新卒採用向けの動画は、インターネット上の動画プラットフォームや自社ホームページ、SNSなどさまざまな媒体で発信され、多くの就活生の目に触れるコンテンツです。学生など若年層では、すでに動画媒体を通じた情報収集は当たり前だと言っても過言ではありません。
動画媒体には、文章では伝わらない社員や職場の雰囲気を伝える力があることから、新卒採用向けの動画はベンチャー企業だけではなく、歴史ある大企業の間でも導入が進んできました。この記事では、新卒採用に動画を活用するメリットや活用事例、動画制作のポイントなどについて詳しくご紹介します。
目次
新卒採用に動画を活用するメリット
新卒採用を対象とした動画に限らず、動画はメッセージ性に優れた表現手法です。そのため、例えば商品やサービスの宣伝など、さまざまなシーンで用いられてきました。
特に、新卒の就活生を中心とする若い世代は動画に対して抵抗がないため、動画を通じて発信するメリットは少なくありません。子kでは、新卒採用に動画を活用するメリットをご紹介します。
若年層の心をつかめる
学生など若年層の間では、文字より動画を好むケースが少なくありません。これは、動画の方が手軽でイメージがつかみやすいなど志向が変化しただけでなく、全世界的に動画をメインとしたプラットフォームが台頭していることが背景にあると言えるでしょう。例えば、Tiktokなど変化に敏感な若い世代をターゲットとしたマーケティングを行い、成功しているケースも増えています。
動画は流行に敏感な若年層の関心を集めるために非常に有用なツールです。実際のところ、採用活動にSNSを活かす企業は増加傾向。従来はITベンチャー企業などがSNSでの発信に積極的でしたが、昨今では歴史の長い大企業でもSNSを活用した採用活動が一般的になりつつあります。
よりリアルな職場の雰囲気を伝えられる
動画はテキストベースだけの情報とは異なり視覚に訴えるツールなので、例えば働いている社員の姿や職場の雰囲気をリアルかつ印象的に伝えることが可能です。そのため、自社のカラーに親和性のある人材にとっては魅力的に映り、積極的な応募を促せる可能性があります。
そのため、選考に進んでくれる就活生の母数を増やせることに加え、自社に合った人材を集めることで応募後のミスマッチを防げるのも動画を活用するメリットです。
伝えられる情報の幅を増やせる
動画は必ずしも音と映像だけで構成されているわけではありません。効果的なテロップを挿入するなど、文字と組み合わせて表現の幅を増やせるのも大きな特徴です。
また、もともとあったテキストベースの採用情報を動画内で活用するという手段もありますので、伝えられる情報の幅を増やせるのもメリットだと言えるでしょう。
採用動画の掲載先
採用動画を掲載する媒体としては、以下のようなものが挙げられます。それぞれの媒体について、特徴を詳しく見ていきましょう。
採用サイト
採用サイトは、従来多くの企業が新卒採用に利用してきた最もポピュラーな媒体。新卒採用のために動画を用意したら、まずはこの採用サイトに掲載するのが一般的です。
採用サイトに載せるのは、新卒採用に使うことを目的とした動画に限られません。例えば、過去にテレビで放送された内容を動画にしたものや、株主総会向けに作った会社紹介動画を視聴できるようにしている企業も多く見られます。
SNS
動画媒体はSNSとの相性が良いこともあって、採用戦略にSNSが組み入れられるケースが増えてきました。数あるSNSの中でも近年採用に用いられることが多いのが、「Instagram」や「TikTok」です。
Instagramは、写真や動画を共有できるサービスというイメージが一般的かもしれません。しかし、実はテキストも2,200文字まで打ち込むことが可能。そのため、テキストベースの説明文と組み合わせて幅広い表現を行うのに適しています。
また、Instagramの場合、文字の中に「#(ハッシュタグ)」を含めることが可能。ハッシュタグは、#の後にキーワードをつなげて入れることで、検索された際にヒットする仕組みです。そのため、若年層の間ではGoogle検索に代わって情報を検索するケースも増えています。
一方、TikTokは1分以内の短い動画を投稿できるサービスです。歴史が長く堅苦しいイメージのある会社が、あえて流行の先端を行くTikTokに親しみやすい内容の動画を投稿することで、イメージを刷新して若い世代の支持を得ている例もあります。
YouTube
動画プラットフォームを代表する「YouTube」は、動画の長さに制限がないため、企業説明などの比較的長いコンテンツを掲載するのに適しています。
TikTokの場合、動画の長さが最長で1分と短いため、会社説明会のように企業の情報を詳しく説明するよりも、「人事部長が踊ってみた」など、親近感を抱かせることを目的とした内容がメインです。
その点、YouTubeは載せられる動画のバリエーションが幅広く、内容に関する自由度が高いのが特徴です。
採用動画の活用事例
採用動画の形式の主流は、以下の通りです。
・社員インタビュー動画
・CM形式の動画
・MV(ミュージックビデオ)風動画 など
ここでは、採用動画の活用事例について詳しく見ていきましょう。
社員インタビュー動画
社員を対象としたインタビューは、採用動画の定番。自社を理解してもらうきっかけ作りができます。
日本最大の都市銀行である「三菱UFJ銀行」は、数万人規模の従業員と多数の部署を擁しており、各行員のキャリアも千差万別です。多岐にわたるキャリアから自身に合ったコースを見つけてもらうために、同社ではさまざまな部署の行員にインタビューを実施。その様子を動画にして掲載しています。
また、演出振付家として有名なMIKIKO氏と行員が対談し、「銀行員が『演出振付家 MIKIKO』に聞いてみたいこと」というテーマで語り合う動画も目を引くコンテンツの一つです。
動画内では、行員が「普通の銀行員は取引先を応援することはあっても一緒にリスクを背負うことはない、けれど私は取引先と一体になる覚悟で接したい」と、銀行員という職業に対する熱い想いを語る一幕もあります。
このように、キャリアや仕事のやりがいを熱量とともに伝えられるのが、社員インタビュー動画の特徴。演出次第でさまざまなバリエーションの動画を制作することも可能です。
<MUFG Bank TV>https://www.saiyo.bk.mufg.jp/tv/
CM形式の動画
CM形式の動画は、会社の正確な情報を伝えるというより、「かっこいい」「見ていて気持ちが熱くなった」と感じられるインパクトを与えることを重視した動画です。社外の有名人やモデル、役者を起用するケースも少なくありません。
ふっ素樹脂や光ファイバをはじめとした開発・製造を手掛けるメーカーである「日星電気」では、作業着に身を包んだ社員が「モノづくり」に打ち込む姿、そして「部品になるな。(世の中を動かす)部品を作れ」というキャッチコピーを打ち出しています。
社員自身が世の中を動かす原動力となる場所であることをアピールする動画は、世の中に一石を投じたいという志を持つ就活生の胸を打つ内容です。
MV風動画
社員が数人で歌や踊りを見せるMV風動画は、インパクトを与えることに特化したコンテンツです。
「サイバーエージェントグループ」が2018年に発表したMV風動画では、当時流行していた楽曲「U.S.A(DA PUMP)」のダンスを人事部や宣伝本部、その他グループ内のさまざまな部署の社員が総勢数百人単位で踊り、大きな話題となりました。
DA PUMPが所属するエイベックス株式会社とも連携したこの企画はYouTube上で公表され、就活生以外からも多数のコメントが寄せられています。
コメントの内容を見ると、「こんな会社が増えてほしい」「社員同士仲が良さそう」などといった意見が多数あり、視聴者に好印象を与える動画であったことがわかります。
動画の中ではダンス慣れしていない社員も多数登場しますが、そのような社員も含めて「皆で一生懸命踊っている」姿も好感を持たれるポイントでした。
このように「社内の風通しの良さ」や「チームワーク」を演出する効果がある点も、MV風動画の特徴の一つです。
採用動画を制作する際のポイント
現在は新卒採用に動画を有効活用していても、最初から上手くいったわけではなく、試行錯誤を通して成功に至った企業も少なくありません。採用動画を制作する際には、制作のポイントを理解したうえでリリースし、軌道修正を重ねながら動画の質を高めていくといいでしょう。
ここでは、採用動画を制作する際のポイントについてご紹介します。
ターゲットを明確にする
例えば、文系の学生と理系の学生では訴求すべきポイントが大きく異なるため、採用したい学生の属性によって動画の方向性は変化します。そこで、採用したいターゲットの属性や人物像について明確化することが大切です。そのことによって、どの媒体を使って配信するかも明確になってくるでしょう。
例えば、精密機械を製造する企業が新卒採用に向けて動画を作る場合、大勢の社員が集まってワイワイと踊る動画と、社員が真剣な眼差しでモノづくりに打ち込む動画を比べてみると、後者のほうがモノづくりにプライドを持って取り組んでいることをアピールできるため、適しているでしょう。そうすると、TikTokよりも自社の採用ホームページやYouTubeを媒体として選ぶ、と配信先も自ずと決まります。
また、新卒採用動画制作の担当者からすると、他社の特徴ある動画に感銘を受け、「このような動画を作りたい」と思うこともあるかもしれません。しかし、「企画ありき」で動画を制作しても、自社のアピールに適した動画にならない可能性もあります。
そのため、まずはターゲットを明確化し、その後にターゲット層に合わせた企画を考えるといったステップを踏むことが大切です。
動画の長さを決める
ターゲットを明確にしたら、次にターゲットに合わせて動画の長さを決定します。動画の長さによって必要なコストも変わってくるため、早いタイミングで決めておかなければなりません。
また、動画の長さは企画が大きく影響します。例えば、社員インタビュー形式の動画は比較的短い尺でも制作できますが、MV風の形式は長めの尺を設定するといった具合です。
企画の方向性や伝えたい内容をどこまで盛り込むか、そして動画制作に使える予算などに基づいて動画の長さを決定してください。
社外とコラボレーションする
動画に登場するキャストは、必ずしも自社の社員だけでまかなう必要はありません。例えば、「お客様との心温まるエピソード」を動画化するのに、お客様役を社員が演じるとリアリティに欠ける可能性があります。
この点について、社外とコラボレーションすることで表現の幅はぐんと広がります。もちろん動画に盛り込む内容や予算にもよりますが、例えば有名人やインフルエンサー、役者さんなどに出演を依頼したり、取引先などとコラボレーションしたりすることも視野に入れるといいでしょう。
BGMにこだわる
採用動画制作にあたっては、視覚に訴える映像だけでなく、動画に合わせて流れるBGMも重要です。同じシーンでもBGM次第で楽しい印象にもなればシリアスな印象にもなり得ます。
また、BGMは音楽だけに限りません。例えば、「パチパチパチ」という拍手の音のような効果音を使うのも選択肢の一つです。
動画の雰囲気に合わせ、効果的なBGMを入れることで、より視聴者に訴えかける採用動画が制作できるでしょう。
配信先のトレンドをチェックする
配信先のトレンドをチェックすることには、時代の流れに沿ったコンセプトを考え、自社の動画制作を方向付けるうえで参考になる知見が得られるというメリットがあります。
例えば、近年TikTokで話題になっている企業の採用動画の一つに、重役や部長クラスなど他社内で高い地位についている人たちが踊っている動画が挙げられます。視聴者の間では「偉い立場の人が自分から体を張るなんて、きっとホワイト企業に違いない」と評判になっているのです。
また、若い世代は演出に凝るよりも「正直に話す」会社に親近感を覚える傾向があるとされています。近年、SNS上で話題になっている動画の中には、会社の負の部分も洗いざらい公開するケースも少なくありません。一方的にイメージを押し付けるのではなく、メリットとデメリットを比較できるという選択肢を視聴者に与えられるため、好意的に捉えられるケースもあります。
このように、かつては「NG」とされていた切り口が、最新ではむしろ「正解」となることは珍しくないのです。
配信先のトレンドをチェックすることでこうした時代の変化を読み取り、制作する採用動画の方向性を修正していくきっかけにもできるでしょう。
採用動画制作の流れ
採用動画を制作する際には、一定の流れがあることをご存じでしょうか。具体的には、以下のような流れが一般的です。
採用動画のターゲット・方向性を決める
採用動画を制作する際のポイントでもご紹介しましたが、まずは採用したい人物像、つまりターゲットを明確化しなければなりません。採用動画によりターゲットに訴求していくためにも、入社後に伸びるのはどういう社員かといったように、自社ならではの求める人物像を固めることが大切です。
ターゲットが明確になったら、採用したい学生の属性に合わせて、インタビュー形式にするのかドラマ形式にするのかなど、採用動画制作の方向性を決定していきます。
台本を作成する
次に、動画撮影で使用する台本を作成し、関係者で共有します。
台本は、出演者が撮影本番で迷うことなく役をこなせるよう、また撮影する側の段取りがスムーズにいくことも考慮して作成する必要があります。
一方、台本を作成する際には、すべて詳細に決めるのではなく、「適度な余白」を作ることも大切です。出演者も一字一句すべて台本通りのパフォーマンスを求められるよりも、ある程度自由に振る舞えるほうが自然体で演じられます。そうすることで、より視聴者の心に訴えかける動画制作が可能になるでしょう。
撮影・編集を行う
視聴者の興味関心を持続させる動画には、「数秒おきに画面を切り替える」という特徴があります。
撮影本番時には、可能であればカメラを数台用意し、複数のアングルから撮影するのがおすすめです。さまざまなアングルから撮影したカットを編集時に上手く組み合わせることで、より伝わりやすい、印象的な動画を制作できるでしょう。
自社サイト・SNSなどでPRする
編集を終えたら、完成した動画を自社サイトやSNSなどで発信してPRを行います。ただし、いくら高品質な動画を製作してもクリック(タップ)されなければ、当然ながら視聴してもらえません。
実は、YouTubeなどの動画プラットフォームで何百万回と再生される動画の場合、視聴者はタイトルやサムネイルに惹きつけられています。特に、サムネイルは静止画で表示されるため、目立つ色のキャッチコピーを入れたり、動画内で最も衝撃的なシーンを切り取ったりするといいでしょう。
発信するにあたっては、視聴してもらえる工夫を施すことも非常に大切です。
まとめ
就活生の間では、採用ホームページの文言や会社説明会などで配られるパンフレットだけでなく、動画から得られる情報を重視するケースが少なくありません。そのため、採用動画を充実させることは企業にとって喫緊の課題になりつつあると言えるでしょう。
採用動画では、社員や職場のリアルな姿を伝えられるため、新進気鋭のベンチャー企業だけでなく、歴史ある大手企業の間でも活用する動きが出てきました。他社が制作した人気の動画をはじめ、配信先にある先行事例なども参考に、トレンドをつかみつつ自社の目的に合わせた採用動画を制作してはいかがでしょうか。
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