ダイバーシティの企業事例を紹介!人的資本開示に向けた各社の取り組みを解説

近年、企業側にダイバーシティの推進が求められています。ダイバーシティに向けた取り組みは、企業のイメージ向上につながるだけでなく、自社の課題解決にも役立つからです。

さらに、人的資本の情報開示が義務化され、ダイバーシティの取り組みを社外に開示する動きが強まっています。自社の課題解決とともに、情報を開示するためにも早急に取り組まなければなりません。

しかし、ダイバーシティの重要性を理解しながらも「具体的に何から取り組めば良いのか」と感じ、実際にアクションできていない企業も少なくないものです。果たして、どのような取り組みが有効なのでしょうか。当記事では、人的資本経営を高めるダイバーシティの企業事例を紹介します。

ダイバーシティとは

ダイバーシティ(Diversity)は、直訳すると多様性を意味します。年齢、性別、人種、宗教、趣味嗜好など、集団の中にさまざまな属性の人が集まった状態のことです。

もともとは、人権問題や雇用機会の均等などを説明する際に使われていた用語です。現在では、ビジネスの文脈で使われる場面が多くなりました。多様な人材を登用することによって、組織の生産性や競争力を高める効果が期待できます。つまり、ダイバーシティの推進は、企業が成長する要件の一つとなっています。

ダイバーシティ&インクルージョンとは

ビジネスの文脈で「ダイバーシティ」が語られる際、あわせて使われやすい用語が「インクルージョン」です。

インクルージョンとは、多様な人々の特性が十分に活かされて企業活動が行われている状態を指します。多様な人材を雇用したものの、それぞれの価値観が違うだけに、意見がぶつかってしまったり、コミュニケーションがうまく取れなかったりする場合も少なくありません。そこで重要なのが、お互いの考え方や価値観、生まれ持った違いなどを認め合うことです。

そこで、「ダイバーシティ&インクルージョン」とまとめて表現されることがあります。ダイバーシティ&インクルージョンとは、人材の多様性を認めて受け入れ、それぞれの人材を活かした状態を指します。

自社の経営方針として「ダイバーシティ&インクルージョン」として掲げるケースも多くあります。

<ダイバーシティ&インクルージョンを掲げる企業例>
第一生命グループでは「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」として、多様な仲間とともに会社の持続的成長を実現させることを目指しています。

【取り組み方針】
■性別、年齢、国籍、人種、民族、宗教、社会的地位、障がいの有無、性的指向・性自認、価値観、働き方等の多様性を互いに尊重し、認めあい、共に活躍・成長することができる職場環境・風土づくりを進める
■社員一人ひとりが、いきいきワクワク働きながらプロフェッショナルとして能力を最大限に発揮する
■自ら組織運営に参画し、チームワーク力を発揮することで、変革(イノベーション)と新しい価値創造を実現する

参考:第一生命/ダイバーシティ&インクルージョン宣言

企業のダイバーシティが重要視される背景

以前からダイバーシティの重要性は指摘されていましたが、昨今は社会問題や時代の変化により、さらにニーズが高まっています。企業のダイバーシティが重視されるようになった背景は、以下の通りです。

グローバル化の加速

グローバル化とは、国や地域を超え、事業活動の中で海外とのやりとりが行われることを指します。日本でも近年、ビジネスのグローバル化が急速に進んでいます。

海外市場のニーズに合う商品開発が必要であったり、海外に製造拠点を作る場合はその国での採用活動を行ったりするため、企業ではさまざまな国籍や人種の人材を採用することが必至です。

多様な価値観を受容していくダイバーシティを推進することで、海外人材も働きやすくなるでしょう。

働き方の変化

時代とともに、働き方や雇用に対する意識は大きく変化しました。企業への帰属意識が希薄化したり、仕事と私生活の両立を重視したりなど、特に若年層の中で顕著に見られます。

その流れの中で転職志向の労働者も増え、人材の流動性が高まりました。また、女性の雇用比率が高まったことにより、家事・育児に対する男性の役割も変化しています。ダイバーシティを実践することで、働き方の変化にも対応できるようになります。

労働力の減少

少子高齢化が進み、若年層の人口は減少傾向にあります。その結果、今後の日本では深刻な人手不足に陥るという予測もされています。
人手不足により事業が継続できなくなることも懸念されるため、安定した事業の継続のためには従業員を安定して確保する必要があります。

そこで、ダイバーシティの考え方に基づき、女性や高齢者、障がい者、外国人などの多様な人材を活用することが重要とされています。

人的資本の情報開示が義務化

現在、ダイバーシティの取り組みについて社外に開示する動きが見られています。「人的資本の情報開示」として、投資家やステークホルダーなどから求められている情報だからです。

人的資本の情報開示とは、企業が自社の人的資本に関する情報を開示することを指します。

人的資本とは「個人が持つ知識、技能、能力、資質など、付加価値を生み出す“資本”とみなしたもの」と定義されています。大まかに言えば、人的資本は従業員が持つ知識や能力を指します。

企業としては、従業員が自身の知識や能力を最大限発揮し、自社の売上や成長に貢献してほしいと思うものです。従業員一人ひとりが活躍するには、働きやすい環境を整備する必要があります。たとえば、育成につながる研修を実施したり、福利厚生や各種制度などを整えたりすることが挙げられます。

その中で、ダイバーシティ&インクルージョンも重要なポイントです。なぜなら、多様な人材が働ける環境を実現することも含まれているからです。

さらに現在、企業が人的資本にどれだけ投資しているのかを開示する動きが強まっています。2023年3月より、対象となる企業では、一部の情報において開示が義務化されました。


<対象企業>
金融商品取引法第24条の「有価証券を発行している企業」が対象となり、大手企業を中心に4,000社ほどが該当します。

<情報開示の義務化が開始される時期>
2023年3月より開始します。対象に該当した企業は、事業年度終了後3カ月以内に、有価証券報告書を毎年提出しなければなりません。

<記載すべき情報>
対象企業は、有価証券報告書の「従業員の状況」に「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」の3つを記載する義務が生じます。


現在決められている記載内容だけでなく、今後はさらに多くの情報項目を求められる可能性があります。今後、ダイバーシティはもちろん、人的資本に関連するさまざまな情報を積極的に開示するようになると予想されます。また、現在の対象企業だけでなく、さらに多くの企業へと義務化が進められる見込みです。

社外から見て、自社が魅力的な組織だと映るように、企業は人的資本の情報開示を積極的に行うようにしましょう。

人的資本の情報開示において、開示すべき内容

内閣官房では、人的資本の領域において情報開示が望ましい内容を提示しています。ダイバーシティを含めて全部で19項目あり、以下の7分野に分類できます。

<情報開示が推奨される7分野>
・育成
・エンゲージメント
・流動性
・ダイバーシティ
・健康、安全
・労働慣行
・コンプライアンス、倫理

各項目は、企業価値を向上させたり、リスクマネジメントを推進したりするために大切な要素です。それぞれ独立したものではなく、たとえば、ダイバーシティに注力すれば、自社の人材における流動性が高まったりするなど、相乗効果があります。


これらを開示することをふまえ、情報の取りまとめはもちろん、各分野を伸ばしていけるような施策を講じていきましょう。

ダイバーシティの分野における開示情報一例

ダイバーシティの分野では、具体的にどのような情報を開示すれば良いのでしょうか。内閣官房が提示した「人的資本可視化指針」では、以下の項目が具体例として挙げられています。

<ダイバーシティに関連する開示事項例>
・属性別の従業員・経営層の比率(女性管理職比率)
・男女間の給与の差 (男女間賃金格差)
・正社員・非正規社員等の福利厚生の差
・最高報酬額支給者が受け取る年間報酬額のシェアなど
・育児休業後の復職率・定着率
・男女別家族関連休業取得従業員比率(男性育児休業取得率)
・男女別・育児休業取得員従業数
・男女間の賃金格差を是正するために事業者が講じた措置

参照:人的資本可視化指針

ダイバーシティの情報を開示している企業事例

ここからは、実際にダイバーシティの情報について開示している企業事例を紹介します。

エーザイ

2020年には「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれるなど、積極的にダイバーシティに取り組んでいる企業の一つです。

社員の女性比率をはじめ、管理職や30代以下の組織長の比率、産休・育休を取得した男性社員などを開示しています。

現在の実績をもとに、2030年度の目標を掲げているのが特徴です。長期的な定量目標を定めることにより、同社がダイバーシティの推進に意欲的であることがうかがえます。

長期的な目標もあわせて開示すると、自社の意欲をアピールする機会になる例といえます。

指標目標実績
社員の女性比率(国内)30%以上26.0%
管理職層の女性比率(国内)30%以上11.5%
30代以下組織長比率(国内)20%以上14.1%
配偶者出産休暇・育児休職を併せて
5日以上取得した対象男性社員の比率(国内)
50%以上46.9%

※実績は2021年度末のもの。目標は2030年度。

参考:サステナビリティ目標と実績

ダイバーシティに表彰された企業

経済産業省では、平成24年度から令和2年度まで「新・ダイバーシティ経営企業100選」を発表しています。

ダイバーシティ推進を経営成果に結びつけている企業の取り組みを紹介したものです。評価のポイントには、以下が基準とされています。

・多様な人材の活躍により経営上の成果を上げている
・他社のモデルとなる先進的な取り組みを行っている
・組織全体に取り組みが浸透している

2020年度は「新・ダイバーシティ経営企業100選」に14社、「100選プライム」に2社が選定されました。先に紹介したエーザイも受賞しています。

2020年度・受賞企業

2020年度では、「新・ダイバーシティ経営企業100選」「100選プライム」において、以下の企業が受賞しました。

また受賞企業のうち、12社は受賞コメントの動画を提供しています。実際のようすを動画で紹介することにより、取り組みがわかりやすく伝わるような内容になっています。

【100選プライム】
<情報通信業>

日本ユニシス株式会社
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/yunisisu.mp4

<運輸業・郵便業>
大橋運輸株式会社
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/oohasiunyu.mp4

【新・ダイバーシティ経営企業100選】
<建設業>
・株式会社熊谷組
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/kumagaigumi.mp4

<製造業>
・エーザイ株式会社
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/ezai.mp4

・カンロ株式会社
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/kanro.mp4

・スズキハイテック株式会社
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/suzukihaiteku.mp4

・シスメックス株式会社
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/sisumekusu.mp4

・東和組立株式会社
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/touwakumitate.mp4

・横関油脂工業株式会社

<情報通信業>
・株式会社JSOL

<卸売業・小売業>
・株式会社足立商事
・株式会社日立ハイテク

<金融業・保険業>
・株式会社四国銀行
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/shikokuginkou.mp4

<不動産業・物品賃貸業>
・ケイアイスター不動産株式会社
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/keiaisuta.mp4

<学術研究、専門・技術サービス業>
・株式会社ズコーシャ
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/zukosha.mp4

<サービス業>
・株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベル
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/jtbgmt.mp4

参照:令和2年度/新・ダイバーシティ経営企業100選・プライム受賞企業の発表

人的資本の情報開示に向けて、従業員の理解が不可欠

企業がダイバーシティを推進するには、必要な制度を整えるだけでは不十分です。従業員が自社の取り組みを知っていなければ、うまく活用されないからです。

たとえば、従業員が育休を取得しやすい体制を整えても、実際に育休を取ってもらえなければ育休取得率は上がりません。人的資本の開示としてダイバーシティの情報を載せた際、社外から「ダイバーシティが進んでない」と思われないよう、社内にも働きかけましょう。

自社の情報を浸透させるなら、動画の活用が有効

従業員に自社の制度や取り組みを知ってもらうには、企業側が積極的に発信することが第一です。しかし、チャットやグループウェアに投稿しても、見落とされたり、情報が流れていってしまうケースも少なくありません。そこでおすすめなのが、動画を活用した情報共有です。


<動画のメリット>
・テキストよりも内容が伝わりやすい
テキストや写真と比べて、動画なら情報をわかりやすく伝えられるのがメリットです。

・コミュニケーションが活性化しやすい
動画ならば、ダイバーシティの取り組みに関係する従業員にインタビューできます。女性や若手管理職をはじめ、実際に育休を取得した男性社員など、本人の声として紹介できるため、数値だけで自社の情報を見せるよりも効果的です。


「新・ダイバーシティ経営企業100選」に表彰された企業の動画なども参考に、自社の取り組みをまとめると良いでしょう。

ただし、動画を制作して発信するだけでは、必ずしも効果があるわけではありません。発信した動画を従業員が見ているかどうかを確認しながら、反応の良い動画の内容を分析し、より良い動画に改善していくプロセスが肝心です。

「Video BRAIN」なら、動画の制作から配信分析まで可能に

動画を活用し、ダイバーシティの情報を社内に届けるなら、ビジネス動画編集クラウドの「Video BRAIN」がおすすめです。

Video BRAINは、誰でも簡単に動画が作れるツールです。動画制作から配信、コンテンツの管理、従業員の閲覧状況やToDoの進捗管理まで、一貫して行えます。


<Video BRAINの特長>
(1)パワポ感覚の操作性。短時間で簡単に動画を制作
3,500以上の動画テンプレートに加え、商用フリー素材を多数搭載。画像や動画、イラストなど、テキストや素材を入れ込むだけで動画が完成します。

(2)社内のナレッジを一元管理。必要な情報にもスムーズにアクセス可能
Video BRAINに搭載されたポータル機能を使えば、社内のナレッジを一カ所に集約可能。
優れた検索機能により、必要な情報にアクセスするのもスムーズです。

(3)豊富な共有方法を搭載。視聴分析で社内の活用状況を可視化
作成した内容を共有する際には、URLリンクを発行できるほか、学習期限を設定してタスク化することも可能。目的に応じて最適な共有方法を選択できるので、社内に情報を伝達したい場面から、研修教材を配信したい場面でも役立ちます。


Video BRAINを活用すれば、情報発信だけでなく、eラーニングとして従業員にダイバーシティ研修を受講してもらうこともできます。情報を周知するとともに、従業員がダイバーシティに関する知識を身につけられると、人的資本経営の推進につながっていきます。

まとめ

ダイバーシティに関する情報は、開示しやすい項目といえます。しかし、単純に数値として情報開示すれば良いわけではありません。社外から魅力的に映るよう、積極的にダイバーシティに向けて取り組みを行っていることをアピールすることが大切です。

自社の現状を見直しながら、新しい施策や取り組みを実施し、社内周知させましょう。


 

この記事をシェアする