採用戦略は、企業が求めている人材を採用するために立案します。
「なかなか良い人材がいない」「応募が集まらない」といった新卒採用の課題を抱えている人事担当者も少なくないのではないでしょうか。
原因はさまざまですが、採用全体の方針が間違っていないかどうかを見直すことも重要です。全体の進め方が間違っている場合、どんなに採用広報に力を入れようとも課題解決が難しいためです。やみくもに採用活動を進めていても、良い人材は確保できません。
採用を成功させるには、戦略が肝心になっています。この記事では、新卒採用における戦略の重要性をふまえ、具体的なステップを紹介します。
目次
新卒採用において戦略が重要なワケ
中途・新卒に限らず、採用戦略を立てることは重要です。ただし、特に新卒採用は以下の理由から、成功させる上で戦略がカギとなってきます。
採用活動の自由化
2021年以降、新卒採用の就活は大きく変わりました。以前は「就活ルール」として、説明会や面接、内定などの採用活動を開始する時期が制限されていました。しかし、ルールが廃止されたことにより、企業は自由なタイミングで採用活動を行えるように。早い段階から優秀な学生を採用することが可能になりました。
ただし、23卒の就活においては以下のスケジュールが名残として残っています。
・広報活動:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
・選考活動:卒業・修了年度の6月1日以降
・内定出し:卒業・修了年度の10月1日以降
もちろん、就活ルール自体は廃止されたため、必ずしもスケジュールに沿って進める必要はありません。各企業が自由に採用活動を行えるようになったことで、あらかじめ計画を立てて進めることがより重要になりました。
売り手市場
リクルートの調査によると、2023年卒の大卒求人倍率は1.58倍という結果になりました。新型コロナウイルスの影響により、2021年卒は1.50倍という結果になりましたが、現在では回復傾向にあります。
新卒採用においては売り手市場の状況が続いているのが現状です。つまり、優秀な学生には多くの企業からのオファーが殺到するため、少しでも自社に興味を持ってもらうように働きかける必要があります。
そのため、ただ採用活動を行っているだけではうまくいきません。戦略的に採用を進める必要があります。
採用戦略を立てる前に知っておきたいポイント
新卒の採用戦略を考える前に知っておきたいポイントは以下の2点です。それぞれの考え方を把握し、戦略的な採用計画の立案につなげましょう。
就活生のニーズを知る
通常、就活生は複数の企業に応募します。自社が採用したい人材であっても、別の企業に入社する可能性は大いにあります。そのため、就活生が企業に求めているものをきちんと知っておかなければなりません。
就活ブログを運営する株式会社L100の調査によると、23卒の就活生が企業を選ぶ上で最も重視するポイントの1位は「働きやすさ」(40.3%)となりました。次いで「仕事のやりがい」(24.3%)、「福利厚生の充実」(7.7%)といった内容が続きます。
さらに「どうやったら働きやすい企業を見つけられるのかわからない」といった声も多くあるため、企業側はどのようにして自社が働きやすいのかを具体的に説明する必要があるでしょう。
また就活生のニーズは変化するものです。さまざまな調査結果をリサーチするだけでなく、選考や採用イベントなどで出会った就活生に対して実際にヒアリングしてみるといった手段も有効です。
参考:【23卒の就活生の企業選びの軸】1位は「働きやすさ」、しかし「働きやすい企業の探し方が分からない」と答えた就活生は78%と課題あり
競合他社の調査を行う
たとえば、広告会社を志望している場合、広告業を行っている企業にエントリーします。たとえ本命の企業が決まっているとしても、競合他社も受験するのが一般的でしょう。
そのため、就活生からは競合他社と比較されることを念頭に置きましょう。他社の採用活動がどのようにして進んでいるのかは必ず知っておきたいポイントです。
また、自社のポジションを正確に把握し、差別化できる点を把握しましょう。カルチャーや社内の雰囲気、細かな事業内容、年収や福利厚生など、就活生にとって魅力的にうつるポイントをつかみ、打ち出すことが大切です。
戦略に基づいた新卒採用計画を立てるステップ
就活生のニーズや自社のポジションなどを知った上で、戦略に基づき、採用計画として落とし込んでいく必要があります。ここからは、実際のステップを紹介していきます。
1.過去の採用活動を見直す
採用戦略を具体的な採用計画に落とし込むためには、まず過去の採用活動の振り返りが必要です。「うまくいったポイント」と「課題」に分け、どのような戦略で進めたら良いのかを見極めていきます。
たとえば、以前は採用コストに対して応募数が集まらなかった場合、採用チャネルを見直すなどの改善策が有効です。また「自社のノウハウ」に惹かれて入社する就活生が多かったのなら、採用広報を行う際に仕事の裏話やテクニックなどを積極的にアピールすると良いでしょう。
2.採用方針を決める
採用計画は、企業全体の方針をふまえて立てるものです。企業の方針によって、募集人数や必要な人材が変わったりするためです。
人事担当者は採用した人材に対し、人事配置を行います。自社の状況に沿った計画になっていないと、採用した社員とミスマッチが起きたり、事業がうまくいかなくなったりする恐れがあります。
そのため、経営陣などを交えて方針を固めていきましょう。このとき、あらかじめ調べておいた就活生のニーズや過去の採用活動についてまとめておくとベターです。
3.採用基準を明確にする
続いて、今回の採用で求めている人材のイメージをまとめていきます。採用基準となる人物像は、資格やスキルといった要件に加え、自社とマッチしやすいタイプや雰囲気といった性格的な要件を定義していきます。
人事だけでなく、現場担当者や役員などの上層部から採用したい人物像をヒアリングして固めていきましょう。また、自社の社員をモデルに考えてみるのも一案です。現在、社内で活躍している社員の特性や傾向を分析し、共通項を探しましょう。
4.採用手法・チャネルを決める
現在、採用チャネルが多様化しています。これまでは求人サイトが主流でしたが、SNSを活用したり、学生に直接アプローチを行う「ダイレクトリクルーティング」が登場したりするなど、さまざまなやり方を用いることができます。
どのチャネルを選択するかによって、出会える学生のタイプや応募人数などが大きく異なります。通常、複数の手法やチャネルを使い分けて採用活動を進めていくので、どの手法が自社にあっているのかを選択していきましょう。
また、新型コロナウイルスの影響により、オンラインを中心としたやり方が求められています。オンライン上では、企業の魅力を効果的に伝えるのが難しいため、工夫が求められます。リアルな雰囲気を伝えるためには、動画の活用をおすすめします。
チャネルの特性に応じて、社内のようすや事業内容といった動画コンテンツを掲載すると、オンライン上でも学生に自社の情報を届けることができます。
5.ターゲットのフォロー方法を決める
たとえばダイレクトリクルーティングの場合、中長期的にわたって学生にアプローチしていくことになります。自社の志望度を下げないためにも、定期的なフォローが求められます。また、内定者のフォローも同様に必要でしょう。
定期的にイベントを開催するほか、SNSでこまめにコミュニケーションをとったり、内定者向けのコンテンツを発信するなどといった方法が挙げられます。社内のリソースも考えながら、どのようにフォローすべきか考えていかなければなりません。
6.採用スケジュールの作成
採用活動に必要な要素を整理したら、具体的に年間の採用スケジュールを作成します。スケジュールに沿って進められるよう、余裕を持って組み立てるようにしましょう。
新卒の採用手法
先述の通り、新卒採用の手法は多様化しており、戦略的に活用することが大切です。ここでは、有効な採用手法を紹介します。
ダイレクトリクルーティング
「ダイレクトリクルーティング」は、応募者からのアクションを待つのではなく、企業側から候補者へ直接アプローチする採用手法です。主なメリットは以下の通りです。
・マッチング率や内定承諾率が上がる
・潜在層にアプローチできる
・運用次第では、採用コストを抑えられる
リファラル採用
「リファラル採用」とは、従業員から候補者のリファラル(推薦・紹介)を受ける採用手法です。リファラル採用には主に以下のメリットがあります。
・企業理解のある社員の推薦・紹介なので、入社後のミスマッチを防止しやすい
・広報活動が必要ないので、採用コストを軽減できる
・人事担当者の負担を削減できる
マッチング採用
「マッチングイベント」とは、企業と求職者の「出会いの場」を演出するイベントです。合同説明会とは異なり、求職者は企業の人事担当者や経営陣と1対1で対話できます。主なメリットは以下の通りです。
・多くの求職者と出会うことで、潜在層を発掘しやすい
・求職者の質問に直接答えることで、ミスマッチを防止できる
・特別選考を通じて、学生の早期獲得ができる
ミートアップ採用
「ミートアップ」は、特定の企業と求職者の交流会です。合同説明会のようなテーマの決まった堅苦しい集まりではなく、従業員と求職者がフランクに会話できる場を演出します。主なメリットは以下の通りです。
・低コストで実施しやすい
・社内の雰囲気を理解してもらえる
・参加者同士が打ち解けやすく、採用につなげやすい
まとめ
新卒採用を成功させるポイントは、まずは戦略に基づいた採用計画を立てることです。自社の状況や市場のトレンドなど、さまざまな要素を考えながら、適切な採用計画を策定しましょう。
また、並行して自社の魅力をアピールするのも重要です。特に昨今は新型コロナウイルスの影響により、採用活動のオンライン化が進んでいます。オンラインでも就活生に届けられる工夫が求められます。
まずは自社の経営状況や方針などをふまえ、必要な要件をまとめて戦略的に進めましょう。
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