不動産投資における「LTV」とは?重要性や計算法について紹介

企業のマーケティング経験者であれば、LTVというと「Life Time Value」、いわゆる顧客が生涯のうちに自社に対しどれだけの価値をもたらすのかを思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、不動産投資におけるLTVはマーケティングで用いられるLTVとは異なります。

では、不動産投資でのLTVとは一体どういったものを表す言葉なのでしょうか。
今回は不動産におけるLTVの意味や計算方法、そして不動産投資でのLTVの重要性についてお伝えします。

不動産投資におけるLTVとは

不動産投資におけるLTVとは、「Lone to Value」の略で、日本語では「総資産有利子負債比率」と訳されます。
具体的には「不動産に投資している金額のうち、借入金の割合はどのくらいなのか」を示すものです。
仮に自己資金が0円で不動産に投資した場合、すべてが借入金になるため、LTVは100%になります。
逆に全額自己資金で不動産に投資した場合は、LTVは0%です。

当然ながらLTVは低いほうが財務の健全性が高いということで銀行からの借り入れもしやすくなります。
そして、LTVが高いほど、財務の健全性が低いと判断され、銀行からの借り入れは難しくなります。

不動産投資をするうえで、銀行からの借り入れは欠かせないものであるため、LTVは常に意識しなければならない重要な指標の一つといえます。

不動産投資のLTV算出方法は二種類

実際に不動産投資におけるLTVを算出する方法を説明していきます。

前項で説明したように、基本的には有利子負債を総資産で割り、それに100を掛ければLTVがわかります。
しかし、この総資産にはいくつかの評価方法があり、それによって計算式も大きく二種類に分けられます。

簿価評価

簿価評価による総資産は、会計帳簿に記録されている評価額、もしくは購入時点での価格です。
そのため、購入後に価値変動があってもその変動分は考えずに評価を行います。
計算式は次のとおりです。

有利子負債÷帳簿価格×100

仮に帳簿価格が2,000万円で有利子負債が500万円の場合、下記のようになります。

500万円÷2,000万円×100=25%

この場合のLTVは25%です。

時価評価

時価評価による総資産は、LTVを算出する時点での市場価格、もしくは評価額です。
そのため、簿価評価に比べ、LTV算出時点での資産価値を正しく判断できます。
計算式は次のとおりです。

有利子負債÷(帳簿価格+含み損益)×100

仮に帳簿価格が2,000万円で有利子負債が500万円、含み損益+1,000万円の場合、下記のようになります。

500万円÷(2,000万円+1,000万円)×100=16.7%

この場合のLTVは16.7%です。

このように、同じ帳簿価格であっても総資産をどちらの評価方法で計算するかによってLTVは大きく変わります。

この結果だけを見ると、時価評価で算出したほうがLTVは低く財務健全性が高いと判断できますが、注意すべきは「不動産価格が常に変動する」という点です。
LTV算出時点では1,000万円の含み益が出ていますが、必ずこの価格を維持できるわけではありません。

逆にLTV算出時点で含み損が出ている場合は、簿価評価で算出したほうがLTVは低くなります。
このようにどちらの評価方法が正しいというわけではありません。
そのため、含み損益は常にチェックしておくことをおすすめします。

J-REITのLTV分布を見てみると平均が40%〜45%となっています。不動産の種類や銀行にもよりますが、60%を超えると財務健全性が低いとして、借り入れが難しくなるケースもあります。

参照:LTVの分布|J-REIT.jp

LTVを指標とする金融商品は?

LTVを指標とする金融商品は?

次に、不動産投資において、優劣の見極めを行う基準としてLTVが用いられることの多い代表的な金融商品を紹介します。

不動産投資信託(J-REIT)

不動産投資信託とは、複数の投資家から資金を集め、オフィスビルや商業施設、マンションなどさまざまな不動産を購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配するものです。

この不動産投資信託の運用において、銀行から借り入れる際の指標の一つとなるのがLTVです。
前述したように平均が40%〜45%となっており、新たに資金を借り入れて投資しようとしても、LTVが60%を超えてしまうようだと物件取得は難しくなります。
逆にLTVが40%であれば、また新たな借り入れによって物件取得が可能になります。

参照:LTVの分布|J-REIT.jp

クラウドファンディングによる不動産投資

インターネット上のクラウドファンディングを使って資金を集め不動産投資を行うものです。
一般的な不動産投資や不動産投資信託などに比べ、少額からでも投資を行えます。
この投資においても、LTVは重要な指標の一つとして活用されています。
活用方法に関しては、基本的には不動産投資信託と同様です。

まとめ

不動産投資にはリスクがあり、投資家には財務の健全性が求められます。
その際に明確に数字で財務健全性を表せるのがLTVです。
大きな損失を生み出さないためにもLTVは常に重視するようにしなければなりません。

ただし、今回紹介したようにLTVの算出方法は簿価評価と時価評価で大きく異なる場合もあるため、LTVを意識しつつも、リアルタイムでの含み損益も把握することを忘れないようにしましょう。


 

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