ジョブ型採用は導入すべき?導入のメリットや手順について徹底解説

従来、日本では職種ではなく企業を選んで就職する「メンバーシップ型雇用」が一般的でした。特に、新卒採用ではこのメンバーシップ型雇用が用いられることが多かったのですが、新たな雇用形態として注目される「ジョブ型採用」の導入により、人材採用を行う企業側はもちろん、新卒採用を控えた学生の選択肢も大きく変化する可能性があります。

ここでは、ジョブ型採用を導入するメリットや導入手順などについて詳しくご紹介しますので、採用手法の設計にぜひお役立てください。

ジョブ型採用(雇用)とは?

ジョブ型採用は、別名「職種別採用」とも呼ばれる採用方式。欧米では主流であり、日本でもこれを見習う形で導入を検討する企業が増えてきているのです。

ジョブ型採用の概要

ジョブ型採用とは、特定の職種に就いてもらうことを前提として、応募者を募る採用方式です。

従来日本で主流だったメンバーシップ型雇用では、応募者が特定の「職種」を志望するのではなく、特定の「会社」を志望して採用試験を受けます。そして内定した場合には、会社側が用意する職種を割り振られ、数年おきにさまざまな職種を経験するのが一般的でした。

一方ジョブ型採用では、特定の職種を専門的に極めていく人材を企業側が募集します。採用された人材はいくつもの職種を経験するのではなく、いわゆる「スペシャリスト」として、専門分野に従事するのです。

海外でのジョブ型採用の状況

海外、特に欧米先進国においてはジョブ型採用が主流です。年功序列型の長期雇用という習慣は欧米では珍しく、むしろ転職を重ね、複数の会社で特定の職種に従事することで、専門性を磨くというキャリアプランが、特にホワイトカラーの間では一般的です。

このような背景もあり、欧米の一般的な企業では人材が生涯会社に居続けることを前提とした採用を行っておらず、特定のポストが空いたら、そのポストに見合ったスキルを持つ人材を新たに雇用するという考え方に沿った採用活動が行われています。

日本におけるジョブ型採用の現状

メンバーシップ型雇用および長期雇用型の組織設計は、いわゆる高度成長期においては有効に機能してきました。

ところが、日本が欧米先進国に追いつき、経済発展の勢いも落ち着いてきた1990年代以降、メンバーシップ型雇用が有効に機能する場面が減り、むしろ高度な専門能力を持った人材を育てにくいといった弊害が指摘されるようになったのです。

こうした状況下において、一部の企業では新卒採用時に高度な専門性を持った人材に高給を払うことを打ち出すなど、ジョブ型採用への転換を試みる動きが見られはじめました。とはいえ全体的には依然として、メンバーシップ型雇用を採る企業も少なくありません。

ジョブ型採用を導入することは、これまで築き上げてきたメンバーシップ型雇用の仕組みを作り替えていくことでもあるため、一気にジョブ型採用へ転換することは歴史の長い企業ほど難しく、今後も段階的に導入されていくと推測されます。

新卒採用にジョブ型採用を導入するメリット

ジョブ型雇用では、即戦力となる人材を確保しやすいというメリットがあることから、日本国内でも中途採用に限らず、職務経験のない新卒採用においても導入を検討する企業が増えつつあります。

専門性の高い人材を集められる

ジョブ型採用の特徴として、高度な専門能力を有する人材を確保し、人材を必要とするポストですぐに活躍してもらえる点が挙げられます。

メンバーシップ型雇用では、即戦力として働きを期待するよりも組織の中で長期的に人材を育成し、将来の幹部候補としていくことが前提。ゼネラリストを育てられる一方、その人材が高い生産性を発揮するまでに少なくとも数年の育成期間が必要となります。

変化の激しい現代の環境下で、高度な能力を持った人材を素早く確保するためには、ジョブ型採用が適していると言えるでしょう。

人材育成のコストを抑えられる

新卒採用の人材に長期間投資して育成するメンバーシップ型雇用では、研修やOJTなどを受けさせることも含めて、多大な育成コストが必要です。

一方、ジョブ型採用の場合は、プロパー社員にこだわらず専門性のある人材を採用するため、社員の能力をゼロから育てる場合と比べて手間がかからず、人材育成のコストを抑えられるでしょう。

採用のミスマッチを防げる

ジョブ型採用では、職務経験やスキルなど、定量的な基準が重視されるのが特徴。明確な基準に沿って採用を行うため、人格ややる気など定性的な評価基準が重視されるメンバーシップ型雇用に比べて、採用のミスマッチを防ぎやすい側面があります。

ジョブ型採用を導入する際のポイント

さまざまなメリットがあるジョブ型採用ですが、実際に導入するにあたってはクリアすべき要件もあります。導入のポイントを押さえ、スムーズな改革に役立てましょう。

メンバーシップ型の雇用も並立させる

近年、ジョブ型採用のメリットが注目を集めるようになったとはいえ、メンバーシップ型雇用が不要になったわけではありません。さまざまな部署での経験を基に総合判断を行うゼネラリストも、会社にとって必要な存在です。

実際に、ジョブ型採用をメインとする欧米先進国の企業でも、経営の中枢を担う幹部人材は長年にわたって一社に勤め、複数の職務を経験してきたゼネラリスト型人材が務めることも珍しくありません。

したがって、ジョブ型雇用を導入するに際しては、ジョブ型雇用で集める専門性の高い人材とは別に、メンバーシップ型で雇用する枠も並立させる人事制度を設計するのが賢明です。

採用要件を明確化する

ジョブ型採用を導入するにあたり、必要なスキルを持った人材を確保するためには、ポストに合った採用要件を明確化しなければなりません。

採用要件の明確化にあたっては、「優れたコミュニケーション能力」や「〇〇の業務に関する高い知見」といった抽象的な要件ではなく、「プログラミング言語で◯◯のシステムを開発した経験」「〇〇に関して大学で関連する単位を〇〇以上取得」など、定量的な要件を盛り込むといいでしょう。

会社やチームへの帰属意識を高める工夫をする

メンバーシップ型雇用の場合、まっさらな人材を自社に適合するよう染めあげる人材育成が比較的容易です。

一方、ジョブ型採用で集まる人材は、自身の専門能力を極めていくことに、興味関心を抱く傾向にあります。加えて、他社でも通用するようなスキルや専門性を身につけているため転職が容易であり、自社に長期間勤務してくれるとは限りません。

このような市場価値の高い人材をつなぎとめ、できる限り長期間にわたって自社に貢献してもらうためには、待遇面の優遇も重要ですが、会社やチームへの帰属意識を高める工夫も必要となってくるでしょう。

メンバーシップ型雇用において採用された総合職社員が受けるような、自社の歴史などを学ぶ座学の研修をジョブ型採用の社員にも受けてもらったり、他の社員との交流を通してチームに愛着を持ってもらったりする機会を設けることも大切です。

ジョブ型採用を導入する流れ・手順

ジョブ型雇用のメリットを認識している企業は国内でも増えてきていますが、本格的に運用する企業がまだまだ少ないのは、導入に際して一定のハードルがあるからです。

ここでは、ジョブ型採用を意義ある制度として根付かせるために踏むべき流れや手順についてご紹介します。

ジョブ型採用を導入する職務を決定する

ジョブ型採用を導入する際は、対象となる職務を明確にしなければなりません。必要な人材を募集するにあたっては、経験やスキルなど定量的な要件を示す必要があります。

定量的要件を決めるにあたっては、ポストを明確にし、給与などの待遇面も募集開始前に決定します。

給与体系や評価制度など環境を整備する

ジョブ型採用を導入するにあたっては、給与体系や評価制度など、人材を受け入れるための環境を整備することも重要。

ジョブ型採用の給与体系では、メンバーシップ型雇用で一般的な「年功序列型」「固定報酬型」ではなく、「成果報酬型」を用いるのが一般的。例えば、「営業担当者の売上」「プログラマーとして開発したシステム」といった定量的な成果を軸に報酬を決めるといった具合です。そのため、評価制度も事前に決めておかなければなりません。

もちろん、成果報酬型と年功序列型・固定報酬型を併用することも可能です。企業規模や社風に応じて、適切な制度を検討するといいでしょう。

社内にジョブ型採用導入を周知する

組織にとってポジティブな制度変更であったとしても、すでにいる社員が新制度を受容できるよう、あらかじめアナウンスすることは省いてはいけないプロセスです。

ジョブ型雇用の導入により社内には大きな変化が起きるため、十分な準備期間を取って導入を周知しましょう。

まとめ

変化が激しい現代の採用市場において、即戦力となる専門性の高い人材を確保するためにジョブ型採用の導入を進める企業が現れてきました。ジョブ型採用を導入するためには、職務内容や待遇を明確に定義するなどの準備が必要です。また、既存の社員に対してもポジティブな変化として受け入れてもらえるよう、十分に配慮し周知しなければなりません。

今回ご紹介した内容を参考にしていただき、自社に合った採用方法を検討していくことをおすすめします。


 

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