動画は、テキストだけでは伝えにくい情報を発信するのに有効です。また、動画と文書の両方を組み合わせて使う方法もあり、表現の幅を広げてくれるでしょう。
この記事では、社内における情報共有のツールとして、動画でのコミュニケーションを導入するメリットや活用方法、情報共有のポイントをご紹介します。
目次
社内の情報共有に動画が適しているワケ
近年、YouTubeやTikTokなど、動画を主体とした媒体が急速に普及してきました。これらの動画媒体はビジネスシーンでも活用されつつありますが、その背景には「動画共有」という手段の特性があります。
教える手間が省ける
従来、先輩社員が直接指導する、場合によっては社員を一堂に集めて集団研修を行っていた教育プロセスを、動画研修に切り替える企業が増えてきました。
時間を割いて手取り足取り行ってきた指導を、動画を通じた指導に置き換えることにより、教える側は一度動画を撮影するだけで済みますし、教えられる側は自身に都合の良いタイミングで特定の場所に出向くことなく指導を受けられます。こうした時間的・場所的拘束を解消できるのが動画を活用するメリットの一つでもあります。
情報に臨場感を持たせられる
かつては、企業が重要なメッセージを伝える際にメンバーを一堂に集め、役員などのリーダーが直接スピーチして熱意を伝えるケースが少なくありませんでした。しかし、規模が拡大した組織ではリーダーが全員に対して直接スピーチをすることは難しく、代わりに文書の形で配布するという手段が採られるようになったのです。
そして近年、動画配信という形で直接メッセージを届けられるようになったことから、全員に対して大切なメッセージを伝え、激励することが可能になりました。
スピーチの場合、重要な部分をゆっくりと話して強調する、間を置いて聴き手の関心を引きつける、身振り手振りを交えるなど、文書では伝えられないコミュニケーションを織り交ぜることが可能です。そのため、動画配信で重要なメッセージを伝えることは、非常に有効な手段だと言えるでしょう。
動作や音を伴う内容を伝えやすい
たとえば、テキストベースの業務マニュアルの場合、読み手の読解力によって理解の程度が左右されます。しかし、動画であれば実際の作業のプロセスをそのまま映し、動作や音などの情報を交えることができます。そのため、より内容を理解することが容易となる点も動画のメリットです。
テキストと組み合わせると活用の幅が広がる
動画にテロップで文字を添える、動画内に文書資料を挿入することで、より正確に多くの情報を伝えることができりょうになります。
文字情報と動画情報それぞれの良さが組み合わせることで、よりわかりやすい社内資料を作ることができるでしょう。
ノウハウを記録として残せる
社員が蓄積しているノウハウは、「形式知(言葉にして伝えられる情報)」と「暗黙知(言葉では伝えられない情報)」に分かれ、文書による伝達の場合、伝えられるのは形式知に限られます。
しかし、特にベテラン社員のノウハウは暗黙知化、また属人化しやすく、後輩社員に直接指導する、あるいは後輩社員が真似る形で引き継がれるケースが少なくありませんでした。そのため、ノウハウのある社員が退職してしまうと引き継げずに企業の損失となっていたのです。
しかし、動画による記録と教育のシステムを整えることで、ベテラン社員の持つ暗黙知を効率的に組織内に蓄積していくことが可能になるでしょう。
社内における動画活用法
ビジネス分野における動画活用の方法として、以下があげられます。
・会議の記録・共有
・社内研修の“映像授業化”
・業務マニュアルの作成
・スピーチなどの配信
・社員紹介
それぞれの動画活用法について具体的に見ていきましょう。
会議の記録・共有
従来、会議の記録を「議事録」という形で残すため、作成担当者を決めて会議の模様を記録するのが一般的でした。しかし、動画を活用することで、会議の記録・共有業務を代替することができます。
見聞きした情報を文字に変換して記録するケースと異なり、動画による記録は客観的かつ過不足なく、会議の様子を記録することが可能。書き手の解釈ミスや意図的な歪曲を排除した「ありのままの形」で会議の様子を残せます。
社内研修の“映像授業化”
従来の社内研修といえば、決まった日時に社員を一箇所に集める「集合研修」の形が一般的でした。この場合、研修を行うための会場準備や、交通手段・宿泊所の手配など、準備が負担となることも少なくありません。
この流れに変化を生じさせているのが、動画の活用による「社内研修動画」の普及です。すでに学校をはじめとした教育現場においては、教育コンテンツの映像化が進んでいますが、企業の社内教育でも、社内研修の動画化により、手間やコストを削減できるのです。
業務マニュアルの作成
業務や機器の操作に関する複雑な部分は、文字ベースのマニュアルでは伝達することが難しい部分もありますが、マニュアルの作成に動画ツールを導入することで、こういった課題を解決することが可能です。
若手社員にとって、これまで先輩社員に何度も聞くことを遠慮してしまっていた部分も、動画であれば何度も見返すことができ、業務の効率化も図れるでしょう。
スピーチなどの配信
社長をはじめ経営陣のスピーチを動画で配信することによって、テキストだけでは伝わらない感情という気持ちの部分も伝えやすくなります。
重要なメッセージについては動画の形で一斉配信した上で、改めて文字に落とし込んだ資料を社内報に掲載するなどして周知を図るとより効果的です。
社員紹介
社内広報に動画を使用することで、社員の表情や雰囲気などが伝わりやすくなります。
例えば、社内報の新入社員紹介に動画を使うことで、フレッシュな雰囲気がそのまま伝わります。また、制作した社内向け動画は社外向け広報にも転用でき、採用のアピールなどにも活用することが可能です。
企業の活用事例
動画を通じた社内情報の共有に関しては、すでに多くの企業で導入が進められており、実際に既存業務の課題解決に成功したケースも少なくありません。
ここでは、動画を社内で簡単に制作できる「Video BRAIN」を活用した事例をご紹介します。
イズミテクノ
金属の加工技術「アルマイト」を手掛ける株式会社イズミテクノは、社内の人材育成に動画を活用しています。
同社ではもともと、「50〜60種類もの紙ベースの手順書があるにもかかわらず、有効活用されていない」という課題がありました。従業員が紙ベースの手順書を参考にしない以上、スキルやノウハウの継承はOJTによる「先輩から後輩への直接伝達」に頼っていたのです。しかし、ノウハウのある社員が異動、あるいは退職してしまうと、ノウハウの継承が途絶えてしまうという課題がありました。
これを解決したのが動画マニュアルの導入、それも新入社員でもわかりやすい「初心者目線のマニュアル動画」です。
きっかけは社員教育用ではなく、採用活動のためのPR動画制作でしたが、これをマニュアル整備に転用。結果として、「伝わりづらい作業工程」をすべて動画マニュアルに転換し、ベテラン社員の知識やノウハウを途切れさせることなく、新入社員にも伝達できる体制を整えています。
アイジーコンサルティング
株式会社アイジーコンサルティングは、1899年創業の老舗として新築設計・施工、不動産仲介および売買などを手掛ける企業。属人的な教育体制が課題となっており、担当する社員によって案内の内容がまちまちになってしまうという課題がありました。
豊富な知識を持っているか否かが受注の成否を分ける不動産業界においては、必要不可欠な知識を全社員に伝えられないことは大きな課題でしたが、これを解決したのが社員教育への動画コンテンツの応用です。
結果として、新入社員の受注件数は4倍に上昇。現在、同社では新入社員の営業レベルの向上を実感しており、「新人も含めて全社員が一定以上のクオリティの案内をできるようになった」という声が少なくありません。
動画を使った情報共有のポイント
動画は便利なツールですが、効率的かつ安全な情報共有を実現するために押さえておくべきポイントもあります。
セキュリティに注意する
動画コンテンツの場合、登場する社員の顔や社員の背後に映る社内の映像など情報量が多いだけに、外部へ漏洩した場合のダメージが拡大しやすい性質があります。そのため、セキュリティ面への配慮は紙媒体の資料以上に意識しなければなりません。
例えば、広報用にYouTubeなどの動画共有プラットフォームを、社内利用する企業が増えてきました。こうしたプラットフォームは便利な一方、URLが社外に漏洩してしまった場合、公開の設定によっては誰でも閲覧できる状態になってしまいます。
セキュリティ面を強化するためには、法人向け動画共有クラウドサービスなどの活用も検討するといいでしょう。
テキストベースの情報を利用する
動画を使った情報共有にはさまざまなメリットがありますが、伝える情報の性質によっては、テキストベースの情報の方が優れているケースもあります。
動画とテキストは相容れないものではなく、「動画の中に文書資料へのリンクを入れる」「文書資料の中に動画を埋め込む」といった形で組み合わせることができるなど、むしろ相性がいい媒体だと言えるでしょう。
すべてを社内動画作成で代替しようとするのではなく、必要に応じてテキストベースの情報と併用することをおすすめします。
まとめ
動画は社内における情報共有に適したツールであり、実際に導入してメリットを享受している企業も少なくありません。テキストでは伝えることが難しい暗黙知的な部分についても、動画であればそのままの形で社内で共有出来、ベテラン社員のスキルやノウハウを次世代へと継承することも可能です。
ただし、セキュリティ面への配慮や必要に応じたテキストベースの情報との併用など、意識すべきこともありますので、自社に合った方法で動画共有を進めることをおすすめします。
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