以前は美容室といえば女性が多いイメージがあったかと思います。
しかし、現在では男性が美容室で髪を切るのも珍しくありません。
特に最近では男性専用の美容室もあるなど、美容室の形態は日々、進化を続けています。
そうした中でお客様に選ばれる美容室になるためには何が必要なのでしょうか。
今回は、美容室が生き残っていくために欠かせないブランディングについてお伝えします。
目次
美容室がブランディングを行うことの重要性
まずは、美容室においてブランディングを行うことの重要性について解説します。
新規店舗が増える一方、倒産する美容院も急増
厚生労働省が2019年10月31日発表した「平成30年度衛生行政報告例の概況」によると、2018年度の美容室の数は251,140店で、平成3年以降で初めて25万店を超えました。
これだけを見ると25万店という数がどの程度のものなのかイメージがわかないかもしれません。
そこで、コンビニエンスストアの店舗数と比べてみましょう。
日本フランチャイズチェーン協会のデータによると、2020年5月現在での店舗数は55,782店舗です。
つまり、美容室はコンビニエンスストアの約4.5倍もの店舗数があるのです。
しかし、店舗数が年々増加している半面、倒産している店舗も増加を続けています。
東京商工リサーチの調査によると、2019年1月~10月の倒産数は92件。
これまでの最多である2018年は年間で95件であったため、これを上回るのはほぼ確実となっています。
さらに休廃業・解散数も2018年には242件と2年振りに200件を超え、新規店舗の増加に伴い、激しい生き残り競争が行われていることがわかります。
参照:平成30年度衛生行政報告例の概況(生活衛生関係)|厚生労働省
参照:コンビニエンスストア 統計データ|一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会
参照:2019年(1-10月)「美容室」の倒産状況 : 東京商工リサーチ
生き残りに欠かせない美容室のブランディング
年々増加する新店舗と急増する倒産、休廃業店舗。
この中で生き残っていくためには、低価格を売りにすることが思い浮かぶかもしれません。
しかし、この戦略でお客様を集められるのは一瞬だけです。ほかにもっと安い美容室ができればすぐにそちらに移ってしまうでしょう。これを避けるために必要なのがブランディングです。
ブランディングとは、美容師の技術やサービス、店舗内の雰囲気など店舗のさまざまな価値をお客様に認識してもらい、信頼や好意といったイメージを持ってもらうことをいいます。あの店舗で髪を切ってもらいたい、あの店舗に頼めば安心だといったイメージをお客様のなかにつくり上げられれば、多くのリピーターを獲得できるのです。
そういった意味で、美容室として生き残っていくためには、自店舗をブランディングによって、価格にかかわらずまたあの美容室で髪を切りたいと思ってもらうことが重要なのです。
美容室のブランディングのポイント
次々と新たな美容室が増加していく中で、同じように倒産している店舗も多く、ブランディングによる戦略が重要であることがわかりました。
では、次にブランディングをおこなう上で大切なポイントとはどういったことなのでしょうか。
リピーター獲得にもっとも必要なのは接客力の向上
一般的に新規のお客様を獲得するには、既存のお客様を獲得するのに比べて5倍のコストがかかるといわれています。
つまり、コストを抑えつつ売上を上げるのに必要なのは、既存のお客様にリピーターになってもらうことです。
この既存顧客のリピーター化を実現させる施策こそが自店舗のブランディングですが、もっとも重要なポイントは具体的にいうと「接客力の向上」です。
2020年4月、美容室の口コミサイト「ヘアログ」の運営会社が行った美容室に関するアンケート調査で、同じ美容室に通う理由を聞いたところ、もっとも多いのは「接客が良かったから」でした。
やはり、どんなに腕が良くても接客に対して不満をもたれてしまうと、もう一回利用したいとはなりません。
また、お客様が美容室に一番求めているものという質問では、「接客」よりも「技術」が多くなっています。
ただし、ここでいう技術は、単純に技術力が高いのはもちろん、お客様の髪質を理解し、もっとも似合うヘアスタイルにしてくれることも求められます。
これは、技術力に加え、お客様一人ひとりを大切にもてなす心、つまりは高い接客力が必要となってくるのです。
参照:同じ美容室に通う理由No.1は”接客”に。あなたに行きつけの美容室はありますか?のアンケート調査。 (2020年4月20日) – エキサイトニュース
美容室がブランディングを行うことのメリット
美容室がブランディングを行うことで得られるメリットはいくつもありますが、そのなかでも主なものとして次のようなものが挙げられます。
価格競争の必要がなくなる
仮にほかにもっと低価格の美容室ができたとしても、ブランディングにより、自店舗を信頼し、愛着を持ったお客様は自店舗を選択し続けてくれます。
そのため、価格競争に巻き込まれずにより高いサービスの提供を行っていけます。
新規顧客の獲得
自店舗を信頼してくれるお客様は、家族や友人にも自店舗を紹介してくれるようになります。
これにより、新規顧客を大きなコストをかけずに獲得できるようになります。
従業員満足度の向上
リピーターが増加し、利益が上がればその分だけ美容師の報酬に反映させられるようになります。
そうなれば、従業員満足度が向上し、さらなる技術やサービスの向上が実現します。
美容室がブランディングを行う際の注意点
ブランディングのメリットを見たところで、次に実際にブランディングを実践する際の注意点について説明します。
短期間での結果を求めない
お客様の信頼はそう簡単に獲得できるものではありません。
一度だけ良い接客ができても、次に雑な対応をしてしまえば前回のプラスはゼロではなくマイナスになってしまいます。美容師は技術はもちろんのこと、接客も大切です。短期間で結果を求めるのではなく、長期的・継続的に続けていくことが大事です。
美容師に対するケアを忘れない
良い接客を継続するためにもっとも必要なのは美容師に対するケアです。
ついお客様のほうばかりに気がいってしまいがちですが、従業員である美容師のちょっとした変化を見逃さず、何かあればすぐにサポートを行うことで、良い接客にもつながるのです。
まとめ
競合との差別化においてもっともやってはいけないのが、低価格戦略です。この戦略で集められるのは価格だけを気にするお客様であり、リピーター化させるには常にその価格を維持しなければなりません。
しかし、常に低価格を維持するのは多くの美容室では非常に困難です。ブランディングは、時間がかかるうえになかなか効果が見えにくい戦略ではありますが、資本の大小にかかわらず、実行が可能です。
そのため、長期的な視点を持ち、一人ひとりに丁寧な接客を継続していけば、自ずと結果が出てきます。
集客に悩んでいる美容室はまず、日々の接客を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
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