地域を活性化する方法の一つが、地域ブランディングですが、近年ではさまざまなメディアが地域を取り上げており、盛り上がりを見せています。
当記事では、地域ブランディングがおこなわれるようになった背景や、地域ブランディングを成功させるコツなどを解説していきます。
目次
地域ブランディングとは
地域ブランディングとは、価値観や文化、デザインなど、さまざまな角度から地域が持つアイデンティティを発信することです。地域をブランドとして知ってもらい、地域の認知度を向上させることを目的としており、「まちづくり」や「地域活性化プロジェクト」とも呼ばれています。
地域ブランディングの例として、「米沢牛」や「札幌ラーメン」など、地域の特産品を広報する活動があげられます。
なぜ地域ブランディングが必要になったのか
高度経済成長期を経て、日本は生活を都市中心におこなうといった都市型のライフスタイルが確立されました。
しかし、それが進みすぎた現代の日本は東京一極集中とも呼ばれる現状にあり、若者が東京へ行くことで地域の過疎化が進み、また地元に戻ってくる人が少ないため、少子高齢化が進み社会問題として叫ばれるようになってしまいました。
この状況を打破するために生まれたのが、「地域ブランディング」です。
地域経済を活性化し、人手不足や過疎化、空き家の増加などの問題を解決することで、低迷する現状を抜け出せるかもしれません。
実際に、財政難や過疎化などの問題を抱えていた海士町では、その地域特有の自然や特産品を活かした地域ブランディングにより、約400人のIターン者が海士町に定住し、平成26年度末のデータでは、定着率は50%となった成功事例があります。
参照:海士町は|ないものはない~離島からの挑戦~最後尾から最先端へ~
地域ブランディングのスタイル
地域ブランディングはさまざまな方法でおこないます。
例としてあげられるのは、次のような方法です。
メディアPR
テレビや新聞、WEBサイトなどのメディアを活用した広報活動です。
地域のことを広く知ってもらい、認知度を向上させます。
記者発表会
実際におこなうプロジェクトを、記者発表会を通じて認知度を向上させます。
地元だけでなく、メディア中心地の東京で記者発表会をすることで、全国へ情報発信することが可能です。
PRイベント
PRイベントをおこない、地域やプロジェクトの認知所を向上させます。
地域の魅力を引き出すイベントをおこなうと効果的でしょう。
生活者はもちろん、メディア訪問を促すことで、より広く認知度を向上できます。
プレスツアー
旅行雑誌の編集者や新聞記者などメディアを誘致したプレスツアーです。
地域のメディア露出を図ります。
海外からのインバウンド
海外のメディアを招き、地域の観光地や特産品、イベントなどの取材機会を提供します。
海外からの地域の認知度も向上させ、海外観光客の増加を図ります。
この他にもさまざまなプロモーションがありますが、特にプロモーションを実施しただけではなく、TVのやWebにおけるニュースで紹介されたなど、意図していない部分の露出が行われることにより、より多くのユーザーにリーチすることができます。
また、最近よく耳にする「ふるさと納税」も一種の地域ブランディングと呼ぶことができます。
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地域ブランディングを成功させる5つのポイント
地域ブランディングは、必ずしも成功するとは限りません。
地域ブランディングには成功するためのポイントがあります。そのポイントを紹介していきます。
地域に合った企画を立ち上げる
企画は慎重におこないましょう。
たとえば、「〇〇の地域がアニメとコラボして成功したようだから、うちの地域でもやってみよう」と安易に決めてしまうと、失敗してしまう可能性があります。
成功事例を参考にするのは良いのですが、その方法が地域のブランディングとして適切な方法なのかを精査しなければいけません。
作り手の理論を重視した計画を「プロダクト・アウト」、顧客の声を重視した計画を「マーケット・イン」といいます。
どちらにもそれぞれメリット・デメリットがあるので、どちらが優れているのかは一概には述べられません。
しかし、地域ブランディングの場合、地域の住民との結びつきも重要視されるため、マーケット・インの発想が必要となってきます。地域住民の声に耳を傾け、地域に合ったブランディングをおこないましょう。
アイデンティティを活かす
他の地域との差別化を図ることが大切です。他の地域にはない、地域の特徴を明確にしましょう。その地域が推しだせるポイントを熟考することが大切です。
例えば、静岡県熱海市は古くから温泉街として知られてきましたが、近年は閉館に追い込まれる旅館も現れ、地域が衰退してきました。そこで立ち上げられたのが、「長期滞在型世界の保養地」というコンセプトをもとにした地域ブランディングです。
熱海の魅力を知ってもらうための、体験型プログラム「熱海温泉玉手獏熱海温泉玉手箱」というイベントを実施したり、遊休不動産をリノベーションしたコワーキングスペースやシェアオフィスを立ち上げたりと、市街地活性化を図りました。結果として、若者が集まる都市へと生まれ変わりました。
ほかの地域にはないことを見つけ出すことが、成功のポイントです。
チームで話し合い、ホワイトボードなどに書き出すことによって、アイデンティティが見えてきます。
意見の交換は時間をかけて丁寧におこなうことが大切です。
参照:熱海市公式ウェブサイト
参照:社会資本総合整備計画(第3回変更)
フィロソフィーを明確にする
フィロソフィーとは、ものの見方を表す言葉です。
地域ブランディングにおいてのフィロソフィーは、「活動によって何を誰に提供するか」を決めることを指します。そのプロジェクトのコンセプトは何なのかをはっきりとさせましょう。
最初に例として挙げた隠岐諸島の海士町は、「ないものはない」というフィロソフィー兼スローガンを掲げた地域ブランディングをおこないました。
都会の暮らしに疲れた人たち、穏やかな空気を味わいたい人たちをターゲットに、海士町らしい優しい空気を感じて欲しいというコンセプトがはっきりとしています。
実際に、海士町は「島旅」という観光事業をおこなったり、名産品のプロデュースをおこなったりと、町が持つ「らしさ」を最大限に活かしたブランディングをおこない、成功しました。
フィソロフィーを明確にすることで、ブランディングが適切な方向に向いていきます。また、ターゲットを絞りやすくなり、ターゲットに響きやすいブランドカラーやデザインなどを作れるようになります。
体験型を織り込む
ただ製品を並べているだけでは消費者の購買意欲を煽るのが難しいので、ブランディングがうまくいかない可能性があります。
消費者に価値が届きやすくなるように、実際に食べたり飲んだりといった体験をしてもらうと良いでしょう。
体験をしてもらうことで、消費者は製品の魅力をより強く感じやすくなります。
体験を提供できる場を作るようにしましょう。
3Rを意識する
地域ブランディングには、3Rという概念があります。3Rとは、「つながり(Relevance)」「関係構築(Relationship)」「評判形成(Reputation)」の3つを指す言葉です。
地域ブランディングをおこなう際には、「行政」「住民・メディア」「消費者・観光客・企業」の3者の関係を把握することが大切です。
この3者が適切な3Rの関係を構築できれば、地域ブランディングが成功しやすくなります。
しかし、地域ブランディングは、「行政」の力だけではなかなか成功できません。
まずは「行政」と「住民」がブランドイメージを共有する必要があります。
そうすることで、「メディア」はブランドの認知向上を効果的におこなえ、「住民」は情報を拡散できるようになります。それらの情報を受けた「消費者・観光客・企業」は「行政」を認知し、ブランドの価値を共有できます。この関係性が、地域ブランディングにおける3Rです。
行政が一方的に発信するのではなく、イメージを共有した住民やメディアが適切に情報を発信し、そして消費者がそれらに共感する、この関係性を作り上げていくと良いです。
まとめ
地域を活性化させるためには、地域ブランディングをおこなっていくことが大切です。
地域の強みを適切に把握し、情報を発信していきましょう。
また、地域ブランディングにおいて重要なのが、3Rを意識することです。
地域ブランディングは行政が一方的に情報を発信するだけではうまくいきません。
住民とのイメージの共有、消費者からの共感など、3Rを意識することで、地域ブランディングが成功しやすくなるのです。
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