企業や自治体などでよく目にする広報誌ですが、何のために作られているのか理解しきれていない方もいるのではないでしょうか。今回は、広報誌の定義について詳しく解説し、さらにその目的やメリットについてまとめました。これから広報誌の作成にかかわる担当者の方は、ご紹介する内容を参考に知識を深めてみてください。
目次
広報誌とは
広報誌は「自社のサービスや独自の魅力を紹介する媒体」というイメージがある人も多いのではないでしょうか。まずは、広報誌の基本的な概要を紹介します。
広報誌の定義
広報誌とは、不特定多数の方に向けて発行される「定期刊行物」を指します。企業側が行っている活動や方針などを周知させるのが主な目的です。
企業が発行する広報誌であれば、経営理念をはじめ、現在取り組んでいる活動内容などを掲載し、自社の魅力を多くの人々に伝えるために作るケースが多いでしょう。
一方、広報誌と似たような意味合いを持つものに、「社内報」が挙げられます。社内報とは、自社の社員に向けて情報を発信するツールです。自社の方針を理解する、社員同士の意思疎通を図るなど、業務をスムーズにし、より良い職場環境を作るために用いられるのが一般的です。
一見同じように思える広報誌と社内報ですが、ターゲットとなる読者や発行する目的が異なります。
広報誌と広報紙の違い
また「広報誌」と「広報紙」では、読み方は同じですが、少し違いがあります。一般的には、タブロイド判のような比較的大きな紙を使っているのが「広報紙」です。「広報誌」は、いわゆる雑誌型の媒体で、A4判程度のサイズの紙を使用しています。雑誌型の冊子である広報誌として発行する企業が多いでしょう。
また、昨今は紙に印刷した形ではなく、ウェブ上にアップするケースも増えています。
広報誌を作成する目的
広報誌を作成する主な目的は以下の通りです。
- 売上アップ
- 企業認知度の向上
- 自社のブランディング強化
- 外部に向けた情報共有・発信(宣伝)
- 企業とクライアント間の信頼関係構築
ひと口に広報誌といっても、上記のようにさまざまな目的があります。ただし、広報誌に記載する内容に決まりはないため、読者ターゲットによって内容を変える必要があることを覚えておきましょう。
広報誌を作成する7つのメリット
広報誌を作成するメリットをきちんと把握することで、より良い内容に仕上がります。
最新の情報を広められる
広報誌は、自分たちが発信したい情報を届けられるツールです。そのため、広報誌を作成することで企業や自治体、学校などの最新情報をわかりやすく多くの人に伝えられる点が大きなメリットでしょう。
紙媒体で発行する場合、年配の方でも目を通しやすく、情報格差が生まれにくい特徴があります。より多くの方々に情報発信できることで、自社の知名度向上やクライアントとの接点の増加などが見込めるでしょう。つまり、ブランディング力アップや売り上げ向上などにつながる可能性が高まります。
また、読者としても、タイムリーな情報を入手でき、すぐにアクションに移しやすくなるというメリットもあります。例えば、広報誌内にイベントの記載があれば、すぐに日程調整しやすかったり、新商品の情報があればどこよりも早く入手できたりするなどが挙げられます。
営業ツールとして活用できる
広報誌は、社員が営業ツールとしても活用できます。例えば、自社の新商品の情報を掲載することで、広報誌を配った方々にその情報を共有できます。すると、その商品の魅力が伝わり、購入に至るケースも考えられるのです。ダイレクトメールや営業活動などで売り込まれるよりも、自然な形で商品を紹介できるため、ネガティブな印象を持たせにくいメリットもあります。
サービスや商品の広告になる
広報誌に自社のサービスや商品情報を入れ込むことで、読者の興味を引いたり、イベント参加を促すきっかけになったりする可能性もあります。つまり、自社のサービスをアピールするイベントの開催日時や詳細、新商品の詳細情報などを記載すれば、広告の役割を果たすことも可能です。こういった背景から、広報誌はときに「PR誌」と呼ばれることもあります。
ブランディングになる
広報誌を活用し、企業理念やビジネス展開の方向性などを発信すると、自社のイメージアップやブランディングにもなります。環境に配慮した取り組みやサービスの強みなど、企業としてアピールしたい内容を広報誌に掲載するのが基本的な活用法です。広報誌を通じて企業への関心が深まれば、企業価値を高めていけるでしょう。
社内広報の働きがある
広報誌は、基本的に社外へ向けて情報を発信するツールですが、自社の社員が目を通すこともできます。つまり、社内報としての働きを含んでいると言えます。社内にも広報誌を配布することで、社員間のコミュニケーションツール、自社の理解を深めるといった要素につなげられます。
社内の情報共有に使える
広報誌を社内に配布することで、会社の動きや方針、目的などの情報を社員間で共有できます。一人ひとり違った個性や強み、考え方をもつ社員が自社の方向性や目的などを、広報誌を通じて発信するケースがあります。すると、自社や他の社員に対する理解が深まり、事業として成果につながる場合もあります。
社員の愛社精神を高められる
広報誌に企業理念や今後の動きなどのよりコアな情報を掲載することで、社員の理解が深まり、愛社精神を高めることができるでしょう。愛社精神を育むには、自社への理解を深めることが重要です。
しかし、在籍する社員ひとりひとりに自社理解を深めるための話をするのは、至難の業。そこで、広報誌を配布することで、一度に多くの社員へ会社の情報を発信することができます。広報誌を社員の家族にも読んでもらえれば、さらに広い範囲で愛社精神が育めるでしょう。
広報誌を作成する際のポイント
広報誌を作成するなら、より相手の興味をそそる内容に仕上げなければなりません。そこで、魅力的な広報紙を作成するためのポイントを7つご紹介します。
作成する目的を考える
より多くの方々に興味を持ってもらい、しっかり情報を読み取ってもらうには、まず広報誌を作成する目的を考えることが重要です。読者に向けてどのような情報を発信したいのか、広報誌を作成する前にしっかりと方向性をまとめましょう。メモなどを活用して自分たちが伝えたい内容を書き出し、明確化させることで、広報誌の目的がまとまるはずです。やみくもに広報誌を作成すると、内容が薄い、何が言いたいのかわからない、など読み応えがなくなりやすいため、注意しましょう。
ターゲットは誰かを考える
まずはターゲットは企業なのか、それとも個人なのかを明確にします。ターゲットが企業であれば、すでに取引があるのかないのかによっても伝えるべき内容は変わるでしょう。相手の心に響く内容を見極めることが大切です。しっかり絞り込んだターゲットに向けて、どのようなことを伝えたいか、何を感じてほしいかをまとめるようにしましょう。ターゲットが決まれば、広報誌の方向性がはっきり定まります。
レイアウトを工夫する
広報誌のなかで、何が言いたいのか分かりにくいダラダラと長い文章や、読みにくいごちゃごちゃしたデザインは避けるのが基本です。1文の長さを適切に調整し、分かりやすい文章と、見やすさを重視したデザインを意識しましょう。レイアウトがうまくいっていないと、せっかく良い内容でも読者に読んでもらえないケースがあります。
さらに、詳しい内容が知りたくなるような引きのある見出しや、興味や目を引くレイアウトなど、ちょっとした部分に工夫を加えることで、さらに多くの方に読んでもらえるはずです。
発行後の反応をチェックする
実際に広報誌を発行し読者に読んでもらった後は、読者アンケートや従業員アンケートをとり、広報誌の意見を聞くことも重要ポイントです。こういった生の声を聞くことで、改善点や読者から求められていることなどが見つかり、より良い広報誌作りに活かすことができるでしょう。ときには、次の広報誌に記載する記事のネタとなる情報を収集できる場合もあります。
定期的に作成体制や運用法を見直す
効率的に作業できているのか、定期的に作業工程を見直してみましょう。広報誌を作ることに集中し過ぎて、作業効率がいつの間にか悪くなるケースがあります。ダラダラ作業することで生産性が悪くなり、思ったような広報誌が作れないことも考えられます。作業の見直しを行うことで、常に質が高く無駄のない広報誌を維持できるでしょう。
また、読者アンケートなどを活用して反応を確認し、運用を見直すことも忘れないようにしましょう。読者からの意見を広報誌にうまく反映することで、より読まれる広報誌作成につながるはずです。
広報誌で活用できる企画例
広報誌に盛り込む内容には特に決まりがありません。そのため、どのような内容を盛り込むか絞り切れない、ということも多々あるのではないでしょうか。そこで具体的にどのような内容を広報誌に入れ込むと良いか、代表的な企画例をチェックしていきましょう。
インタビューや取材コンテンツ
インタビューや取材記事は、読者が自分と重ねて読むケースがあり、人気が出やすいネタです。成功事例や失敗エピソードなど、今後の活動に活かせる内容も、積極的に取り入れてみましょう。
企業としての情報を発信したいのであれば、自社の社長や重役にインタビューを行うのもおすすめです。企業の顔ともいえる社長や重役が広報誌に掲載されることで、親しみを感じる読者もいるはずです。また、社員の紹介を行い、よりコアな情報を発信するのも良いでしょう。普段はなかなか見られない、企業内での座談会の様子を広報誌に掲載するのも人気がある企画の一例です。
活動報告
広報誌を社内報として活用する場合には、支店や部署によって交流が少ない社員同士の接点を増やす企画もおすすめです。各支店や部署の詳しい活動内容を広報誌に記載し、情報交換や職場の雰囲気を伝え合うのも良いでしょう。
また、社外に向けた活動報告を広報誌で行うのも、今後のビジネスにおいて有益となるはずです。どのような活動を行いどのような結果が出たか詳しく記載することで、読者から信頼や共感を得ることができ、企業のイメージアップにつながります。
時事ネタ・健康ネタ
万人にうけるネタといえば、時事ネタや健康ネタです。そのまま取り入れると新聞と同じになるため、企業のサービスなどに絡めた時事ネタ・健康ネタを企画すると、より興味を引きつけやすくなります。例えば、業界の最新ニュースに絡めて新商品を紹介する、健康を維持するための運動法と一緒に自社サービスを紹介するなどが代表的です。
読者企画
広報誌発行後に読者にアンケートをとり、そこで読者が求める企画をチェック、採用するのもひとつのネタとしておすすめです。ある特定の読者が求めている情報は、もしかすると他の方も同じようなことを考えている可能性があり、より多くの方々の興味を引きつける可能性があります。また、自分のネタが広報誌の記事になるかもしれないと思うと、読む意欲が高まるものです。
季節ごとのイベント
ネタに困った場合は、季節ごとのイベントにまつわるコラムなどを取り入れると良いでしょう。季節感があり、家庭で取り組めるような企画を紹介すると、社員の家族も興味を持つ可能性があります。お祭りなどの地域イベントや入学式などの子どもに関する行事、クリスマスなどイベントなどにまつわるネタを探してみましょう。
ただし、季節ごとのイベントネタは時期がずれると読者からの共感が得られにくくなるため、発行日を意識して制作することが大切です。
広報誌の事例
広報誌が活用される場は、企業だけではありません。自治体や学校、病院など、さまざまな現場で活用されています。今後の広報誌作成に活かせるよう、成功例ともいえる、多くの方々に愛されている広報誌の事例を3つご紹介しておきましょう。
三菱マテリアルの「WITH MATERIALS」
自社の取り組みや、新素材・新技術開発などの事業を分かりやすく紹介しているのが、広報誌「WITH MATERIALS(ウィズ マテリアルズ)」です。三菱マテリアル株式会社は、付加価値の高い材料・製品などの提供や、銅をメインにした非鉄金属素材を提供している企業です。リサイクル可能な製品の制作、廃棄物の再資源化など、環境に配慮したビジネスも展開しています。
広報誌では経営理念として掲げている「人と社会と地球のために」を主軸とした内容を、季刊で発信しています。企業のありかたや製作所がある街の紹介、社員インタビューなどさまざまな切り口の記事を、それぞれの内容にあったデザインで紹介しています。
参考:広報誌「WITH MATERIALS」 | 会社情報 | 三菱マテリアル
https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/company/magazine/index.html
埼玉県入間郡三芳町の「広報みよし」
撮影も取材もすべて町の職員が手掛けている「広報みよし」。埼玉県入間郡三芳町の広報誌で、地域の雰囲気が感じられる印象的な写真を表紙に使用するなど、読者の目を引くポイントがギュッと詰まっています。
全国広報コンクールや埼玉県広報コンクールで特選、入選を果たすなど、注目を浴びている広報誌です。町政の情報を共有する他、広告などの役割も果たしています。
参考:広報みよし|埼玉県三芳町
https://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/town/koho/index.html
東北大学病院の「hesso」
東北大学病院の「hesso(ヘッソ)」では、主に院内での取り組みやスタッフ紹介を行っています。実際に院内で働く医師へのインタビューや、食べ物に関する記事など、病院や健康への関心が深まる内容が特徴的です。
つい難しく考えてしまいがちな医療の知識を分かりやすく伝えるため、親しみのある表紙も魅力的なポイント。院内でのイベントレポートから地域に関することまで、多くの方が興味を持てる幅広い内容を掲載しています。
参考:hesso(へっそ)|東北大学病院広報誌
https://www.hosp.tohoku.ac.jp/hesso/tag/local/
まとめ
広報誌は、ビジネスだけでなく、自治体や病院など、さまざまなシーンで活躍している情報発信ツールです。各企業や自治体の魅力、取り組みを分かりやすく発信し、ブランディング強化やコミュニケーションを深めるなど、多彩な目的とメリットがあります。誰にどのようなことを伝えたいかをはっきりさせるなど、広報誌作成の基本となる部分をしっかりと追及し、魅力的な広報誌を作ってみてください。内容の濃い読み応えのある広報誌を制作すれば、そのぶん多くのメリットが得られるはずです。
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