LTV(顧客生涯価値)とは?成功事例と最大化するためのコツをご紹介

経営戦略において、新規顧客獲得と並んで重要なのが既存顧客をつなぎとめることです。
これといった宣伝をしなくとも定期的に商品を購入してくれるリピーターは、企業にとってありがたい「お得意さま」。さらに既存顧客がどのくらいの利益をもたらすのかを把握すれば、より正確な経営分析が可能になります。

ここでは、リピーターがもたらすLTVについて解説します。

LTVとは

LTVとはLife Time Value(ライフ・タイム・バリュー)の略で、日本語で表現すれば「顧客生涯価値」です。
顧客が一生のうちに生み出す価値、つまり取引や契約を継続している間に顧客がもたらす利益のことを指します。

調味料や日用品、サプリメントなど、継続的に購入している商品は誰にでもあるもの。
また、今や欠かせないものとなったスマートフォンの電話回線やインターネット回線も、LTVを重要視されるサービスです。

LTVの算出方法

LTVを算出するときは、時間軸を考慮に入れる必要があります。LTVを算出するためのもっとも一般的な式はこちらです。

LTV=平均購買単価×平均購買頻度×平均購買年数

たとえば単価が1,000円のものを年に6回購入し、それを3年間続けたとしたら、
1,000(円)×6(回)×3(年)=18,000(LTV)となります。

このほか、次のような式で算出することもあります。

  • LTV=平均購買単価×平均購買回数
  • LTV=(平均購買単価×平均購買頻度×平均購買年数)-(新規顧客獲得費+顧客維持費)
  • LTV=(売上高-原価)÷ 購買者数

ビジネスの内容や取り扱っている商品、さらにLTVを算出する目的は企業によってさまざまです。
重要なのは、目的に応じた数式を用いることです。

LTVが重要視される理由

LTVが重要視される理由

LTVがなぜ重要視されるのか、その理由を具体的に解説します。

新規顧客獲得よりコストがかからない

この理由の根拠となるのが、新規顧客を獲得するためのコストは既存顧客を維持するコストの5倍だという「1:5の法則」です。
より多くの利益を得たいときには、どうしても新規開拓に目が行きがちなもの。
しかし実際は、継続して利用してもらうことのほうが少ないコストで利益を上げられるのです。

市場が飽和状態にある

市場が飽和状態にあると、顧客の新規獲得は難しくなります。

具体的な例として、スマートフォンの回線を提供する通信事業者について考えてみましょう。
ほとんどの人が一人一台スマートフォンを持っている状況では、新規顧客となり得る「スマートフォンを持っておらず、購入したいと考えている人」は圧倒的少数。
このような状態で新規顧客を獲得しようとすれば、他社から乗り換えてもらうしかありません。
こうなると、苦労して他社の顧客を奪うよりも現在利用してくれている顧客を大切にし、できるだけ長く使ってもらうことがより重要になってきます。

新規獲得は無限にできるものではありません。
国内人口が減少に転じていることも鑑みれば、顧客をつなぎ止めることが重要視されるのは当然だともいえます。

広告宣伝費など、新規獲得にかける予算を見定められる

1,000円の商品を売るのに2,000円の広告費をかければ赤字です。
しかしその商品が、数年にわたって継続して購入されるものであれば、その限りではありません。

もしも1カ月に1回、3年にわたって購入されれば、LTVは3万6,000円となります。
2,000円という広告費は、ここで算出したLTVの約5.5%であり、商品単価より高くとも許容範囲内であることがわかります。
定期購入をすすめる食品や化粧品が頻繁に広告を打ち、初回のみ割引価格で購入できる制度を導入しているのは、LTVを把握し経営に活用しているからにほかなりません。

LTVを最大化するメリット

LTVが重要視される理由から分かるように、「売ったら終わり」の商売が通用する時代はすでに終わりました。
次に、LTVを向上させることで生まれるメリットをご紹介します。

安定的に利益を獲得できる

顧客に継続して商品を購入してもらえば、安定した利益が見込めるようになります。
新規顧客獲得に資金を回せるようになりますし、経営体力がつけば新規事業参入へのハードルも下がり、会社を成長させることも可能です。

顧客との信頼関係が生まれる

商品を継続して購入してもらうためには、アフターフォローが重要です。
顧客が製品に対して持っている不満や要望に耳を傾け、改善していけば、信頼感を持ってもらえます。

LTVの最大化には各指標の水準を上げることが必要

LTVは「平均購買単価」「平均購買頻度」「平均購買年数」の3項目から導き出されるため、このうちのいずれか、もしくはすべての水準を引き上げることが最大化につながります。

購買単価

購買単価を上げるには、顧客の「足りない」を埋める必要があります。
そのためには、より高単価な商品をラインナップに加える、新製品を投入しバリエーションを増やす、顧客に合ったプランを提供するといった取り組みが必要になってくるでしょう。

購買頻度

購買頻度を上げるには、商品が売れた後のフォローがカギです。
たとえば食材や調味料は使う量が増えれば必然的に購買頻度が上がるため、SNSでおすすめの食べ方やレシピを紹介するといった方法が考えられます。
売り手側から積極的にコンタクトすることで、顧客には商品や企業に対する愛着が湧き、その結果離脱されにくくなるというメリットも生まれます。

購買年数

購買年数を延ばすためには、離脱を防止することが重要です。
すでに離脱した顧客のデータから離脱の兆候を掴み、離脱しそうな顧客を発見して個別にアプローチしましょう。
ニーズが高いと思われる商品を案内するなどの工夫が必要です。

LTVの成功事例

キリンビールが提供する「KIRIN Home Tap」は、毎月2回ビールが届く月額制サービスです。
サービス開始以来、数カ月の予約待ちが発生している人気ぶりで、安定した収益の獲得と顧客のファン化に成功しています。

人気の理由を分析していくと、まず小売店を通さないことで「新鮮でおいしいビールを飲みたい」というニーズに対応していることが分かります。
さらに定期便で届くため、買い忘れを心配する必要がありません。
「たまには違った味を楽しみたい」というニーズは、サービス利用者でしかでしか味わえない期間限定ビールが満たしています。
限定商品が味わえるという特別感も、商品をより魅力的に見せている要素です。

企業だけではなくユーザーの満足度も高く、LTVを最大化させている好例だといえるでしょう。

まとめ

LTVは非常に重要なものですが、あくまでも利益を上げるための指標のひとつであることを忘れてはいけません。
最終的な目標はLTVの最大化ではなく、利益を得ることのはずです。
LTVを正確に計測し、経営の指針とすべく活用していきましょう。


 

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