【徹底解説】ブランディング活動のひとつ「ストーリーブランディング」とは?

すばらしい物語には、人の心を動かす力があります。本や映画で得た感動はいつまでも心に残り続けますし、評判が広がればたくさんのファンを呼び込むことにもつながります。物語が持つ力をマーケティングに生かす手法が、多くの業界から注目を集めている「ストーリーブランディング」です。ここでは、ストーリーブランディングの効果や成功させるためのコツについて解説します。

ストーリーブランディングとは

ストーリーブランディングとは、製品やサービスが持つストーリー、つまり物語性を活用するマーケティング手法です。開発にまつわるエピソードや、発売までの道のりを積極的に見せていくことでユーザーの共感を呼び、ユーザー自身をストーリーに引き込んで感情に訴えかけます。

ストーリーとは

まず製品の持つストーリーとはどういったものなのか、具体的に説明していきます。例として、寝具売場に陳列するマットレスのコピーについて考えてみましょう。

例1 腰痛になりにくく、快適に朝を迎えられるマットレスです。
例2 腰痛に悩む人のために、人間工学に基づいて開発されたマットレスです。
例3 このマットレスを作ったメーカーの社長は、自身の母親が「朝起きると腰が痛い」と悩む姿を見て、腰が痛くなりにくいマットレスの開発を決意しました。まずは人間工学の専門家をアドバイザーとして迎え入れ、開発環境を一新。これまでの製品の構造を根本から見直し、納得いくものができるまで何度も試作を繰り返しました。3年半の月日を費やしてようやく完成したのがこのマットレスです。

例1では、単純に製品の効果をうたっています。
例2では、どのようなユーザーに向けて開発したのかを記していますが、ありきたりな文言となっています。
例3では、「製品がどういった経緯で開発されたのか」というストーリーを表現しています。例3のコピーを見た人は、「親孝行な社長さんだ」「大切な家族のために時間をかけて開発したのだから、いい製品に違いない」と感じるのではないでしょうか。

ストーリーが生み出す効果

人間は、感情が動かされたときのことを強く記憶します。そのため、ストーリーの公開は認知度アップに絶大な効力を発揮するといえるでしょう。また、ストーリーに共感することで、製品への親近感や信頼性を高めるといった効果も期待できます。

さらに、実際に製品やサービスを使用して満足いく結果を得られれば、「誰かと感動を共有したい」「人にもすすめたい」という思いが沸き起こり、口コミでさらなるユーザーの獲得につながる可能性もあるのです。

ストーリーブランディングが注目される理由

世の中には、さまざまなマーケティング手法が存在しますが、その中でなぜストーリーブランディングがこれほどまでに注目されているのでしょうか。その理由について解説します。

誰もがたくさんの製品や情報に触れられるようになった

以前は、ものを買いたいと思ったときには直接お店へ出向く必要がありました。しかし今は、インターネット上でありとあらゆるものを買うことができます。似たような製品があふれる時代に、差別化は必須。極端にいえばユーザーにとってオンリーワンになる必要があります。

性能のよさや価格の安さを強みとした製品の場合、より高性能なもの、より安価なものが出てきたときに市場競争に破れてしまうでしょう。しかし、「好き」や「共感」で選ばれている製品は、価格競争から抜け出すことができます。感情で引きつけるストーリーブランディングは、このような時代だからこそ効果を発揮するといえます。

どんな製品・サービスにも取り入れやすい

消費者に提供されるものには、どんなものにもストーリーが存在します。開発のきっかけ、開発途中の苦労や挫折、転機など、マーケットに出てくるまでの道のりがないものは存在しません。そのためすべての製品やサービスですぐにでも取り入れることができます。

最終的にユーザーにもストーリーを提供できる

物語性に共感し製品やサービスを購入したユーザーは、ストーリーの参加者となり、もう一人の主役となります。今度は製品が脇役となって、ユーザーに安心や幸福、満足感をもたらし、提供した製品が人生というストーリーになくてはならないものとなるのです。

成功のカギは「ストーリーブランディングフレームワーク」にあり

ストーリーブランディングの主軸は「物語」ですので、「おもしろい」「すごい」など、ポジティブな感動を呼ぶことが重要です。せっかくの物語を退屈でつまらないものにしないために、まずはフレームワークを準備しましょう。フレームワークとは枠組みのことであり、ストーリーを紡ぐ際にもっとも大切なものです。では、ストーリーブランディングフレームワークの効果的な組み立て方の流れを説明します。

ユーザーを主人公にする

売り手の物語ばかりを強調すると、ときに押しつけがましいものになってしまいます。ユーザーの興味・関心や悩みに焦点を当て、ユーザーを主人公にしたストーリーにすることが、ストーリーブランディングの大前提です。先ほど例にあげたマットレスならば、主人公は「腰痛を抱えたユーザー」となります。

問題を特定し、導き手がプランを提示する

この場合の問題とは、ひと言でいえばユーザーの悩みです。腰痛に悩むユーザーに向けて、寝具のマットレスを換えれば快適になるというプランを提示します。

行動を促し失敗を回避させる

ユーザーを悩みから解放させるには、実際にマットレスを使ってもらわなくてはなりません。「使用する」という行動を促すためには、試用の機会を設ける、購入後も返品可能な期間を設けるなどの工夫が必要となってくるでしょう。「使ってみたけれど合わなかった」という失敗は避けなくてはなりません。

エンディングに成功を用意する

ユーザーは最終的に、マットレスを購入し使用することで腰痛という悩みから解放されます。このためには、製品の品質が確かなものであることが必須です。

まとめ

ストーリーブランディングの最終的な目標は、ファンを作り出すことだといえます。ユーザーから好きになってもらい、ユーザーの人生の一部となれば成功だといえるでしょう。自社の製品やサービスにどんな物語があるのか、それを必要としている主人公は誰なのかを見きわめ、まずはフレームワークづくりから取り組んでみてください。


 

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