ブランディングとは?役割や種類についてわかりやすく解説

ブランディング戦略などの言葉を耳にする機会が増えたものの、今ひとつ定義がわからないという人もいるのではないでしょうか。本記事では、企業がブランディング活動に取り組むべき理由やメリット、ブランド構築までの具体的な流れについて説明します。

ブランディングとは?

ブランディングとは、「自社独自の提供価値」を確立する活動のことです。
具体的には、その企業ならではの特徴や強みを打ち出し、ポジティブなイメージとして顧客や一般消費者に対し認知を拡大させることです。

ブランディングというと高級感や特別感の演出のように捉えがちですが、必ずしも「高級品」のための概念ではありません。たとえば、「アクティブでスポーティ」「高い技術力を持つ」といったイメージを持ってもらうこともブランディングの一つです。

企業がブランディングに取り組む理由

ブランディングに取り組むことで具体的にどのようなメリットが期待できるのか、詳しく説明します。

ブランディングを行うメリット

効率的な販売活動ができる

ブランディングを行うことで、支出を抑えた効率的な販売活動が可能になります。施策の実行に際しては、細かな市場調査により自社のターゲットを明確化する必要があります。
例えば、扱う商材が単価5-10万円程度のスポーツサイクルであった場合、まず「どんな層に自転車需要があるか」「現在のトレンドは何か」などさまざまな要素を検証します。
その上で、例えば「20-30代の都心部在住会社員」というターゲットを設定し、その層に向けたPR戦略を集中的に行います。

そうすると、「通勤用の手頃でスタイリッシュな自転車」というブランドを確立でき、「通勤」というキーワードで他のメーカーよりも存在感を出せるようになります。
このようにブランディングの過程でターゲットの選択と集中を行えば、結果的に効率的なPR活動を実施できるようになるのです。

収益アップが狙える

ブランディングに注力することで、価格競争に巻き込まれることなく収益アップが狙えるメリットもあります。特に競争率が高く、機能面で差別化を図りにくい業界やプロダクトの場合、自ずと価格競争に巻き込まれていくことがあります。

ここでブランド力をいかに強化できているかが、消費者を獲得できるかどうかの差がつきます。自社プロダクトへの好意的なイメージが市場に浸透していれば、価格競争に巻き込まれず消費者の購入意思決定を促すことができます。

加えて、ブランディング活動は「顧客ロイヤルティ」と呼ばれる顧客の心に商品への愛着や企業への信頼を生みます。自社のファンになってくれた顧客は、繰り返しサービスや製品を利用してくれる可能性が高く、長期的に安定した企業収益を生み出します。

ブランドを構成する要素とは

ブランドは「ブランドアイディティティ」「抽象的ブランドメディア」「可視的ブランドメディア」の3つの要素で構成されます。

ブランドアイデンティティ

ブランドを象徴する価値のことであり、ブランドを構成するピラミッドの頂点に位置づけられます。

抽象的ブランドメディア

ブランドアイデンティティをやや具体化したもので、スタイル、コードと呼ばれることがあります。スタイルはデザインコンセプトなどのビジュアル、コードはキャッチコピーやスローガンのような言葉に置きかえたものです。

可視的ブランドメディア

コードやスタイルなどをテレビCMや雑誌、新聞広告用のコンテンツとして、一般的にわかりやすい形に可視化したものです。

ブランド構築の流れ

ブランド構築にはさまざまな手法が存在しますが、主に
市場調査→ペルソナ設定→独自性の発見→魅力の具体化→KPI/KGI設定→実行
といったサイクルで行われます。
ここからは、ブランド構築の流れを順序ごとに解説します。

市場調査・分析

ブランド構築のための第一歩となる市場調査・分析では、マクロ的視点の「PEST分析」とミクロ的視点の「3C分析」を用います。
PEST分析とは、「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の頭文字を取ったもので、市場をマクロ的な視点から推し量り、チャンスやリスクの発見を行う手法です。最近の話題を例にすると、新型コロナウイルス流行にまつわる諸問題について、社会・経済・政治・技術それぞれの切り口から考察し、市場を分析していくことが該当します。

3C分析とは、業界を取り巻く環境を「Customer(顧客/市場)」「Company(自社)」「Competitor(競合)」の3点から見るマーケティング分析のフレームワークです。
市場規模や自社・他社の売上情報などの具体的で定量化された情報から市場の流れを推し量ります。
まず、顕在している外部環境を正しく理解するためにPEST分析を行います。続いて、3C分析によって顧客の潜在的なニーズや競合と比較した自社の強みを把握し、事業計画に反映します。

ペルソナの設定

次は、事業計画に賛同してくれそうなユーザー、つまりターゲットの選定です。この際、ターゲットの属性を決めるだけでなく、具体化した人物像「ペルソナ」にまで落としこむことが大切です。実在する人物であるかのように、年齢や性別、職業、趣味、価値観など、できるだけ詳細に設定しましょう。

ブランドの価値や独自性の精査

3C分析によって把握できた自社の強みと顧客の潜在的なニーズ、競合環境を踏まえ、市場における「ブランドの独自価値」を発見することが大事です。
設定したペルソナは他社のターゲット層である可能性も否定できません。ペルソナに競合と比較されても、自社が優位に立てるポジションを精査することが肝心です。

ブランドの持つ魅力を具体化する

3C分析によって構築した事業計画は、「4P」の視点で、緻密な計画として具体化していきます。
4Pとは、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、告知(Promotion)です。
各要素を考慮した上で、ブランドがどのようなポジショニングを取るのか、どういった方針で展開していくのか、といった事柄を、ブランドの持つ魅力を具体化した上で決定します。
その際、企業視点と顧客視点の両方から商品コンセプトを整理し、独自性を強化するための分析を行ったり、販売戦略を練ったりします。

大ブームを巻き起こしたタピオカドリンクなどは、価格帯を10代でも購入できる数百円程度に設定した上で、販路を繁華街の路面店に据え、本格的な茶葉や素材を活用していることやトッピングのバリエーションが豊富なことなどをSNSや該当広告でアピールしました。

これは、扱う商材が「手元に持って出かけられる」飲料タイプであること、ブランドロゴを繁華街で持ち歩くことがステータスとなることなど、製品の持ち味を活かした施策であると推察できます。

KPI・KGIの設定

4Pの計画は、KPIとKGIを設定して、PDCAを回しながら実現していきます。KPIは(Key Performance Indicator)の略で、「重要業績評価指標」のことです。KGIは(Key Goal Indicator)の略で、「重要目標達成指標」のことです。つまり、事業全体の目標管理のためにKGIを設定し、KPIによって進捗管理していく必要があります。

ブランディング施策の実行においては、その結果を定量的に推し量ることが難しい部分があります。たとえば「イメージの向上」「ブランドの浸透」などです。
これを具体化するために、「SNS上でのエンゲージメント数」や「コンテンツPV数」「イベント来場者数」などの数値化できる目標の達成を目指して施策を行うことが重要になります。

KPI/KGIとすべき指標が曖昧なままでは、ブランディングの成否を測ることが出来ません。ブランディング施策の成功には、継続的な効果測定と改善が欠かせませんが、成否を判断できなければこのサイクルは破綻してしまうからです。

ブランディングの実践

事業計画に基づき、ブランディングを実践していきます。
従来では、ブランディングを行う場というとテレビCMや新聞広告といったマスメディアが中心でした。マスメディアは一度に大勢のターゲットに届けられる強みがあるものの、莫大なコストがかかるのが難点でした。

しかし現在は、SNSの普及によって、企業がコストをかけずに顧客と接点を持つことができます。たとえば公式SNSで顧客からの質問に答えたり、直接お礼を述べたりすることはブランディングにたいへん効果的です。また、ファンイベントなどを通じたリアルなコミュニケーションもブランディングに適しています。継続的に顧客に感動を与える体験を提供することによって、企業と顧客の間に絆が醸成されていきます。

企業がブランディングを進める際のポイントや注意点

企業がブランディングを進める際のポイントは、企業規模に合った活動を取捨選択することです。たとえば、数万人からの認知で成り立つ事業規模であれば、マスメディアに広告を掲載するのは得策ではありません。低コストで済むSNSでの施策を中心にするほうがいいでしょう。

企業の一方的な思いだけを押し付けるといったやり方では顧客の心には届きません。企業の特徴や強みを、顧客への提供価値へと昇華させることが大切です。
その際、そもそも社員全員が納得できるブランディング活動が行えているかという点を見直すことも重要です。社員が共感できるものでなければ、一体感も生まれず、顧客に発信していこうとも思わないでしょう。ブランディングは社外にだけ目を向けるのではなく、社内にも目を向ける必要があります。

まとめ

ブランディングは手間がかかりますがすぐに効果が出るものではなく、さらに数字では評価しづらい価値です。しかし、ブランディングなくして競合他社との差別化を図ることは難しく、市場での厳しい競争において優位に立つこともできません。

ブランディング活動は、どのような規模の会社でも行えるものです。活動の過程で、自社のターゲットや他社にはない価値を見出すことも可能です。またSNSの普及によって認知度向上の施策も低コストで実行可能になりました。「提供する製品・サービスの質に自信があるのに売れない」という方は特に、取り組みを検討してはいかがでしょうか。


 

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