2025/12/09
霧島酒造株式会社
伝統を守り革新を続ける。老舗企業が辿り着いた、新たな教育体制
1916年の創業以来、こだわりの芋焼酎を作り続けてきた霧島酒造。その裏には、熟練の技術や現場の知恵といった“暗黙知”の積み重ねがあります。しかし、若手社員の増加とともに、現場での教育方法や情報共有の在り方に課題を感じるようになったと言います。
さらに、動画マニュアルを整備したものの、「見る習慣が定着しない」「どこに何があるのかがわからない」といった運用上の壁も。
そんな中、教育コンテンツの可視化・効率化を支えたのが、AIナレッジメントのOpen BRAINの導入でした。
Video BRAIN との連携で、霧島酒造の教育体制はどう変わったのでしょうか。導入の経緯から成果、今後の展望まで、株式会社霧島酒造の豊丸賢吾さんと児玉真奈さんに伺いました。
▼Video BRAIN 導入に関する記事はこちら
目次
AIで記事が自動生成。「新入社員の教育に使える」と確信
ーー2022年よりVideo BRAIN を導入いただき、マニュアルの動画を制作されています。その中で、新たにOpen BRAINを使い始めたきっかけは何だったのでしょうか?
豊丸:Video BRAIN を使う中で「制作した動画をどのように公開するか」というのは考えていくべきポイントの一つとしてありました。
制作したマニュアルの動画は、現場にあるiPadの端末から視聴できるほか、動画のQRコードを使用する各機械に貼っており、必要な情報を素早くチェックできるようになっています。
ただ、マニュアルとしてだけでなく、業務を覚えるための教材として活用したい場合、現場以外の場所でも視聴できる環境を作る必要があります。
その際、マニュアルには機密情報を多く含むため、外部ツールを使うのはセキュリティ面の懸念もありました。そのほか、運用する手間も一つの課題です。Video BRAIN で動画を作り、別のツールで共有する場合、動画ファイルをアップロードする必要があります。制作本数は一定以上あるので、積み重なると、作業時間もかかります。
そんな中で、Open BRAIN を紹介いただき「動画を読み込ませるだけで記事が自動生成できる」と聞いて、実際に試してみました。自分たちが伝えたいことが、そのまま記事として整理されていてAIの技術に驚かされました。
記事作成が簡単にでき、「これは社内の教育に活用できるのではないか」と感じました。
ーーそうして、実際の業務に使っていただくようになったのですね。現在、どのようなシーンでOpen BRAIN を活用していますか。
豊丸:まずは手始めに、新卒の教育に役立てています。
新入社員が配属される前に知っておいてほしい内容を、Video BRAINで動画にしています。その動画をOpen BRAINに取り込んで記事を自動生成し、動画と記事をセットで新入社員に閲覧してもらいます。さらに、コース学習とテスト機能で理解度を測ることができるので、教育の質が可視化されました。
児玉:動画内容は「作業着の着方」「手の洗い方」「清掃区域の移動ルール」など、現場で働く上での基本動作が中心です。また、製品の種類や資材の扱い方など、細かな内容も取り上げています。こうした知識は、現場での指導だけだと抜け漏れやバラつきが出やすいですが、動画と記事をセットにすることで、標準化と統一が図れます。
PDFで用意した資料でも、Open BRAINに読み込ませることができます。。とても手軽で、管理側の作業負担も大きく軽減されました。
豊丸:Open BRAIN を活用したことによる一番大きな変化は、「教えたつもり」「理解したつもり」が通用しなくなったことです。Open BRAIN では「誰が、いつ、何を見たか」「テストでどこにつまずいたか」などが全て可視化されるので、教育の成果がデータで把握できるようになりました。
例えば、テストの結果を見ると、アルコール度数や製品の重量などの項目で間違いが多かった。これは「当然知っているだろう」と考えていた部分が実は伝わっていなかった……という発見でもあります。
ーーVideo BRAIN で制作した動画を活用しながら、Open BRAIN で新人教育を行っているんですね。従来の人材教育は、どのようにして行っていたのでしょうか。
豊丸:実際の業務を通して行う、OJT制度が基本的な教育体制でした。
実践的なスキルを身につける上で、OJTは非常に重要である一方、つきっきりになって教える分、教育コストがかかり、無駄も出てきやすいのが課題と言えます。
また、業務と並行しながら教えることになるので、どうしても作業の合間に説明していくことになります。手が空いている人が教えるようなケースも多く、人によって指導の仕方も変わってきてしまいます。
そうなると、新入社員は、うまく業務内容を整理して理解できなかったり、人によって教え方が違えば混乱したりしてしまいます。
児玉:動画でマニュアルを作る以前、活用していた手順書は、書面に書いていない内容も多くあります。そのため、先輩社員が口頭で直接説明しなければなりません。そうなると、人によって説明する内容に不足があったり、内容が異なっていたりすると、大きな不都合を起こしてしまいます。
共通で確認できるコンテンツがあることは、新卒同士の情報差をなくす上でも重要になってきます。
「教えたつもり」「理解したつもり」が通用しない。可視化された教育体制

ーー実際に、新入社員の反応やテスト結果にはどのような傾向がありましたか?
豊丸:新入社員からは「必要な情報がまとまっていたので、わかりやすかった」という声が多くありました。特に、動画のマニュアルとテキストの記事をセットで学習できるため、理解するハードルが下がったようです。
また、テストを通じて、新入社員にとってどのような点が難しいのかも可視化されたのは大きなメリットでした。テスト結果によると、アルコール度数や製品の重量に関する問題でつまずく人が多く見られたんです。
これは、製品の違いなど、理屈を説明すればわかる内容なのですが、正答率が低かったのは「そこまで詳しく教えきれていなかったのだ」と気づかされました。
コース学習の機能では、間違えた部分の解説をきちんと行うことにより、新入社員が復習できるのはもちろんですが、教育を行う担当者としても、指導する上での発見があったことは思わぬメリットでした。
児玉:既存社員にとっては当たり前の知識でも、新入社員にとっては初めてのことです。作成した記事の内容は全て、「現場に入る前に知っておきたかった」と自分の経験をふまえて作成したものです。既存の教材でなく、実際に現場で働く我々が作ってカスタマイズしたものだからこそ、通常のカリキュラムより成果が出やすいのではないかと考えています。
ーー教育が“見える化”されたことで、社内にどのような変化が生まれましたか?
豊丸:一番の変化は「教えたつもり」「理解したつもり」が通用しなくなったことです。閲覧履歴やテストの結果がすべて可視化されるので、現状のステータスを客観的に確認できるようになりました。
教える側の自己満足や属人的な判断ではなく、誰がどこまで理解しているかをしっかり把握できるようになったのは非常に大きな進歩です。
いつでもチェックできることが、教育の習熟度を高めるポイントに
ーーOpen BRAIN を活用したことにより、最もメリットに感じた点は?
豊丸:やはり、長年の課題であった教育時間は格段に短縮されましたね。
新入社員が業務を理解するには、自分だけではなかなか完結できないと思います。最初に教えてもらったとしても、自分の知識として落とし込むまでには時間がかかります。聞き漏らしてしまうこともあったり、繰り返し説明してもらわないとわからなかったり。
そんな中、学習できる教材がOpen BRAIN にあると、自分で勉強したり、繰り返し見れたりするので、習熟度も向上するでしょう。

ーー最後に、今後の展開について教えてください。
豊丸:まずは部署内で活用の幅を広げ、最終的には全社的な展開を目指しています。現在は手順書や新人教育を中心に活用していますが、今後は「会社理解」「社内ルール」など、より広い範囲を動画と記事でカバーし、しっかりとテストで確認していける体制を整えていきたいです。
児玉:これまでは運用して軌道にのせることを目標としていましたが、今年は成果を出すことが大きな目標です。
まずは成果を出すために、誰が見てもわかるコンテンツを作ること。そして、得られた成果をきちんと算出した上で分析し、次の課題解決に役立てていきたいです。
ーーますます、社内の教育におけるあり方が変わってきそうですね。
豊丸:Video BRAIN とOpen BRAIN をかけ合わせて使用することにより、制作コストと教育コストがそれぞれ削減されたと感じます。
Video BRAIN では、簡単に動画を制作できるので、通常よりもクイックに動画編集ができます。そしてOpen BRAIN は、いつでも自主学習できる体制ができることで、各社員が教える負担がなくなります。
弊社は平均年齢も低く、若手社員が多く活躍しています。だからこそ、新しく入ったメンバーもスムーズに業務をキャッチアップできるよう、動画とポータルを使って教育環境をより充実させていきたいです。
終わりに
Open BRAINを活用した育成方法によって、これまで属人的で見えにくかった教育の標準化とともに可視化され、新入社員の成長が大きく向上しています。
伝統を守りながらも進化を恐れず、新しい技術を柔軟に取り入れる姿勢は、今後ますますの教育改革が進んでいくことが期待されます。