「VLOG」をビジネスに活用するには

「YouTuber」という言葉が身近になって久しいですが、近年「Vlogger」という言葉も若い人を中心によく聞くようになりました。
Vlogとはビデオ+ブログの造語で、あまり派手な編集などはせず、日々の暮らしをそのまま動画にしたものを指します。
Vlogは10分以上の比較的長尺動画であることが多いので、一番よく使われているプラットフォームはYouTubeです。つまり、「YouTuber」の中に「Vlogger」というジャンルのクリエイターがいるということです。
何か有益な情報を伝えるという意図ではなく、あくまでありのままの生活を発信しているVloggerに多くのフォロワーがいることを不思議に思う方もいるかもしれません。
Vlogが人気である本質は何なのか、Vlogはビジネス活用に有効なのかについてお話していきます。

YouTuberとVloggerの違いは?

まず、VLOGとはビデオブログだと述べた通り、動画でログをとって人に見せることをいいます。VLOGはとくに目的も持たずに、誰かの商材や自分の商材を売るというわけでもなく、流し見にぴったりの少し「チル」な動画です。例えば、夜ご飯を作って食べたり、お散歩や買い物に行く様子を最小限の編集で流すといったものです。

チルがメインなので、あまり「盛る」や「映え」は意識されておらず、淡々とした動画が多いです。

一方、一般的なYouTube動画は起承転結がはっきりとあり、動画に目的を持っている傾向があります。

より「暮らし」「生活」に密着しているVlogger

さらに、一般的なYouTube動画は広告収入だけでなく、商品レビューなど提供動画でマネタイズされていることが多いですが、Vlogはあくまで日記なので、暮らしや生活に密着した動画を上げることが多くなっています。飾らない日常を公開することで親近感を抱きファンになるという事象は、近年高級品に興味を持たずミニマルな生活を楽しむ人々が増えたこととも相関しているかもしれません。

ジャンルが細分化されている

暮らしや生活に近いVLOGは、細かくジャンル分けされています。メディアやプラットフォームが細分化したわけではなく、自然発生的に、ジャンルが細かく分かれるようになったのです。

例えば、ひとつひとつ洗練された丁寧な暮らしを紹介するアカウントや、ガーリーで可愛らしいインテリアに囲まれた部屋で過ごす様子を紹介するアカウント、海外での生活を発信するアカウントなど、Vloggerの中にもさまざまな属性があります。その世界観に強く共感する人たちがフォロワーとなり、強固なコミュニティが出来上がっていくのです。

企業アカウントのVLOG企画は難しい

YouTuberに商品紹介を依頼し、PRをしてもらうというマーケティング手法は非常に有効です。
プレゼンテーション力の高いYouTuberは、商品の魅力を存分に伝えてくれます。
中には、企業自体がYouTubeアカウントを開設し、企画を立てたり商品紹介の動画を発信したりするケースも多く見られますよね。
この流れで、「企業アカウントでVLOG風の動画を発信するのはどうか」と考えるのも自然ですが、企業アカウントがVLOG形式で動画をつくり、プロモーションを成功させるのはかなり難易度が高いといえます。

「人」に惹かれ、その人の生活を覗きたいとファンが集まるため

なぜ難しいのかというと、VLOGはそのVloggerの人柄やヴィジュアル、発信内容といった、「人」にファンがつき、その生活をのぞくために集まってくる側面があるからです。そもそもVLOGは、何か有益な情報を発信するわけではない「日常を切り取っただけの動画」なので、好きでもなく興味もない人のVLOGは見る理由がありません。雰囲気だったり、人柄だったりに強く惹かれ、その人のオフの姿をのぞき見するため、「自分もこんな日常を送れたら」と空想するために動画を再生するのです。
企業アカウントは「人」を全面に出した動画をつくることが、フリーのクリエイターより難しい傾向にあります。なぜなら、会社のためにインターネット上に顔出しをして発信をするほどロイヤルティが高い社員を見つけるのも簡単ではありませんし、せっかくファンがついても退職などで振り出しに戻る可能性があるからです。

VLOG系YouTuberとのコラボがおすすめ

企業はVLOG系YouTuberに商品を提供し、PRと明示したうえで動画内に登場させてもらう、という手法の方が有効だと考えられます。一般的なYouTuberへの提供との違いは、「商品紹介がメイン」の動画にするわけではなく、「VLOGの中にさりげなく登場させるだけ」という点です。VLOGは主に生活面、ライフスタイル面に惹かれているので、その生活にさりげなく、シームレスに取り込まれているのであれば、訴求力が高いのではないかと考えられます。
先述した例を使うと、丁寧な暮らし系Vloggerに動画内でコーヒーメーカーを使ってもらう、ガーリー系Vloggerに可愛らしいルームウェアを着て登場してもらう、海外系VloggerにポケットWifiを使ってもらう…など。親和性の高い商品を提供すれば、とても自然に動画内に溶け込ませることができます。一般的なYouTubeの商品提供動画のように、その動画をまるまる使って商品を売り込む、という構成ではないので、視聴者も「営業された」という意識がなく、自発的に「私も使ってみたい」と感じてくれる可能性が高いです。

商品とVLOGのテイストがしっかりマッチしている必要がある

仮に、企業アカウントが提供する商品と、コラボするVloggerのテイストがマッチしており生活に溶け込んでいれば、十分に訴求できます。この「溶け込んでいれば」という前提条件が非常に大切で、極端な例を出すと、ファッションに敏感な女性ファンが多いVloggerに釣り用具をPRさせたりしたら、違和感を覚えられて視聴者の離脱を招きます。「お金のためならなんでもする人」という印象も招き、クリエイター自身も信用を大きく落とすこととなります。

いまのソーシャル時代、ユーザーはそうした「違和感」にとても敏感です。無理に売り込まれていないか、自分はだまされていないか、この人は信頼できるのか。そしてその背後にいる企業と、企業が出す商品は安全なものなのか。そうした本当の意味での信頼が問われます。

チャンネルの雰囲気と合わなければ断られる可能性大

その延長で、そもそもVloggerと商品の相性が合わなければ、つまりチャンネルの雰囲気とマッチしなければ、Vlogger側から断られる可能性は大きいのです。なぜなら、Vloggerである程度のファンを抱えている人は「インフルエンサー」と呼ばれ、影響力を持ちます。

そしてインフルエンサーが大切にするのは、発信の質、つまりタイムラインの質なのです。とにかくインフルエンサーはよくタイムラインを見直します。自分が何を発信していて、フォロワー(ファン)の目にどう映るのか、というのをとても大切にしているのです。動画のテイストと親和性があり、自分が本当にフォロワーにお勧めしたいと思える商品ではない限り、インフルエンサーは目先のPR費用よりもフォロワーからの信頼を重視するので、断られてしまうことも少なくないのです。

マッチすれば、的確なターゲティングが可能になる

一方で、タイムラインの質に溶け込み、マッチングがきちんと成立すれば的確なターゲティングが可能になると考えられます。大切なのはフォロワーの数ではなく、フォロワーの濃さ、そしてそのフォロワーとの親和性です。

VLOGコラボと相性のいい商品・サービス

VLOGは生活に密着した動画になるので、日用品や家電、こだわりの高級品まで幅広い商材を紹介できる可能性があります。繰り返しになりますが、相性とマッチングがすべてなので、VLOGとそもそも相性がいいかどうかも確認が必要です。「今流行っているからVLOGでコラボしよう」ではなく、「この商材は本当にこの人のVLOGに登場したら訴求力が高いのか?」という部分をみていく必要があります。
その判断をするためには、ファンになった気持ちで動画を視聴し、コメント欄を読み込んで具体的なターゲットを浮かび上がらせる必要があります。

家具・家電

ルーティーン動画など家の中での様子をメインに発信しているVLOGには、家具や家電を紹介してもらうと強い効果を発揮します。家具や家電は日々の生活を彩るものであり、動画の中にさりげなく登場していると、フォロワーは「この商品があれば私もこんな生活ができるかな」とイメージし、興味を持ってくれる可能性があります。

家で楽しめるサブスクリプションサービス

VLOGは家でのシーンが多いので、家で楽しめるサービスも向いています。例えばサブスクリプションの動画配信サービスを、おしゃれな部屋でコーヒーを飲みながらプロジェクターなどで映している様子を発信すれば、視聴者は自分の姿をそこに投影し、「私もこんなリラックスタイムを過ごしたい」と考えてくれるかもしれません。

食品

食事の様子を発信するクリエイターは想像以上に多いです。料理をしたり出前を取ったりして、それを家で淡々と食べる様子、上質なお菓子とともにティータイムを楽しむ様子など、Vlogに食品が登場することは少なくありません。
親和性さえあれば、食品を提供し動画の中で食してもらい簡単な感想を述べてもらうだけで、視聴者は強く興味を持ってくれる可能性があります。

コラボやPRしていることをきちんと伝えることも大切

そして、コラボやPRは、企業アカウントであれば比較的容易に考え付くところです。その際に、もっとも注意しなければならないところが、コラボやPRといった背景は、きちんと伝えないといけないということです。

ステマは絶対NG

コラボやPR表記がなしだと、「ステルスマーケティング(ステマ)」になってしまいます。ステマへのイメージは非常に悪く、ディスブランディングになるので絶対に避けましょう。
広告主でなく、クリエイター自身も大きく信頼を損ねることになり、大きなトラブルになることも考えられます。

最後に

VLOGは動画コンテンツの新しいかたちで、大きな可能性を持っています。
ターゲットが明確に分かり、コメント欄でダイレクトにフィードバックをもらえるので、商材とうまくマッチすれば非常に高い費用対効果を発揮できるでしょう。
新しいチャネルでの集客を考えるときに、選択肢のひとつに入れてみてはいかがでしょうか。


 

この記事をシェアする