者に対して求人募集をする企業の方が多いため、求職者が目にする採用情報や企業情報が相対的に増えています。
多くの情報に触れる中で、ありきたりの情報だけでは求職者へのアピールは難しくなってきました。現場社員の声や企業の抱える問題など、より信頼性や透明性の高い情報を求められるように変化してきています。
求職者から求められる質の高い情報を効果的に伝えられる施策を打つには、採用広報という手段が非常に有効です。
情報収集しやすくなった
求職者が情報を得る方法として、企業からの情報発信を待つのではなく、自分で情報収集するスタイルに変化してきています。
スマートフォンに代表されるデジタルデバイスの普及によって、市場に流通する情報量が格段に増えました。情報発信も情報取得も容易になり、日常生活にデジタルメディアは欠かせないものへと成長しています。
採用においても、デジタルに対応することがもはや必要不可欠です。求職者からの応募を待って選考する従来の方法から、採用広報を用いて自社の必要とする求職者へアピールする方法へシフトすることが重要視されています。
企業が採用広報に取り組むメリット
企業が採用広報に取り組むメリットとしては、次の4点が考えられます。
・企業の認知度が上がる
・学生の志望度を高められる
・志望者と企業側のミスマッチを回避できる
・採用コストを低減できる
企業の認知度が上がる
採用広報の実施により、企業の認知度アップにつなげられます。企業から積極的な情報発信をすると、業界や企業にあまり興味を持っていない潜在層にまでアピールが可能です。
BtoB企業や中小企業など一般的にあまり認知度が高くない企業にとっては、名前を知ってもらうのが大切です。求職者の目に触れる機会が増えると、就職活動をする際に候補としてあげてもらえる可能性が高まります。
SNSなど拡散されやすいメディアを利用すると、認知度アップにはより効果的でしょう。
学生の志望度を高められる
採用広報を積極的にすることで、入社希望者の志望度を高める効果があります。
求職者から見れば、複数の企業を比較検討する際に、より多くの情報が開示されている企業に安心感を持つと考えられます。逆にいえば、得られる情報の少ない企業は非常に不利な状況となるでしょう。
自社の細部まで情報開示していると、情報の透明性が感じられて安心感を生みます。情報の内容が自分の希望とマッチしていると感じた求職者にとっては、「興味がある」から「入社したい」へと心情の変化が期待できます。
学生と企業側のミスマッチを回避できる
採用広報の利点として、採用時のミスマッチを事前に防げることもあげられます。
採用広報によって希望者が増えても、「思っていたような仕事ではなかった」「自分とは雰囲気が合わなかった」といった理由で離職となれば、成功とはいえません。現場社員の仕事風景や職場の雰囲気など、伝えにくい現場の声を届けたり、企業の良い面だけでなく課題も合わせて発信したりと、企業のありのままの情報を伝えることが大切です。
ありのままの情報を発信することで企業にマッチする人材が集まり、結果として離職率の低下にもつながります。
採用コストを低減できる
採用広報の強化によって、採用コストをおさえる効果もあります。
採用広報で企業の認知度が上がることで、マッチング率の高い求職者の直接応募が期待できます。そうなると母集団形成のため複数の採用チャネルを利用する必要がなくなり、採用における人件費や投資がおさえられるのです。
入社後の定着率向上も見込めるため、離職や再募集にかかるコストも低減できます。採用広報を充実させることで不特定多数へのアプローチが不要となり、効果的な採用活動が進められるでしょう。
採用広報に有効なチャネル
採用広報に取り組むうえで、どのチャネルで展開していくかは重要な問題です。有効と考えられる代表的なチャネルは、次の通りです。
・Twitter
・Instagram
・note pro
・Wantedly
・オウンドメディア
・YouTube
それぞれのチャネルに特徴があるため、発信したい情報や採用広報の目的によって選ぶのが大切です。
Twitterの大きな特徴として、リアルタイム性と高い拡散力があげられます。全年代での利用者は46.2%となっており、中でも20代では78.6%と若年層の利用が多いSNSです。
投稿文字数に限りがあることと、リアルタイム性と拡散力の高さを生かし、時流に乗った内容や比較的軽めの内容を発信するのに向いています。企業の最新トピック(新製品案内など)や説明会の案内などを発信することで、企業の認知度アップにつながり潜在層へのアプローチが可能です。
企業の公式アカウントだけではなく、担当者個人のアカウントを活用するのも、企業の雰囲気や空気感をリアルに伝えられます。
参照:https://www.soumu.go.jp/main_content/000831289.pdf
Instagramは、写真や画像による情報発信を得意とするSNSです。近年利用者が伸びており、令和3年度の全体での利用率が48.5%とTwitterを上回っています。男性利用者42.3%に対して女性利用者は54.8%と、女性からの支持が高い特徴があります。
画像と「リール」というショート動画による視覚に訴える情報発信ができるため、ブランディングの構築に最適です。オフィスの風景や従業員の様子、魅力的な自社商品など、企業のイメージアップを図るのに利用するとよいでしょう。
参照:https://www.soumu.go.jp/main_content/000831289.pdf
note pro
noteの法人向けサービス「note pro」も、採用広報で利用すると有効なメディアです。note pro最大の特徴として、ページを自由にカスタマイズできることがあげられます。
ロゴやテーマカラーなどかなり自由度の高いカスタマイズができるため、企業のブランディング構築として利用可能です。独自ドメインも利用できるため、オウンドメディアのような形で自由な情報発信ができます。
6,300万MAU(月あたりのアクティブユーザー数)を誇るnoteのプラットフォーム上で、note pro独自のサービスが利用できるのは非常に魅力的だといえます。
Wantedly
Wantedlyは採用に特化しているSNSであり、採用広報と非常に相性が良いです。求職者から企業のミッションや価値観へ「共感」を得ることでマッチングを促進します。
「ストーリー」というブログ機能を使用すれば、感覚的な入力で簡単に採用ホームページの作成が可能です。作成したページは検索エンジンに表示されやすく、SNS広告機能を利用すればSNSユーザーへリーチできるため、顕在層・潜在層どちらにもアピールできます。
独自のアナリティクス機能によってさまざまなユーザー分析も可能となっており、PDCAを回しやすい仕組みも整っています。
オウンドメディア
オウンドメディアは、他社のプラットフォームを利用せずに自社ですべて構築できるため、自由度の高い発信ができます。
決まったフォーマットがないため形式にこだわらない発信ができ、企業理解度の向上とブランディングに大きな効果が期待できます。またプラットフォームの問題に影響を受けないのも大きなメリットです。
立ち上げるにはコストと時間がかかり、作成後は周知させる施策が必要となるのがデメリットです。しかしいったん完成してしまうとインターネット上にずっと残るので、企業の財産となる面もあります。
YouTube
YouTubeの全年代の利用率は87.9%、20代に至っては97.7%が利用している、日本では最大級の動画専門ソーシャルメディアです。文章だけでは伝えにくい情報を動画で発信できるのが、YouTubeで発信する最大のメリットとなります。
SNSの普及によって長い文章に触れる時間が減っている中、「経営者のビジョン」「社内の紹介」「従業員へのインタビュー」などを動画で発信することで、文字や写真よりもわかりやすく情報を伝えられます。
動画作成には、イニシャルコストがかかるのが難点です。しかし一度作成してしまえば、オンライン・オフライン問わずさまざまな場面で利用できるのも魅力的です。
参照:https://www.soumu.go.jp/main_content/000831289.pdf
採用広報の成功事例を紹介
ここからは、実際に前項であげた手法を使用して成功した事例を紹介します。目的の違いによって利用方法がそれぞれの企業で異なっており、非常に興味深い内容となっています。ぜひ参考にしてみてください。
株式会社サイバーエージェント
「ABEMA」「アメブロ」などを手がける株式会社サイバーエージェントでは、採用広報にオウンドメディアとTwitterを効果的に利用しています。
オウンドメディアでは、「採用」「サービス」「技術・デザイン」「IR」を軸とした配信がメインです。豊富な画像と動画が効果的に使われ、その内容から企業の雰囲気やカルチャーが感じ取れます。
Twitterでは「新卒採用」のアカウントが作られ、選考やインターンシップなどのタイムリーな情報発信がメインコンテンツです。Twitterから自社サイトへの導線も確保されており、それぞれのチャネルの特徴を活かしている好例といえるでしょう。
三井住友カード株式会社
三井住友カードでは、オウンドメディアと合わせてInstagramでの採用広報に取り組まれています。
オウンドメディアでは銀行系のカード会社らしく、誠実な雰囲気が前面に出た比較的シンプルな作りになっています。一方のInstagramでは「オフィスツアー」「社員インタビュー」「内定者就活アドバイス」など、すこし肩の力を抜いた発信が中心です。
Instagramでは就活全般の情報や生活情報ページなどを発信しているため、企業に興味を持っていない潜在層からのリーチも期待できます。
KDDIエボルバ株式会社
KDDIエボルバ株式会社は、コールセンターを中心としたBPO (ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などを全国展開している企業です。「KDDIエボルバ【公式】チャンネル」というYouTubeのチャンネルを運営し、採用広報に取り組んでいます。
チャンネルの内容は採用に関する動画をはじめ、センターの紹介やニュースなどのコンテンツです。とくに採用については会社紹介や社員インタビューの動画が数多くあげられており、求職者が実際に働くイメージが視覚的に伝わるようになっています。
企業のカルチャーを動画では感覚的につかみやすく、採用広報として効果的だといえるでしょう。
株式会社ベルク
埼玉県でスーパーマーケットチェーンを展開する株式会社ベルクでは、採用動画の利用で応募者を増加させています。
自社の採用サイト内に就職活動する女性の再現ドラマ風の動画を入れ込んだことで、採用サイトへのアクセスが倍増しました。求職者が「自分ごと」とできる内容だったことから共感を生み、企業の知名度と好感度のアップに寄与しています。
動画再生も150万回を超えており、動画による効果的な採用広報の好例といえるでしょう。
株式会社ベーシック
Webマーケティングの企業である株式会社ベーシックでは、「note pro」を利用した採用広報に取り組んでいます。
「サービスはよく知られていたが企業自体の認知度が低い」という課題を解決するため、Twitterとnote proを組み合わせて採用広報をはじめたそうです。
社員が積極的に採用広報に取り組み、採用やカルチャーだけではなく社員個人の考えなども合わせて発信した結果、Twitterおよびnoteで認知が大きく広がりました。採用サイトへの来訪が増えてダイレクト応募が3倍になったり、社内メンバーの離職率低下につながったりと、認知度アップとの相乗効果も生みだされています。
株式会社マネーフォワード
株式会社マネーフォワードでは、採用広報にWantedlyを利用しています。
「社員インタビュー」「役員メッセージ」「イベントレポート」などの記事をWantedlyのストーリーに年間で数十本アップするといったような、「ファンづくり」を重視した情報発信を積極的にしています。
こういった情報発信が求職者から共感を得られ、エージェント中心からダイレクトリクルーティング・リファラル中心の採用へと変化しているそうです。採用にかかる経費も抑えられており、「ファンづくり」という採用広報の目的は達成しているといえるでしょう。
まとめ
企業の抱える採用の課題は、採用広報の効果的な活用で解決する可能性が高まります。採用広報は各企業においてさまざまな形で取り入れられており、それぞれPDCAサイクルの見直しによってアップデートされ続けています。
この記事であげた事例を参考に、自社でも新たに採用できる部分がないか検討してみるのがおすすめです。
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