広報(PR)には、さまざまな種類や方法があります。伝えたい相手によってアプローチ方法が異なるため、広報担当者は目的に応じて戦略を考えていく必要があります。
本記事では、企業や組織が行う広報活動の種類とは、一体どのようなものがあるのか詳しく解説していきます。また、広報活動を行う際の課題と解決策もあわせて紹介します。
目次
広報とは
広報とは「パブリック・リレーションズ(Public Relations)」の訳語であり、企業や組織が社会との関係性を良好にするために、さまざまな情報を発信する活動を指します。広報は主に、社外に向けた広報活動と社内に向けた広報活動の2種類に分けられます。
社外広報
社外広報とは、自社のサービスや商品に関する情報を対外向けに発信する広報活動をいいます。社外広報は、訴求につながるサービスや商品に関することだけを発信するのではなく、自社の企業理念や企業活動などについての発信も重要です。
また、社外広報を発信したあとの対応も肝心です。情報発信して終わりではなく、この情報を見た株主や取引先、従業員などのステークホルダーからの意見に耳を傾ける姿勢も大切です。ステークホルダーからの声を客観的に受け止めることで、より良い関係性を築けるでしょう。
社内広報
社内広報とは、会社の理念や今後の方針などを自社の社員に対して情報発信し、社内全体の意識をまとめる広報活動を指します。社内広報は、社内の情報を共有する役割もありますが、コミュニケーションを図るための大切な役割もあるのです。社外広報により、社員たちにコミュニケーションの場が生まれて意見交換できるため、マインドの変化が期待できます。
また社内広報は、ステークホルダーからのフィードバックを社内に発信する役割もあるのです。フィードバック内容を発信することで、社員だけでなく企業全体が大きく変化し変革を起こすきっかけにもなります。これにより、企業はさらなる成長につながるでしょう。
広報の目的
企業が行う広報活動は、「ブランディング」「売上・業績アップ」「資金調達や採用などの問題解決」が主な目的とされています。
ブランディング
ブランディングとは、企業や組織などのマーケティング戦略であり、ステークホルダーからの共感や信頼関係の構築を高める活動いいます。自社の役割や活動、サービスなどを広報活動によって社会に発信していくことで、自社のブランドイメージが構築され、ブランディングの確立につながるのです。
またブランディングは、他社との差別化や企業文化の情勢を図る目的も含まれています。企業のブランドコンセプトや経営理念など消費者が共感できる内容を発信し、インパクトを与えることで他社との差別化が可能です。ブランディングによる差別化戦略を駆使している企業は、ブランド価値が社会に浸透しているため、他社との価格競争に巻き込まれる心配もないでしょう。
売上・業績アップ
売上や業績アップを狙うには、自社の強みであるサービス内容や商品価値などを発信していくことが重要です。情報社会である現在、競合他社もブランディング戦略を駆使している状況なので、自社の商品が消費者の記憶に残るような発信をする必要があります。
情報発信する際に、自社商品の世界観やブランドの存在意義など企業の強みを内容に盛り込むとイメージアップになり、より売上・業績アップにつながるでしょう。
資金調達や採用などの問題解決
社会に向け継続的な発信を続けることで企業価値が高まり、資金調達や優良な人材の確保につながります。企業価値を高めブランドを確立・醸成させるための広報活動をコーポレート広報といい、ステークホルダーとの適切なコミュニケーションを図り、良好な関係構築を実現させることが役割です。コーポレート広報は経営陣との関係構築も重要であり、連携やリーダーシップも求められます。
資金調達や優良な人材の確保などの問題を解決する場合は、将来のビジョンやSDGsの活動報告などのポジティブかつ信頼性の高い情報を発信するといいでしょう。投資家や金融機関、行政機関にとって企業の将来性は重要な判断基準となるので、資金調達や採用の問題解決になります。
代表的な広報活動
広報活動には主にどのような方法があるのでしょうか。
社内報の作成
社内報は、主に会社情報を社内に共有するツールで、WEBタイプと紙タイプの2種類があります。経営理念や情報共有の際に使用する場合がほとんどです。社内報は会社の最新情報や達成目標などを共有し、仕事の効率化と社員のモチベーション向上を促進する狙いがあります。
また、新入社員の自己紹介や部署の仕事内容、社内受賞者などを社内報の内容に盛り込むことで、社員同士のコミュニケーションツールとしての役割も持つのです。社内報でのコミュニケーションを図ると社内全体が活性化し、社員同士、より良い関係性が構築されるでしょう。
プレスリリースの配信
プレスリリースは、商品の新作発表や新規事業発表などの企業情報を、メディア・記者向けの文書や資料にまとめたものをいいます。プレスリリースを配信する際は、メディアフックと呼ばれる「情報の価値」を意識することがポイントです。
メディアはすべての情報をニュースとして取り上げるわけではないので、メディアの目に留まりやすく、なおかつ伝わりやすい内容が効果的。独自性・トレンド性があり、「起承転結+展」で構成されたプレスリリース作成を心がけましょう。
プレスリリースが報道される際、報道内容の指示やリクエストができないので、相手側の受け取り方次第で意図しない報道になる可能性があります。プレスリリースを作成する際は、その点も注意しながら作成しましょう。また、問い合わせの増加に対してオペレーションマニュアルを作るなど、不測の事態を回避するための事前対策をしておくと安心です。
イベントや記者会見の実施
イベントや記者会見実施も広報手段のひとつで、商品の新作発表や新サービスなどの情報を、招待したメディア・記者の前で大々的に発表する広報活動です。プレスリリース配信に比べると費用が大きくなってしまいますが、注目されニュースとして取り上げられた場合、大きな話題となり企業認知もされるメリットがあります。
イベントや記者会見を実施するにあたって、正確性のある情報を提示することが重要です。資料確認には顧問弁護士などに協力を仰いでみましょう。また、イベントや記者会見をするならば、多くのメディア関係者に来てもらう必要があります。メディアの集まりやすい日時や時間帯に設定するのもポイントのひとつです。
SNSやオウンドメディアの活用
オウンドメディアとは、企業の公式サイトなど自社が保有するメディアの総称をいいます。オウンドメディアの活用は、近年の広報手段としてよく活用されており、自社のサービスや商品を紹介・理解してもらう際に役立つ広報手段です。
SNSなどを含めて活用することで、自社商品の不明点に対する回答記事を掲載できるというメリットがあります。このニーズに対しての記事作りを行うと、興味を示してくれるきっかけになるでしょう。
また、オウンドメディアの活用は、ただ何気なく始めてみただけではなんの意味もありません。確実な顧客獲得を目指すために、「サイト内容の新鮮さ」「検索キーワードの意識」「コンテンツ内容の一貫性」に注意しながら取り組みましょう。
オリジナルグッズの作成
オリジナルグッズの作成は、企業のイメージや宣伝、組織の活性化に役立つ広報手段です。オリジナルグッズは企業によってさまざまで、ステッカーやストラップなどがあります。しかし、実用性のないグッズでは満足度が低く、PRとしてのインパクトが失われてしまうので、日常的に使用できるグッズを制作するのがポイントです。
効果的な広報活動の選び方
会社情報を社内で共有したいのであれば社内報を選択し、新作商品や新サービスをメディアに対して発信したいのであれば、プレスリリース・記者会見を選択しましょう。また、幅広い層のステークホルダーに向けて広報したい場合は、自社が保有しているSNSや公式ホームページなどのオウンドメディアの活用がおすすめです。SNSや公式ホームページで発信することで、多くのステークホルダーの目に留まりやすくなります。
広報活動にはさまざまな種類があるので、どのようにアプローチしていきたいのか、どこに対して発信していきたいのかによって選ぶ広報活動は異なります。アプローチの仕方や発信したい相手を明確にして、どの広報活動で進めるか選択するといいでしょう。
広報活動を行う上で発生しやすい課題と解決策
広報活動を行うのに目的の把握や情報収集に欠けていては、成功する確率は低いでしょう。広報活動の際に発生しやすい課題と解決策について解説します。
担当者の経験不足
経験不足によって選択肢の幅が狭まり、どのような方法が適しているのかよくわからなくなっているケースがあります。広報活動を行う上で、経験・ノウハウ・リソースは重要です。ひとつでも欠けていると戦略設計がうまくいかず、中途半端な結果になってしまうケースもあるでしょう。
経験値やノウハウ、リソースを高め知識を広げるためには、広報経験が豊富なベテランから学ぶ・広報関係の勉強会に出席するなどの行動が必要です。また、実際に起きた事例を取り上げたケーススタディが掲載してある書籍を活用し、問題解決するためのスキルや分析力、対応力などを養う方法も効果的でしょう。
戦略的ロードマップがない
広報活動では、目的達成のための戦略設計は必須となります。戦略的なロードマップがなく、計画が不十分というのも、課題のひとつです。広報活動は、単発で成果を得ることは難しく、メッセージを伝えたい相手に対して長期的に発信し続ける姿勢が重要となります。
例えば、売上の向上を達成目標に設定した場合、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の全体的な流れを把握し、どのような媒体で訴求を行うべきなのかを考えなければなりません。そして、顧客体験の把握と訴求方法をベースに考えながら、情報発信の計画・スケジュールを設定する必要があるのです。広報活動を成功させるためには、緻密な戦略設計を行いましょう。
目的が明確でない
数値化したゴール設定を行うと、目標を達成するための過程が考えやすくなり、以後の広報活動のアクションも取りやすくなるでしょう。しかし、広報活動の目的が明確でないまま、なんとなく活動しているケースも多く見られます。
広報担当者や広報部門は、情報発信の目的を明確にし、有効的な情報収集ができる体制作りを行う必要があるのです。また、「成功した」と確信できる状態とはどのようなものなのか、明確かつ具体的に設定しておく必要があります。
まとめ
広報にはさまざまな方法があり、ステークホルダーにどのようなアプローチをするのかによって選び方が異なります。広報担当者や広報部門は、長期的かつ継続的な広報発信を続けることで、企業ブランドの付加価値を上げステークホルダーと良好な関係性を構築できるのです。
広報活動を行うには、経験・ノウハウ・リソースが肝心であり、広報スキルを身につけるための行動や努力が重要といえます。明確なビジョン設定や緻密な戦略設計を行えば、おのずと広報活動の成功と目標達成に近づけるでしょう。
関連記事
この記事をシェアする