2020年3月に電通が発表した「2019年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」によると、2019年の動画広告市場の売上規模は3,184億円にのぼり、前年と比較すると157.1%に成長しています。
この傾向は今後も拡大すると予測されています。動画広告を利用したマーケティングは企業にとって今後ますます重要な戦略となるでしょう。
そこで今回は、動画広告の効果と目的について詳しく解説します。
参照:2019年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析
目次
動画広告が有利な3つのポイント
テレビCMや雑誌への出稿など、広告の手法は多岐にわたりますが、動画広告は他の広告に比べて有利な点がいくつかあります。ここでは、代表的な3つのポイントをご紹介します。
商品の魅力を短時間で伝えることができる
動画は映像と音を組み合わせて作るため、情報の密度が高い広告を発信できます。特に、商品やサービスの使い方を説明したり、見た目の特徴を紹介したいときには大きな効果を発揮します。
また、同じ動画でもBGMを変えるだけでまったく異なる印象を与えることができますし、商品をおすすめする理由を音声で説明する方法も効果的です。
短い時間の中に説得力のあるストーリーを盛り込むことで、ユーザーに強力なインパクトを残すことができます。
制作コストが安価で取り組みやすい
テレビCMを制作するには高額な制作費が必要になりますが、動画広告の場合は比較的安価に制作することができます。たとえばテレビCMの場合、制作に大きな金額が必要であることはもちろん、出稿料も非常に高額となります。一方、Webの動画広告なら作成費も出稿料も格段に安価になります。
撮影ありでテレビCMを制作する場合、制作費の相場は150万円程度です。さらに、東京キー局なら15秒のCM1回あたり40~80万円の出稿料がかかるため、放送の回数を増やせば増やすほど費用が膨らみます。
一方、Webの動画広告は30万円程度から制作でき、出稿料の相場も1再生あたり3円~150円程度。テレビCMに比べて非常に取り組みやすい広告メディアです。
参照:テレビCMの費用について | TVCM | ムサシノ広告社
宣伝するユーザーを選択できる
テレビやラジオのCMは、宣伝できる相手が不特定多数の視聴者となります。しかし、インターネットは世代や性別、地域などごとにターゲットを絞り込むことができるため、自社の商品を効果的にアピールできるメリットがあります。
なぜ動画広告の宣伝効果が高まったのか
近年、動画広告の市場は急速に拡大していますが、なぜ動画広告は企業に高い宣伝効果をもたらすのでしょうか。そこには2つの理由があります。
スマートフォンの普及で動画の視聴が一般的になった
多くのユーザーがスマートフォンを持つようになり、誰でも手軽に動画を視聴できる環境が整ったことで、テレビ以外の媒体で動画に接する機会は劇的に増加しました。
総務省による平成28年度版の「情報通信白書」によれば、YouTubeなどの動画共有サービスを利用したことがあり、今後も利用したいと考えている日本国内のユーザーの割合は74.5%に達しています。このことからも、Webを通じた動画視聴への高い関心がうかがえます。
また、SNSや動画投稿サイトなど、広告を配信できるメディアが増えたことにより、ユーザーが動画広告を視聴する機会が増加したことも大きな要因です。
動画広告の割合が増加した
これまでインターネット上の広告は静止画を利用したバナー広告が主流でしたが、動画広告の割合は年を追うごとに増加しています。
株式会社デジタルインファクトが実施したアンケート調査によれば、2019年のデジタル広告予算が前年度に比べて増加したと回答した企業は58.3%、2020年に動画広告予算が増加する予定だと回答した企業は61.1%で、多くの企業が動画広告に割り当てる予算を拡大していることが分かります。
ここで一つ、興味深い調査結果を見てみましょう。
株式会社電通と株式会社ディーツーコミュニケーションズは、iPhoneユーザーを対象に行った「iPhone向け動画広告効果調査」の中で、広告配信システム上の静止画のバナー広告と、そのバナー広告をタップすると流れる動画広告についてのアンケートを実施。その結果を次のように報告しています。
- ・静止画のバナー広告を「確かに見た」と答えた人に比べて、動画広告を「確かに見た」と答えた人は約1.7倍となった。
- ・動画広告を視聴した人が広告の訴求内容について「詳しく知っている」「ある程度知っている」「言葉だけは聞いたことがある」と答えた割合は、静止画のバナー広告を見た人に比べて約11%、広告をまったく認知していない人に比べて約24%高かった。
- ・動画広告を視聴した後にサイト閲覧や検索などの行動を起こした人は約40%だった。一方、静止画のバナー広告を見た後になんらかの行動を起こした人は10%にも満たなかった。
- ・アンケートで新車の購入プランについて「全く知らない」と回答した52%の人に動画広告を視聴させると、90%弱が訴求内容を理解した。
この結果から、動画広告予算が増加し、静止画のバナー広告よりも動画広告の割合が増えるほど、ユーザーへの訴求効果が高まることがうかがえます。
参照:動画広告の動向分析調査を実施しました | デジタルインファクト | デジタル産業の調査、評価と市場算出
参照:iPhone向け動画広告効果調査
動画広告を導入する目的
では、企業はどんな目的をもって動画広告を導入するのでしょうか。その理由は主に以下の3つに集約されます。
自社商品のブランディングを行う
動画広告を利用してブランドのイメージを発信することで、ユーザーに自社商品がどのような価値を持つのかを伝え、浸透させます。商品の特徴やコンセプト、技術力や価格など、他社にはない独自性を盛り込むことによってブランディングを図ります。これらを表現する媒体として、映像と音で密度の高い情報を発信できる動画広告は非常に高い効果を発揮します。
認知度を向上させる
ユーザーの目に触れる機会を増やし、認知度を向上させることを目的とする動画広告もあります。どんなに便利な機能を持った商品でも、知名度がなければ購入につながりません。ユーザーの興味や関心を引く高品質な動画広告を制作できれば、自社の商品を広く知ってもらううえで大きな効果を発揮します。
販促効果を狙う
商品を使用している場面や活用事例などを発信し、実際に商品を手にしたときのイメージや使用感をユーザーに提示して購買意欲をかき立て、購入してもらう目的もあります。アニメーションではなく実在の人物をキャスティングして動画を制作する場合は、商品を使用する自分をイメージしやすいように、ターゲットの年代や性別に近い人物を選ぶと効果的です。
視聴者の記憶に残る動画を作るためには
Yahoo! JAPANが動画広告と静止画の違いについて検証を行った結果、下記のような結果が報告されました。
- ・静止画は多くのユーザーに必要最低限の情報を届けることができる
- ・動画は再生率の大小によって、届けることができる情報量に差がある
また、広告の成果は「広告想起リフト」という、「2日後にその広告を思い出すと予想される人数」を指標にして推し量ることができます。前述の検証によると、動画は50%再生されるとユーザーの広告想起リフトが1.35倍になり、100%再生されると1.6倍にまで跳ね上がるという結果が出ています。つまり、動画広告を制作する際は「最後まで観てもらえる動画を作る」ことが非常に重要であるといえます。
動画広告の活用事例の紹介
一つ、動画広告の効果を知るうえで参考となる活用事例を紹介しましょう。
九州で農産品・特産品・加工食品・飲料の企画・製造・販売、また付帯するECサイトの運営などを展開する株式会社コムセンスは、自社のECサイトで販売している九州の農産品や加工品の魅力をより効果的に伝えるため、動画作成ツール「VIDEO BRAIN(ビデオブレイン)」を導入しました。
以前は各商品を静止画で紹介していましたが、それらを動画に変更することで商品の情報をよりリアルに届けることができるようになり、結果、ECの転換率を110%改善することに成功。動画広告を導入したことでユーザーが商品の購入判断をしやすくなったのではと同社は分析しています。
まとめ
ここまで、動画広告の効果や目的、見るべき指標などについて解説してきました。
動画広告には大きな可能性やチャンスが秘められています。しかし、ただ映像をつなぎ合わせるだけの動画では十分な効果は期待できません。自社で良質な動画広告を作成するためには、充実した動画編集機能が必要となります。
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