近年、ダイレクトリクルーティングという採用方法を導入する企業が増加傾向にあります。しかし、自社の採用活動について、「より効果的な採用方法を採り入れたい」「ダイレクトリクルーティングを活用したいが、どのように進めればいいかわからない」と悩んでいる採用担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、ダイレクトリクルーティングという手法について、メリットや具体的な進め方、おすすめの媒体などをご紹介します。
目次
新卒採用に有効なダイレクトリクルーティングとは
「ダイレクトリクルーティング」とは、企業が一人ひとりの新卒者に直接アプローチをする採用方法のことです。
これまでの新卒採用活動は、就職サイトに求人情報を掲載してからは、興味をもった学生からエントリーが来るのを待つという「守り」の方法が一般的でした。一方、ダイレクトリクルーティングは、自社の求める人物像にマッチする学生を自ら探してスカウトする「攻め」の採用方法だと言えるでしょう。
ダイレクトリクルーティングは、海外では「ダイレクトソーシング」とも呼ばれており広く普及していますが、日本では近年急速に市場が拡大している段階です。
海外のダイレクトリクルーティングの状況
ダイレクトリクルーティングは、もともと海外で積極的に採り入れられていた採用方法です。例えば、アメリカは日本に比べてリクルーティング業界が成熟しており、ダイレクトリクルーティングが当たり前の手法として仕組み化されています。
リクルートワークス研究所が発表した「アメリカの人材ビジネス」によると、2003年には採用経路全体の2.6%だったダイレクトリクルーティングが、2013年には12.1%と5倍近くも急成長しました。
【引用】アメリカの人材ビジネス 08.米国の採用経路調査2013|リクルートワークス研究所
https://www.works-i.com/research/others/item/r_140404.pdf
日本のダイレクトリクルーティングの現状
国内では売り手市場が続き採用競争が激化しており、従来のように待ちの姿勢だけでは優秀な人材の獲得は難しいのが現状。そのため、日本でも個々の学生にアプローチするダイレクトリクルーティングを導入している企業が増えているのです。
HR総研が実施した「2020年&2021年新卒採用動向調査」によると、約8割の企業がダイレクトリクルーティングを採り入れています。学生側も3人に1人がダイレクトリクルーティングの媒体に登録しており、就職活動の新しい形として浸透していることがわかるでしょう。
【引用】2021年&2022年新卒採用動向調査 結果報告|HR Pro
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=287
また、ダイレクトスカウトサービス「Offer Box」を運営する株式会社i-plugの発表によると、新卒採用におけるダイレクトリクルーティングの平均成長率は58.5%。次点である「新卒紹介」の成長率14.7%と比べても伸びが大きく、急成長を遂げていることがわかります。今後さらに拡大し、スタンダードな採用方法として定着していくことが予想されます。
【参考】企業IR資料|i-plug
https://www.daiwatv.jp/contents/ipo/interview/21512-001/download/21512-001.pdf
ダイレクトリクルーティングの選考フロー
ダイレクトリクルーティングの選考は、一般的に以下の流れで進めます。
1.ダイレクトリクルーティングを行う媒体と契約する
まずは、新卒者に直接アプローチするための場となる媒体と契約します。媒体によって所持している学生のデータベースが異なるため、自社が求めている人材に合わせて媒体を検討してください。
2.データベース上でターゲットとなる人材を探す
検索などで人材を探し、一人ひとりがどのような人物であるかを調査します。
3.対象者にスカウトメールを送る
スカウトしたい人材が決まったら、一人ずつメールを送ります。多くのメールの中から自社に興味を抱いてもらえるメールを送ることが重要です。
4.対象者がスカウトを承諾したら面談を実施する
対象者から好意的な反応があれば、なるべく早めに面談を設定しましょう。希望条件や本心をヒアリングしながら、入社後のイメージを具体的に伝えてアピールします。
新卒採用でダイレクトリクルーティングを実施するメリット
ダイレクトリクルーティングを実施すると、従来の採用方法に比べてコストを削減しながらも、効率良く自社の求める人材を獲得できます。
自社のニーズに合った人材を獲得できる
ダイレクトリクルーティングでは、採用したい人材の要件を定めたうえでターゲットを絞り、ピンポイントでアプローチできる点が最大のメリットです。
就職サイトなどを活用する方法では、応募する学生を絞ることはできず、基本的にすべての応募者に対して選考を行い、求める条件にマッチする人材を選ぶ必要がありました。一方、ダイレクトリクルーティングであれば、データベースに登録された学生のプロフィールをあらかじめ確認し、条件を満たす人材だけにアプローチできるため、自社のニーズに合った人材を効率的に獲得できます。
学生の認知度を高められる
就職サイトに求人情報を掲載する従来のやり方では、サイトを閲覧している新卒者側に情報の選択権がありました。つまり、新卒者に認知してもらえていない企業や知名度の低い企業は、求人情報すら読んでもらえないケースも多く、求める人材の獲得が難しくなってしまったのです。
これに対して、ダイレクトリクルーティングでは、企業側から新卒者に直接スカウトメールを送ります。個人宛に送付されたメールの場合、知名度が低いからといって開かないケースはあまり考えにくく、獲得したい人材に自社を認知してもらえる可能性が高まるでしょう。
採用コストを削減できる
ダイレクトリクルーティングでは企業の主体的な行動が必要な分、求人広告を掲載したり人材会社に仲介を依頼したりする採用方法に比べてコストを抑えられます。
ダイレクトリクルーティングサービスの一般的な料金体系は、「定額制」もしくは「成功報酬型」です。定額制は一般的に月々5万円から。成功報酬型でも一般の相場は一人あたり30万〜80万円程度と、人材紹介より価格を抑えられる傾向にあります。
ダイレクトリクルーティングでは、ターゲットの調査やスカウトメールの送信、その後の日程調整など採用担当者の工数は増えますが、金銭的なコストを大幅に削減できる点もメリットだと言えるでしょう。
ダイレクトリクルーティングを導入するポイント
ダイレクトリクルーティングを導入する際は、有効なノウハウを参考にし、しっかり準備を整えて臨むことが大切です。
他社の成功事例・ノウハウを参考にする
初めてダイレクトリクルーティングを導入する場合は、なかなか具体的なイメージがつかめないのではないでしょうか。そのため、まずはダイレクトリクルーティングにおける他社の成功事例やノウハウを参考にすることが有効です。
ダイレクトリクルーティングに成功している企業は、専任の担当者を設けているケースが少なくありません。新卒者のプロフィールを細かくチェックしてターゲットを絞り、スカウトメールを送って返信や面談の日程調整に対応するという一連の作業には、継続的な集中力が求められます。そこで、専任の担当者を設けて採用活動を行っていくことが望ましいでしょう。
また、スカウトメールに自社をアピールするブログや動画を添付するといった工夫も重要です。他社のノウハウや成功事例を参考にしながら導入を進め、効果検証をしながら自社に適したダイレクトリクルーティングを行っていくことをおすすめします。
アプローチする人材を増やす
ターゲットを絞ってアプローチできる点がダイレクトリクルーティングの強みではありますが、採用を成功させるためには絞り込む要件を盛り込みすぎないよう注意しなければなりません。
データベースに登録しているすべての新卒者が詳細にプロフィールを設定しているとは限らないため、検索条件を細かく設定しすぎてしまうと、求める人物像にマッチする人材を取りこぼしてしまうリスクがあります。
「プロフィールは充実していなかったけれど、面談してみたらニーズに合う人材だった」という可能性も考慮して、アプローチする人材を増やすことも大切です。
本格的な採用時期よりも早めにスタートする
ダイレクトリクルーティングでは、新卒者が他社からのアプローチを受ける前にコンタクトを取ることが重要です。自社にとって魅力的な人材は、他社からもスカウトの声をかけられている可能性が高いでしょう。そのため、一般的な就職活動の開始時期よりも早めに動き出す必要があります。
新卒者の就職活動は年々早期化が進んでいます。実際に、2023年卒の89%、2024年卒でも46%の学生が解禁を待たずに就職活動を開始しました。さらに、大学1年生から就職活動を始めたという学生も近年増加傾向にあります。
理想の人材を獲得するためには、他社よりも早く新卒者にアプローチができるよう、早めの動き出しを心がけてください。
【参考】22卒〜24卒の就職活動に関する調査結果を発表|Wantedly
https://www.wantedly.com/companies/wantedly/post_articles/373096
新卒採用向けダイレクトリクルーティングのおすすめ媒体5選
媒体ごとにサービスの特徴が異なるため、自社の採用戦略に適した媒体を選んでダイレクトリクルーティングに活用することが大切です。
Wantedly(ウォンテッドリー)
「Wantedly」は、20代〜30代のユーザーが中心のダイレクトスカウトサービス。月額制で成功報酬のかからない料金体系なので、コストを抑えて利用できます。
新卒者に対してスカウトメールを送れるだけでなく、ストーリーという機能でブログや募集などの情報を自由に掲載できるというメリットもあります。ストーリーで自社の魅力をアピールできる他、募集の掲載には新卒者側からのアプローチも可能です。
「共感採用」というコンセプトは働き方や価値観の多様性を尊重する時代の流れにマッチしており、利用者世代からの支持を集めている理由の一つだと言えるでしょう。
大学1、2年生で登録している学生も多いため、優秀な人材にいち早くアプローチできるという点でも新卒採用に適しています。
LinkedIn(リンクトイン)
「LinkedIn」はアメリカで誕生したビジネス特化型のSNSです。世界で7億人以上のユーザー数を誇っており、日本でも200万人以上が登録しています。
企業のページを作成すれば、採用情報を掲載したり、フォロワーに対して自社をアピールする情報を発信したりするなど、便利に活用することが可能。条件を絞ってユーザーを検索し、ダイレクトメッセージでスカウトを送ることで効率的な人材獲得が実現します。
成果報酬が発生しないため、採用コストを抑えられる点もメリットだと言えるでしょう。
ビズリーチ・キャンパス
「ビズリーチ・キャンパス」は、登録している学生と大学のOB・OGをマッチングさせ、交流の場を提供するサービスです。メインとなるサービスはOB・OG訪問支援ですが、自社社員を通して新卒者の人柄やスキルを見極め、直接アプローチを行っていくことでダイレクトリクルーティングに活用できます。
登録している新卒者が企業のインターンといったイベントに応募できるシステムがあり、企業側もアプローチしたい学生に対して、自社のイベントや選考へ誘致するためのスカウトメッセージを送信可能です。
登録者の多くは有名大学の学生であるため、自社にOB・OGが在籍していれば優秀な学生に早くからアプローチできるでしょう。
キミスカ
【引用】https://kimisuka.com/2024/
「キミスカ」は、就職活動中の学生に人気の高いダイレクトスカウトサービスです。
企業側は、採用基準によって「プラチナスカウト」「本気スカウト」「気になるスカウト」と3段階のスカウトを使い分けて送信できます。「気になるスカウト」は無制限で送れるため、幅広いユーザーに自社を認知してもらえるでしょう。
また、スカウトメールの送信・返信作業を代行してもらえるオプションが充実している点も特徴的。採用担当者のリソースを空けられず、ダイレクトリクルーティングの導入に踏み切れない企業にもおすすめです。
offerbox(オファーボックス)
「OfferBox」は新卒者の3人に1人が利用しているとされるダイレクトスカウトサービスです。
「業種や規模に応じて、どのくらいの確率でスカウトが成功するか」を予測するシミュレーション機能を備えているため、ダイレクトリクルーティングを初めて行う企業でも運用しやすい点が特徴です。
企業のスカウト送信傾向や新卒者の希望条件などから、よりマッチしそうな人材を上位表示するなどAIアシスト機能も充実しています。成功報酬はかかりますが、緻密な分析に基づいて効率的に採用活動を行える点はメリットだと言えるでしょう。
まとめ
狙った人材に直接アプローチをするダイレクトリクルーティングを活用することにより、採用コストを削減しながら自社のニーズに合った人材を獲得できる可能性があります。ただし、ダイレクトリクルーティングでは候補者の発掘と長期にわたるアプローチを自社で行う必要があるため、しっかりPDCAを回しながら戦略的に取り組んでいくことが大切だと言えるでしょう。
ご紹介した内容を参考にしていただき、自社のニーズと戦略をにらみながら効果的にダイレクトリクルーティングを活用することをおすすめします。
関連記事
この記事をシェアする